核融合ロケット

                             A6TB2092 小舘 航

 

 

.核融合とは?

2つの原子核同士が十分近づくと,原子核の間に働く引力(核力)が静電的な反発力(クーロン力)に打ち勝って1つに融合し,新しい原子核が生まれることがある。これを核融合反応という。

重水素(D)や3重水素(T)のような軽い元素の場合には,核融合反応によって全質量がわずかに減少し,エネルギーに変わる。核融合炉の燃料は、ウランでもプルトニウムでもなく、水素であり、反応そのものは太陽の中で熱を出している現象と同じである。

また、核融合でできるものは安全な化学物質ヘリウムである。中性子も出るので、炉心内部は放射化されるが、これは開発中の低放射化材料で解決するはずである。つまり、核分裂では反応そのものが高レベルの放射化物を作ってしまうが、核融合は、発生する中性子の処理さえ工夫すれば、放射性廃棄物のレベルは大きく下げられる。

今後の核融合開発として、2030年には安全性・経済性を実証したデモ炉が、2050年には核融合炉実用化への準備が完了し実用される核融合炉が作られる。

 

.核融合ロケット

核融合ロケットは、現在ある核融合反応炉に内部のエネルギーを外に導く噴出口を設けたものであり、重水素や三重水素の高温プラズマガスを閉じこめ核融合させて、ヘリウム原子と高エネルギー中性子を生み出し、推進剤として水素ガスを加えて噴射エネルギーとし、ロケットを推進させるシステム。核融合炉内部、噴射ノズル内は超伝導磁石による磁場で高温プラズマを制御する。

 推進機として核融合プラズマを利用する場合、熱エネルギーを一方向の運動エネルギーに変換する必要性がある。磁場を利用することは高温プラズマから壁を保護するためにも有効である。この場合反応生成物がすべて荷電粒子であることが望ましい。D-T反応では反応生成エネルギーの80%近くを中性子が持っており、方向性を持たせることは困難である。熱に変換し、タービン発電して電気推進に利用するD-T反応は核分裂発電に比べあまりメリットがない。熱の廃棄には大きな放熱器が必要となり重量が一層重くなる。したがって核融合推進にはD+3He反応が最も適していることが早くから指摘され、核融合研究の初期から宇宙推進の応用が検討されている。

 

.利点・欠点

核融合反応の場合,1kg の燃料から取り出せるエネルギーは理論的には,100兆ジュール。化学反応によって推進する現在のロケットと比べて,同じ1kgの燃料から実に1000万倍以上のエネルギーが生み出される。これより、核融合は、化学反応を利用したロケットにくらべて高い比推力と高い比出力を同時に得ることができる特徴を持つことがわかる。また、この推進システムは構造が単純で、さらに燃料ペレットの爆発力をダイレクトに推進力に変換することが可能である。

 

         ↑レーザー核融合ロケット概念図

 

.応用例と将来計画

原子力ロケットの発展系である核融合ロケットを用いた場合、物質と反物質が出会って消滅する反応「対消滅」の際には,核融合をさらに上回るエネルギーが解放されるが,これを推進力に利用できれば,太陽系の隣の恒星であるアルファ・ケンタウリまで37年で行けるといわれている。

他の宇宙推進システムと比較して、高い排出速度(高い推進剤利用効率)と大きな推力を同時に達成可能であり、核融合を利用したロケットは、将来の宇宙開発に必要とされる高速推進システムとして非常に有望視されている。

 

.参考

http://p-grp.nucleng.kyoto-u.ac.jp/fusion/index.html

http://www.asahi-net.or.jp/~rt6k-okn/fusion.htm

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E6%A0%B8%E8%9E%8D%E5%90%88

http://www3.osk.3web.ne.jp/~koji1138/sf/space/rocket.html

http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/9905/ginga.html