東北大学工学部電気情報物理工学科

Department of Electrical, Information and Physics Engineering

情報知能システム総合学科から2015年4月に名称変更

  • 電気工学
  • 通信工学
  • 電子工学
  • 応用物理学
  • 情報工学
  • バイオ・医工学

高校生・受験生のための研究紹介
人と未来をつなぐ[電気・情報・応用物理]の魅力

学生が聞いた先生たちの研究

もし人間のような視覚を持ったコンピュータが実現できたら

コンピュータビジョンによる近未来のアプリケーション

もし人間のような視覚を持ったコンピュータが実現できたら
―先生の研究内容を教えてください。

次世代コンピューティング技術や画像処理、個人認証など様々な研究を行っていますが、今日はその中で「コンピュータビジョン」という分野についてお話しします。これは、コンピュータによって人間のような視覚を実現すること、コンピュータが自分で外界を認識することを目標とした分野です。例えば、私たちは、3次元(3D)の広がりを持った空間に住んでいますが、この3次元世界の認識の問題も取り扱います。私たちの研究グループでは、デジカメで撮影した普通の写真(2Dデータ)から、撮影した物体の精密な3D形状を自動復元する研究を行っています。撮影された画像を「波の集まり」とみなして数学的に分析する方法を考案し、世界最高水準の精度を達成しています。

―先生が開発された3D立体形状復元技術はどのようなことに応用できるでしょうか。

最近、文化財を丸ごとデータとして取り込んで、ゲームの中のように3D化して見せる仮想ミュージアムが登場しています。このデータを作るために、今までは何百万円もするレーザスキャナが必要でした。でも、人間の視覚は、レーザなど使わなくとも網膜に写った像だけから立体形状を認識できますよね。この「認識による3D化」の原理を使えば、皆さんがスマートフォンで撮った写真を手軽に3Dデータにすることができます。これを3Dプリンタで印刷すれば、旅行先で写真を撮った建物のレプリカを手元に置くこともできます。いつでも、どこでも、誰でも、3Dデータを集めることができるのです。
 今後、世界中の人が撮影した写真を、人間ではなく、コンピュータが見て認識できる時代になります。膨大な画像を、インターネットを通じて集め、ビックデータとして活用できるということです。例えば、すべての自動車に小型カメラを搭載し、その画像をビックデータとして集めることによって、世界中の町並みが3D地図の形でリアルタイムに再現できるはずです。10年後には、このようなテクノロジーが、車の自動運転を可能にしているかもしれません。他にもあげるときりがないほどの応用分野が考えられます。

青木 孝文 教授
青木 孝文 教授
―様々な応用分野があるようですが、今この分野の動向はどうなっているのでしょうか。

コンピュータビジョンは、最近、急速に発展してきた分野です。新しい論文が発表されると、その原理がすぐさま技術に組み込まれていきます。研究と実用化の距離が近いのが、IT分野のおもしろさですね。私の研究室では企業との共同研究を積極的に行っており、研究成果をすぐに応用・実用化につなげることができます。他のコンピュータビジョンの研究室と比べて、基礎となる理論から実際の製品のレベルまでカバーできているというのが、私たちの強みです。コンピュータビジョンの研究によって、社会に大きなインパクトを与えるテクノロジーを生み出したいと思います。

―今後、先生はどのような研究に取り組んでいかれますか。

私が興味を持っているのは一般に「逆問題」と呼ばれる問題です。3Dデータ(立体モデル)を2Dデータ(画像)に落とし込むことは簡単で、ゲームや映画で実用化されています。いわゆるコンピュータグラフィクスと呼ばれる分野です。それに対して2D(画像)から3D(立体)を推定することは、たいへん難しいのです。このような未解決の画像認識の問題は、まだまだたくさんあります。ところが、私たちの脳は、これを無意識のうちに解いてしまいます。この隠された「知」しくみを解明して、真の人工知能を実現することにチャレンジしたいと思います。

もし人間のような視覚を持ったコンピュータが実現できたら

自分次第でどこまでも広がるコンピュータビジョンの分野

自分が撮った写真を手軽に3Dにできる技術がすぐそこまできているということに感動しました。友達を撮った写真が数枚あれば、それを3Dプリンタで印刷することでオリジナルフィギュアも作れるというお話もすごく面白いと思います。考えれば考えるだけたくさんの応用分野があり、すぐに技術に応用されることもあって、私たちが新技術にかかわることができる、という先生の研究分野は非常に魅力的に感じられました。

(3年 野々村萌[岩手県立盛岡第三高等学校卒業]:2014年10月取材)

今回お話をお聞きした先生は

青木 孝文 教授

青木 孝文 教授(Takafumi Aoki)

専門は画像処理、画像認識、コンピュータビジョン、生体認証、個人識別、高性能計算機システム、マイクロプロセッサ、暗号とセキュリティ。
宮城県仙台第二高等学校卒業。1992年3月東北大学大学院工学研究科電子工学専攻博士後期課程修了。東北大学工学部および大学院情報科学研究科の助手を経て、1996年4月東北大学大学院情報科学研究科助教授、2002年4月東北大学大学院情報科学研究科教授。2012年4月から東北大学副学長を併任。1994年および1999年に英国電気学会フレミング賞およびマウントバッテン賞、2008年市村学術賞貢献賞、2009年船井情報科学振興賞、ごく最近では、2014年にWorkshop on Cryptographic Hardware and Embedded Systems (CHES) Best Paper Awardおよび河北文化賞など受賞多数。2011年の東日本大震災では、生体認証技術を用いて犠牲者の身元確認へ貢献し、宮城県警察本部長等より多数の感謝状を授与。

学生による研究室の紹介

研究室Web