研究指導とフォローアップ

 

研究室内では、研究テーマの趣旨、意義、波及度(インパクト)を検証しながら、進捗状況に応じて適宜フィードバックしています。実際に、研究テーマの分野・フェーズに応じて、以下に示すような指導と助言を行っています。

 

オンリーワンを構築するテーマ

目標・課題もしくは手段(材料・プロセス・評価・計算など)に圧倒的なオリジナリティがあり、高所から見ても新概念の提案が期待できる。

学会・社会に対して新たな課題の提起になるか/現象・機能の発現に間違いないか/機構は十分に理解・説明できるか/物理法則との矛盾はないか/機能と応用分野は整合しているか

2.ナンバーワンを目指すテーマ

技術の提案・改良により、これまで他では得られていなかったチャンピオンデータやワールドレコードが見込める。

実現すると社会の何が変わるか/改良の本質的要因は何か/測定法やデータの信頼性・精度は十分か/改善結果と上限見込みは一致するか/他分野展開の可能性はあるか

3.実用性の高いテーマ

技術の導入や摺り合わせで、社会に役立つレベルの性能が得られ、早期の実用化により社会実装が見込める。

応用先は明確に絞られているか/実用のための目標設定は適切か/性能向上のため最適・最短の組み合わせか/開発スケジュールは妥当か/特性のみならず製造コストの面からも実用性検証(フィージビリティスタディ)が十分か

 

根子

ケヤキの大木(青葉山キャンパス)

研究者の育成は、探求心という根っこを作ること

 

特に研究のコアとして、オリジナリティが確保されているかが重要なポイントです。さらに、ビジョン・目標・課題・手段が十分に具体的になっているかもチェック対象です。本研究室では、フィードバック指導の基となる評価指標を、以下に示す目標の高さ(挑戦度)と進捗の状況(進展度)の積として設定しています。

 

1.挑戦度

失敗を恐れることなく高い目標を掲げて挑戦しているか。達成が困難な目標であっても従来の手段の問題点を理解・整理しながら、新しいもしくは発展させたアプローチで果敢に攻めているか。

2.進展度

指導や先行技術を基にして確実に足場や橋頭堡を築きながら、指摘された問題点に対する議論や理解を着実に進めて深めているか。目標達成までの距離・時間をどのように認識して進めているか。

 

スミレ4

タチツボスミレ(青葉山キャンパス)

地に足を着けて、粘り強く取り組むことが大切

 

これらの評価指針に基づき、手段そして目標を調整することもあります。研究は水もの・生ものでもあるため、目標物の必要性やインパクトが希薄になったなどの社会状況や、発表が先を越されたなど研究分野の動きに応じて、方針転換も必要です。しかし、少しでもオリジナリティが確保されていれば、なにがしかの意義はあるとも言えます。他の応用を広く探るのも、重要な研究者の役割・能力です。また後の時代に他の研究者が、それを基礎として役立てることで、論文の価値が再評価されることも多くあります。オリジナリティに富んだ独創的かつ先駆的な研究が望まれる所以です。

このように、教員と学生が課題設定や克服手段の妥当性をぎりぎりまで探求することは、研究の心髄であるオリジナリティと有効性(インパクト)を先鋭化することにほかなりません。その結果として、個々の研究に魂を吹き込むことができ、研究テーマが独自の歩みを始めます。これにより、誰も到達していない未知の世界に踏み込んでいくことが可能になります。

 

サザンカ(青葉山キャンパス)

冬を耐えれば、大輪の花が咲きます