液晶ディスプレイの未来

 

液晶ディスプレイの技術は、素材からシステムまで幅広い技術層を有しています。また、現在の液晶ディスプレイ産業は、モバイル、テレビ、車載、PCモニタ、ARVR、プロジェクタなどの用途を軸に成立しています。フラットパネルディスプレイを代表する液晶ディスプレイですが、近年、デバイス製造技術が成熟しつつありますその一方で研究・開発においては、高画質化(高解像度化、高コントラスト化、色域拡張・高速駆動)、セキュリティのための視野角制御、省電力化に向けた次世代デバイス研究が精力的に展開されています。

液晶方式は、部材数が多いことが難点とされますが、部材選択の自由度と多様性(引き出しの多さ)は、今後もブレークスルーを生み出す可能性があります。表示のダイナミックレンジや色再現範囲の拡大については、光変調を担う液晶パネルに積層する微小LEDのバックライトの応用が進んでいます。特に色域については、昨今の量子ドット蛍光体による波長変換技術の導入、その次には単一波長の純色を可能とする半導体レーザーが出番を待っています。それにより、他の表示方式では到達しえない技術領域に進む可能性もあります。

そこで本研究室は、液晶デバイス自体の材料・構造を革新するとともに、周辺部材を果敢に開拓していくことで、未来の表示技術の方向性を見いだしていきます。

 

  光拡散異方性を有する配光制御デバイス

 

光拡散特性を印加電圧により自在に制御できれば、液晶ディスプレイのプライバシー保護のための視野角制限に役立ちます。ここでは、バックライトと液晶パネルの間に挿入する配光制御デバイスの研究を進めています。ここでは、高分子硬化用の紫外光の照射方法を工夫することにより、微細な高分子と液晶の複合構造を異方性化して、可視の入射光の散乱パターンを電圧印加により実時間で制御します。このデバイスはディスプレイ用途に限らず、省エネ化に向けた照明器具の配光制御にも役立ちます。

[科学研究助成費 基盤研究C (2016-2018)]

[国際会議IDW Outstanding Poster Paper Award (2017)]

電子情報通信学会英文論文誌 招待論文 (2018)]

 

液晶高分子相分離 偏光なし

  異方性化した複合膜の形成例

 

● 複屈折高分子多層膜からなる反射型偏光板

 

複屈折を有する高分子を積層した多層膜ミラー(フィルター)は、反射率・透過率の波長特性を鋭敏に制御できるため、液晶ディスプレイバックライト用の反射型偏光板として実用化されています。本研究室では、さらに広視野角化・広帯域化を図り、反射型ディスプレイなどに応用するため、多様な複屈折を導入した多層膜ミラーの数値解析・設計技術の開発を進めています。さらに、構築したシミュレーション法に基づき、大幅な層数縮減を図る設計法についても検討しています。

[国際会議IDW Outstanding Poster Paper Award (2016)] 電子情報通信学会英文論文誌 招待論文 (2017)]

 

光学異方性を利用した高分子多層膜ミラーの透過率

(計算例)

 

  ローカルディミング用の導光板バックライト

 

液晶ディスプレイでは視認性を高めるため、バックライトが使用されます。ここでは、薄型化やフレキシブル化が可能なバックライト用導光板として、液晶・高分子複合膜からなる高分子分散液晶デバイスを導入することで、高コントラスト化・省電力化に有用な部分駆動バックライトの開発を進めています。この場合、複合膜は印加電圧をオンオフすることで、導光してきた光に対して散乱・透明になるため、バックライトの明・暗状態が得られます。

[国際会議IDW Outstanding Poster Paper Award (2014)]

[映像情報メディア学会情報ディスプレイ研究会学生奨励賞(2015)]

[電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞 (2016)]

[東北大学 電気・情報系優秀学生賞 (2016)]

 

液晶高分子複合膜の導光板バックライト

 

● ミニLEDを用いた直下照明型バックライト

 

ローカルディミングを可能とするミニLEDバックライト(直下照明型)を実現するためには、できるだけ少ない微小LEDからの放出光を大きく拡散して、均一な輝度分布を達成する必要があります。ここでは、幾何光学に基づく計算シミュレーションにより、LEDバックライトの薄型化設計に関する研究を進めています。

 (仙台高専 那須研究室と連携)

[国際会議IDW Outstanding Poster Paper Award (2019)]