市販のプレミアムグレードのTiO2-SiO2ガラスインゴット(1500 mmφ×150 mmt)から、脈理面と基板表面がほぼ平行な試料基板(100 mm×50 mm×8 mmt)を1枚準備し、LSAW速度分布測定による脈理形状の評価を行なった例を示す。
 
 図1のように、試料基板表面のLSAW速度分布を測定してから、試料の厚さを約40μmだけ薄くなるように研磨し、再びLSAW速度分布を測定する工程を5回繰返した。得られたLSAW速度測定値を再構築することにより、図2のような基板内部の脈理構造を初めて捉えることに成功した。脈理の形状に注目すると、基板面内において脈理面は半径約450 mmで緩やかに湾曲しており、基板深さ方向では半径約440 mmで凸状に湾曲していた。これは、ガラスインゴットを回転テーブル上に堆積させて作製する方法・条件に起因した形状と考えることができる。この結果をもとに、元のガラスインゴット内のどこから試料基板を抽出したかを図3のように推定した。脈理面はガラスインゴットの回転中心に対して同心円状に存在し、その中心から約450 mmの距離にある場所から抽出されたものと考える。
 
 直径1.5 mもの大きなガラスインゴットから切出した小さな基板に対する評価ではあるものの、試料基板面上の二次元的な評価だけではわからなかった三次元的な実際の脈理の形状を把握することができる。このような脈理の形状はガラスの製造プロセス条件(温度変動・分布、バーナーの配置・特性、回転速度、など)の変化を反映していることから、ガラス製造プロセス改善のための有用な情報を提供することができる。
 
図1 TiO2-SiO2ガラス基板試料
 
図2 TiO2-SiO2ガラス基板試料内部の脈理形状
 
図3 TiO2-SiO2ガラスインゴット内の脈理形状と試料抽出位置の推定
 
 
参照:Y. Ohashi, J. Kushibiki, M. Arakawa, and K. Suzuki:
Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 45, No. 8A, pp. 6445-6451 (2006).