日本超音波医学会 第22回東北地方会

プログラム・抄録集


 日   時 : 平成13年9月23日(日) 9時10分−16時00分
 場   所 : 艮陵会館 記念ホール 仙台市青葉区広瀬町3-3-4 (tel: 022-227-2721)
 大 会 長 : 東北労災病院 消化器科 林 仁守
 参 加 費 : 1,000 円
 地方会URL : http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
 連 絡 先 : 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 05 
                       東北大学大学院工学研究科 電子工学専攻内 
                       日本超音波医学会 第22回東北地方会事務局
                      tel: 022-217-7081,fax: 022-263-9444  
                       e-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp

講演者へのお願い:
 ・会場には,35mm slide projector, OHP, S-VHSのprojectorを用意します.
 ・演者は,発表予定時刻の15分前までにスライド受付を済ませてください.
 ・1題につき発表時間7分,討論時間8分の合計15分間です.
 ・スライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守してください.

開会の挨拶 (9:10-9:15)
大会長 東北労災病院  林 仁守先生







1 循環器I (9:15-10:30)

座長 東北大学加齢医学研究所  西條芳文先生

22- 1動脈壁の局所弾性率の2点同時計測システムの検討

    東北大学大学院工学研究科     芳賀大樹,渡辺 優,長谷川英之,金井 浩
    東北大学大学院医学系研究科   小岩喜郎

【目的】異なる被験者間でニトログリセリンに対する頸動脈壁の血管反応性を比較する場合,頸動脈の弾性特性や反応性は個体差が大きいため,異なる被験者間で比較する場合には個体差を考慮する必要がある.そこで,同一被験者内で計測点を2点取り,各点での血管反応性を比較することによって,個体差の影響を受けることなく血管反応性の評価ができる.
【方法】健常者の頸動脈壁上2点に超音波ビームを送信し,各ビーム毎の血管前後壁の厚み変化と弾性率を同時に計測する.計測時間はニトログリセリン投与前1分から,投与後4分までの計5分間である.計測された動脈壁の厚み変化やそれをもとに算出した弾性率から血管反応性を評価する.
【実験結果】本システムを用いて計測を行った結果,ニトログリセリンの投与により厚み変化の振幅が増大した.しかし健常者であるため,2点の血管反応性は同様の傾向を示した.
【結論】本システムを用いて健常な部位と動脈硬化病部位の血管反応性を比較することによって,個体差の影響を受けることなく血管反応性の評価を行えることが期待される.

22- 2 複素相互相関による頚動脈後壁の境界検出
    東北大学大学院工学研究科     長谷川英之,渡辺 優,砂川和宏,金井 浩
    東北大学大学院医学系研究科   小岩喜郎

【目的】本研究では,動脈壁からの反射波と血液からの散乱波の区別に有効と考えられる複素相互相関法に関する検討を行ない,その有用性を示してきた.これまで本研究では,変位に関する複素相互相関係数から境界検出を行ってきた.一方,375μmの層ごとの厚み変化の深さ方向の分布を検討したところ,内腔と動脈壁ではその振幅に大きな差があることが明らかとなった.したがって,厚み変化に関する複素相互相関係数がより有効である可能性がある.そこで本報告では両者の比較を行った.
【方法】ヒト頚動脈にパルス状の超音波を送信し,R波のタイミングでの深さdからの反射波信号の位相検波出力と血流が発生するタイミングでの位相検波出力の間の複素相互相関係数を深さ方向に0.77μmの局所ごとに算出し,動脈壁の境界検出を試みた.
【実験】(1)変位に関する複素相互相関係数と,(2)厚み変化に関する複素相互相関係数を算出した.【実験結果】変位に関する複素相互相関係数においては,動脈壁と内腔に明確な差が見られない場合があるが,厚み変化に関して算出することにより,動脈壁と内腔の差がより明瞭となった.
【結論】内腔の厚み変化と壁の厚み変化が大きく異なるため,変位に関する情報に比べ弁別に有効であると考えられる.

22- 3 動脈壁弾性率断層像による動脈硬化症早期診断法の検討
    東北大学大学院工学研究科       渡辺 優,長谷川英之,金井 浩
         東北大学大学院医学系研究科     小岩喜郎,鎌田英一,千葉賢治
         東北文化学園大学医療福祉学部    本田英行
    東芝メディカル株式会社         井上恭子
    株式会社 日立メディコ          上田若菜

【目的】我々の開発した動脈壁弾性率計測法による動脈硬化症の早期診断の可能性を示す.
【方法】位相差トラッキング法により拍出に伴う動脈壁厚変化計測を行ない,頸動脈壁弾性率分布計測を行なった.
【実験】集団検診において一定の基準でハイリスクであった32名の頸動脈壁弾性率計測を1年間隔で2回行なった.(1)得られた頸動脈壁の局所弾性率と各リスクファクターの経年変化の相関を調べた.(2)また,各被験者の頸動脈壁を内層,中層,外層と動脈壁を3層に分け,計測部位内における各層毎の局所弾性率のばらつきを調べた.
【実験結果】(1)頸動脈壁の局所弾性率の平均値の経年変化とリスクファクターの経年変化は r=0.46 と強い相関を示した.(2)計測部位内の動脈壁全体で弾性率のばらつきを算出するよりも,強い傾向を示した.
【結論】我々が開発した動脈壁弾性率計測法を継続的に適用することで,より早期の動脈硬化症の診断が可能であると考えられる.

22- 4 動脈壁振動の厚み方向の伝搬の計測と解析
    東北大学大学院工学研究科     砂川和宏,金井 浩
    東北大学大学院医学系研究科   小岩喜郎
    (財)結核予防会宮城県支部     田中元直

我々は,動脈壁振動を高精度に計測する『位相差トラッキング法』を用いて,血圧・血流変化が動脈壁振動に与える影響について評価を行ってきた.本報告では,400μmの分解能で動脈壁の各層について微小振動を計測し,周波数解析することによって,血圧・血流変化によって発生する動脈壁振動の,動脈の内膜から外膜への伝搬特性を評価した結果を示す.動脈壁振動は,直流〜数百Hzの振動成分があり,周波数により動脈壁の伝搬特性に変化があることがわかった.

22- 5 肺癌を合併した肺動静脈瘻例の3D-TUS像
    仙台厚生病院外科          高橋博人,渋谷丈太郎,新井川弘道
    公立刈田総合病院呼吸器科   内山美寧
    仙台厚生病院外科          保坂智子,芦野有悟,鈴木 聡,半田政志

【症例】70歳,女性
【主訴】胸部異常影
【既往歴】昭和56年,肺動静脈瘻指摘
【現病歴】平成13年4月入所時検診で異常影指摘され,肺癌疑いで当科紹介入院となる.気管支鏡施行.右B2aの擦過でclass,TBLBで扁平上皮癌の診断.同時に右肺癌に対し通常の経気管超音波内視鏡(TUS)を施行し,また左B8,B9より3D-TUSプローブを挿入し,肺動静脈瘻を3次元的に超音波像として観察した.超音波上肺動静脈瘻は正常肺動脈の3倍拡張し拍動していた.瘻内に血栓は認められなかった.



2 消化器I(10:45-11:30)

座長 宮城県立がんセンター  鈴木雅貴先生

22- 6無症状十二指腸乳頭部癌の1例

    仙台社会保険病院内科           寺沢良夫
    仙台社会保険病院検査部超音波室   広田むつ子,須藤誠二,野村禎子,鈴木とよみ, 斉藤和栄

十二指腸乳頭部癌が,USで診断できるとすれば,有効な検査法となる.今回USで無症状十二指腸乳頭部癌と診断したが,4か月経過観察後手術で確定診断した1例を報告する.
【症例】75才.主訴 下痢.当院内科初診時USで,十二指腸乳頭部癌,CT・MRI・十二指腸内視鏡で,腫瘍検出不能.2回目のCT・内視鏡で腫瘍検出され,4か月後の手術日でも,無症状であった.CT・MRI・内視鏡等の精査に,USが劣らないことも少なくなく,無症状の十二指腸乳頭部癌も,USで診断可能であると考えられた.

22- 7 急性虫垂炎の診断と治療〜超音波検査に要する時間の検討をまじえて〜
    会津若松市竹田綜合病院外科   田辺真彦

急性虫垂炎は外科医にとって,急性腹症の診断から手術基本手技を身につけるいわば「入門」疾患として認識されている.一方,虫垂炎の超音波診断を身につけるには,それなりの時間と努力を必要とするものと思われる.超音波検査および手術を施行した30症例について,超音波所見,手術所見,合併症に加え,超音波検査に要した時間とその診断の確実性についてまとめたので,若干の文献的考察を加え報告する.

22- 8 脾サルコイドーシスの1例
    宮城県立がんセンター消化器科   浅野直子,小野寺博義,鵜飼克明,鈴木雅貴,畑中 恒
    宮城県立がんセンター外科       大内清昭,角川陽一郎
    宮城県立がんセンター病理       立野紘雄

腹部超音波検査で脾臓の低エコー結節として発見された脾サルコイドーシスの1例を経験した.症例は68歳,女性.健診にて肝胆道系酵素の上昇を認め,近医での腹部超音波検査,腹部CTで脾腫瘍を指摘され当科紹介された.血液検査所見ではAST,ALT,γGTPの軽度上昇を認め,腹部超音波所見で脾臓に長径35mmと30mmの低エコー腫瘍を2個認めた.腫瘍辺縁は比較的明瞭で内部エコーは不整であった.単純CTで腫瘍は明瞭に描出されなかったが,造影CTの早期相で低濃度結節を認めた.血管造影ではhypovascular tumorであった.悪性リンパ腫などの脾原発性悪性腫瘍を否定できないため,脾臓摘出術を施行した.病理組織学的には非乾酪性肉芽腫の所見でサルコイドーシスと診断された.臨床例として脾サルコイドーシスに遭遇することは稀であり,文献的考察を加え報告する.

 

3 基礎(11:30-12:00)

座長 東京工業大学精密工学研究所  大槻茂雄先生

22- 9 ラジオ波焼灼療法(RFA)の基礎的検討

    東北労災病院腹部超音波室   山下安夫,色川 信,管野悦子,桜庭 勝
    東北労災病院消化器科       小笠原鉄郎,林 仁守
    アロカ(株)              鹿籠典夫

【はじめに】肝癌の局所治療において,最近ではラジオ波焼灼療法(RFA)が主流となりつつある.我々は既に100例経験してきた.今回我々は,RFAの基礎的検討を行った.
【材料と方法】1)水層実験 卵白を35℃恒温水層中のプラスチック容器に入れ,RFA装置(RITA500PA)を用い,卵白の変性を経時的に観察した.2)ブタ屍体肝実験 ブタ肝に生体と同条件で通電.さらに純エタノール(EtOH)0.5mlを通電直前にハンドピースの側孔より注入した後,通電し,組織学的に検討した.
【結果】1)通電1分で針先に綿帽子のように卵白が変性.2分で針全体に卵白が付着.12分で切り餅のように3cm四方,厚み2.5cmの四角形に付着した.2)通電範囲に,組織変性が観察された.EtOH前処置はより高度な変性が認められた.
【考察】本実験は,即,生体での反応と同様でないことは言うまでもないが,焼灼のイメージを与えられた.EtOH前処置は効果を増強させることが示唆された.

22-10 温度上昇計測のための音場の一シミュレーション
    秋田大学工学資源学部   吉田史弘,井上 浩

超音波照射によって生じる物質内の温度上昇は,生体への影響であるとともに,媒質の性質を表しているので,重要な計測項目である.しかし,実験の再現性に乏しいことと,媒質の材料定数や超音波の強度などの多くのパラメータがどのように影響するので,詳細な音場内のシミュレーションによる解析が必要であるが,ほとんど行われていない.そこで,FDTD法(Finite Difference Time Domain method)を用いた水中内の音場解析を試みた.本報告は手始めとして,2次元解析により,x方向の中心軸分布と中心軸内の超音波強度の最大位置で切り出したy軸分布とについて,実験値と計算結果とを正規化して比較した.中心軸分布については分布形状はよく似た形になったものの,最大位置は20mmほどずれたものとなった.また,y軸分布に関しては切り出した位置が異なるので単純な比較はできないが,-3dB領域まではよく一致した.今後,3次元化を行うことにより,生体内温度上昇シミュレーションに利用出来る.

 
 

4 循環器U(13:15-14:30)

座長 東北大学大学院医学系研究科  小岩喜郎先生

22-11僧帽弁置換術後に発生した特異な形態を示す左房内血栓の一例

    秋田大学医学部第二内科   泉 学,鬼平 聡,津谷裕之,千葉啓克,斎藤 崇,三浦 傅
    秋田大学心臓血管外科    加賀谷聡,松川 誠,石橋和幸,山本浩史,山本文雄

【症例】症例は75才女性.昭和57年に僧帽弁置換術を施行される.心房細動もあり,平成6年徐脈性心房細動にてペースメーカー植え込み術を施行される.その後もワーファリンにて抗凝固療法を行われていた.平成13年2月,急性腸炎にて近医入院.心胸郭比の拡大から心エコーが行われた.その結果心房内腫瘍が疑われ当院心臓血管外科紹介となった.心エコー上明らかな二層構造を示す球状の50.6×49.1mmの巨大な腫瘤が左房内に認められた.その後数回のエコーでの観察の際に腫瘤の回転が見られたことと,胸部CTにて前医でのものと比較した場合,位置が変わっていることから浮遊血栓が疑われた.手術の結果,割面でもやはり二層構造をもつ球状の血栓が摘出された.同時に左房壁の切除を施行され,現在では独歩で外来通院が可能となるまでに改善している.特異な構造をもつ左房内血栓を認めたため報告する.

22-12拡張型心筋症・虚血性心筋症における僧帽弁・三尖弁動態の解析
    秋田大学医学部第二内科    泉 学,鬼平 聡,津谷裕之,和泉千香子,渡邊博之,藤原慶正,千葉啓克,斎藤 崇,三浦 傅
    市立秋田総合病院循環器科   中川正康

【目的】拡張型心筋症(DCM)・虚血性心筋症(ICM)において僧帽弁・三尖弁開放時間にずれを生じる場合があり,その原因解析を試みた.
【対象・方法】DCM,ICM45例を対象に,QRS開始〜僧帽弁開放時間(M時間),QRS開始〜三尖弁開放時間(T時間)をパルスドプラ法で計測,連続5心拍の平均からT時間−M時間(T−M時間)を求め,NYHA分類,血中ANP・BNP濃度,右心系圧データとそれぞれ対比した.
【結果】T−M時間はNYHA分類(rs=0.56),ANP(r=0.46),BNP濃度(r=0.58)と正相関した.また,T−M時間は肺動脈収縮・拡張期圧,肺動脈楔入圧(PCWP)と正相関(r=0.58〜0.68)を示し,PCWP−右房圧較差とも良好な正相関をみた(r=0.67).
【結語】DCM,ICMでは心不全の重症化に従い三尖弁開放が僧帽弁開放より遅延し,その時間差は左心不全重症度に相関した.

22-13 当院における感染性心内膜炎の現況
    平鹿総合病院第二内科     伏見悦子,高橋俊明,関口展代,林 雅人
    平鹿総合病院心臓血管外科   相田弘明
    平鹿総合病院脳神経外科    福地正仁,伏見 進,米谷元裕

【目的】当院の感染性心内膜炎(IE)の症例の,経過との関係が深い因子を明らかにする.
【方法】過去3年間のIE18症例の感染源,基礎疾患,起因菌,疣贅の大きさなどをまとめて,転帰との関係を検討する.【結果】初発症状では発熱の他,くも膜下出血,脳塞栓などの脳神経症状が5例と多かった.疣贅の付着部位は大動脈弁,僧帽弁が13例で,ペースメーカーリードや人工弁は5例であった.起因菌は5例が黄色ブドウ球菌でグラム陰性桿菌が3例であった.MRSAが起因菌の症例は予後が悪く,疣贅の大きさが15mmと大きい症例も予後は悪かった.う歯,抜歯が原因の症例は7例と多かった.
【総括】特に基礎疾患のある症例では,う歯の治療は非常に重要である.また早期に診断して治療を開始することが本疾患の転帰を変える方法と 思われた.

22-14 心室中隔壁内の複数点の振動の同時計測と解析
    東北大学工学部              上野仁美
    東北大学大学院工学研究科     金井 浩,砂川和宏
    東北大学大学院医学系研究科   小岩喜郎

我々は,心臓壁上の振幅数十μm以下の微小な運動を『位相差トラッキング法』により高精度に計測し,時間・周波数解析することにより,左心室心筋の局所伸縮特性を評価してきた.本報告では, 上記手法により計測した速度波形から心室中隔壁の右室側から左室側までの3点において,一心周期中の駆出期,急速流入期,緩徐流入期,心房収縮期における運動速度波形の周波数解析を行った結果を示す.心室中隔壁振動は直流〜数百Hzの振動成分があり,これら振動成分が,一心周期中において周波数ごとに変化があることがわかった.

22-15 心臓壁からの超音波後方散乱信号の短周期変動成分の計測
    東北大学大学院工学研究科     勝又慎一,金井 浩
    東北文化学園大学医療福祉学部   本田英行
    東北大学大学院医学系研究科    小岩喜郎
    (財)結核予防会宮城県支部     田中元直

【目的】心臓壁からの超音波後方散乱(Integrated Backscatter: IB)は,心臓の拍動に同期した周期変動(Cyclic Variation: CV)を示すことが知られているが,この心周期変動の原因については不明な点が多い.また,従来のIBに関する研究ではCV値にのみ注目したものが多く,1心周期内でのIB信号の細かい時間変動の詳細な検討は行われていない.本報告では,ヒト心臓壁からの超音波後方散乱を高い時間分解能で計測した結果を示す.【方法・実験】IBの算出では各フレームごとに関心領域を設定する必要がある.本研究グループで提案している位相差トラッキング法を用いて,各時刻における関心領域の位置を追跡する.これにより,心臓壁の同一部位からのIB信号が計測可能となる.本手法を用いて,健常者において,心室中隔壁および左室後壁からのIBを計測を行った.
【結果】心臓壁からのIB信号は数〜数十msの短い周期の変動を示した.また,変動周期は心周期内の時相により異なり,特に心臓壁の壁厚変化の大きい時相では約5〜15msというきわめて短い周期の変動を示した.
【結論】計測されたIB信号の短周期変動は,心臓壁の壁厚変化による心臓壁内の散乱体間隔が変化し,散乱波同士の干渉により後方散乱波の強度が変化するために生じると考えられる.



5 消化器U(14:45-16:00)

座長 東北労災病院 小笠原鉄郎先生

22-16 EUS下カラードプラ検査法が有用であった肝外門脈閉塞症の1例

    宮城県立がんセンター消化器科   鈴木雅貴,小野寺博義,畑中 恒,鵜飼克明,浅野直子

 
今回我々は肝外門脈閉塞症に伴ったcavernous transformation of the portal vein(CTPV)に対しEUS下カラードプラ(CD)検査法を施行し若干の知見を得たので報告する.使用機種は体外式超音波診断装置はアロカ社製SSD-5500 3.5MHz,EUSはオリンパス社製JF-UM200 7.5MHz,CD-EUSは同社製GFUC240Pを使用した.
【症例】43才女性.「US」膵頭部にmultilocular cystic esionを認め肝門部まで連続していた.CDでは求肝性の血流が観察された.「EUS」同lesionは一部では胆管を圧排していた.門脈本幹は同定できなかった.CDではカラーシグナルは単純な求肝性ではなく屈曲蛇行,モザイクパターンを呈していた.「ERCP」膵胆管合流異常症と胆管への外圧排像を認めた.【考案】CTPVには体外式CDの所見でlineal typeとstorm typeに分けるとする報告があるが,EUS下CDを用いるとlineal typeでも本例のようにstorm typeの像を呈する場合があり注意が必要である.

22-17 US上右肝動脈浸潤を伴う肝門部胆管癌と診断された一例
    宮城県立がんセンター消化器科   畑中 恒,鈴木雅貴,小野寺博義,鵜飼克明, 浅野直子

【症例】76才男性
【現病歴】2001年6月26日より発熱,黄疸が出現し閉塞性黄疸の精査加療目的に6月29日当科紹介入院となった.
【画像所見】腹部US(アロカ社製SSD-5500 3.5MHz):肝内胆管の拡張,総肝管から上部総胆管に低エコー腫瘤があり右肝動脈への浸潤を認めた.腹部CT:上部総胆管に腫瘤を認め右肝動脈への浸潤が疑われた.IDUS(機種アロカ社製SSD-550 20MHz):総胆管内走査では総肝管から上部総胆管にかけて充実性の腫瘤像を認め外側高エコー層の断裂と右肝動脈への浸潤像を認めた.腹部血管造影検査:右肝動脈に明らかなencasementを認めなかった.
【考案】非手術例であり組織学的に右肝動脈への浸潤が確認されてはいないがUS,CT,IDUSで右肝動脈への浸潤を認めた肝門部胆管癌の一例を経験した,USでも注意深い観察により胆管癌の右肝動脈浸潤の診断が可能であると考えられた.

22-18 特異な画像所見を呈した肝内胆管癌および大腸癌との重複癌の一例
    弘前大学第一内科   田辺素子,安達淳治,澤村典子,伊東重豪,坂本十一,須藤俊之,棟方昭博
    弘前大学第二外科   鳴海俊治,佐々木睦男
    弘前大学第二病理   須藤晃司

【症例】:61歳,男性.主訴:食欲不振.既往歴:平成3年から糖尿病.現病歴:平成12年12月食欲不振が出現し前医を受診.US,MRCPにて左肝内胆管の拡張を認め精査のため平成13年1月当科を紹介され2月に入院した.入院時検査成績:胆道系酵素を主体とした肝機能障害あり,CA19-9 482U/ml, CEA 5.4ng/ml,ウイルスマーカーは異常なし.USでは左門脈臍部周囲に4×2.5cm大の高エコー域を認め,その末梢の肝内胆管の軽度拡張が見られた.ERCPでは胆管結石の他にB4の分枝が造影されなかった.入院中に黄疸が出現したためPTCDを施行し,胆汁の細胞診はClass Vであった.術前検査中にS状結腸に径3cmの腫瘍を認めたため当院第二外科に転科した.肝左葉切除術およびS状結腸切除術を施行したところ,病理学的検索では肝は上皮の異型性を伴った硬化性胆管炎の所見で,結腸は深達度ssの高分化型腺癌であった.

22-19 EUS上嚢胞性膵腫瘍との鑑別が困難であったbenign lymphoepithelial cyst の1例
    宮城県立がんセンター消化器科   鈴木雅貴,小野寺博義,畑中 恒,鵜飼克明, 浅野直子

今回我々は嚢胞性膵腫瘍との鑑別が困難であったbenign lymphoepithelial cyst の1例を経験したので報告する.USはアロカ社製SSD-5500 3.5MHz,EUSはオリンパス社製JF-UM200 7.5MHzを使用した.
【症例】48才男性.「US」膵頭部と門脈,下大静脈に挟まれた部位にmultilocular cystic lesionを認めた.「EUS」同lesionは膵頭部と連続して観察されhoney comb様部分も認められた.一部の嚢胞壁は著明に肥厚していた.「ERCP」下頭枝の分枝も含め異常を認めなかった.壁肥厚が著明であることからmucinous cystadenomaやserous cystadenocarcinoma等を考え手術を施行した.
【病理所見】cyst壁はリンパ節の構造が見られ内面は重層扁平上皮でliningされていた.
【考案】成因としてはanomalyの観点からは説明困難であり,lymph node inclusion theoryで考えるべきと考えられた.

22-20 EUS-FNAが診断に有用であった膵扁平上皮癌と考えられた一例
    宮城県立がんセンター消化器科   畑中 恒,鈴木雅貴,小野寺博義,鵜飼克明, 浅野直子

【はじめに】EUS-FNAを施行し膵扁平上皮癌と考えられた一例を報告する.
【症例】49才男性
【既往歴】35才:舌癌で放射線加療
【現病歴】2001年1月4日膵腫瘍の精査加療目的で当科紹介入院となった.
【画像所見】腹部US(アロカ社製SSD-5500 3.5MHz):膵頭体部に中心に嚢胞性変化を伴う境界明瞭な低エコー腫瘤を認めた.EUS(オリンパス社製GF-UM200 12MHz):膵頭体部に辺縁不整,境界明瞭な低エコー腫瘤で中心部は嚢胞状を呈していた.
【入院後経過】EUS-FNA(オリンパス社製GFUCT-240)を施行したところsquamous cell carcinomaであった.開腹手術を行うも切除不能で試験開腹となったが,術中組織診でもSCCであった.
【考案】今回の症例では膵腺扁平上皮癌の可能性も否定できないが,EUS-FNAは膵腫瘍の組織診断,及び治療方針の決定に有用であった.