自己制御型ハイパーサーミアがん治療システムの開発

ハイパーサーミアとは、「がん」を熱によって治療する治療方法です.
正常な細胞は44℃で、「がん」は42.5℃で生存率が低下します.この間の温度で保つことで「がん」だけを治療し、正常な細胞を生存させることができます.

ハイパーサーミアとは温熱療法全般のことを指し,がん治療にも応用されています.ソフトヒーティング法とは、このハイパーサーミアの発熱方式の一つで, 感温磁性体に金メッキを施すことによって作成したがん治療素子(シャーペンの芯程度の太さ)を患部に埋め込み、電磁誘導を用いてワイヤレスでエネルギーを送り素子を温める手法です.

Fig.1 体内埋め込み型がん治療素子

感温磁性体はあらかじめ設定された温度を超えると磁性を失う性質をもち,これをキュリー温度といいます.この性質により素子温度がキュリー温度以下では発熱し,キュリー温度を超えると発熱が抑制されます.従って体外から素子にエネルギーを伝送しすぎても過剰に加熱してしまう恐れがなく,加温範囲を限定することが可能です.また素子自身がこの性質を有しているため,患部へ温度センサーを設置する必要もなく体への負担が軽減できます.つまり「がん」だけを正確に治療することができるため,高い安全性を持っているといえます.

Fig.2 ソフトヒーティングの原理

どの部位にもソフトヒーティング法の適用は可能ですが,以上の点から頭頸部がんや肝臓がんなどの手術による摘出が困難である「がん」やなるべく治療後もなるべく組織を残しておきたい乳がんなどの治療に適しています.さらに,手術に比べ体への負担が小さいため,お年寄りや体力の低下している患者にも有効な手法です.