電解質プラズマによる生体分子・CNT複合物質の創製
カーボンナノチューブ (CNTs) は，炭素によって作られる六員環ネットワークが筒状になった物質であり，単層CNTs (SWNTs)と多層CNTs (MWNTs)とに大別することができる. 特に，SWNTsは特異な電気的特性及び優れた機械的強度を有しており，様々な分野において精力的に研究がなされている.
SWNTsはその構造から内部に中空空間を有しており，異種原子・分子を内包させることでSWNTs自体の電気的特性を局所的に変化させることが可能である.
一方，生体高分子の1つであるデオキシリボ核酸
(DNA)は, 全ての生物において遺伝情報を担う最小の物質であり，その大きさはナノスケールである. 分子を構成する4種の塩基はそれぞれ異なる電気特性を示すことが知られている.
また，イオン液体(ILs)は，常温融解塩であり，中性粒子を含まない. イオン液体は不揮発性，難燃性，導電性，耐熱性，低粘性などの特徴を有するため，電気化学的な反応溶媒として，近年様々な分野において注目されている.
本研究では，気相中でイオン化することが困難なDNAを含む水溶液及び正イオン負イオンのみから成るイオン液体を電解質プラズマとして捉え，溶液中における基板バイアス法を用いてイオン照射をSWNTsに対して行い，DNA及びイオン液体を構成する高分子イオンを内包及び修飾したSWNTsの創製を目指している. さらにその特性評価を行い, その結果、SWNTsのp型、n型の特性を強めることに成功した.
図1：実験装置 図2：イオン液体照射後SWNTsのラマンスペクトル
廣津 佑