東北大学工学部電気情報物理工学科

Department of Information and Intelligent Systems

情報知能システム総合学科から2015年4月に名称変更

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未来をつくるあなたへ

2015年11月のアーカイブ

しょこたんの夢を叶える方法

11月22日(日)に東京海洋大学で開催された『工学フォーラム2015 未来への挑戦 夢をカタチにする工学』(国立大学54工学系学部長会議・読売新聞社主催)を聴いてきました(「未来への挑戦」は奇しくも東北大学工学部のパンフレットのタイトルでもあります)。
パネルディスカッション『工学の未来を語る』は、ゲストパネリストの中川翔子さん(しょこたん)に実現したい未来を語ってもらい、その未来を工学で実現する方法をパネリストが答えるという趣向。しょこたんのブログにも紹介があります。

パネリストを務めた各大学の工学部長の方々がそれぞれのご専門や所属大学で行われている研究の観点から回答されていたのですが、限られた時間だったこともあり、工学の持つ可能性をもっと示すことができたのでは? とも思いました。
そこで折角の機会なので、本学科で行われている研究を中心に、しょこたんの夢のかなえ方をもう少し考えてみました。


中川翔子さんの実現したい未来 その1
『中野区で生まれ育った自分にとって、思い入れの強い「中野サンプラザ」を保存して欲しい。思い出の景色が自分を作っており、懐かしいという思いを持ち続けたい。』

パネリストからの回答では、土木・建築工学の観点から東京駅丸の内駅舎の保存・復元事例などの紹介を通じて、歴史的建築物の保存再建技術が紹介されていました。ただ、中野サンプラザは駅周辺の再開発により取り壊される予定とのこと。新しく建てられるビルに中野サンプラザを思い起こされるような外観が採用されればよいのですが、難しいかもしれません。

そうした時に思い当たるのは、仮想現実感(バーチャルリアリティ)や複合現実感と呼ばれている技術です。東北地域では、東日本大震災で失われた被災地の都市や建物の姿を再現し記憶に留めるために、仮想現実感や3D技術を使った様々な取り組みが行われました。本学科でも、仮想現実感システムの研究や、その基礎となる人間の聴覚系視覚系などの研究などが行われています。


中川翔子さんの実現したい未来 その2
『スマホがあれば自分はいくらでもひとりでいることができる。身の回りの技術の中で一番進化を感じるのがスマホ。でもやっぱりバッテリーが問題。重かったり、すぐ切れてしまったり。無限に電池がもつスマホが欲しい。』

パネリストからの回答は、スマホだけでなくノートPCやディスプレイにまで幅を広げて、軽量化のための技術としての「薄くて折り曲げたりできるディスプレイ」やプラスチックシートの上に電子回路を作る「プリンテッドエレクトロニクス」、また「電池長寿命化のための素材開発」などが紹介されていました。

「薄くて、軽くて、曲がるディスプレイ」の研究は、本学科でも行われています。パネリストから紹介されたのは有機ELを用いたディスプレイですが、本学科の藤掛研究室では液晶を用いて「薄くて軽くて曲がるディスプレイ」の開発に取り組んでいます。

この問題は、身近な問題だけあって、ほかにも様々な研究が行われています。
例えば、高校の理科でも習う「電磁誘導」を使って、端子に接触しないでも充電する方法の開発。「熱電材料」というものを使って、身の回りのちょっとした温度差から発電をしてしまう方法の開発。「圧電シート」というものを使って、振動を利用して発電する方法の研究。
また、なんでバッテリーが必要かというとスマホを動かしている「半導体」が電気を消費してしまうからなのですが、それならば電子の「スピン」という性質を使って、エネルギーをできるだけ使わない半導体を作ろうという研究(スピントロニクス:東北大学が世界最先端を走っています)も行われています。


中川翔子さんの実現したい未来 その3
『個人情報保護には配慮しつつも、その人を見ただけで、その人の性格やその人との相性、その人のご先祖のことなどを知ることができる。』

パネリストからの回答では、情報通信技術の観点から、ビックデータ解析やデータマイニング、行動観察などが紹介されていました。

本学科の研究をみても、ビックデータ解析の1つでもありますが、自然言語処理という技術を使って本人のツイートや発言を収集して分析して、その結果をコンピュータとつながったメガネ型ディスプレイなどに表示できるようにすれば、相手の発言を予測したり、やがては相手の性格を推定することができるかもしれませんね。
この夢の実現のための技術としてシンポジウムの時にぜひ取り上げて欲しかったのが、人間のゲノム情報(遺伝情報の総体)の解析。最近ではゲノム情報に基づいて将来どのような病気にかかる可能性が高いかを予測するサービスも始まっているように、ゲノム情報はその人についていろいろなことを教えてくれます。そして、膨大な人間のゲノム情報を解析するためには最新の情報技術が必要になります。「バイオインフォマティックス」と呼ばれる研究分野で、本学科でも研究されています。

ただ、パネルディスカッションでも少し触れられていましたが、この夢の実現は工学だけでできるものではなく、法律の整備や世の中の人の合意など、いろいろな課題が含まれていますね。


中川翔子さんの実現したい未来 その4
『動物を殺さなくても食物を作り出せる技術。がんの特効薬、副作用のない抗がん剤。』

パネリストからの回答では、前者についてはかつて日本でも行われた人工タンパク質開発計画などが、後者については工学部における医薬品開発やがん治療法の研究などが紹介されていました。

東北大学では、医学と工学が連携して、新しい医療技術・医療システムを開発する「医工学」という研究が盛んで、本学科にも医工学に関する研究を行っている研究が多くあります。東北大学大学院医工学研究科には、2014年に「がん医工学研究センター」が設置されていますが、センター長の小玉哲也教授を始めとして、梅村晋一郎教授、吉澤晋准教授、川下将一准教授が本学科からメンバーとなっています。例えば梅村先生、吉澤先生は、超音波を使って「切らずにがんを治す」治療システムの開発を行っています。


パネルディスカッションの最後に中川翔子さんが言った言葉が印象的だったので、ここにご紹介しておきます(聞き書きなので、正確な言い回しではない点はご容赦ください)。
『「夢はかなう」という言葉があるが、いまの人類は夢を叶える力がある。
 自分の場合、逃げ場が妄想だったが、それが未来への栄養になり、夢がかなった。
 妄想の力は無限大。
 高校生のみなさん、夢を妄想して、食べて、形にしてください。』


(11.24追記)
上記の研究や技術で、中川翔子さんの実現したい未来がいますぐ実現できるわけではありません。
実現に向けて私たちも一生懸命研究していますので、高校生・受験生のみなさんもぜひ私たちに加わっていただければと思います。
なお本ブログの目次ページに書いてありますように、本ブログは教育広報企画室担当者の個人的な意見であり、東北大学や電気情報物理工学科の意見を示すものではありません。