研究室公開

OPEN LABORATORY

未来を切り拓く最先端のエレクトロニクス
電子工学コース

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がんや骨疾患の治療に役立つ医用材料

~患者に優しい治療を目指して~

(金井)・川下研究室

EXHIBIT

オープンキャンパスでの展示

骨と結合する表面処理を施したチタンや本物の人工股関節に触れることができます。深部がんの血管内治療に役立つ微小球を観察することができます。

研究室の大学生(あるいは大学院生)がパネルを用いて研究内容を紹介します。また、骨と結合する表面処理を施したチタンのサンプルを見たり、チタン合金製の人工関節に触れたりすることができます。さらに、顕微鏡等によって、深部がんの血管内治療に役立つ微小球を観察することができます。

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放射性酸化イットリウム微小球の抗腫瘍増殖効果

 イットリウム(89Y)やリン(31P)は、自然界では非放射性ですが、熱中性子線を照射すると、半減期の短いβ線放射体(90Yや32P)に放射化されます。そこで、イットリウムやリンを含む、直径20-30ミクロンの微小球を作製し、それに熱中性子線を照射して放射化した後、これをカテーテルを用いてがんのごく近くの毛細血管に導入すれば、がん細胞を直接放射線照射して治療することが可能です。
 また、がん細胞は熱に弱く43℃付近に加温されると死滅しますが、正常細胞は48℃付近まで耐えることができます。従って、腫瘍部を43-48℃に加温できれば、がん細胞のみを死滅させることが可能です(温熱療法)。一方、マグネタイト(Fe3O4)などの磁性体は、100kHz程度の交流磁場(NとSが1秒間に10万回程度反転する磁場)の下に置かれると発熱します。そこで、磁性体を含む、直径20-30ミクロンの微小球を作製し、それを上記の放射性微小球と同様にがんのごく近くの毛細血管に導入し、患部を交流磁場の下に置けば、がんを局所的に加温して治療できる可能性があります。
 当研究室では、そのようながんの血管内放射線治療や温熱治療にに有用な微小球を合成する試みを進めています。

擬似体液中で骨類似アパタイトを形成する表面処理チタン

 チタンおよびその合金は生体親和性に優れるので、人工関節や人工歯根として広く用いられています。しかし、それらは、そのままでは骨と強固に結合しません。また、最近では、人工関節や人工歯根の表面に付着した細菌が術後感染症やインプラント周囲炎を引き起こすことが大きな問題となっています。
 当研究室では、簡単な化学処理と熱処理によって、生体外では手術室の無影灯等の可視光に反応して抗菌性を示し、光の届かない生体内ではその表面に骨類似アパタイト(骨の無機成分と類似した構造や組成を持つアパタイト)を形成して、それを介して骨と強固に結合するチタンを創製することに挑戦しています。

水酸アパタイトの骨結合機構の解明

 Ca10(PO4)6(OH)2の化学式で表される水酸アパタイトは、骨欠損部に入れられると周囲の骨と結合する唯一の材料であり、骨と結合する人工骨として国内外で最も広く用いられています。しかし、「なぜ水酸アパタイト(だけ)が骨と結合するのか?」については謎のままです。これまでの教科書には「水酸アパタイトは骨の無機成分(炭酸含有アパタイト)と類似しているから良好な骨結合性を示す」といったような抽象的な説明しか書かれていません。
 当研究室では、「水酸アパタイトが生体内に入れられた時、その表面に吸着するタンパク質がその鍵を握っている、すなわち骨結合性を引き起こす(トリガーとなる)タンパク質が存在するのではないか?」と考え、タンパク質吸着から水酸アパタイトの骨結合機構を解明しようとする研究を行っています。