リアルタイム体内放射線量モニタリングシステムの開発

がんは長期にわたって、日本人の死亡原因の第1位となっており,その割合はおよそ30%ほどです.現在行われているがん治療には,手術による外科療法,薬を用いた化学療法,放射線療法などがありますが,当研究室では外部から機器を用いて効果的に放射線治療を行うための研究を行っています.

体外から放射線を照射して行うがん治療では,機器から放射された線量は分かりますが,実際に人体の患部にどの程度の線量が照射されているかは分からないという問題があります.このことから患部での線量が多すぎると,過剰照射による副作用,少なすぎると病巣に対して治療効果がないということとなります.もしリアルタイムで患部での線量情報の信号を外部機器に送信し,フィードバック制御できればこの問題を解決し,より安全で効果的な治療を行うことができるようになります.

そこで我々は「リアルタイム体内線量測定システム」というものを提案しています. 本システムでは測定用の小型素子をカテーテルなどで患部に挿入します.この素子には線量計が搭載されており,体内から外部の受信機へ線量情報をコイルの電磁誘導を用いて非接触で送信します(通信システム).また,非常に小型なこの素子には電池を搭載しないため,電磁誘導を用いて体外から体内素子へ非接触で給電を行います(給電システム).このように本システムでは通信と給電の2つのシステムを搭載しており,これまでの研究で体内埋め込み型の線量計としては世界初である信号と電力の同時伝送に成功しております.

Fig.1 体内線量計イメージ図