フロー速度シアの低周波プラズマ不安定性への効果

 

 

磁化プラズマ中のフロー速度シアは,核融合プラズマ閉じ込めに密接に関連するプラズマ周辺部での不安定性や輸送現象の発生原因として,最近特に関心が寄せられている.本研究室ではこれまで,完全電離無衝突プラズマ発生装置において分割型のプラズマ生成電極を用いることによって,磁力線平行・垂直方向のフロー速度シアをそれぞれ独立に生成することに成功し,低周波不安定性に対するこれらの速度シアの効果を実験的に明らかにしてきた.しかしながら,低周波不安定性に重要な役割を果たすと考えられるシア特性長や密度勾配特性長などを,実験では任意に変化させることが困難であり,これらの効果は未だ不明である.従って本研究の目的は,粒子シミュレーションにより速度シアの空間分布形状などを変化させ,プラズマフロー速度シアに起因する低周波不安定性の励起・抑制機構を体系的に解明することである.

シミュレーションは,一様な外部静磁場を取り入れた周期的境界条件の3次元静電粒子シミュレーション(Particle-In-Cell)コードを用いて行った.約10億個の粒子を,128lDe×128lDe×512lDe (lDe :デバイ長) の大規模なシミュレーションシステム内に一様に分布させ,沿磁力線イオンフロー速度vdi /vteを空間的(x方向)に変化させることによって速度シアを導入した.具体的には図1のイオンフロー速度分布に設定し,速度が一様である領域(a)においてイオン密度揺動の空間フーリエモードの時間発展を観察したところ,図2(a)のような低周波の不安定性が見られた.揺動の周波数よりこの不安定性はイオンサイクロトロン波不安定性であることがわかった.またこの不安定性は一様なイオンフローの場合に励起されたことから,励起源はイオンフローによる電流であると考えられる.一方,速度シアの存在する領域(b)では図2(b)のようなスパイク状の空間フーリエモードが観察された.これより速度シアはイオンサイクロトロン波不安定性に対して揺動の成長を助長し、基本波のみならず高調波成分も励起する効果があることが明らかとなった.

 

 

 

 


 

 

 

 

 

1:イオンフロー速度の

 x方向分布.

 

2:イオン密度揺動の空間フーリエモード.

 (a)速度一様領域 (b)速度シア領域

 
 

 

 



齋藤 洋孝