研究室公開

OPEN LABORATORY

物理で切り拓く先端材料

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針で読み書き!ナノ世界のプラスとマイナス

先端計測技術と産業応用をオリジナルにカタチ創る

長・山末研究室

EXHIBIT

オープンキャンパスでの展示

ナノの世界を観る、測る、創る、操る!

スマートフォンなどの身近な電子機器にはたくさんの電子デバイスが使われています。これらのデバイスの内部はナノメートル(1ミリの100万分の1)単位で精密に加工され、実に何千万個、何億個というトランジスタが作りこまれたナノの世界です。このような極小さな電子回路の出来具合やそれらを構成する物質の性質を原子・分子レベルで「観る」「操る」にはどうすれ ばよいでしょうか?本展示では、それらを実現するSNDMと呼ばれる「針」を使った顕微鏡の開発やその次世代超高密度記録方式等への応用についてご紹介します.

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次世代超高密度強誘電体記録デバイスの開発

コンピュータやスマートフォンなどで私たちが普段見ている大量の電子情報は、記録デバイスとよばれる装置に格納されています。その記録デバイスの代表的なものがハードディスクドライブですが、これには磁気記録と呼ばれる方式が用いられています。 電子情報(ディジタル情報)は通常、ビットと呼ばれる‘1’または‘0’の組み合わせで表現されますが、磁気記録方式では、この‘1’と‘0’のビットを磁性体(磁石)のS極とN極に対応させて記録しています。一方、私たちの研究室では、磁性体の代わりに強誘電体と呼ばれる物質を用いて次世代の記録技術である強誘電体プローブストレージを開発する研究を行っています。強誘電体は、いわゆる永久磁石と似ていますが、磁石のN極とS極の代わりにプラス極とマイナス極を持つような特殊な物質です。強誘電体のプラス極とマイナス極(自発分極といいます)の向きは、細い針(探針)を使って外部から電気を加えることで自由にコントロールすることが出来るので、‘上向き’と‘下向き’を‘1’と‘0’のビットに対応させることで、磁気記録と同様にディジタル情報を記録することができます。強誘電体プローブデータストレージを用いれば、現行の記録技術をはるかに超える記録密度で大量のデータを記録することが可能になると期待できます。

SNDMを用いた電子デバイス評価

私達の研究室では、SNDMを用いた半導体デバイスの評価技術についての研究も行なっています。半導体とは、「電気を金属ほどは流さないけど全く流さないわけではない(中途半端な導電率を持つ)」物質です。なんとも中途半端な物質ですが、この“中途半端”な物質なしに皆さんが持っているパソコンや携帯電話、スマートフォンは存在しません。半導体の最も重要な性質は、導電率を自在に変化させることができるという性質です。この性質を応用して、電気の流れを機械的なスイッチに頼ることなく自在に制御することで、コンピュータを始めとする電子機器は動作しています。

 半導体で電子の流れを制御する部品は一般的に半導体デバイスとか電子部品などと呼ばれます。最も有名なものはダイオードとトランジスタです。半導体デバイスを実現する上で非常に重要なのがn型半導体とp型半導体です。n型半導体とは電子(マイナスの電荷)が豊富で電気伝導が電子に支配されている半導体で、p型半導体はホール(プラスの電荷)が豊富で電気伝導がホールに支配されている半導体です。半導体デバイスが正しく動作するためにはn型半導体とp型半導体が適切に配置されている必要があります。私達が研究しているSNDMを使うと半導体デバイス内のn型半導体とp型半導体の分布を詳細に分析することが可能です。「測るだけってなんか地味だな」と思う人も居るかもしれませんが、半導体デバイス内のn型・p型の分布を測る技術はデバイス開発において非常に重要な要素です。デバイス開発においては常に「正しく作られているのか」とか、「正常に動作しない原因は何か」といった問題がついて回ります。このような疑問を解決するには直接構造を測ってしまうのが近道です。特に、最新のCPUやメモリに代表される大規模集積回路(LSI)の内部の構造は非常に微細で、トランジスタ1つの寸法は14nmです。ここまで小さくなると測定は非常に難しくなります。SNDMはこのような微細なデバイスの構造を分析できるポテンシャルをもっています。

SNDMを用いた原子分解能観察

基礎的な研究として、SNDMで物質の原子レベルでの性質を調べる研究も行っています。物質が原子や分子で構成されていることはご存知だと思いますが、我々はひとつひとつの原子や分子を観察したり、その電気的性質を測定できる超精密な計測技術を開発しています。
 電子デバイスは主にシリコンなどの半導体からできていますが、上述のように半導体デバイスの微細加工技術は日進月歩で既に原子や分子の大きさの一歩手前くらいの寸法での加工が可能になっています。その一方で、加工技術と同じくらい重要なのが計測技術です。本当に設計通りの加工ができているか、あるいは原子・分子スケールで期待された性質を物質が持っているか、未知の物理が発現しているのではないか、などを調べるためには物質の性質を原子・分子のスケールで調べることのできる計測技術が必要なのです。我々の研究室では、SNDMの分解能を原子のサイズにまで高めた原子分解能SNDMを開発し、既存のシリコン材料やグラフェンなど新規な材料への応用を進めています。