JST 産学イノベーション加速事業[先端計測分析技術・機器開発](要素技術プログラム)
(平成20年度〜22年度)

光周波数標準用超高品質光キャビティーの開発

 次世代周波数標準技術として、光周波数標準の開発が進められている。光周波数標準の実現のためのキーデバイスとして、光周波数コムと超高性能レーザーが上げられる。超高性能レーザーは、超高フィネス・光キャビティーにより、周波数の安定化ならびに狭線幅化がなされる。光キャビティーは、円筒状の超低膨張ガラススペーサーの両端面に超高反射率ミラーを形成することにより実現される。レーザー光をこのキャビティー(共振器)に安定化することで、周波数変動幅を小さくすることが可能である。

 現在、この高フィネス・光キャビティーについては、アメリカのベンチャー企業であるAdvanced Thin Film社によってのみ供給されている。しかしながら、キャビティー材料として、アメリカのCorning社により市販されているTiO2-SiO2超低膨張ガラスを用いている。このガラスに対して、UMS技術を適用したところ、基板内にスペックよりも大きな不均一を捉えることができた。

 上記周波数変動幅を実現するためには、10-14以内の長さの変化でなければならない。市販の高フィネス・オプティカルキャビティーでは、キャビティー材料の不均一性の問題から、わずかに温度が変動した場合にキャビティー長が変化してしまうため、周波数変動幅が大きくなってしまう。また、そのキャビティーの動作温度が室温から大きく外れて、温度調整が困難になる場合もある[Y. Li, et al., Jpn. J. Appl. Phys., 47, 6327 (2008).]。このため、線膨張係数(Coefficient of Themal Expansion: CTE)分布が極めて小さく、所望の温度(室温)においてCTEがゼロ(そのときの温度をゼロCTE温度と呼ぶ)となる超低膨張ガラス素材を開発しなければならない。

 

 本開発では超高品質光キャビティーの開発を行った。UMS技術を用いた超低膨張ガラス材料のCTE評価法により、所望の温度でゼロCTEとなる光周波数標準器用のキャビティー用超均質超低膨張ガラスの開発を行った。さらに、高品質誘電体多層膜ミラーを作製することにより、1,000,000以上のフィネスを有する共振器を実現した。超均質超低膨張ガラスを用いたキャビティー材料と超高反射率多層膜ミラーを組み合わせることにより、超高品質光キャビティーを実現する。

 本開発で実現した超低膨張ガラスおよび光キャビティーは以下のとおりである。

 (1) 超低膨張ガラスのCTE分布:0±5 ppb/K以内

 (2) 超低膨張ガラスのゼロCTE温度:20-25℃

 (3) 光キャビティーのフィネス:> 1,000,000 (at 1064 nm)

                 = 400,000 (at 732 nm)