超低膨張ガラスのゼロCTE温度評価法とシステムの開発

J. Kushibiki et al., Proc. SPIE, Vol. 7636, 76362M (2010).

 現在、ASML社が量産プレ機の出荷を行っており、2013年には量産機の出荷を予定しています。現在、光源の出力は10 W程度ですが、将来のEUVL量産機では100 W以上になると言われています。ミラーやフォトマスクの反射率が70%程度であることから、前段の素材ほど熱の吸収が大きくなり、ミラー各段やフォトマスクに要求されるゼロCTE温度は異なり、その選別が必要となります。

 従来のCTE評価法では、超低膨張ガラスの全数検査には対応できません。本評価法では、下図のように、LSAW速度からTiO2-SiO2超低膨張ガラスのゼロCTE温度を評価することが可能であり、所望の用途への選別に対応可能です。ガラスメーカーはもとより、EUVLシステムに関連するガラスユーザーも、所望の特性を有する超低膨張ガラスの評価・選別ツールとして利用できます。

 ガラスのゼロCTE温度は、主に、TiO2濃度に依存しますが、ガラスの仮想温度にも依存します。そこで、3つのTiO2-SiO2超低膨張ガラスインゴットを用意し、そのうちの2つに対して、異なる温度で熱処理を行い、ゼロCTE温度を測定しました。それらの結果をもとにゼロCTE温度が25℃となるような熱処理温度を見積もり、3つ目のガラスインゴットに対して実際に熱処理を行いました。その結果、ゼロCTE温度は23.2℃となり、目標としていた約25℃に制御することができました。(CTEの測定は産業技術総合研究所熱物性標準研究室の山田様に依頼しました。)


 システムの実用化を目指し、NEDOの知的基盤研究開発事業[平成20-21年度]にて、実用機のプロトタイプを開発しました。スペクトラム・アナライザ等を用いずに回路を構成していますが、研究用システムと同等のダイナミックレンジを確保しています。また、LSAW速度の測定再現性についても研究用システムと同等の値が得られています。

ゼロCTE温度評価システム(実用機プロトタイプ)

 また、平成21年度の補正予算にて、研究用実用機のプロトタイプを開発しました。
 最近、研究者向けのコンパクトなシステム(普及バージョン)を開発しています。

 本研究の一部は、NEDOの知的基盤研究開発事業「次世代超低膨張ガラスのゼロCTE温度計測法の標準化に関する研究開発」ならびにJSTの産学イノベーション加速事業「光周波数標準用超高品質光キャビティーの開発」の補助による。