日本超音波医学会 第21回東北地方会 プログラム・抄録集


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日  時:  平成13年3月18日(日) 9時25分--17時50分
場  所:  艮陵会館 記念ホール
             仙台市青葉区広瀬町3-34 (tel: 022-227-2721)
大 会 長:  東北大学加齢医学研究所 病態計測制御研究分野 仁田 新一
特 別 講 演: ・「3次元超音波の基礎と腹部・産婦人科領域における臨床応用」
               東京大学大学院医学系研究科医用生体工学講座
                馬場一憲 先生
             ・「3次元超音波法−循環器領域における臨床応用」
               東北大学加齢医学研究所 病態計測制御研究分野
               西條芳文 先生
参 加 費:  1,000 円
地方会 URL:  http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連 絡 先:  〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 05
             東北大学大学院工学研究科 電子工学専攻内
             日本超音波医学会 第21回東北地方会事務局
             telephone: 022-217-7081,facsimile: 022-263-9444  
             e-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp
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講演者へのお願い:
・会場には,35mm slide projector, OHP, S-VHSのprojectorを用意します.
・演者は,発表予定時刻の15分前までにスライド受付を済ませてください.
・一般演題は1題につき発表時間7分,討論時間8分です.
  但し,症例報告は1題につき発表時間5分,討論時間5分です.
・ スライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守してください.
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開会の挨拶 (9:25-9:30) 大会長 東北大学加齢医学研究所 仁田 新一先生
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腹部 (9:30-10:30)      座長 宮城県立がんセンター 鈴木雅貴 先生
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21-1【症例報告】検診超音波検査で検出した胆嚢癌の1例
仙台社会保険病院内科        寺沢良夫
仙台社会保険病院検査部超音波室 広田むつ子,藤岡久恵,野村禎子,須藤誠二
【内容梗概】胆嚢癌は腹痛・黄疸等の症状での受診時には,既に手遅れとなっ
ていることが多い.従って無症状での診断が要求される.今回検診USで診断し
た胆嚢癌を経験したので報告する.【症例】 67才女.2000年7月21日当院検診
USで胆嚢体部〜底部・腹腔側に2.5cmにわたり広基性の限局的隆起性病変を認
め,胆嚢癌と診断.CT,EUS,Angioでも同一診断で,2000年8月11日手術,粘
膜内にとどまる早期胆嚢癌であった. 当院検診における胆嚢癌は5人で,無
症状胆嚢癌の検出には,検診でのUSが最もよい検査法と考えられる. 
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21-2【症例報告】原発性硬化性胆管炎の経過中に胆管癌を併発した一例
弘前大学医学部第一内科  安達淳治,澤村典子,田辺素子,伊藤重豪,
                          坂本十一,須藤俊之,棟方昭博
弘前大学医学部第二外科  鳴海俊治,佐々木睦男
弘前大学医学部第二病理  須藤晃司
【内容梗概】症例は48歳,男性.現病歴は平成3年から脂肪肝,高脂血症の診
断で近医にて治療を受けていた.平成11年3月肝機能障害が増悪し,当科を紹
介される.胆道系酵素主体の肝機能障害と,胆管造影にて結石・腫瘍像を認め
ず肝内・肝外胆管に多発性狭窄,数珠状拡張を認めた.第二外科にて開腹下に
施行した肝生検で原発性硬化性胆管炎(PSC)にcompatibleな所見であったため
PSCと診断し,ウルソを中心とした外来治療を行った.平成12年10月,黄疸が
出現し再入院.US,胆管造影にて胆管内に腫瘍像を認め,PTCDを施行した.腫
瘍マーカーはDUPAN-,SPAN-が明らかに増加しており,胆汁の細胞診ではclass
で,さらに腺癌を強く疑わせる所見であった.当院二外科にて胆管切除術を行っ
たが,腫瘍はa集蔟様で肝床側胆管断端に腫瘍の残存を認めたため,現在腔内
照射療法を施行中である.
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21-3【症例報告】虚血性小腸炎(狭窄型)の1例
松園第一病院消化器科   石川洋子,工藤典重
松園第一病院循環器科   瀬川 裕
松園第一病院臨床検査科  高田 剛,千葉春枝
松園第一病院放射線科   渡辺 誠
岩手県立中央病院消化器科  小野 満
岩手県立中央病院消化器外科 平泉 宣,望月 泉
岩手県立中央病院放射線科  佐々木康夫
岩手県立中央病院病理   佐熊 勉
赤坂病院      赤坂俊幸
【内容梗概】78歳男性.既往歴:平成8年ペースメーカ植,平成9年ASD手術.
現病歴:平成12年6月前立腺癌で赤坂病院入院中,心不全増悪のため松園第一
病院循環器科転入後,上腹部痛と血性下痢を訴え同消化器科へ紹介された.白
血球18,600,CRP29.3,腹部超音波検査(US)で小腸および回盲部の壁肥厚像,
とくに小腸はソーセージ様肥厚像で強い炎症性変化が示唆された.第21病日注
腸X線検査で,回腸の広範囲狭窄像を,経口小腸造影で空腸にもケルクリング
皺襞の消失と狭窄を認めた.第37病日のUSも同所見.以上より広汎な虚血性小
腸炎が疑われ,8月岩手県立中央病院消化器科へ紹介入院.血管造影で回腸末
端の著明な血管増生像.腹部CTで回腸末端に浮腫像.第58病日注腸X線検査お
よび小腸造影で回腸末端30cmの狭窄像を認め,回盲部切除術施行.回腸は末端
部30cmに狭窄がみられ70cm切除.病理組織学的に回腸壁は高度に肥厚し線維増
生と全層性の炎症性細胞浸潤,粘膜は広範な浅い潰瘍と再生粘膜,高度の炎症
性細胞浸潤を伴う肉芽組織を認め虚血性小腸炎,瘢痕狭窄期と診断された.
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21-4 高齢者急性胆嚢炎におけるPTGBA(経皮経肝胆嚢穿刺吸引法)の有用性
東北労災病院腹部超音波室  桜庭 勝,山下安夫,色川 信,志村千佳子,
                            管野悦子
東北労災病院消化器科   小笠原鉄郎,林仁 守
【内容梗概】急性胆嚢炎は,絶食・補液・抗生剤により炎症消退を待ち,その
後,胆摘術を行うのが一般的である.しかしこれでは入院日数が長期になるば
かりでなく,安静・絶食は特に高齢者では体力・気力の著しい低下をもたらす.
われわれは最近4カ月間に7名の高齢者急性胆嚢炎に対し,PTGBAを施行し,そ
の有効性を確認できた.症例はさまざまな基礎疾患を有する高齢者,男5女2名,
年令は70-97歳.手技は,超音波下に21GPTC針を経皮経肝的に穿刺,胆嚢内容
液を吸引する容易な方法である.疼痛,発熱などの症状は翌日には軽快したが,
無症状になるまでは1週間を要した症例もあった.しかし,その間経口摂取は
可能であり特に安静も要しなかった.治療偶発症はなかった.4例はその後,
胆摘術を行ったが,他は基礎疾患のため手術不能であったが再発の兆候はない.
本法は安全かつ容易な手技であり,急性胆嚢炎の初期治療にまず行うべき治療
手段である.
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21-5 肝細胞癌の画像診断(存在及び質的診断)における超音波診断(Color  
Power Doppler,経静脈性造影剤)の位置付け
釜石市民病院消化器科   星 進悦
【内容梗概】当院ではColor Power Doppler超音波診断装置を購入して本格的
な肝細胞癌(HCC)画像診断を開始した.その後MRI,経静脈性超音波造影剤,ヘ
リカルCTが導入された.今回各画像診断を評価し,特に超音波の存在及び質的
診断能の評価を行ったので報告する.超音波診断装置はGE YOKOKAWA LOGIQ
500で,探触子は3.75MHzのコンベックス型を使用した. 過去3年間に診断し
たHCCは14例であった.スクリーニングとして専ら超音波を用い,MRIの導入で
大きな変化はなく,フェリデックスの効果も今一つであった.質的診断として
Color Power Dopplerと超音波造影剤は栄養血管の検出に有用であった.ヘリ
カルCT,特にダイナミックCTは存在及び質的診断に有用で,超音波で観察しに
くい非代償性肝硬変におけるHCC症例にはスクリーニングにも有用と思われた.
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基礎 (10:30-11:30) 座長 明星大学情報学研究科 八木晋一 先生
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21-6 超音波偏向制御を用いた径・軸方向の動脈壁振動と血流の同時計測
東北大学大学院工学研究科,(株)松下通信仙台研究所 砂川和宏
東北大学大学院工学研究科       金井 浩
東北大学大学院医学系研究科      小岩喜郎
(財)結核予防会宮城県支部       田中元直
【内容梗概】本報告では,超音波ビームをステアさせることにより,ヒト頸動
脈の壁振動と壁近傍の血流を径方向と軸方向について同時に計測し,時間−周
波数解析を行うことにより,血流変化と動脈壁振動の関連性の評価を行った結
果を示す. 健常者の頸動脈において,心臓が駆出し,大動脈弁が閉まるまで
の心臓収縮期(動脈拡張期)間の血流が発生している期間で,100〜200μmとい
う微少な量で,血流の下流方向に移動していることがわかった.この結果から,
血流の発生によるずり応力の発生が動脈壁の軸方向の運動に影響を与えている
と考えられる. また,約1kHzまでの周波数帯域において,動脈壁振動速度に
対して血流速度のパワーが,径・軸方向ともに10〜20dB大きくなっており,血
流によって発生した振動が,粘弾性特性を持つ動脈壁で大きく減衰している可
能性が示唆できる.これらの結果から,本手法を用いることにより,血流変化
と動脈壁振動の関連性を評価することが可能となり,動脈壁に加わる応力の影
響を推定する上で有用になると期待できる.
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21-7 血管反応性の評価のための動脈壁厚み変化の連続計測システム
東北大学工学部          長田俊明
東北大学大学院工学研究科  渡辺 優,長谷川英之,砂川和宏,金井 浩
東北大学大学院医学系研究科 小岩喜郎
【内容梗概】
【目的】ニトログリセリン(NTG)による血管拡張作用は,投与から数十秒後(健
常者で約40秒後)に始まり,元の状態に戻り始めるのは100秒後以降であるとい
うことが報告されている.また,健常者と喫煙者ではこの反応性に差異がある
ことが分かっている.そこで,動脈の血管反応性を評価するため,超音波診断
装置を用いて数分にわたり拍動に伴う動脈壁の厚み変化を連続計測し,同時に
心拍数および脈圧も連続して計測するシステムを構築する.【方法】超音波診
断装置の直交検波信号を標本化周波数10MHzでA/D変換した約2秒間のデータを
心電図,心音図および血圧波形とともにリアルタイムでハードディスクに記録
する処理を約10秒毎に繰り返し実行することにより,長時間の計測を可能にし
た.【実験】本システムを用いて5分間の連続計測を行った結果,安定して動
脈壁の厚み変化を得ることができた.【結論】本システムを用いることで,
NTGに対する壁の厚み変化の過渡応答の高精度計測を含めた血管の反応性の評
価を行うことができる.
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21-8 複素相互相関による動脈壁の境界検出の検討 
東北大学工学部          石川貴行
東北大学大学院工学研究科  渡辺 優,長谷川英之,砂川和宏,金井 浩
【内容梗概】【目的】動脈壁と内腔の境界の自動検出法の開発を目的として,
動脈壁からの反射波と血液からの散乱波の区別に有効と考えられる位相を用い
た複素相互相関法に関する検討を行なった.【方法】ヒト頚動脈にパルス状の
超音波を送信し,R波のタイミングでの深さdからの反射波信号の位相検波出力
と血流が発生するタイミングでの位相検波出力の間の複素相互相関係数を深さ
方向に0.77μmの局所ごとに算出し,動脈壁の境界検出を試みた.【実験】(1)
通常の複素相互相関係数と,(2)通常の複素相互相関係数を振幅で重み付けし
た複素相互相関係数を算出した.【実験結果】通常の複素相互相関係数におい
ては,動脈壁と内腔に明確な差が見られないが,振幅で重み付けを行うことに
より,動脈壁と内腔の差が明瞭となった.【結論】血液の場合は,拍動に伴い
血流が発生すると,大きい位相偏移が発生するため,相関係数が動脈壁に比べ
ると低下する.また,動脈壁と比べて,血液からの反射波の振幅は小さいため,
反射波の振幅と位相の両方を用いた複素相互相関係数を振幅で重み付けするこ
とにより,動脈壁と内腔の境界を正確に検出できると考えられる.
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21-9 複素自己相関法を用いた変位断層法の肝血管腫への適用
明星大学電子情報学科   小松真紀
明星大学情報学研究科   八木晋一
横浜総合病院外科      秋本 伸
【内容梗概】生体組織の解剖学的情報と連動して,医師の積極的触診に伴う組
織内部の力学的応答を,RFエコーを利用して映像化する新しい超音波断層法と
して,筆者らは可視化触診法を研究している.本研究では,可視化触診法の実
用化を,汎用配列型超音波トランスデューサからの連続RFエコーフレームの実
時間取り込みシステムを利用した,肝血管腫スペックルエコーデータに対して,
複素自己相関法を用いたビーム方向変位断層法により検証する.応力分布計測
を適用できない腹部領域において変位計測法は,可視化触診法を実用化する最
も有用な方法と考えられる.変位断層法を用いることで,従来のBモード画像
上では得ることの出来ない肝血管腫辺縁部の収縮期における特徴的な動きが確
認できたので報告する.今後変位断層法のリアルタイム画像化は十分可能であ
ると考えられ,変位断層法とBモード画像を総合することで,新しい肝血管腫
診断法,及び幅広い臨床診断への応用が期待できる.
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循環器 (11:30-12:00)      座長 東北厚生年金病院 仁田桂子 先生
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21-10 【症例報告】頚部内頚動脈解離の一例
平鹿総合病院検査科     瀬川ゆか,武石茂美,佐藤栄子
平鹿総合病院第二内科   伏見悦子
平鹿総合病院脳神経外科  伏見 進,米谷元裕
【内容梗概】症例は45歳の男性で右片麻痺と運動性失語症で発症した.CTで左
中大脳動脈領域に広範な低吸収域を認め,頚動脈エコーで左内頚動脈分岐直後
から内膜の長軸方向に断裂と血流の反転がみられ,正常の内腔は50%になって
いた.左内頚動脈撮影では頚部内頚動脈起始部の後壁を中心に軽度の不整像と
乱流が見られ,造影剤の停滞がみられた.安静時のSPECTでは全体に血流が低
下しており,Diamoxを負荷すると,弁蓋部と前頭葉を除いて予備能は保たれて
いた.以上の結果より,左頚部内頚動脈解離からのartery to arteryの脳塞栓
症と診断し,塞栓源除去のため発症2ヶ月後に内頚動脈剥離術を行った.術後
の脳血管撮影ではintimal flapは除去され壁不整が若干残るものの,エコー上
も乱流は消失した.術後ワーファリンは中止したが再発もなく経過順調である.
脳塞栓症の原因となった特発性頚部内頚動脈解離を頚動脈エコーにて診断した
一例を経験したので報告する.
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21-11【症例報告】重症心不全をきたしステロイドパルス療法を試行した
アレルギー性肉芽腫性血管炎の一例
平鹿総合病院検査科     丹波寛子,高橋久美子,佐藤栄子
平鹿総合病院第二内科   武田 智,伏見悦子,高橋俊明,関口展代,
                          渡辺 一,林 雅人
平鹿総合病院病理診断科  齋藤昌宏
【内容梗概】症例は19歳男性.1991年から気管支喘息,1999年7月右下肢脱力
出現し,東北大学神経内科にてアレルギー性血管炎と診断された.同院入院時
心不全症状はなかったが胸部レントゲン像で心拡大あり.ステロイド療法を施
行され,神経症状消失,心陰影も縮小した.その後,2000年3月上気道炎を契
機に心不全症状が出現し,当院に入院した.胸部レントゲン像では心胸郭比62
%,両側肺野には軽度のうっ血と胸水を認めた.心エコー検査では左室拡張期
径は74mmと著明に拡大し,左室収縮能はび漫性に低下,左室駆出率は20%であっ
た.冠動脈造影では左右ともに本幹には有意狭窄はなかったが,末梢には一部
壁不整あり,左前下行枝のごく末梢で途絶しており,血管炎の所見と思われた.
一般的な心不全の治療を施行したが心機能の改善なく,ステロイドパルス療法
を施行したところ,左室拡張期径60mm,左室駆出率36%と改善し,退院となっ
た.治療効果の判定に心エコー検査は非常に有用であった.
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21-12【症例報告】Acromegalic cardiomyopathyの一例
平鹿総合病院第二内科   伏見悦子,高橋俊明,関口展代,
                          渡辺 一,林 雅人
平鹿総合病院脳神経外科  福地正人,伏見 進,米谷元裕
平鹿総合病院病理診断科  齋藤昌宏
【内容梗概】症例は52歳女性,数年前から易疲労感あり.3年前の検診で心電
図異常を指摘され,近医にて肥大型心筋症として治療されていた.今回,尿潜
血の精査のため当院に紹介されたが,その特徴的な顔貌, 成長ホルモン値
125ng/ml(正常0.16-3.68)と著明な上昇,頭部MRIにて下垂体腺腫瘍があるこ
とから末端肥大症と診断された.術前精査のため心エコー検査を施行したが,
左室拡張期径57.2mmと軽度拡大,左室壁厚は約20mmとび漫性に肥厚し,心筋内
にはgranular sparklingを認めた.左室駆出率は59%と保たれていた.心臓カ
テーテル検査では冠動脈に有意な所見はなかったが,右心室心内膜下心筋生検
で心筋肥大を認め,以上よりacromegalic cardiomyopathyと診断した.2001年2
月5日下垂体腫瘍摘出術が施行された.今後心エコー検査にて心肥大の経過を
追う予定である.
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整形外科・産科 (13:00-13:55) 座長 福島県立医科大学 佐藤 章 先生
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21-13【症例報告】超音波カラードプラ法を行った骨軟部腫瘍の2症例
自衛隊仙台病院整形外科  川路幸仁,森本一秀
東北労災病院整形外科   小松哲郎,信田進吾,保坂正美,原 清吾
東北労災病院腹部超音波室 山下安夫
東北労災病院消化器科   林 仁守
【内容梗概】【目的】2例の骨軟部腫瘍に行った超音波カラードプラ法の有用
性を検討すること.【症例】症例1,16歳,男性.大腿骨の骨軟骨腫により膝
窩動静脈の循環障害をきたし,腫瘍摘出術を行った.術前のカラードプラ法で
膝窩動静脈の位置をマッピングした.パルスドプラ法で患側の膝窩動静脈の血
流速度の低下を認め,術後に改善を確認した.症例2,35歳,女性.ガングリ
オンにより足根管症候群をきたし,ガングリオン摘出術を行った.術前にカラー
ドプラ法で後脛骨動静脈の位置をマッピングした.【考察】超音波ドプラ法は,
無侵襲で頻回かつ簡易に施行できるため,術前の血管系のスクリーニングと術
後の血流速度の改善度を知るために有用であった.超音波検査で腫瘤と血管の
位置をマッピングすることにより,相互の解剖学的関係を確認することができ
た.
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21-14 染色体モザイクの出生前診断
国立仙台病院産婦人科   明城光三
【内容梗概】染色体モザイク2例の出生前診断について報告する.症例1は妊娠
12週初診時経腟超音波断層法で5.8mmのNuchal translucency (NT)を認めた例
であり,妊娠16週で羊水染色体検査を行い45XOと46XXのモザイクであった.胎
児の発育は正常で妊娠39週に3075g女児出生,新生児に形態異常はなかったが,
臍帯血染色体検査で45XOと46XXのモザイクであった.症例2は妊娠32週の妊婦
検診時に胎児腸管の拡張と蠕動を認め,更に妊娠34週には単一臍帯動脈,羊水
量の増加を認め入院,Finger- overlappingも認めたため羊水採取し染色体検
査を依頼した.妊娠37週に帝王切開で出生,2026g男児であった.羊水染色体
は出生後18trisomyモザイクと判明した.空腸閉塞のため出生当日手術(膜様
部の切除)施行,現在は外来通院している.症例1は出生前に診断されていた
ため出生後適切な経過観察が可能であり,症例2よりも早期の染色体異常の診
断が可能であった.
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21-15 胎児骨形成不全症II型の出生前診断
東北大学医学部産婦人科 芳賀 勇,島田勝子,木村芳孝,室月 淳,岡村州博
【内容梗概】骨形成不全症osteogenesis imperfectaは,I型コラーゲンの先天
的な合成分泌異常で,骨脆弱性,青色強膜,歯牙形成不全などを特徴とする疾
患である.その中で特にII 型は,子宮内で多発性骨折を起こすため,出生時
にすでに長幹骨の短縮変形,胸郭の低形成,膜状頭蓋骨を出生時に認め,最も
重症である.最近われわれは出生前に診断した骨形成不全症II型の2例を続け
て経験したので報告する.症例1は妊娠26週,症例2は妊娠34週のときに,大腿
骨の短縮のために当科に紹介された.大腿骨を初めとした長幹骨の多発性骨折
と変形,胸郭のベル型変形,超音波探触子の圧迫による胎児頭蓋骨の変形など
の特徴的所見を認め,上記の出生前診断となった.いずれも軽度の子宮内発育
遅延を認めたが,羊水量は正常であった.両例とも妊娠38週で帝王切開分娩と
なった.出生前診断および胎児管理におけるいくつかの問題点について報告す
る.
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21-16 妊娠20週未満の妊娠早期における胎児心拍変動とその周波数構造
東北大学医学部産婦人科  島田勝子
【内容梗概】【目的】現在,一般に使用されている分娩監視装置は妊娠20週ま
でが観測限度でありそれ以前の妊娠前期における胎児心拍変動の詳しい解析は
ほとんどなされていない.我々の目的は,妊娠前期における胎児心拍変動の詳
しい解析を行い,妊娠後期や成人の構造と比較検討することにある.【方法】
妊娠前期の心ドプラ信号が300Hzから2000Hzの周波数帯域を計測することによ
り安定した心拍間隔が計測できることを利用し,2.5MHz連続ドプラ信号を用い
て胎児心拍変動の連続計測を行った.また,得られた心拍変動に対しSpline4 
をmother waveletとするwavelet解析を行い,0.1Hzを中心とするクラスの振幅
変動分布を計算した.また,この振幅変動分布に関し適合検定を行い,その分
布形を信頼度(p=0.8)で推定した.【結果】胎児心拍の0.1Hzの周波数成分の
時間変化が今まで成人や胎児妊娠後期で知られていたγ分布だけで無く,1/
x型の分布を示すことを見い出した.
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特別講演 (13:55-15:25)  座長 東北大学加齢医学研究所 仁田新一 先生
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「3次元超音波の基礎と腹部・産婦人科領域における臨床応用」
東京大学大学院医学系研究科医用生体工学講座  馬場一憲先生
【内容梗概】
3次元超音波は3次元空間の情報を画像化するが,この画像化にはコンピュータ
処理による方法,リアルタイム超音波ビームトレーシング法,拡散音響レンズ
法の3つの方法がある.このうちコンピュータ処理を用いた方法が一般的であ
り,各種3次元像の表示,任意断面の表示,距離や体積などの計測など多彩な
機能を有する.リアルタイム超音波ビームトレーシング法は忙しい臨床現場で
も簡便に3次元像を得る事ができる.
 腹部・産婦人科領域においては,腹壁上から走査する経腹3次元超音波,腟
内で走査する経腟3次元超音波,細径プローブを用いた内視鏡的3次元超音波や
血管内3次元超音波が応用可能である.いづれにおいても,3次元像が得られる
というだけでなく,通常の断層法では得ることが困難な診断や計測に適した断
面を自由に得ることができるという点が評価されている.しかし,いくつかの
問題点も指摘されており,今後の技術開発が期待されている.
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「3次元超音波法−循環器領域における臨床応用」
東北大学加齢医学研究所病態計測制御研究分野  西條芳文先生
【内容梗概】  
 循環器領域における3次元超音波の応用は2種類に大別される.すなわち,リ
アルタイム3次元エコー法と再構築3次元エコー法である.リアルタイム法で
は碁盤の目のような振動子から超音波が1度に送受信されるため,1心拍でほ
ぼリアルタイムの左心室運動解析が可能である.一方,再構築法は心拍・呼吸
同期によりプローブを平行移動あるいは回転させながら多画像を取り込み,コ
ンピュータにて再構築する方法である.この方法では,画像収集時間やコンピュー
タ処理時間はかかるが,まるで心臓や血管の中に入り込んで観察したようなバー
チャルリアリティー画像が実現される.現在,心臓血管外科の手術中に,経食
道心エコー法の断面を2°ずつ回転させて画像を収集し,TOMTEC社製ソフトウェ
アを用いて3次元再構築を行っている.対象は,主として解離性大動脈瘤にお
ける大動脈弁で,3次元エコーにより大動脈弁逆流の成因が明らかにされてき
た.
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基礎 (15:35-16:20)  座長 秋田大学工学資源学部 井上 浩 先生
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21-17 超音波吸収による温度上昇の多点同時計測の試み
秋田大学工学資源学部   吉田史弘,中川原拓真,井上 浩
【内容梗概】  
 1MHzの超音波を照射したときに物質(5% 寒天生体ファントム)内に生じ
る温度上昇の過渡現象を,9本の微小熱電対を使って同時に温度分布を測定し
ようと試みた.
 まずハイドロホンを用いて超音波音場分布を測定した.その後,4cm立方の
寒天試料に超音波を照射し,ガラス管内に封入した先端60μmの微小熱電対を
用いて試料内音場分布を測定した.ハイドロホンの計測結果とは,熱電対を用
いた場合の方が若干半値幅の範囲が広がっていることが分かった.これは微小
熱電対が,超音波を照射する面から2mm程深い位置に置かれているため,その
間の熱拡散によって生じたものと考えられる.次に,9本の熱電対を超音波強
度最大の位置を中心に3cm間隔で配置し,6cm角の空間内の温度上昇を測定した.
その結果,超音波強度-35dB以下の部分でも5dB程度の超音波強度に相当する温
度上昇が確認でき,物質内の熱拡散を考慮すべきであるがことが確認された.
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21-18 弾性表面波を利用した骨の音速測定法に関する検討
東北文化学園大学科学技術学部      浅井 仁
【内容梗概】
 著者は,体外から骨に縦波超音波を斜めに入射して骨の表面に弾性表面波を
励振し,伝搬距離の関数として弾性表面波の位相を測定することにより音速を
測定し,骨の超音波診断を行う方法ならびにシステムについて研究を進めてい
る.伝搬距離を変化させる方法としてこれまでは,送受信1対のトランスジュー
サを骨の表面に対して垂直に移動していたため,実際の骨の測定の際に介在す
る軟組織による屈折の影響を考慮すると軟組織の音速を測定または仮定して補
正する必要があった.これに対し,伝搬距離を変化させる方法として,送受信の
トランスジューサの内,一方だけを骨の表面にそって移動させる方法をとれば,
屈折の角度に関係なくトランスジューサの移動距離に等しいだけ伝搬距離を変
化させることができる.本報告では,フェノール樹脂を模擬試料としてトラン
スジューサの水平移動によって受信信号の位相変化ならびに弾性表面波の音速
を測定した結果について述べる.
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21-19 Ho:YAGレーザーにより誘発される液体ジェットを用いた模擬血栓破砕実験
東北大学大学院工学研究科    小松 真
東北大学脳神経外科       平野孝幸
東北大学工学部         佐伯俊郎
国立仙台病院脳神経外科     上之原広司
東北大学大学院医学系研究科神経病態制御学分野  江面正幸,高橋 明
東北大学流体科学研究所     高山和喜
【内容梗概】
 脳塞栓は発症後6時間以内に迅速な処置を施行する必要があり、治療にはバ
ルーンカテーテルによる治療やレーザー照射による治療が行われている。これ
に関し、現在溶解剤の減量と処置の更なる高速化を目指した脳塞栓破砕方法の
開発に取り組んでいる。約5年前に微小爆薬により発生する衝撃波と静置気泡
の干渉により発生する液体ジェットを用いた血栓破砕方法が考案され、in
vitroでの良好な結果を得ている。これを発展させるため、我々はHolmium:YAG
(Ho:YAG)レーザーに注目した。このレーザーは2.1mmの波長を持ち、水の吸
収波長域1.9 mmに近いため、生体のような水分含有率の高い物質内での気泡を
容易に発生でき、Qスイッチを併用して衝撃波を発生できる。本研究では
Ho:YAGレーザーを水中に照射することにより誘起される気泡と 衝撃波の干渉
により液体ジェットを生成し、それを用いた模擬血栓破砕実験を行った。
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呼吸器・循環器 (16:20-17:50) 座長 東北厚生年金病院 菅原重生 先生
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21-20 経気管超音波内視鏡(TUS)における気道周囲血流表示法の試み
東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野 
                          高橋博人,小柳津毅,石田 格,相川広一,
             中村好宏,桜田 晃,佐藤雅美,佐川元保,
             谷田達男,近藤 丘
公立刈田病院呼吸器科        内山美寧
アロカ株式会社第一技術部システム二課    井川利之,馬木清隆
EndoSonic CO.             及川尚史,金沢 修
【内容梗概】  
【目的】我々は経気管超音波内視鏡(TUS)を開発し臨床応用してきたが,体
表エコーに比しドップラー等ソフト面の充実は遅れ,超音波による病変の機能
解析は進んでいない.今回超小型電子リニアスキャン,IVUS用電子スキャンカ
テーテルを用いて経気道的に気管支周囲血管の血流表示が可能か検討したので
報告する.【方法,結果】 BF-3C-40 の先端にアロカ社製電子リニアスキャン
UST-5531(周波数4.5MHz〜 12.5MHz,φ9mm)を装着し,気道内に誘導し気管
支壁にプローブを直接接着させ, Power Doppler Modeで周囲血管を観察した.
またEndoSonic社製IVUS In-Visionを用いて,気管支鏡の鉗子孔よりVisions
Five-64 F/Xを挿入,末梢気道に誘導し,経気管支的に拍動する肺動脈を
CHROMAFLOでオレンジ色に描出し,3-Dで,肺動脈の長軸像を観察し得た. 
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21-21 動脈硬化症診断における動脈壁弾性率計測の可能性の検討
東北大学大学院工学研究科  渡辺 優,石川貴行,長谷川英之,金井 浩
東北大学大学院医学系研究科 小岩喜郎
【内容梗概】
【目的】我々の開発した動脈壁弾性率計測法による早期診断の可能性を示す.
【方法】位相差トラッキング法により拍出に伴う動脈壁厚変化計測を行ない,
頸動脈壁弾性率計測を行なった.【実験】集団検診において一定の基準でハイ
リスクであった141名の頸動脈壁弾性率計測を行なった.(1)得られた頸動脈壁
の局所弾性率と年齢,血圧,リスクファクタなどとの相関を調べた.(2)また,
各被験者の頸動脈壁計測部位全体における局所弾性率のばらつきについても同
様に相関を調べた.【実験結果】(1)従来報告されている内中膜厚み(IMT)計測
値と年齢の相関係数(r=0.39)より,頸動脈壁の局所弾性率と年齢はr=0.48と強
い相関を示した.(2)局所弾性率のばらつきと年齢の相関係数はr=0.42であっ
た.【結論】早期の動脈硬化症は壁の肥厚よりも弾性率の硬化に表れると考え
られ,我々が開発した動脈壁弾性率計測法が,動脈硬化症の早期診断に対し有
用であると考えられる.
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21-22 超音波を用いて計測された動脈壁の弾性特性と病理組織との比較検討
東北大学大学院工学研究科  長谷川英之,金井 浩,星宮 望
東北大学大学院医学系研究科 小岩喜郎
JR仙台病院       市来正隆
国立仙台病院     手塚文明
平鹿総合病院第二内科     伏見悦子
【内容梗概】
【目的及び方法】心筋梗塞や脳硬塞などの循環器系疾患の発症の原因の一つと
して動脈硬化性プラークの破綻が問題となっている.筆者らは,位相差トラッ
キング法を用いて動脈硬化性プラークの弾性特性の空間分布を計測し,弾性的
な特性をプラークの安定性を判断するための一つの情報として用いることを目
的としている.【実験】摘出されたヒト腸骨動脈を水槽に固定し,人工心臓に
より拍動圧を印加することにより生じる壁のひずみを計測し,動脈壁の弾性率
の空間分布を計測した.弾性率を計測した部位の病理組織標本を作成し,病理
組織画像を解析することにより,動脈壁の硬化の指標として線維化部分の面積
比を算出した.【実験結果】本計測法により計測された動脈壁の弾性率と壁の
線維化部分の面積比との間には相関が見られた(r=0.37,p=0.0036).一方,超
音波のエコー強度と線維化部分の面積比の間には相関が見られなかった
(r=-0.09,p=0.49).【結論】本計測法は,従来のBモード断層像の輝度による
定性的な評価に比べより定量的に動脈壁の組織の変化を診断できることが示唆
される.
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21-23 血管内超音波検査術 (IVUS) における動脈壁弾性率断層像の描出
東北大学大学院工学研究科  三田仁士,金井 浩
東北大学大学院医学系研究科 小岩喜郎
JR仙台病院       市来正隆
国立仙台病院     手塚文明
【内容梗概】
【目的】血管内超音波検査術(Intravascular Ultrasonography; IVUS)により
動脈壁の弾性率断層像を描出し,動脈硬化症の定量的診断を目指す.【方法】
IVUSを用いて計測を行なう場合,IVUSプローブが脈波の伝搬等により動いてし
まう.そこで本報告では,動脈壁とIVUS間の相対的な位置を高精度に追跡しな
がら,壁厚変化と弾性率を計測するための手法を提案する.【実験】(1)均一
なシリコーンチューブに人工心臓によって拍動を起こす基礎実験において,弾
性率を計測し,弾性率断層像を描出した.(2)ヒトから摘出した腸骨動脈を用
いたit in vitro実験おいて,(1)と同様に得られた弾性率断層像と病理結
果の比較を行なった.【実験結果】(1)基礎実験において,ほぼ均一な弾性率
断層像を算出 (平均 2.7 MPa),内圧-外径試験より得た理論値 (2.4 MPa) と
ほぼ一致した.(2)it in vitro実験における摘出血管の弾性率断層像は,
その病理との比較により,正常な組織 0.5-2.0 MPa,血栓の部分 0.3 kPa以下,
線維化部分 2.5-5.0 MPa,となり病理の結果とほぼ対応していた.【結論】本
手法により動脈壁の弾性特性の評価ができ,動脈硬化症の診断に期待ができる.
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21-24 大動脈弁狭窄症による心臓壁上の異常振動成分の計測と周波数解析
東北大学大学院工学研究科  金井 浩
東北大学大学院医学系研究科 小岩喜郎,鎌田英一
【内容梗概】
【目的】我々は,拍動によって大きく動いている心臓壁上の振幅数十μm以下
の微小な振動を『位相差トラッキング法』により高精度に計測し,周波数解析
することによる,左心室心筋の局所伸縮特性の評価法の開発と応用を目指して
いる.【実験】本報告では,超音波ビームを長軸像の10方向に送信させること
により,左心室中隔壁における10方向超音波ビーム上の各層における運動速度
を同時に計測し,駆出期の振動波形を周波数解析した.【結果】中隔壁右室側
と左心室側のパワーに関して,10Hz以下の低周波成分は,健常者では差が大き
く,大動脈弁狭窄症の患者では差が小さかった.これは心臓壁の厚み変化の大
小と対応する.一方,20Hz以上の高周波成分では,大動脈弁狭窄症の患者での
異常振動に対応するパワーの上昇が認められた.【結論】本手法によって駆出
期の厚み変化に寄与する帯域の評価の他に,大動脈弁狭窄症の患者での心臓壁
上の異常振動成分の周波数帯域の評価が可能である.
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21-25 心筋からの超音波後方散乱の計測と解析
東北大学大学院工学研究科    勝又慎一,金井 浩
東北大学医学部第一内科      小岩喜郎,鎌田英一
東北大学医学部第三内科      斎藤淑子
東北文化学園大学医療福祉学部 本田英行
【内容梗概】
【目的】心筋からの超音波後方散乱(Integrated Backscatter: IB)は心筋の非
侵襲的かつ定量的な診断方法として注目されている.IBは拡張期に増大,収縮
期に減少する心周期変動を示すが,この心周期変動の原因についてはいまだ不
明な点が多い.本報告では,新しいIBの計測方法を提案し,家兎心筋からのIB
を計測した結果を示す.また同時に,心臓壁の壁厚変化を計測し,IBと心臓壁
の運動機能の関係を評価する.【方法】IBの算出では各フレームごとに関心領
域を設定する必要がある.本研究グループで提案している位相差トラッキング
法を用いて,各フレームにおけるIB算出時の関心領域の位置をトラッキングす
る.これにより,計測した数拍分のデータの各フレームごとの関心領域を自動
で設定し,IBを算出することができる.【実験】家兎(ニホンハクショクカト)
をcontrol群,アドリアマイシン投与群に分け,アドリアマイシン投与群には
0.53mg/kg/dayのアドリアマイシンを週3回投与した.実験では,開胸した家兎
の心臓に直接超音波プローブを当て,心室中隔および左室後壁からのIB,また
それぞれの壁の壁厚変化の計測を行った.【実験結果】アドリアマイシン投与
群ではcontrol群に対して,IBの心周期変動量,壁厚変化量の減少がみられた.
【結論】上記の結果は,アドリアマイシンの投与による心筋の損傷を反映して
いると考えられる.このことから,本手法は,非侵襲的な心臓壁の運動機能の
評価につながると考えられる.
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閉会の挨拶                
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