日本超音波医学会 東北地方会
第33回学術集会 プログラム・抄録集

日 時: 平成19年3月11日(日)8時55分〜18時00分
場 所: 艮陵会館 記念ホール
  仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
大会長: 東北公済病院  千葉 裕
参加費: 1,000円
地方会URL: http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連絡先: 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第33回学術集会事務局
  TEL: 022-795-7081,FAX: 022-263-9444
  E-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp
 
なお,会場までのアクセス方法につきましては地方会URLで御紹介しております.

講演者へのお願い

・一般演題は,1題につき発表時間8分,討論時間5分の合計13分間です.
 症例報告は,1題につき発表時間6分,討論時間4分の合計10分間です.
・発表方法は原則としてすべて会場PC使用で,Power Pointのみとなります.
・会場には,PowerPoint2003が使用できる画面サイズ1024×768のWindowsコンピュータそのprojectorを用意します.
・演者は,発表予定時刻の1時間前までに受付を済ませて下さい.
・Power Pointのスライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守して下さい.
 
発行日:平成19年2月28日






日本超音波医学会東北地方会
第11回東北地方会講習会

第11回東北地方会講習会(第33回学術集会併設)を下記の要項で開催いたします.御出席いただいた超音波専門医,超音波工学フェロー,超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.

開催日時: 平成19年3月11日(日) 13:00〜15:00
会  場: 艮陵会館   仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
講演題目: 13:00〜13:40    座長 東北公済病院 千葉 裕
「初学者のための腹部カラードプラ診断のポイント」
講師 杏林大学第三内科  森 秀明 先生
  13:40〜14:20    座長 東北大学加齢医学研究所 西條芳文
「3D Echo 買ってはみたが、一体何に使うのか?」
講師 東京大学検査部  竹中 克 先生
  14:20〜15:00    座長 棚橋よしかつ+泌尿器科 棚橋善克
「甲状腺のエラストグラフィー」
講師 福島県立医大第二外科  鈴木眞一 先生
参 加 費: 1,000円 (学術集会参加費とは別途徴収いたします.)
弁当販売: 日曜日のため会場周辺は営業しているレストラン・食堂が限られますので,ご希望の
  の方にはお弁当を販売いたします.価格は1 個1,000 円(講習会参加費とは別),事
  前申込のみの受付で,当日受付は致しません.予めご了承ください
 
講習会問い合わせ先
〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第33回学術集会事務局
  斎藤 ゆう
  TEL:022-795-7081, FAX:022-263-9444,
  E-mail:jsum@ecei.tohoku.ac.jp
  地方会ホームページ:http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
なお,日本超音波医学会第34回東北地方会学術集会・第12回講習会は,平成19年9月30日(日)艮陵会館(仙台市)にて開催予定です.


      
開会の挨拶 (8:55-9:00) 大会長 東北公済病院  千葉 裕
 
1 循環器T (9:00-9:53) 座長 東北労災病院  小笠原 鉄郎
 
33-1 (9:00-9:10) 【症例報告】
  僧帽弁置換術を施行した肥大型心筋症の一例
  今津 友見1, 菅原 重生1, 三引 義明1, 片平 美明1, 三浦  誠2, 中島 博行3, 吉田 梨絵3, 黒川 貴史3, 四ノ宮祐記3, 熊谷 明広3
  1 東北厚生年金病院 循環器科, 2 東北厚生年金病院 心臓血管外科, 3 東北厚生年金病院中央検査部
症例は60歳代女性.主訴は労作時胸苦感.平成13年検診で心電図異常を指摘され当院初診,エコー上心室中隔の軽度肥厚および軽度MRを認め,経過観察とされていた.平成17年10月再び心電図異常を指摘され近医より紹介受診.エコーにて85 mmHgのLV内圧較差,SAM,V度のMRを認め,HOCMの診断で平成18年1月心臓カテーテル検査施行,LV内圧較差100 mmHg,MRV度を認めた.β-blocker,シベンゾリン内服等にて薬物治療を開始,3月に一時LV圧較差は20 mmHgまで低下したが,4月には再び100 mmHg以上となり,薬物治療ではコントロール困難と考え9月僧帽弁置換術を施行した.術後経過は良好で,現在はLV内圧較差を認めず外来にて経過観察中である.
 
33-2 (9:10-9:20) 【症例報告】
  血栓との鑑別が困難であった右房粘液腫の一例
  中川 正康1, 藤原 敏弥1, 小林希予志2, 阿部  仁2, 渡辺 智美2, 藤原理左子3, 倉光 智之4, 鬼平  聡5, 伊藤  宏6
  1 市立秋田総合病院 循環器科, 2 市立秋田総合病院 超音波センタ− , 3 秋田県立脳血管研究センタ− 循環器科, 4 くらみつ内科クリニック 内科, 5 きびら内科クリニック 循環器科, 6 秋田大学医学部 内科学講座循環器内科学分野
症例は60歳代女性.主訴は労作時胸苦感.平成13年検診で心電図異常を指摘され当院初診,エコー上心室中隔の軽度肥厚および軽度MRを認め,経過観察とされていた.平成17年10月再び心電図異常を指摘され近医より紹介受診.エコーにて85 mmHgのLV内圧較差,SAM,V度のMRを認め,HOCMの診断で平成18年1月心臓カテーテル検査施行,LV内圧較差100 mmHg,MR V度を認めた.β-blocker,シベンゾリン内服等にて薬物治療を開始,3月に一時LV圧較差は20 mmHgまで低下したが,4月には再び100 mmHg以上となり,薬物治療ではコントロール困難と考え9月僧帽弁置換術を施行した.術後経過は良好で,現在はLV内圧較差を認めず外来にて経過観察中である.
 
33-3 (9:20-9:30)【症例報告】
  右心房内に突然ひも状血栓様エコーが出現し,消失する過程を偶然記録しえた一例
  菅原 修一1, 吉田 律子2, 佐々木 由美子3
  1 医療法人正和会南秋田整形外科 臨床検査科, 2 医療法人正和会南秋田整形外科 臨床検査科, 3 小玉医院 臨床検査科
〔症例〕93歳 男性〔主訴〕食欲低下 全身倦怠感〔使用機種〕UF-8800(フクダ社製)〔現病歴〕当院関連老人施設に入所中数日前より徐々に食欲低下と全身倦怠感出現,平成18年7月5日検査加療目的で入院.平成18年7月14日心電図モニター上ST上昇,トロポニンT弱(+)AMI疑いでUCG施行する.検査中突然ひも状血栓様エコーが右心房内に出現し,直ちに消失する画像が見られた.肺動脈に流出したものと考えられたが呼吸苦,胸痛,血圧低下等は見られず,引き続き下肢静脈を含めたエコー検査を行ったが,塞栓源となりうるはっきりした血栓様エコーはとらえられなっかた.長期の臥床,ひも状という形状より深部静脈血栓が遊離,流出したものと思われた.〔結語〕今回我々は,右心房内に突然ひも状血栓様エコーが出現し,消失した一例を経験したので報告する.
 
33-4 (9:30-9:40) 【症例報告】
  脳塞栓症を発症した拡張型心筋症の一症例
  泉 学1, 藤原理佐子1, 小野 幸彦1, 熊谷冨美子2
  1 秋田県立脳血管研究センター 循環器科, 2 秋田県立脳血管研究センター 臨床検査科
症例は57歳男性.拡張型心筋症(EF 0.13)に伴ううっ血性心不全にて近医に入院中であった.ホルターで27拍の非持続性心室頻拍を認めていた.7月25日午前中の回診中にベットから崩れ落ちるのを発見され脳梗塞疑いで当センターに紹介入院となった.入院時の心エコーでは,明らかな血栓を認めなかったが,MRAで右中大脳動脈が途絶しており,心原性塞栓症と診断し,エダラボンとヘパリンによる治療を開始した.しかし,第10病日に左心室乳頭筋レベルの下壁に5.2 mm×6.0 mmの可動性の血栓を認めた.頭部CTで脳塞栓症が出血性になっており,意識状態も悪化していた為,治療に難渋し塞栓症及び心不全のコントロールが出来ず,死去された.心筋梗塞後や拡張型心筋症などの壁運動異常を伴う症例において左心室内の血栓の報告があるが,心尖部が多いとされる.今回我々は,救命できなったが,貴重な症例を経験したので報告する.
図.左室乳頭筋付近に揺れ動く血栓を認める。
 
33-5 (9:40-9:53) 【一般演題】
  3D-UCGによる左房容量解析の妥当性
  篠崎  毅1, 三上 秀光2, 尾上 紀子1, 田中 光昭1, 馬場 恵夫1, 谷川 俊了1, 伊藤真理子2, 手塚 文明2
  1 仙台医療センター 循環器科, 2 仙台医療センター 臨床検査科
【目的】左房容積は診断,治療,予後判定のために重要な指標であるが,その正確な臨床的評価方法は未だ確立していない.本研究の目的は3D-UCG による定量的左房容積解析の妥当性を検証することである.【方法と対象】9症例に対して,フリップス社製IE-33とQ-LAB解析システムを用いて左房容積(3DUCG-LA)を計測した.同時に施行した16列multidetector CTよる左房画像を用いて,Simpson法による左房容積(Simpson-LA)を算出し,両者を比較検討した.【成績】3DUCG-LAは75±17 mlであり,Simpson-LAは67±20 mlであった.両者間にr=0.90(p<0.005)の良好な相関を認めた.【結論】3D-UCGは定量的な左房容積の評価のために有用である.
 
2 基礎T (9:53-10:32) 座長 東北大学  梅村 晋一郎
 
33-6 (9:53-10:06) 【一般演題】
  ナノバブルと超音波を用いたシスプラチン導入による抗腫瘍効果の検討
  小玉 哲也1, 青井あつ子1,2, 渡邊夕紀子1, 松村 保広4, 森  士朗3
  1 東北大学 先進医工学研究機構, 2 東北大学 大学院歯学研究科, 3 東北大学病院, 4 国立がんセンター 東病院
シスプラチン(CDDP)は白金錯体に分類される抗がん剤で,様々な悪性腫瘍において治療効果が認められており,現在のがん化学療法を支えている薬剤のひとつである.しかしながら,近年,様々な基礎疾患を有する高齢者のがん患者が急増しており,CDDPの腎,肝,骨髄機能等への副作用のため,CDDPの使用が制限される症例も急増している.これら副作用の軽減には,組織標的性の高い分子導入法が有効である.超音波造影剤( ナノ・マイクロバブル)と超音波を使用した分子導入法は非侵襲性と組織標的性に優れており,特にがん治療においては化学療法と併用できる利点がある.本研究では,細胞実験,動物実験において本分子導入法によるCDDPの導入実験をおこない,有効な治療効果が観察されたので報告する.
 
33-7 (10:06 10:19) 【一般演題】
  超音波ドラッグデリバリーシステムにおける分子導入機構
  越山顕一朗1, 小玉 哲也2, 矢野  猛1, 藤川 重雄1
  1 北海道大学 大学院工学研究科機械宇宙工学専攻, 2 東北大学 先進医工学研究機構
超音波と超音波造影剤(マイクロ気泡)を利用した分子導入法はソノポレーションと呼ばれ,非侵襲的な分子導入法としての医療応用が期待されている.しかし,ソノポレーションは分子の導入効率が悪く,手法を最適化するために,まず,詳細な分子導入メカニズムを明らかにする必要がある.我々は,これまで,気泡の崩壊に伴って発生する衝撃波がその分子導入に関わることを示してきた.本発表においては,その衝撃波が細胞膜に作用することで膜構造が変化して膜を貫く孔(水孔)が形成し,その水孔を分子が通過することを分子動力学シミュレーションで調べた結果を報告する.
 
33-8 (10:19-10:32) 【一般演題】
  インパルス性超音波のレボビスト透過特性の測定( その2 )
  井上  浩1, 佐藤 武輝1, 三浦 一樹2
  1 秋田大学 工学資源学部, 2 秋田赤十字病院 呼吸器科
近年,超音波診断の分野において超音波造影剤が注目を集めており,これを用いた新しい診断手法の開発が盛んに進められている.造影剤と超音波に関する研究は,連続波に近い狭帯域の超音波パルスが主で,インパルス性超音波を用いた例はあまり報告されていない.そこで,基礎研究としてインパルス性超音波による微小気泡の透過伝搬計測から,透過散乱波の音響特性測定を行った.Levovistの濃度300 mg/mlの懸濁液1 mlを生理食塩水2 mlで希釈した溶液を試料とし,これを脱気水中に設置した厚さ1.5 mmの容器に注入した後,容器前後に設置した振動子によりインパルス性超音波を送受波し,透過波形の観測を行った.透過波形に歪が生じ,その変化を周波数領域で見ると高い周波数成分が上昇した.試料のばらつき等があるが数回行った結果,その傾向は変わらず,インパルス性超音波と造影剤の関連性を推定できること示唆された.
 
3 基礎U (10:42-12:00) 座長 秋田大学  井上 浩
東北大学  小玉 哲也
 
33-9 (10:42-10:55) 【一般演題】
  動脈壁の位置変化の相殺によるひずみ推定精度の向上
  長谷川英之, 金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
我々は,動脈硬化症診断のための動脈壁ひずみ・弾性率の超音波計測法を開発している.変位・ひずみの推定には超音波パルスの位相偏移と中心周波数の情報が必要であるが,複数の散乱体が存在する場合には,散乱波はお互いに干渉し,中心周波数が見掛け上変化する.この場合,生じる誤差は超音波パルスの位相偏移の大きさ,つまり対象物変位の大きさに比例する.動脈壁の場合,血圧変化による厚さの変化(ひずみ)は位置変化の10分の1以下であるため,本来推定したい厚み変化と,位置変化成分により発生する誤差が同程度になる場合が生じ得る.そこで,壁の位置変化の相殺,および中心周波数の推定を組み合わせた手法を開発した.模擬血管を用いて実験したところ,位置変化を相殺しない場合(図(a),誤差29.5%)に比べ,開発した手法で計測したひずみ分布(図(b))の誤差(9.7%)は大幅に低減されることが分かった.
図.模擬血管壁のひずみ分布の推定結果.(a) 従来法.(b) 提案法.
 
33-10 (10:55-11:08) 【一般演題】
  弾性率分布を用いた動脈壁組織分類における関心領域サイズの検討
  都築健太郎1, 長谷川英之1, 金井  浩1, 市来 正隆2, 手塚 文明3
  1 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻, 2JR 仙台病院 血管外科センター, 3 仙台医療センター 臨床検査科
【目的】本研究グループでは,動脈壁の局所弾性率の計測による組織性状の診断を目指している.これまでの研究により脂質,血栓,線維組織,石灰化組織,それぞれの弾性率分布(弾性ライブラリ)が得られている.しかし,組織間で弾性率分布の重なりがあるため,弾性率に単純に閾値を設けて分類することは困難である.【方法】単一画素ではなく,ある程度の大きさの微小領域内の画素群の弾性率分布に関して尤度(同時確率)を評価することで組織分類を行った.【結果(関心領域)】単位画素(75 μm×300 μm)で分類を行った場合,組織識別率は29.7%であったが,微小領域を考慮してサイズを大きくしていった場合には識別率が上昇し,微小領域の大きさが1,500 μm×1,500 μmのときに最大値35.1%となった.また,これ以上サイズを大きくすると識別率は低下した.本手法により, これまで行えなかった超音波計測による動脈壁の組織性状診断が期待できる.
図.腸骨動脈.(a) 病理染色画像.(b) 弾性率断層像.
(c) 分類画像(関心領域サイズ:75 μm×300 μm).組織識別率=29.7%.
(d) 分類画像(関心領域サイズ:1,500 μm×1,500 μm).組織識別率=35.1%.
 
33-11 (11:08-11:21)【一般演題】
  上腕動脈と橈骨動脈での内皮依存性血管弛緩反応による内中膜領域の弾性率変化の超音波計測
  金子 琢哉, 長谷川英之, 金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
【目的・方法】早期動脈硬化症診断を目指し,内皮依存性血管弛緩反応に注目する.反応性充血期における上腕動脈と橈骨動脈の内直径変化を計測し内直径最大増加率(%FMD)を算出する.本報告では,客観的かつ再現性ある計測のための動脈壁境界検出法を開発し,本研究グループで開発された位相差トラッキング法を用いて,拍動に伴う内中膜領域の厚み変化を推定し,円周方向弾性率を算出する.弾性率最大減少率および%FMDから,上腕動脈および橈骨動脈計測における内皮機能評価の可能性を検討する.【結果】上腕動脈および橈骨動脈とも,従来法である%FMDよりも本手法による弾性率最大減少率の方が大きかった. また,上腕動脈よりも橈骨動脈の方が,両手法ともより高い評価値を示した.以上のことから,本手法による橈骨動脈の内皮依存性血管弛緩反応計測は内皮機能評価として有用であると考えられる.
図.安静時と反応性充血時における健常男性の橈骨動脈内中膜領域の弾性率変化(黒線)
と内直径変化(赤線).
 
33-12 (11:21-11:34) 【一般演題】
  超音波RF信号の周波数スペクトルを用いた心臓の壁領域の同定
  衣川 尚臣, 長谷川英之, 金井 浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
【目的】主観によらずBモード断層像内の心臓壁領域と心内腔領域を弁別することを目的とし,超音波RF信号を周波数領域で解析することにより,両領域からの反射・散乱波の相違について解析,考察を行う.【方法】複数フレームにおける心室中隔壁と左右心室内腔からの超音波RF信号にフーリエ変換を施し,周波数スペクトルの時間変化を解析する.このとき,それぞれの深さ方向の切り出し窓が常に同じ対象からの反射・散乱波を解析できるように位相差トラッキング法を用いて窓位置を対象の動きに追従させる.【結果】心臓壁領域では同一対象物を追跡できるので,スペクトルの時間軸方向のコヒーレンス(周波数ごとの相関性)が高くなる.一方,心内腔領域では超音波の散乱体である血球は超音波ビームの焦域内にとどまらないため,コヒーレンスは低くなる.両領域の差異を見出せたことで,周波数スペクトルを用いた領域同定の可能性が示すことができた.
図.心臓の各深さにおける反射・散乱波の複素スペクトルの周波数毎の時間軸方向の相関性を
評価する,隣り合うフレーム間の振幅二乗コヒーレンス関数.
 
33-13 (11:34-11:47) 【一般演題】
  陳旧性心筋梗塞部位におけるストレインレート分布の高時間分解能計測
  吉新 寛樹1, 長谷川英之1, 金井  浩1, 渡辺さち子2, 西條 芳文3, 田中 元直4
  1 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻, 2 東北大学病院 診療技術部検査部門, 3 東北大学加齢医学研究所, 4 東北厚生年金病院
【目的】我々は心臓壁内ストレインレートを約2 msの高時間分解能で計測することで収縮開始の過程を描出した.本報告では,心電図R波前後の収縮の遷移過程に関して陳旧性心筋梗塞の病変部位と健常部位を比較する.【方法】心電図R波前後のタイミングにおいて.走査したビーム上に設定した心臓壁内の多点に位相差トラッキング法[H. Kanai, et al ., IEEE Trans. UFFC, 43, 791(1996)]を適用し,心筋ストレインレートの空間分布を算出した.得られた結果をBモード像上にカラーコードで表示し,約2 ms毎のストレインレート空間分布を観察した.この処理を陳旧性心筋梗塞患者(LAD#6)の心尖部四腔断面図に適用した.【結果】心筋梗塞部位は健常部位と比較してストレインレートの値が小さく時間的な変化も少なかった.これは,梗塞部位における心機能低下を反映していると考えられる.
図.陳旧性心筋梗塞患者(LAD#6)の心尖部四腔断面図における
心電図R波前後の約2 ms毎のストレインレート空間分布.
 
33-14 (11:47-12:00) 【一般演題】
  心電Q波における心筋の興奮伝搬の計測
  金井  浩1, 西條 芳文2, 田中 元直3
  1 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻, 2 東北大学 加齢医学研究所, 3 東北厚生年金病院
【緒言】我々は,心臓の大動脈弁閉鎖に伴って発生する心II音のタイミングに,心臓壁上に数十Hzの振動が発生し,横波となって心臓壁上を伝搬することを,超音波を用いた胸壁上からの計測で,新しく見出した(IEEE UFFC-51 (2005) 1931-1942).これは,従来の縦波の反射・散乱特性の映像化とは異なり,横波成分に関する心筋特性の評価であり,心筋組織の構造的な変化をより鋭敏に計測できる可能性を持つ.【方法】位相差トラッキング法においてビーム送信を十数方向に限定し,各ビームに沿って設定された約2,000点での運動速度を同時に計測.その振動の周波数解析を行って位相に関する断層像を生成.この像を約2 ms間隔で並べ,心筋上をパルス状振動が伝搬する様子を確認した.【結果】健常者で心電Q波からR波の時間に,心室中隔壁を心尖から心基部へ1-2 m/sで伝搬する波面を見い出した.これは,心筋を伝導する活動電位に伴う振動と考えられる.【結言】心筋梗塞による心筋の虚血部分・障害部分・壊死部分は,各々活動電位の脱分極・再分極の様子が異なるため,この波動伝搬は,心筋の粘弾性とは別に,心筋の興奮伝導の空間的評価や心筋の障害の程度の診断に利用できる可能性がある.【謝辞】実験にご協力頂いた東北大学 長谷川英之氏,渡辺さち子氏,アロカ郡山営業所 若松立也氏に感謝する.
図.Spatial distributions of color-coded phase value from apical view for 32 Hz
component for a healthy subject. The spatial distributions are shown consecutively
from 20 ms prior to the time (TR) of R-wave of electrocardiogram to 2 ms after TR.
 
4 腹部 (15:10-16:13) 座長 東北厚生年金病院  阿部 眞秀
 
33-15 (15:10-15:20) 【症例報告】
  グルコバイによる門脈ガスの1例
  渡部多佳子1, 石田 秀明1, 小松田智也1, 八木澤 仁1, 石井  透1, 大野 秀雄1, 勝浦 由美2, 後藤  尚2
  1 秋田赤十字病院 超音波センター, 2 秋田赤十字病院 内科
はじめに: 今回我々は,糖尿病治療薬により門脈ガスが生じたと思われた1例を報告する.診断装置: 東芝社製; Aplio.症例[56歳男性]: 長年の糖尿病で近医でグルコバイ(α-glucosidase阻害剤)による投薬治療中.数日前から発熱と咳有り.気管支炎を疑われ当院紹介.点滴で軽快.ルーチン検査として施行した腹部超音波検査で,上腸間膜静脈から門脈本幹を中心に,多数の微小点状エコーあり.FFT法で,振幅が強く機械的なドプラ音を呈し,典型的な門脈ガスの像であった.腹部に他の異常所見はなく,腸管気腫の所見も見られなかった.念のため,グルコバイをオイグルコン(SU剤)に変更し,5日後再検.門脈ガスは消失していた.考察: 最近,糖尿病治療薬(α-glucosidase阻害剤)による門脈ガスの報告が散見される.多くの場合,腸管気腫症も合併し,腹部膨満,腹痛,などを認める有症状例であり,今回のような無症状例で門脈ガスが検出された例の報告は極めてまれである.今後,α-glucosidase阻害剤服用例の診療上,門脈ガスの存在は留意すべきと思われる.
 
33-16 (15:20-15:30) 【症例報告】
  経過観察中に発見された膵管内乳頭粘液性腫瘍由来浸潤癌の1例
  石川 洋子1, 渡邊  誠2, 千葉 春枝3, 太田  恵3, 小林  剛4, 長谷川康弘5, 杉田 }兒6, 渡辺 みか7, 村上 晶彦8, 佐々木康夫9
  1 松園第二病院 消化器科, 2 松園第二病院 放射線科, 3 松園第二病院 臨牀検査室, 4 仙台市医療センター仙台オープン病院 消化器内科, 5 仙台市医療センター仙台オープン病院 消化器外科, 6 仙台市医療センター仙台オープン病院 放射線科, 7 仙台市医療センター仙台オープン病院 病理, 8 岩手県立中央病院 内視鏡科, 9 岩手県立中央病院 放射線科
症例は76才,男性.既往歴: 30才高血圧.43才糖尿病.65才前立腺癌.主訴: 体重減少2kg/6M.現病歴: H.5.11.より糖尿病,高血圧で当科通院中.H.12.12. 膵嚢胞.H.15.11. USで膵頭部に多発性嚢胞性病変を認め, 岩手県立中央病院へ紹介,IPMT(分枝型)と診断され経過観察.H.16.5.USおよびIDUSで嚢胞内に壁在結節3 mmが描出され,H.18.2. USで体部の連なる嚢胞の背側に低エコー腫瘤を認め同院で精査,IPMNとして経過観察.H.18.7. CA19-9 157と上昇,仙台オープン病院へ紹介.各種画像診断所見特にMRIで膵体尾部に拡散強調像で高信号が認められ,IPMN由来の膵癌と診断されH.18.9.25手術,膵尾部に径4 cmの腫瘤を触知し膵体尾部切除+脾摘を行った.病理組織学的には腺管状構造をとり浸潤性に増殖する粘液含有淡明円柱細胞よりなる腫瘍を認めInvasive carcinoma derived from intraductal tumor,(sci, INFγ, ly1, v1, ne1, mpd(+), pS(+), pRP(+), pN0, pPCM(-), pDPM(-))と診断された.
 
33-17 (15:30-15:43)【一般演題】
   Contrast USでみられたraindrops signについて
  大山 葉子1, 紺野 純子1, 吉田千穂子1, 星野 孝男2, 渡部 博之2, 石田 秀明3, 花岡 明彦4, 小島 若菜4, 杉山 隆司4, 小松田智也3
  1 秋田組合総合病院 臨床検査部, 2 秋田組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター, 4 日立メディカル製作所
はじめに: 2007年1月から新世代超音波造影剤Sonazoid(第一製薬)が市販され,従来のLevovist造影所見に比し,特に後期相で肝実質の安定した染まりが期待される.しかし今後Sonazoid造影超音波検査(以下本検査)の問題点も生じてくる.今回我々は,本検査中見られた肝実質内の"造影むら"について検討し報告する.使用装置: 日立社製EUB-6500方法: Sonazoid 1バイヤルを注射用水2 ccで融解,体重別規定量を約1秒で肘静脈から注入,MI値0.2の低音圧で約5分持続観察した.結果: 正常肝では注入後,肝動脈,門脈,次いで肝全体がほぼ均一に染まり持続した.しかし高度肝硬変例では肝表面から深部に向かう多数の帯状の"造影むら"が出現した.まとめ: この帯状のむらは,B-モード所見での"Raindrops sign"と類似している事から,Contrast US-raindrops signと呼べる現象である.これは肝表面の凹凸によりビームの収束と拡散が生じるためと考えられ,高度肝硬変例において留意が必要と思われる.
 
33-18 (15:43-15:53) 【症例報告】
   多発肝転移と鑑別を要したヘモクロマトーシス合併多発肝膿瘍の1例
  草野 昌男, 横山 顕礼, 越田 真介, 島田 憲宏, 山際 哲也, 小島 敏明, 池谷 伸一, 中山 晴夫, 須貝 吉樹, 樋渡 信夫
  いわき市立総合磐城共立病院 消化器科
【症例】83歳,女性【主訴】発熱,右季肋部痛【既往歴】68歳時に胃癌手術【現病歴】平成18年9月24日より食欲低下,29日より38℃の発熱あり近医を受診し腹部USを施行.肝内に多発する低エコー腫瘤が認められ,転移性肝癌を疑われ当院に紹介され入院.【検査所見】白血球18100/μl,CRP 9.33 mg/dl,肝胆道系酵素の上昇,SPan-1 45 U/ml,SCC 1.6 ng/ml,CYFRA 2.5 ng/mlと上昇.【画像検査】USでは,肝両葉に後方エコーの増強を伴うcystic lesionが多発.CTでは,cystに矛盾しない所見.MRIでは,リング状に造影され,嚢胞状腫瘤を疑わせる所見.胃癌の転移または嚢胞状肝転移が鑑別となった.背景肝の信号が低く鉄沈着が疑われた.第18病日には,中心cystic,周囲低エコーに変化していた.腫瘤生検の結果は肝膿瘍,背景肝はヘモクロマトーシスであった.肝に多発するcystic lesionでは,嚢胞,膿瘍,腫瘍の鑑別が必要であり,示唆に富む1例と考え報告する.
 
33-19 (15:53-16:03) 【症例報告】
  外側音響陰影,Haloを示した肝血管腫例
  伊藤 恵子1, 高橋  豊1, 五十嵐 潔2, 石田 秀明3, 小松田智也3, 八木澤 仁3, 渡部多佳子4
  1 仙北組合総合病院 臨床検査科, 2 仙北組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 消化器科, 4 秋田赤十字病院 生理検査室
【はじめに】外側音響陰影(lateral shadowing)やHaloは通常,悪性腫瘍の超音波所見とされている.今回我々はこれらの所見を呈した肝血管腫例を経験したので若干の考察を加え報告する.【使用機種】東芝社製Xario【症例】59歳男性.検診の一環としてうけた腹部超音波検査で,肝右葉に数cm大の円形高エコー腫瘍を多数認めた.肝のエコー輝度は若干高く,肝実質パターンは正常で,腫瘍は内部エコー不均一で,外側音響陰影と明瞭なHaloを伴っていた.後方エコー増強効果も認めた.肝機能正常,腫瘍マーカー陰性.CTでfill-in,血管造影でcotton-wool様染まりあり.多発性肝血管腫と診断.【考察】低頻度だが,肝血管腫が外側音響陰影やHaloを示すことがある.以前はCTなど他の画像診断を加え最終診断をすることが多かったが,今後はすぐに造影超音波を施行し,診断上のtime lagをなくすることが重要と思われる.なお,脂肪肝を伴う場合,通常の場合と肝腫瘍の超音波所見(表原形)が変化することも理解しておくべきである.
 
33-20 (16:03-16:13) 【症例報告】
  興味ある超音波所見を示した肝悪性リンパ腫の一例
  大山 葉子1, 紺野 純子1, 吉田千穂子1, 工藤奈緒子1, 星野 孝男2, 渡部 博之2, 横山 治夫2, 佐々木俊樹1, 石田 秀明3, 小松田智也3
  1 秋田組合総合病院 臨床検査部, 2 秋田組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター
はじめに: 悪性リンパ腫(malignant lymphoma, 以下ML)の結節巣を肝内に認める事は比較的稀であり,他疾患による結節との鑑別が問題となる.今回我々は,肝に多発結節巣を示した1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.使用装置: 日立EUB-6500 症例[83M]: 右下腹部痛を主訴に当院受診.腹部超音波検査で,肝両葉に1 cm前後の円形無エコー巣を多数認めた.病巣は,ほぼ無エコーで境界は明瞭だがその反射エコーは弱かった.側方陰影は欠くが後方音響増強は明瞭に認められた.ドプラ上内部に血流信号はなく,肝実質及び門脈血流は正常であった.右下腹部にはmultiple centric signを示す腸管肥厚を認めた.大腸内視鏡で回盲部に腫瘤を認め,生検にてMLと診断された.考察: ML巣は,無(低)エコーで後方音響増強を伴い,嚢胞に類似すると報告されてきた.本例も同様であったが,嚢胞に比し腫瘤境界の反射が顕著ではなく,両者の鑑別にはこの点が重要と思われた.
 
5 泌尿器・産婦人科・整形外科(16:13-17:02) 座長 仙台赤十字病院  谷川原 真吾
 
33-21 (16:13-16:26) 【一般演題】
  腎盂癌のUS診断
  寺沢 良夫1, 広田むつ子2, 須藤 誠二2, 野村 禎子2, 野村 幸宏2, 鈴木とよみ2
  1 仙台社会保険病院 内科, 2 仙台社会保険病院 超音波検査室
【はじめに】腎盂癌がUSで検出できるとすれば,その簡便性から大変有効な検査法となりえる.そこで,当院において手術で確定診断がついた腎盂癌130人について,症状,血尿の有無,腎盂癌と診断した診療科及びUSによる検出率について検討した.【結果】1,腎盂癌 130人. 2, 肉眼的血尿 有り: 93人(72%) 無し: 37人(28%). 3, 尿細胞診(2人未施行)陽性: 85人(66%) 陰性: 43人(34%). 4,USスクリーニングで検出した診療科(63人,48%)  腎内科: 14人,検診: 5人,内科: 2人,外科: 2人,循環器科: 1人,泌尿器科初診時のUS診断例: 39人で,初診USスクリーニング診断例は48%. 5,腎盂癌のUS検出率: 92%(1984年8月〜2006年5月).【考察】腎盂癌の検出には,尿細胞診,DIP, CTに加え,USが最もよい検査法の1つと考えられた.
 
33-22 (16:26-16:39) 【一般演題】
   尿管癌のUS診断
  寺沢 良夫1, 広田むつ子2, 須藤 誠二2, 野村 禎子2, 野村 幸宏2, 鈴木とよみ2
  1 仙台社会保険病院 内科, 2 仙台社会保険病院 超音波検査室
【はじめに】尿管癌がUSで検出できるとすれば,その簡便性から大変有効な検査法となりえる.そこで当院で手術により確定診断がついた尿管癌94人について,症状,血尿の有無,尿管癌と診断した診療科及びUSによる検出率について検討した.【結果】1,尿管癌手術例: 94人. 2,肉眼的血尿 有り: 63人(67%),無し: 31人(33%). 3,尿細胞診(6人未施行)陽性: 61人(69%),陰性: 27人(31%). 4,USスクリーニングで検出した診療科(32人,34%) 検診: 2人,腎内科: 3人,内科: 1人,泌尿器科初診時のUS診断例: 26人. 5,尿管癌のUS検出率: 83%(78/94,1989年4月〜2006年5月)【考察】尿管癌の検出には,尿細胞診,DIP,CTに加え,USが最もよい6検査法の1つに加えるべきと考えられた.
 
33-23 (16:39-16:49) 【症例報告】
  妊娠16週で発症した胎盤早期剥離の1例
  谷川原真吾, 齋藤 美帆, 林  千賀, 中里 浩樹, 武山 陽一, 萬代 泰男, 千葉 裕二
  仙台赤十字病院 産婦人科
常位胎盤早期剥離は妊娠中あるいは分娩経過中,児の娩出前に胎盤が剥離するもので,胎児ジストレス,子宮内胎児死亡,母体のショックやDICなどを起こす可能性のある重篤な産科合併症の一つである.その頻度は全分娩の0.4〜1.5%程度とされ,一般に妊娠20週以降に発症するとされている.今回我々は妊娠16週で性器出血と急激な腹痛で発症し,DICのため子宮全摘を余儀なくされた症例を経験した.本症例の臨床像は常位胎盤早期剥離と一致し,その診断には超音波断層法が非常に有用であったので,若干の文献的考察を加えて報告する.
図.入院時超音波像
 
33-24 (16:49-17:02) 【一般演題】
  当院における超音波検査と今後の可能性
  吉田 律子1, 菅原 修一1, 佐々木 由美子2
  1 南秋田整形外科 臨床検査科, 2 小玉医院 臨床検査科
【はじめに】近年超音波検査(以下US)は高周波プローブの普及による分解能の向上に伴い,簡便性と安全性をいかし整形領域での使用例の報告が増えている.そこで今回我々は当院におけるUS検査と今後の可能性について報告する.【対象と方法】平成11年10月から平成18年12月までの381件を対象とした.使用装置はフクダ社製UF-8800を使用した.【結果】検査部位は心臓154件,腹部94件,体表133件であった.【考察】当科特有の筋,腱,表在軟部腫瘍はさほど多くなく主に術前評価における心臓,腹部検査を施行.今後の可能性として@筋,腱,軟部腫瘍,靱帯,神経等の検査Aリアルタイム性をいかしたリハビリ時の訓練評価.B携帯型装置を用いた院外での検査等に有用と思われた.【まとめ】当院におけるUS検査の実態について報告した.今後整形外科領域におけるUS検査は有用な検査となり得ると考えた.併せて整形領域の症例を提示する.
 
6 循環器U (17:02-17:55) 座長 福島県立医科大学  高野 真澄
 
33-25 (17:02-17:15) 【一般演題】
  くも膜下出血症例における左室壁運動所見と心電図,神経ホルモンの検討
  藤原理佐子1, 泉 学1, 小野 幸彦1, 鬼平  聡2, 伊藤  宏3
  1 秋田県立脳血管研究センター 内科・循環器科, 2 きびら内科クリニック 循環器科, 3 秋田大学医学部内科学講座 循環器内科学分野, 呼吸器内科学分野
【目的】当院にくも膜下出血を発症し入院した症例において,入院時の経胸壁心エコーでの左室壁運動低下所見の有無と交感神経系ホルモン,HANP,BNP,心電図QTc値との関連を検討した.【結果】22例(男性8名,女性14名,平均年齢63.4±10.3歳)において,3例に左室壁運動低下所見があり,瀰漫性に低下した2例,後下壁低下1例であった.心駆出率は壁運動低下例で有意に低かった(p=0.002).神経ホルモンは入院時から2〜3日目までの比較でアドレナリンが壁運動低下が無い例で有意に高かった(p=0.02).ノルアドレナリン,ドーパミン,レニン,HANP,BNPは有意差はないものの壁運動低下例で高い傾向にあった.またQTcは有意差は認めなかった.【結論】くも膜下出血発症時に心機能低下,左室壁運動低下を呈する症例においては増加したカテコールアミン等交感神経ホルモンの何らかの関連が示唆された.
 
33-26 (17:15-17:25) 【症例報告】
  特異なエコー像を呈した結核性心膜炎の一例
  小林希予志1, 中川 正康2, 藤原 敏弥2, 阿部  仁1, 渡辺 智美1, 藤原理佐子3, 倉光 智之4, 鬼平  聡5, 臼井美貴子6, 伊藤  宏6
  1 市立秋田総合病院 超音波センター, 2 市立秋田総合病院 循環器科, 3 秋田県立脳血管研究センター 循環器科, 4 くらみつ内科, 5 きびら内科クリニック, 6 秋田大学 医学部内科学講座循環器内科学分野
症例は60歳代男性.うっ血性心不全にて前医1に入院.UCGにて心膜心筋炎と診断されたが,原因は不明であった.経過中に収縮性心膜炎の病態を呈したため,外科的処置も考慮され前医2へ紹介.胃液からヒト型結核菌が検出され結核性心膜炎と診断,結核病棟のある当院へ転院となった.転院時のUCGでは心膜の肥厚に加え,pericardial spaceに厚さ約2 cmの等エコーを認め,器質化しつつある心嚢液が疑われた.CTで同部は等吸収域に被われた低吸収域を呈していた.左室拡張障害を伴っており,外科的処置の時期を計りながら抗結核薬投与を開始した.入院2週間後のUCGで心嚢の等エコー領域は明らかに縮小したため,内科的治療で経過をみた.4ヵ月後にはほぼ心膜の肥厚のみとなった.心臓カテーテル検査では,右室圧のdip and plateauは残存するものの,臨床的には心不全は改善しており,外科的処置は行わなかった.
 
33-27 (17:25-17:35) 【症例報告】
  左房と交通を有する部分肺静脈還流異常症において,左右短絡により右心不全を来たした一例
  堀越 裕子1, 高野 真澄2, 佐久間信子1, 二瓶 陽子1, 国井 浩行2, 大杉  拓2, 及川 雅啓2, 小林  淳2,  大竹 秀樹2, 鈴木  均2
  1 福島県立医科大学附属病院検査部, 2 福島県立医科大学 第一内科
【症例】70才女性【主訴】顔面・下腿浮腫【現病歴】2003年5月頃より労作時息切れが出現していた.2006年4月初旬より顔面・下腿浮腫が出現し,精査加療目的に入院となる.【経過】胸部X-P上CTR 60%で軽度肺うっ血を認めた. 経胸壁心エコーにて右心系は拡大していたが,短絡血流を認めず.経食道心エコー検査にて左房から左上肺静脈へ流出する連続性血流が認めた.胸部造影CTにて左上肺静脈は垂直静脈と交通し,その後左房につながり,さらに垂直静脈は無名静脈を介して上大静脈に結合し,部分肺静脈還流異常症と診断された.心房中隔欠損症の合併は認めず,Qp/Qs 2.4であり,手術適応と考えられた.【考案】高齢にて発見された部分肺静脈灌流異常症において,加齢に伴う左心系コンプライアンスの低下が左房圧を上昇させ,左房から垂直静脈へ流出する連続性左右短絡が増加し,右心不全を引き起こしたという機序が考えられた
 
33-28 (17:35-17:45) 【症例報告】
  左室肥大を伴った球脊髄性筋萎縮症の一例
  柴田 宗一1, 石川 和浩2, 中島 一郎3
  1 宮城県立循環器・呼吸器病センター 循環器科, 2 宮城県立循環器・呼吸器病センター 臨床検査室, 3 東北大学病院 神経内科
【はじめに】球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は遺伝性下位運動ニューロン疾患である.四肢の筋力低下および筋萎縮,球麻痺を主症状とし,女性化乳房などアンドロゲン不全症などを合併する.X染色体長腕近位部に位置する,アンドロゲン受容体遺伝子第1エクソンにあるCAG リピート異常が本症の原因である.【症例】72才男性【病歴】2003年10月心電図異常にて心臓カテーテル検査を行い,左室造影にて心尖部型の左室肥大を認めている.2005年3月呼吸困難を訴え近医入院,症状改善せず心不全として当院へ転院となった.感染による気管支喘息の増悪と考えられ,感染コントロール後症状は軽減した.入院中は痰が出せず苦しいという訴えが多かった.退院後の外来で女性化乳房および近位筋の筋線維束攣縮を認め,神経内科を紹介し遺伝診断にて上記確定診断を得た.【心エコー】全周性の左室肥大を認める.左室流入血流はabnormal-relaxation patternである.
 
33-29 (17:45-17:55) 【症例報告】
  Translocation法による大動脈弁置換術を施行した感染性心内膜炎の一例
  吉田 梨絵1, 黒川 貴史1, 四ノ宮祐記1, 熊谷 明広1, 中島 博行1, 菅原 重生2, 三引 義明2, 山中 多聞2, 片平 美明2, 三浦  誠3
  1 東北厚生年金病院 中央検査部, 2 東北厚生年金病院 循環器科, 3 東北厚生年金病院 心臓血管外科
症例は40歳代男性,2004年1月中旬に発熱にて近医を受診し抗生剤投与を受けた.その後も発熱が続き2週間後に感染性心内膜炎,大動脈弁閉鎖不全にて入院,抗生剤投与が開始された.第5病日に右大腿動脈急性閉塞を発症し塞栓除去術,第7病日急性肺水腫にて人工呼吸開始,翌日ショック状態となり手術目的で当院紹介転院となった.経胸壁心エコーにて大動脈弁に疣贅あり,重症大動脈弁逆流,Dd65 mm, EF39%と左室収縮能の低下を認めた.同日,緊急大動脈弁人工弁置換術を施行したが,術後も心不全のコントロールがつかず,術後10日後の経胸壁心エコーにて遊離した人工弁周囲からの逆流,15日後には逆流の増大を認め,同日再手術となった.弁輪組織は破壊が高度で人工弁の縫着が困難と考えられtranslocation法による大動脈弁置換術を施行した.術後心不全はコントロールされ退院となった.
 
閉会のあいさつ (17:55-18:00) 東北地方会運営委員長 棚橋善克