合成石英ガラスの仮想温度評価法

J. Kushibiki et al., Appl. Phys. Express, 4 (2011) 056601.

 石英ガラスは、光透過性、耐熱性に優れており、かつ金属不純物が極めて少ないため、縮小投影露光装置(ステッパー)や通信用光ファイバとして欠かせない材料です。レンズ、プリズム、フォトマスクなどの光学応用には、屈折率の均一性、高い透過率、無欠陥などが要求され、紫外線で動作するステッパー用レンズにおいては、これらに加えて紫外線耐性が高いことが要求されており、金属不純物が10 ppb以下と極めて少ない合成石英ガラスが使用されています。合成石英ガラスのそれらの特性は、添加物として加えられたFやTiなどの濃度に加えて、製造工程で含まれるOH基、Clやその他の不純物濃度によって変化します。また、仮想温度によっても大きく影響を受けることが知られています。

 市販の合成石英ガラスであるED-B(東ソー・エスジーエム社製、OH濃度 = 0 wtppm)とC-7980(Corning社製、OH濃度 = 1000 wtppm)に対して、UMS技術による仮想温度の感度と分解能を調べた結果を以下に示します。縦波音速測定による仮想温度の分解能は0.3-0.4℃と非常に高く、赤外吸光分光法やラマン分光法と比較して、1-2桁以上高い分解能を有しています。

 このため、本手法をガラス製造業者が利用することにより、作製したガラスの仮想温度、その分布、およびその作製プロセスの評価を行うことが可能です。また、この評価結果により、所望の特性(例えば、光学特性)を有するように仮想温度およびその分布を制御したガラスを作製するためのプロセス条件の改善に用いることができます。

 本研究の一部は、NEDOの知的基盤研究開発事業「次世代超低膨張ガラスのゼロCTE温度計測法の標準化に関する研究開発」の補助による。