「学」の代表として、東北大学 大学院工学研究科電気・通信工学専攻  佐藤 徳芳教授のご講演

講演テーマ:「次世代エネルギー源に関する課題」


  東北大学 大学院工学研究科電気・通信工学専攻 佐藤 徳芳教授

 
 プラズマは環境と関係している。今日は核融合と関連したエネルギー問題として考えて見る。我々の環境を少し大きいところ、磁気圏・宇宙空間で考える。タイムスケールと空間スケールを大きくする。地球磁場は双極子型磁場である。太陽風(太陽が放出する、主として陽子と電子から成るプラズマ流)というプラズマの流れがやってきて地球にあたり、太陽風による地球磁場が変形し磁気圏が形成されている。太陽から、電磁波、太陽宇宙線、高速陽子、太陽風が降り注ぐ。スピードの遅いのが太陽風である。太陽風と磁気圏が相合作用してできるが、オーロラ(極光)である。オーロラの電子の加速機構は未解明である。地球と太陽のインタラクションでできている発電機だがしくみはわからない。

 太陽エネルギーのもとは水素の燃焼、熱核融合反応である。水素が燃えて減りHeになる。生存期間150億年のうち、今は約50億年で、調子がよい時期である。制御熱核融合とは一言でいえば太陽をつくれないかという事である。

 人類にとって最も基本的な課題は、食料、環境、エネルギーである。膨大なエネルギーの単位Qを導入する。近い将来:全世界で1Q/年消費する。資源の埋蔵量は、石炭+石油+天然ガス=100Q。他のエネルギー源はない。原子力に頼らざるをえない。

 熱中性子炉は3Q、高速増殖炉は500Qである。海水中のU,Thは7X 10** 5 Q位に相当する。1Q/年として70万年である。しかし、放射性廃棄物が問題。

 核融合反応は原子核間の衝突である。核融合反応の例:重水素(D)と三重水素(T)が核融合してヘリウム(He)と中性子(n)に変わり、エネルギー17.6MeVを放出する。

 核融合炉はD−T反応である。Dは海水中、TはLiから人工生成する。Li資源は2000Q, 海水中のLiは4X10**7Qもある。1Q/年として4千万年である。D− D反応では海水中の0.015%がD であり、4X10**9Qである。1Q/年として40億年である。D−3He反応を考えると、3Heは月面、木星、土星に豊富に存在する。

 核融合の方式としては磁場閉じ込め方式と慣性閉じ込め方式がある。磁場閉じ込め方式には、環状型のトカマク、ステラレータ、開放端型のミラー、カスプがある。慣性閉じ込め方式には、レーザー、イオンビームがある。

 トカマクは、最も良い結果がでている。2次でプラズマ,1次に電流を流して、できた磁場で閉じ込める。長い期間かかり、T−T反応を実現した。

 自己点火条件を実現する炉が重要だが金がかかり過ぎる。、小振りなのをどこかに作ろう、とイータ熱核融合炉を日本に誘致する話が持ち上がっている。5000億円,周辺入れると、5,6倍かかる。那珂、青森県の六ヶ所、苫小牧が誘致の名乗りをあげている。国では、カナダ、仏。カナダと仏は原子力に神経質でない。日本はどうか。

 次世代エネルギー問題がますます重要になっている。産業・社会構造が変わらねばならない。先進国がこのままでも、中国、インドが先進国並になると、エネルギー消費量が増える。各国が生活スタイルも変わらねばならない。この問題に対して「原爆の論理」が出て来る可能性がある。持った国は権利がある、それ以外の国はダメよ、という論理。これが原因で紛争や戦争になるかもしれない。 科学技術より大事なものは何か。もっと大事なものがある。今エネルギーを使ってない人が使っても大丈夫なように、全体で総使用を減らすこと。とても厳しい話であるが。