研究者としての業績

 

 

大学教員など研究者に求められる資質は、好奇心(探求心)、情熱(忍耐力)、分析力(論理的思考力)などと言われ、その能力の多くは研究対象へのこだわりと深い知見に基づき養成されます。例えば、研究途中で生じた新しい現象に遭遇した場合、これまでに獲得した多くの知見と無意識に照合して、即座に発生機構や類似現象に関する直感、あるいは違和感を覚えます。そのような場合、研究者としての勘が働き、“おもしろい”、“興味深い”などの言葉になることもあります。特に違和感を覚える場合、得られた結果に誤りがなければ、なにがしかの発見になり、新たな研究や論文のシーズ(種)になる可能性もあります。特に、既存の理屈では説明できない未知の現象・事象には興味を持ち、新たな展開の可能性を本能的に嗅ぎ付けます。研究の場合、独自性を確保するため我が道を行くことも必要ですが、他の研究をリスペクトして啓発を受けることも欠かせません。

 

枝葉明

ケヤキの大樹(青葉山キャンパス)

勇気を出して幅広い応用分野を探索

 

一般に研究者は、専門分野へのこだわりから関心事の指向性を絞りビーム化するため、視野は狭くなりがちです。その一方、ものごとの詳細や大局を論理的に分析するため、他の人には見えないモノや世界を先んじて予期できる可能性があります。専門性は、見えないモノを見るための一種の顕微鏡や望遠鏡とも言え、それを基に未来を提案していくことも、研究者にとって重要な仕事の1つです。外部からは、こだわり(ひいき目)・思い込みやバイアス回路などと言われるかも知れませんが、時として信念を貫く姿勢も必要です。研究者には、そうした先見の明(?)を持っているかが問われます。

研究者にとってアイデアの源泉は、新たな課題に取り組む時だけでなく、研究の途上で見つかることも多く、インスピレーションにより次々と新しい切り口・攻め口(そして目標)を確保していきます。他分野とのアナロジーから、大胆に新概念をぶち込み、既成概念に風穴を開けることこそ研究の醍醐味であり、楽しみ(苦しみ?)でもあります。すなわち、斬新な発想が研究分野の流れを変えるインパクトになりえます。そのため、肝となる新規性(新たな発見・発明)を訴求する論文投稿・学会発表・特許出願などの業績は、研究者の専門性を測る目安になります。

 

ネムノキ実

ネムノキの豆果(青葉山キャンパス)

どんな植物でも次世代の種を残します

 

また業績リストには、この分野をもう少し掘ってみるか、思い切って新天地を目指すか、腰を据えてライフワークとして取り組むかなど、過去の研究のポジショニングや、関心事の思想史が見え隠れするため、研究者としての顔、そして履歴書、ひいては生きざまと言えます。研究は新規性の獲得競争でもあり、業績リストは苦労して勝ち取った戦績です。研究は人なりと言われるように、研究業績には研究者の価値観・こだわり・個性が色濃く繁栄されます。

 

ムスカリ

ムスカリ(青葉山キャンパス)

花が多いと見栄えも増します