研究室公開

OPEN LABORATORY

物理で切り拓く先端材料

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スピントロニクスの世界へようこそ!

~次世代スピントロニクスメモリを体験しよう!~

大野・深見研究室

EXHIBIT

オープンキャンパスでの展示

「スピントロニクス」ってなんだろう?

私たちの日常生活を豊かにしている「エレクトロニクス」は、電子が持つ電荷の性質を利用しています。電子には、電荷を持つという性質の他に、「スピン」という磁石の性質もあります。これらの二つの性質を両方とも利用した工学応用や新しい物理現象を研究する分野が、「スピントロニクス」です。展示会場では、スピントロニクスの応用分野の一つであるメモリーに関して、電流や磁石を用いたメモリー動作を体験することが出来ます。

補足:スピンとは?

電子は電気を帯びている(電荷)だけではなく、「スピン」という性質も持ち合わせています。「スピン」には“up”と“down”という2つの状態があります。ガラスや水など、身の回りの多くの物質中には2つのスピン状態が同じ量だけ存在していますが、鉄やニッケルなど、片方のスピンが多く集まった物質は「磁石」と呼ばれています。

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最先端スピントロニクスデバイス その1 電圧による磁気相転移制御デバイス

集積回路や発光素子等に用いられている半導体は本来磁石の性質を持たない材料ですが、磁性原子を添加することによって磁石になる半導体(強磁性半導体)を作製することができます。強磁性半導体の有する磁石としての性質は、ホール密度に強く依存することが分かっています。私たちは強磁性半導体をキャパシタ構造に加工して電圧を印加することでホール密度を変化させ、磁石の状態(強磁性)と磁石ではない状態(常磁性)を切り替えることができることを世界で初めて示しました。近年では、金属材料においても磁石の性質が電圧印加により変化することが見出され、室温動作可能な超低消費電力メモリデバイスの実現に向けて盛んに研究が行われています。

最先端スピントロニクスデバイス その2 磁気トンネル接合

スピントロニクスの技術を用いて低消費電力化・高速化を両立する不揮発性メモリの実現が期待されています。
そのメモリセルとして用いられる磁気トンネル接合は、2つの強磁性体で絶縁体を挟んだ構造から成り、強磁性体の磁化の相対角によって抵抗値が変化する特性を示すため、抵抗値の違いをビット情報に割り当てることでメモリとしての応用が可能となります。私たちは、ギガビット級メモリの安定・高速・低電力動作の実現を目指し、磁気ンネル接合に用いる材料およびデバイス特性に関する研究を行っており、世界最高のトンネル磁気抵抗比(高速性の指標)、直径11 nmの磁気トンネル接合素子の作製(世界最小)に成功しています。

最先端スピントロニクスデバイス その3 磁壁移動デバイス

強磁性体中の磁区と磁区の間には磁化の向きが遷移する領域、磁壁が形成されます。電流を流すと、電流を担う伝導電子と磁化を担う局在電子間でスピンの角運動量が受け渡されて、電子が流れる方向に磁壁を移動させることが出来ます。
この電流誘起磁壁移動を用いて不揮発性メモリに応用したものが磁壁移動デバイスで、読み書きに用いる電流経路が異なることから、安定・高速動作が期待されます。私たちはこのようなデバイス応用を念頭に、磁壁移動の物理と集積化技術に関する研究を行っています。現在までに、垂直容易磁化材料であるCo/Niを用いて、線幅20nmの磁性細線における磁壁移動を観測しています。