大規模な数値シミュレーション

 

コンピュータの計算速度や容量が飛躍的に増大した今日、複雑なモデルも計算可能な大規模数値シミュレーションは、デバイスの実用化に欠かすことができません。デバイスを設計するためのシミュレーションと、作製技術や特性を検証するための試作作業は、双方が補間する役割を担います。正確なシミュレーション技術を見いだせれば特性を的確に予測できるため、デバイスやシステムの試作回数を低減でき、研究を効率的に推進できます。

 

 

さらに重要なことは、新たなデバイスを発想して計算することで、動作を予測できることです。それにより、これまでにない新たな機能性を見いだすことが可能になります。既存のデバイスの場合、実際にデバイスの特性を評価すればよいため、シミュレーションで特性を再現する意味は、デバイス作製の精度検証を除けばほとんどありません。しかし、実存しないデバイスを創出する場合、極めて大きな役割を果たします。そのため、研究のアプローチにおいてシミュレーションと試作の作業は、車の両輪と言えます。シミュレーションの場合、パラメータの設定は現実的か、計算結果に物理的意味が備わっているか、計算と実験の突き合わせは十分か、差違が生じた場合にはその理由を十分に説明できるか、などが確認事項となります。

本研究室では、数値解析のベースとなる理論を検討するとともに、モデル設計や計算手法の特質を踏まえて、様々なシミュレーション手法の開発と応用を進めています。それらを活用することで、材料物性・微小光学のミクロな観点から、ディスプレイ・立体表示などのマクロな観点まで、多様な現象・効果をシミュレーションにより総合的に検証できます。また、光と電子の相互作用を扱える光・電子工学融合領域は、新たな機能創出の可能性を生み出す興味深い分野です。さらに、計算・実験の精密な突き合わせにより、新たな物理現象を解き明かして予見することも可能でしょう。このような取り組みにより、これまで実現できなかった計算科学を創出することも可能になります。