研究室公開

OPEN LABORATORY

物理で切り拓く先端材料

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熱電材料が創るクリーンな未来

-温泉や体温の熱から電気を作る!-

宮﨑研究室

EXHIBIT

オープンキャンパスでの展示

温泉発電の模擬実験や体温で発電する実験をします。是非見に来て下さい!

 熱電材料を用いた熱電発電は、地球温暖化ガスを放出せず、振動や騒音もないクリーンな発電技術です。温泉・エンジン・人体などの熱源に熱電材料をくっつけると電気を取り出すことができます。私たちの目標は、結晶構造(材料を構成する原子や分子の配列の仕方)を制御して高性能の熱電材料を作り、クリーンな未来を実現することです。体験コースでは温泉発電の模擬実験や体温で発電する実験をします。環境に優しい熱電材料の研究成果も紹介していますので、是非見に来て下さい。

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環境にやさしい熱電材料の開発

 熱電材料の中のキャリア(電子やホール)の伝導を利用して、電気エネルギーと熱エネルギーを相互に変換することを熱電変換といいます。熱電材料で構成されている熱電デバイスを用いた熱電変換の原理を右の図に示します。電流を流すとキャリアが熱を運ぶため上の面が冷えます(ペルチェ効果)。逆に、素子の上下に温度差を与えると電流が流れます(ゼーベック効果)。これらの効果を利用すると、冷媒不要の電子冷却システムや、ガスを発生せず騒音・振動がない排熱利用発電システムを作ることができます。実際に、Bi2Te3半導体を用いた熱効率7%程度の電子冷蔵庫等が実用化されていますが、一般に普及するまでには至っていません。省エネルギー化とクリーンエネルギー社会の実現に向けて、 私たちは毒性を持たず安価な環境にやさしい熱電材料の開発を進めています。

シリコン化合物の結晶構造と熱電性能

 資源的に豊富な元素であるMn(クラーク数12位)とSi(同2位)から構成されるHigher Manganese Silicides (HMSs)は、比較的性能の高いp型の熱電材料です。無毒で低コストかつ1000 Kまで耐酸化性が良好という特徴を備えています。 
 HMSsの結晶構造はNowotny-chimeney-ladder型構造です。Siサイトが円を描くように大きく変位変調した複雑な構造で、これまでMn4Si7、Mn15Si26、Mn11Si17など様々な組成のHMSsが報告されていました。 私たちはこのHMSsを、[Mn]部分構造と[Si]部分構造から成る複合結晶で、(3+1)次元の超空間群(I41/amd(00γ)00ss)に属すると仮定することで、MnSiγ (γ~1.7)という形で包括的に取り扱うことができることを明らかにしました(右図参照)。ここで組成比γは[Mn]部分構造と[Si]の部分構造のc軸長比であり、元素置換や合成条件によって変化する無理数であらわされます。これにより元素置換による系統的な組成最適化が可能となりました。私たちはp型試料の性能向上やn型試料の創成に成功しており、それらを用いた熱電デバイスの作製を進めています。

有機物薄膜を用いた熱電デバイスの開発

 低分子有機物は、熱伝導率が低く、軽量で柔軟である特長を持っていることから、薄膜化することで高性能のフレキシブルな熱電デバイスを作製できる可能性があります。ただし、低分子有機物の多くは電気伝導率が低いため、キャリア密度あるいはキャリア移動度を向上しなくてはなりません。 
 低分子有機物の中で比較的電気伝導率が高いものとして、テトラチアフルバレン-テトラシアノキノジメタン(TTF-TCNQ)があります。私たちはTTF-TCNQ薄膜をガラス基板上に作製しました。TTF-TCNQ薄膜の表面観察を行ったところ、右図(a)のように、短冊状の微小なTTF-TCNQ単結晶がガラス基板から草のように生い茂って成長していることがわかりました。短冊の長手方向がb軸方向、短手方向がa軸方向です。b軸方向の高い電気伝導率を利用するには、微小単結晶のb軸がガラス基板に平行になっていることが望まれます。そこで、ガラス基板をラビングした後にTTF-TCNQ薄膜を成膜したところ、表面が極めて平坦になることがわかりました(右図(b))。微小単結晶のb軸は薄膜面内でランダムな方向を向いていますが、配向性が向上して電気伝導率は10倍高くなり、熱電変換性能を向上することに成功しました。