最近の研究成果
スピントロニクスの開拓
新機能スピントロニクス素子の開拓の分野で、電界印加による純粋に電気的な磁化方向の制御に世界で初めて成功し、現在の半導体
デバイスとも相性のよい新機能・高性能・低消費電力不揮発性磁気メモリ応用への新たな道を開きました。
（D. Chiba, M. Sawicki, Y. Nishitani, Y. Nakatani, F. Matsukura, and H. Ohno, “Magnetization vector manipulation by electric
fields,” Nature, 455（7212）, 515 - 518, 2008）。
量子情報通信に向けて
光ファイバや光導波路媒質において、単一光子レベルの光によって誘起される光学非線形性の測定に世界で初めて成功した。また、光
の偏光のコヒーレンスを、半導体電子スピンに転写、検出することに世界で初めて成功しました。これらは、光子を用いた量子情報通信技
術の基本となる重要な成果です。
（H. Kosaka, T. Inagaki, Y. Rikitake, H. Imamura, Y. Mitsumori, and K. Edamatsu, “Spin state tomography of optically injected electrons in a semiconductor,” Nature 457, 702 - 705, 2009）。
超高速・大容量光通信の実現
無線技術と光技術の融合を目指し、無線技術であるナイキストフィルタを光通信に採用し、6波の64QAM（Quadrature Amplitude Modulation）コヒーレント伝送に世界で初めて成功しました。周波数の利用効率は8.6 bit / s / Hzに達しています。
（H. Goto, M. Yoshida, T. Omiya, K. Kasai, and M. Nakazawa,“Polarization and frequency division multiplexed 1Gsymbol / s, 64 QAM coherent optical transmission with 8.6 bit / s / Hz spectral
efficiency over 160km,” IEICE Electronics Express, 5（18）, 776 - 781, 2008）。
位相限定相関法を用いた高精度バイオメトリクス認証
ピクセル分解能の壁を越える超高精度画像マッチング技術である位相限定相関法を、虹彩および掌紋を用いたバイオメトリクス認証
へ応用し、世界最高水準の認証性能を達成しました。また、同技術を、歯科エックス線画像照合に基づく個人識別へ適用するとともに、大規
模災害・事故発生時の身元確認支援システムを初めて提案し、内外から注目を浴びています。
（K. Miyazawa, K. Ito, T. Aoki, K. Kobayashi, and H. Nakajima, “An effective approach for iris recognition using phase - based image matching,” IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 30（10）, 1741 - 1756, 2008）。
臨場感溢れる音空間コミュニケーションの実現を目指して
次世代高臨場感コミュニケーションの実現に向け、3D 空間情報を含む音響情報の高精度センシングと、その提示する技術の開発に取り組んでいます（WESPAC 2009 招待講演）。さらに、取得音響情報の属性値を高精細に抽出し、それらの属性値ごとに自由に編集・提示 可能なエディタブルオーディオシステムの開発を行っています。超解像映像技術と融合された超多チャネル音信号処理技術、高精度音空間 提示技術の深化がそれを可能としている。