日本超音波医学会 東北地方会
第31回学術集会 プログラム・抄録集

日 時: 平成18年3月19日(日)9時00分〜17時07分
場 所: 艮陵会館 記念ホール
  仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
大会長: 古川市立病院  沼田 功
参加費: 1,000円
地方会URL: http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連絡先: 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第31回学術集会事務局
  TEL: 022-795-7081,FAX: 022-263-9444
  E-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp
 
なお,会場までのアクセス方法につきましては地方会URLで御紹介しております.

講演者へのお願い

・一般演題は,1題につき発表時間8分,討論時間5分の合計13分間です.
 症例報告は,1題につき発表時間6分,討論時間4分の合計10分間です.
・発表方法は原則としてすべて会場PC使用で,Power Pointのみとなります.
・会場には,PowerPoint2003が使用できる画面サイズ1024×768のWindowsコンピュータそのprojectorを用意します.
・当日は受付にて記録メディアを再確認して下さい.
・演者は,発表予定時刻の1時間前までに受付を済ませて下さい.
・Power Pointのスライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守して下さい.
 
発行日:平成18年3月19日






日本超音波医学会 第9回東北地方会講習会
(第31回学術集会併設)のお知らせ

第9回東北地方会講習会を下記の要項で開催いたします.御出席いただいた超音波専門医,超音波工学フェロー,超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.

開催日時: 平成18年3月19日(日) 13:00〜15:00
会  場: 艮陵会館   仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
講演題目: 13:00〜13:40    座長 東北大学加齢医学研究所 西條芳文
「非心臓手術前の循環器疾患スクリーニング超音波検査と報告書のポイント」
講師 岩手医科大学第二内科  那須 雅孝
  13:40〜14:20    座長 宮城県立がんセンター 小野寺博義
「超音波装置の機能とその原理 ―パネルスイッチの効果的利用のために―」
講師 東京マイクロデバイス株式会社  長井 裕
  14:20〜15:00    座長 古川市立病院 沼田功
「腎・泌尿器疾患のスクリーニング法」
講師 名古屋泌尿器科病院 小島 宗門
参 加 費: 1,000円 (学術集会参加費とは別途徴収いたします.)
定  員: 100名
申込期限: 平成18年3月13日(月)
弁当販売: 日曜日のため会場周辺は営業しているレストラン・食堂が限られますので,ご希望の方には
  お弁当を販売いたします.事前申込のみの受付で当日受け付けは致しません
  価格:1,000円(講習会参加費とは別)(申込〆切3月13日)
申込方法: 氏名,連絡先住所,電話番号,FAX番号,お持ちの方はE-mailアドレス,お弁当ご希望の方は「弁当希望」を明記の上,下記までFAX,E-mailまたは郵送でお申込下さい.
 
講習会申し込み・問い合わせ先
〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第31回学術集会事務局
  斎藤 ゆう
  TEL:022-795-7081, FAX:022-263-9444,
  E-mail:jsum@ecei.tohoku.ac.jp
  地方会ホームページ:http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/

      
開会の挨拶 (9:00-9:05) 大会長 古川市立病院  沼田 功
 
1 腹部 (9:05-10:15) 座長 東北労災病院  小笠原 鉄郎
秋田赤十字病院 小松田 智也
 
31-1 (9:05-9:15)
  検診USで診断した無症状肝内胆管細胞癌の一例
   仙台社会保険病院 内科 寺沢 良夫
    同       超音波検査室 広田むつ子,須藤 誠二,野村 禎子,
  野村 幸宏,鈴木とよみ
   宮城県予防医学協会 村上 廣一
【はじめに】肝内胆管細胞癌(CCC)は腹痛・黄疸で受診し,手術もできない状態の症例が多い.今回,無症状で肝機能も正常なCCCをUS検診で診断し,手術で確定診断がついた症例を経験したので報告する.【症例】68才男【2005.2.22 US検診】肝左葉胆管拡張(2mm),その根部の1.5cm大の腫瘍をCCCとUS診断.【CT・MRI】CCC.【生化学検査】glucose: 159mg/dl,CA19‐9: 43U/mlの他は異常なし.【2005.4.8 手術】adenocarcinoma,cholangiocelluler carcinoma【考察】無症状のCCCが,検診USで,検出可能であることが証明された.
 
31-2 (9:15-9:25)
  巨大多房性嚢胞性腫瘤として指摘された大網原発venous hemangiomaの一例
   仙台厚生病院 超音波室 高城 拓也,平 真理子,伊藤 章子,
  阿部 英子,広瀬 京子,鈴木 憲子
    同     消化器科 石橋 潤一
比較的稀な大網原発venous hemangiomaを経験した.症例は60歳,女性.1ヶ月前より心窩部痛が持続するため来院.腹部超音波検査では肝下面から臍レベルの右腹腔内に大小の嚢胞状構造を呈する巨大な腫瘤像を認め,一部の嚢胞様病変の内部にsludge様エコー像を認めた.造影MRIでは,腫瘤内部に隔壁を伴う巨大な多房性腫瘤として描出され,隔壁部分に造影効果を認めた.また血管造影では右胃大網動脈より腫瘤へ栄養血管を認めた.以上の所見より,大網原発の腫瘍と判断し,外科的切除を行った.腫瘍は18×18×6.5cm, 837gで,右胃大網動脈を栄養血管とし血性の内容物を含む多房性の嚢胞で,拡張した薄い壁を持つ血管と成熟した脂肪組織からなるvenous hemangiomaであった.
 
31-3 (9:25-9:35)
  後腹膜に発生したmalignant Triton tumorの一例
   公立横手病院 検査科 大嶋 聡子,小丹まゆみ
    同     内科 長沼 裕子
    同     外科 吉岡  浩
    同     放射線科 平野 弘子,法華堂 学
   秋田大学 病理病態学講座 西川 祐司
【はじめに】Malignant peripheral nerve sheath tumor with rhabdomyoblastic differentiation (Malignant Triton tumor)はまれな腫瘍でneurofibromatosis 1を背景に発生することが多いとされている.我々はその一例を経験したので報告する.【症例】38歳女性.車を運転中,急に右腹痛あり,当院受診.腹部にcafe au lait spotを認めた.家族歴で父がneurofibromatosis 1.USでは右後腹膜に高,低エコーの混在した約15cmの大きな腫瘍を認めた.下方は充実性で上方は嚢胞性部位が混在し腫瘍内外の出血が考えられた.CTでも同様の所見.造影USでは腫瘍の辺縁部位が染影された.神経症状を伴ってきており腫瘍摘出術施行.組織はmalignant Triton tumorであった.
 
31-4 (9:35-9:45)
  狭窄型虚血性小腸炎の一例
   松園第二病院 消化器科 石川 洋子
    同     放射線科 渡邉 誠
    同     臨床検査室 千葉 春枝,太田 恵
   岩手県立中央病院 消化器外科 平野 拓司,望月 泉
    同       病理 小野 貞英
【症例】80才,女性.【主訴】腹痛,下痢,腹部膨満感.【既往歴】S27年より高血圧,S34年より狭心症(冠攣縮性)で加療中.【現病歴】H17/2/16 S状結腸穿孔による汎発性腹膜炎で,岩手県立中央病院消化器外科にてS状結腸部分切除を受けた.リハビリ目的に3/31 松園第二病院消化器科へ紹介され転入院.5/6腹痛を訴え腹部USで小腸イレウスの所見を認め,癒着性イレウスが疑われた.その後のUSで小腸の著明なソーセージ様壁肥厚像より虚血性小腸炎と診断,USにて経過観察.CTで小腸の著明な壁肥厚像.経口小腸造影,注腸X線検査で異常みられず,流動食開始したが,イレウス症状が出現,数回繰り返す.US像は殆ど改善みられず8/22のUSにて遠位回腸の狭窄型虚血性小腸炎による腸閉塞と診断,8/31前医へ紹介,転院.9/7開腹術施行.回腸に二ヵ所狭窄部位あり,一ヵ所は索状部による圧痕,もう一ヵ所は回盲弁より約20cm口側に5cmにわたり全周性の壁肥厚を認めた.切除標本で著明な壁肥厚を伴った求心性管状狭窄と広範な潰瘍を認め,病理組織学的所見と合わせ,狭窄型虚血性小腸炎と診断された.
 
31-5 (9:45-9:55)
  腸管気腫症例の検討
   秋田組合総合病院 生理検査部 吉田千穂子,大山 葉子,紺野 純子,
  小沼 知子
    同       消化器科 星野 孝男,渡部 博之
   秋田赤十字病院 超音波センター 石田 秀明,小松田智也,古川佳代子,
  山田真実子,八木澤 仁
【はじめに】腸管気腫症は比較的稀な疾患であるが,腹部の検索は超音波検査から始まる事を考慮すると,その超音波像を理解する事は臨床上意味があると思われる.今回我々は過去10年間に腸管気腫症と最終診断された五例の超音波像と臨床所見を比較検討し若干の知見を得たので報告する.【使用機器】日立EUB-6500,東芝Aplio.【対象】a)症状が軽微であった四例(25-51歳, M:2, F:2) b)腸管壊死を伴った一例(72歳, F) 【結果】a)拡張肥厚した腸管壁内にRing-down artifactを伴うstrong echo(いわゆるガスエコー)が多数みられ,腸管の動きは乏しかった.b) a)群の所見に加え,肝内門脈全体にガスエコーが見られ,緊急手術にて上腸間膜動脈塞栓と小腸壊死を認めた.【考察】腸管気腫症はガスが視野の主体を占めるので一見診断困難と考えられるが,動きを欠くガスエコーを認めた場合,腸管壁内ガスを確認する事で診断は十分可能である.尚,門脈にもガスを認めた場合は腸管壊死を念頭に入れるべきである.
 
31-6 (9:55-10:05)
  右腎静脈を介した門脈―大循環短絡例の検討
   秋田赤十字病院 消化器科 山田真美子,石田 秀明,小松田智也,
  古川佳代子,八木澤 仁,大野 秀雄,
  佐藤亜紀子
我々は比較的稀である右腎静脈を介した門脈―大循環短絡の一例を文献的考察を加え報告する.【症例】60歳女性.肝硬変で経過観察中に肝細胞癌を発症し,治療を繰り返していたが,門脈腫瘍栓と腹水出現.カラードプラで閉塞した門脈本幹近傍から右腎静脈に合流する門脈―大循環短絡を認めた.CTでも同様の所見であったが,Bモードでは描出不能であった.【考察】門脈圧亢進症は門脈―大循環短絡を出現させることが知られている.その中でも,左腎静脈を介する脾腎短絡や胃腎短絡は以前より知られている.一方,右腎静脈を介した門脈―大循環短絡の報告は極めて少ない.これは,右腎静脈を介した門脈―大循環短絡はBモードでは指摘しえないことが,元々低頻度である右腎静脈を介した門脈―大循環短絡の検出をさらに困難にしている一因と思われる.門脈圧亢進症例では,上腹部全体をカラードプラも用いて観察することが大切であると思われる.
 
31-7 (10:05-10:15)
  出血性巨大肝嚢胞の一手術例
   東北労災病院 腹部超音波室 桜庭  勝,山下 安夫,畑中 輝美,
  色川  信,管野 悦子
    同     内科 新関 昌枝,小笠原鉄郎
【症例】80歳,女性.【病歴】平成17年1月,転倒後より右腰痛が出現.9月健診で肝腫大,USで肝右葉に腫瘤指摘.【画像】US:肝右葉全体を占める縦長の巨大な腫瘤で境界は平滑.内部に地図状の充実部分を有している.CT:腫瘤内部は造影ほぼ均一な低吸収域で造影されない.MR:USと同様の内部構造を示していた.出血性肝嚢胞と診断した.【経過】USガイド下ドレナージ.茶褐色の内容液を吸引したが,充実部分が残ったため,10月25日,開窓術を施行.内容物は茶色の粥状物質であった.嚢胞壁は線維化,炎症細胞浸潤,内容物は壊死組織と血球成分であった.【考察】本症例は,単純性肝嚢胞が転倒時に出血.嚢胞内部で凝血塊となったものと考えられた.出血性肝嚢胞は,US,CT,MRにより診断可能と考えられた.
 
 
2 基礎 (10:25-11:56) 座長 東北厚生年金病院  菅原 重生
東北大学      長谷川英之
 
31-8 (10:25-10:38)
  動脈壁の径方向ひずみから算出した弾性率に関する考察
   東北大学 大学院工学研究科 長谷川英之,金井 浩
【目的】著者らは,拍動にともなう動脈壁の微小厚み変化を超音波計測し,壁の弾性特性を弾性率ErおよびEθとして評価する手法を提案した [長谷川他,超音波医学,1997. 長谷川他,超音波医学,2001.].本報告では,ErとEθの壁厚-内径比依存性などについて検討を行った.【方法】Erは,単純に径方向ひずみと脈圧の比で定義したものであるが,動脈の場合,厚みの変化が主に円周方向の伸びにより発生していることを反映していない.そこで,円周方向の応力も考慮したEθを提案した.【結果】弾性特性の異方性Eθ / Erを1.2 [D. J. Patel, et al. Circ. Res., 1973.],非圧縮性を仮定した場合,Eθは,壁厚-内径比にはほとんど依存しなかった.ただし,Eθの定義においては,等方性を仮定しているため,異方性の影響により真の弾性率に対して10?程度の誤差が見られた.一方,Erは,強い壁厚-内径比依存性を示し,壁が厚くなり,壁厚?内径比が小さくなるにつれErが大きくなる傾向が見られた.【結論】Eθは,壁厚-内径比にほとんど依存せず,壁の弾性特性のみを反映していると考えられた.一方,Erには壁厚-内径比にも依存する傾向が見られ,見かけの弾性率(apparent elasticity)として用いるべきものと考えられた.
 
31-9 (10:38-10:51)
  超音波計測された弾性率の分布に基づく動脈壁の組織分類法の検討
   東北大学 大学院工学研究科 稲垣  淳,長谷川英之,金井  浩
   JR仙台病院 血管外科センター 市来 正隆
   仙台医療センター 臨床検査科 手塚 文明
【はじめに】我々は動脈壁の局所弾性率を超音波計測する手法を開発し,動脈壁内の各組織(脂質,血栓,線維組織,石灰化組織)の弾性率分布を得た.しかし,脂質と血栓,また線維組織と石灰化組織の弾性率分布の重なりが大きいため弾性率に閾値を設定することで正確な組織分類を行うことはできない.本報告では,各組織の弾性率分布に関する尤度を用いた分類法を提案する.【方法】循環器系を模擬したin vitro実験系において,塞栓症患者から摘出された大腿動脈の局所弾性率を超音波計測し,得られた弾性率断層像と病理染色画像を対応させ,動脈壁内の各組織の弾性率分布を得た.各組織の弾性率分布を正規分布へ軸変換し,各組織の確率密度分布を得た.弾性率断層像に±450 μm (軸方向)× ±450 μm(径方向)の関心領域を設定し,領域内の弾性率分布と各組織の確率密度分布から尤度を算出し,その領域の中心に位置する画素を最も高い尤度を示した組織へ分類する.また,分類結果の比較のため,弾性率断層像の各点の弾性率と各組織の弾性率分布との間のマハラノビス距離に基づいた分類法について解析を行った.【結果】本報告で提案した動脈壁組織の弾性率分布に関する尤度に基づく分類法は,マハラノビス距離を用いた一般的な分類法に比べて,弾性率分布の重なり合う組織間の分類精度が向上していることが確認できた.本手法により,これまで行えなかった超音波計測による動脈壁の組織性状診断が期待できる.
 
31-10 (10:51-11:04)
  頸動脈洞における高精度な動脈硬化症診断のための超音波ビーム偏向の自動設計法
   東北大学 大学院工学研究科 増山 尭,長谷川英之,金井 浩
【目的】動脈の分岐部である頸動脈洞は動脈硬化症の好発部位であるため,この部位における内中膜厚み(IMT)の診断が重要である.しかし,頸動脈洞における血管壁は血管軸に対して平坦ではなく,リニアスキャンの超音波ビームは血管壁の限られた領域でしか直交しないため,従来のリニアスキャンによるBモード断層像では高精度な診断は困難である.我々は,従来のリニアスキャンで得たBモード断層像において血管壁位置の検出を行い,検出した位置をもとに血管壁に直交するビームを設計する手法を考案した.【方法】健常者の頸動脈洞長軸断面において,超音波ビームの偏向角度を70°から110°まで5°間隔でフレームごとに変更し,心電図R波近傍のタイミングで9フレーム分の超音波RFデータを取得した.ビーム角度90°のデータから通常のリニアスキャンに対応するBモード断層像を描出して壁位置を手動で検出し,最適なビーム照射位置・角度を設計し,Bモード断層像を再構成した.【結果】従来法では内膜中膜複合体が描出できなかった領域においても,本手法により描出可能になった.
 
31-11 (11:04-11:17)
  反射超音波の位相を用いた生体器官表面粗さの高精度計測
   東北大学 大学院工学研究科 有原 千尋,長谷川英之,金井  浩
【はじめに】動脈内皮細胞の厚さは数μmであるため,動脈硬化早期段階における内皮細胞剥離などによって生じた内腔表面の粗さは,従来の超音波診断装置では検出できない.本報告では,深さ方向の高分解能化を図るために,位相を用いた.さらに,横方向の高分解能化を図るために,フィルタ処理を行う方法を提案した.【方法】段差が既知の対象物を用いた基礎実験およびブタ大動脈を用いたin vitro実験において,プローブを血管軸方向に5μm間隔で動かしながら反射超音波信号を計測し,隣り合う位置の位相差から表面形状を描写した.その後,点拡がり関数に基づく最小二乗フィルタを適用した.【結果】位相を用いることで,従来計測できなかったミクロンオーダの表面粗さが描出された.また,フィルタ処理により横方向の空間分解能が向上した.
 
31-12 (11:17-11:30)
  超音波変調パルス照射によるサブハーモニックイメージングに関する基礎検証
   山形大学 工学部 舞草 伯秀,深見 忠典,湯浅 哲也,
  田村 安孝
   山形県立産業技術短期大学校 赤塚 孝雄
超音波造影剤からのエコーには,送信周波数のハーモニック成分や,その半分の周波数を持つサブハーモニック成分が含まれることが知られている.中でも,第2次高調波成分を用いたセカンドハーモニックイメージングにより,組織と造影剤のコントラストの良い画像が得られることが広く知られている.一方,サブハーモニック成分は,生体組織からほとんど発生しないことから,さらによい組織と造影剤のコントラストが得られるものとして期待されている.しかし,サブハーモニックイメージングは,十分な信号強度を有するサブハーモニック成分が得られないことから,未だ実用化には到っていない.本研究では,サブハーモニック成分の信号強度を増強させるため,送信波に振幅変調パルスを用い,パルスインバージョン法と組み合わせた手法を提案し,その有効性をファントム実験により検証した.その結果,提案手法により従来手法よりも8dB程のS/Nの改善が見られた.
 
31-13 (11:30-11:43)
  ナノバブルを用いたNIS遺伝子のがん細胞への導入
   東北大学 先進医工学研究機構 渡邊夕紀子,青井あつ子,今野 聖絵,
  小玉 哲也
   東北大学 サイクロトロンRIセンター 伊藤 正敏
   英国がん研究所 Georges Vassaux
ナノバブルと超音波を利用した分子導入法は,任意の組織に遺伝子などの高分子を非侵襲的に導入する手法として注目を集めている.一方,遺伝子治療では,遺伝子導入後の発現特性を非侵襲的に画像化し,効率的な患者の治療計画を立案することが必要である.NIS遺伝子はヨウ素の取込み作用をもつ遺伝子で,甲状腺,唾液腺,胃で恒常的に発現する.このNIS遺伝子のヨウ素取り込み作用を活用することで,ヨウ素を用いた放射線療法と遺伝子発現の画像手法を開発することが可能になる.本報ではナノバブルと超音波を利用した分子導入法を利用して癌細胞株にNIS遺伝子を導入し,細胞内へのヨウ素の集積特性の定量化を行なった.
 
31-14 (11:43-11:56)
  超音波メス刃先先端による軟組織切削に関する検討
   東北大学 大学院工学研究科 海老名孝介,長谷川英之,金井  浩
【目的】著者らは,超音波治療機器の1つである超音波メスに注目し,軟組織切削に関する基礎的検討を行ってきた.本報告では,超音波メスの刃先先端におけるキャビテーション現象による軟組織切削の解明を目的とする.【方法】超音波メス(Johnson ? Johnson Harmonic Scalpel)を用い,キャビテーションが主に発生する刃先先端近傍にて,感圧紙を用いて圧力の空間分布を計測した.さらに,キャビテーションが軟組織へ及ぼす影響を鶏肉と感圧紙を用いて評価した.【結果】感圧紙と刃先までの距離を1 mm〜6 mmまで0.2 mmずつ(計26点)変えながら計測を行い,3次元圧力分布を得た.刃先先端から1 mm部分では感圧紙の測定上限を超える0.7 MPa以上の圧力が測定された.水中でメスを駆動したところ,刃先先端から1 mmまでの領域で空洞気泡が集中して発生しており,圧力の高い領域と対応していた.また,軟組織(鶏肉)に変性が見られたのも刃先先端部から1 mmまでの領域であり,空洞気泡の崩壊によって軟組織が変性したと考えられる.
 
 
3 泌尿器・産婦人科 (15:10-15:46) 座長 仙台医療センター  明城 光三
古川市立病院    竹田 篤史
 
31-15 (15:10-15:23)
  検診USで検出された腎癌の予後
   仙台社会保険病院 内科 寺沢 良夫
    同       超音波検査室 広田むつ子,須藤 誠二,野村 禎子,
  野村 幸宏,鈴木とよみ
【目的】検診USにより無症状腎癌が検出されるようになり,その予後が著しく改善されてきた.そこで,当院において,手術で確定診断がついた,検診腎癌症例の転移死亡例について検討した.【対象】1984.4〜2005.12までの腎癌手術例は,812人である.このうち当院検診USで診断した腎癌:56人を対象とした【結果】検診腎癌転移死亡例は7人(13?)で,摘出腫瘍径は4〜8cmで,術後生存期間は1Y2M〜13Yであった【考察】無症状の検診腎癌でさえ,転移死亡例が7人(13?,7 / 56)もあり,その予後の向上の為に次のことが考えられた.1.更に小腎癌の検出.2.検診症状全例にUSの完全実施.3.検診腎癌の特徴的US所見の習熟.4.検診腎癌症例へ,当日直接医師による精査・治療の説明(無症状ゆえに受診しない症例あり).
 
31-16 (15:23-15:36)
  古川市でのPSA前立腺癌検診と超音波ガイド下前立腺生検結果
   古川市立病院 泌尿器科 佐藤 琢磨,竹田 篤史,沼田  功
古川市では平成16年度より前立腺がん検診が開始となった.50歳以上の希望者を対象にPSAを測定し,適応のある症例については二次医療機関として泌尿器科開業医を受診し,三次医療機関で前立腺生検を行っている.古川市での検診結果と当科で行った前立腺生検結果を報告する.当科では経直腸超音波ガイド下12箇所生検を基本に行っている.平成16,17年度をあわせて545例の前立腺生検を施行しておりPSA4.1‐10.0ng/mlまでのグレーゾーンでは120/324(37?),PSA>10ng/mlでは161/221(73?)で前立腺がんが検出された.古典的に前立腺がんは低エコー域を呈するといわれていたが現在はさまざまなエコー像を示すことが知られている.低エコー領域と前立腺がんの関係についてPSAでリスク分類し考察した.
 
31-17 (15:36-15:46)
  妊娠初期に間質部妊娠と診断し得た一症例
   仙台赤十字病院 産婦人科 谷川原真吾
間質部妊娠は稀な疾患で子宮内妊娠との区別が難しく,子宮破裂に伴う母体のショック状態で診断され子宮全摘や輸血を必要とすることも少なくない.今回,妊娠初期の経腟エコー検査で間質部妊娠と診断し子宮・卵管を温存し得た症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.症例は28才,0妊0産の未産婦で,他医より胎嚢が見えず子宮外妊娠の疑いで当院紹介となった.初診時の経腟エコー検査では内膜の肥厚像のみで胎嚢ははっきりしなかった.5日後にエコーで胎嚢を確認したが卵管角に近く,間質部妊娠を疑った.その1週間後には胎嚢の偏位と卵管角・間質部の腫大がエコーで確認され,間質部妊娠と診断し保存的手術を施行した.
 
 
4 循環器 (15:46-17:02) 座長 きびら内科クリニック  鬼平 聡
福島県立医科大学    高野 真澄
 
31-18 (15:46-15:56)
  AMIにて発症した巨大右冠動脈瘤内血栓の器質化を心エコーにて経過観察した一例
   済生会福島病院 検査部 橘内 きぬ,五十嵐玲子,丹治 春香
    同      循環器科 渡辺 正之
   福島県立医科大学 第一内科 高野 真澄,山口  修,及川 雅啓,
  矢尾板裕幸,丸山 幸夫
AMIにて発症した巨大右冠動脈瘤において,冠動脈瘤内部の新鮮血栓が器質化していく様子をUCGにて経過観察し得た症例を経験した.【症例】52歳男性.H17.11.13前胸部痛が出現し,来院.急性心筋梗塞の診断にて緊急カテを施行し,?2に冠動脈瘤と多量の血栓を認め,PTCRを施行した.第4病日UCGにて,胸骨左縁短軸,及び心尖部4腔像にて心外側から右房を圧排する球形の異常構造物が認められたが,詳細は観察できなかった.第10病日には直径3.5cmの異常構造物が確認され,辺縁は明瞭,内部エコーは柔らかく一部不均一であった.胸部造影CTにて右冠動脈瘤と診断した.第18病日には,UCG上冠動脈瘤内部の辺縁は輝度が上昇し,器質化血栓と考えられ,また内側は管腔構造を呈していた.第25病日,冠動脈造影を施行し,右冠動脈の開存を確認した.巨大冠動脈瘤に対して冠動脈瘤切除及び冠動脈バイパス術予定となった.
 
31-19 (15:56-16:06)
  僧帽弁閉鎖不全症がシベンゾリン投与にて消失した閉塞性肥大型心筋症の一例
   秋田大学 医学部内科学講座 土佐 慎也,渡邊 博之,宗久 佳子,
  伊藤  宏
症例は66歳女性.平成17年11月発作性心房細動の発症にともない胸部苦痛などの心不全症状を認めたため加療目的に入院となった.心エコー検査にて,非対称性心室中隔肥厚と僧帽弁収縮期前方運動(SAM)を認め,閉塞性肥大型心筋症と診断した.SAMは,後交連よりの前尖,後尖に限局して起こっており,後尖 middle scallopの逸脱を合併していたが,それらに加え僧帽弁の anterolatral sideから起こるV度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)が観察された.心臓カテーテル検査では110mmHgの左室流出路圧較差を認めた.房室順次ペーシングでは,70mmHg程度までの圧較差軽減しか得られなかったが,シベンゾリン70mg静注にてSAM,圧較差ともにほぼ消失し,それにともないMRも消失した.シベンゾリン投与の結果,SAMが軽減しMRが劇的に消失した一例を経験したので報告する.
 
31-20 (16:06-16:19)
  心筋組織性状診断のための心臓壁を伝搬する振動計測と陳旧性心筋梗塞部位への適用
   東北大学 大学院工学研究科 金井 浩
   宮城社会保険病院 検査部 渡辺さち子
   東北大学 加齢医学研究所 西條 芳文
   東北厚生年金病院 田中 元直
【はじめに】我々は,大動脈弁閉鎖時に急峻なパルス状振動が心筋上を伝搬することを確認し,その位相速度の分散性から心筋粘弾性率を推定した.本報告ではその振動の伝搬状態を可視化するとともに,陳旧性心筋梗塞の病変部位に適用し,健常者と比較する.【方法】位相差トラッキング法においてビーム送信方向を十数方向に限定制御し,各ビームに沿って設定された心室中隔約2,000点における運動速度を同時に計測した.大動脈弁閉鎖のタイミングに心II音に対応する振動が生じて心臓壁を伝搬する.その振動波形の周波数解析を行って瞬時位相を得て,位相に関する断層像を生成した.この像を約2ms間隔で調べ,心筋上をパルス状振動が伝搬する様子を確認できる.この処理を,20歳代健常者と陳旧性心筋梗塞患者(LAD)の心尖部四腔断面アプローチに適用した.【in vivo結果】6名の健常者の心室中隔壁では,大動脈弁閉鎖時(T0)の直後に心基部から心尖部に伝搬する様子が明瞭に分かる.伝搬時間は約5ms.一方,陳旧性心筋梗塞患者では,同様に心基部から振動が伝搬するが,中隔壁を心尖部方向に半分進んだ後,心尖部方向には伝搬しなかった.これは,病変部における線維化などに伴う組織性状の変化を反映するものと考えられる.【おわりに】心筋中でパルス状波形が自発的に発生し伝搬する波面の可視化は初めての試みであり,今後,様々な病変での心筋の機械的特性の変化の描出に役立つものと期待できる.【謝辞】実験にご協力頂いた東北大学 長谷川英之氏,宮城社会保険病院 鈴木奈美子氏,アロカ郡山営業所 若松立也氏に感謝する.
 
31-21 (16:19-16:29)
  くも膜下出血症例で左室壁運動経過をtissue trackingで捉えた症例
   秋田県立脳血管研究センター 内科・循環器科 藤原理佐子,泉  学,小野 幸彦
くも膜下出血を発症し,入院時より術前まで心エコーにて経過を追った一症例を報告する.2Dエコーにて2,3,4chamberで左室壁を4分割し壁運動を,同断面にてtissue trackingをも用いて,経時的に4日間にわたり評価した.各chamberで入院時にhypokinesisやakinesisが存在し,徐々に回復する過程を捉えた.その経過はtissue trackingでも類似した絶対値上昇をみた.また,2Dエコーでのnormokinesis,hypokinesis,akinesisに相当する,tissue trackingでの絶対値を比較すると,hypokinesisとnormokinesisでp=0.009,akinesisとnormokinesisではp=0.0002と有意にnormokinesisで高かった.左室壁運動を客観的に定量評価出来る可能性が示された.
 
31-22 (16:29-16:39)
  右内胸動脈−肺動脈瘻の一例
   市立秋田総合病院 超音波センター 小林希予志,阿部  仁,渡辺 智美,
  佐藤 栄里,松田  尚,倉光 智之
    同       循環器内科 中川 正康
   秋田県立脳血管研究センター 循環器科 藤原理佐子
   きびら内科クリニック 鬼平  聡
症例は40代男性.右側胸部に皮下膿瘍が出現,近医にて切開排膿の処置を受けた.その後右膿胸と診断され当院呼吸器科に入院したが,その際心雑音を指摘され循環器科に紹介された.胸骨右縁に最強点を持つ収縮期雑音を聴取し何らかのシャント性疾患が疑われたが,心エコー上明らかな異常を認めず経過観察となった.10ヵ月後心エコーを再検したが,右内胸動脈の拡大,流速の増大を認め,拡大した右内胸動脈は右前胸部の術創部に向かい走行していた.同部位での動静脈瘻が疑われ同科に精査目的で入院となった.血管造影にて右内胸動脈末梢は肋間動脈様に走行し,右肺下葉の肺動脈とシャントを形成しているのが確認され,右肺動脈内で酸素飽和度の上昇を認めた.コイル塞栓術を施行することとなったが,他にも肋間動脈等複数の血管が関与しており段階的に塞栓術を行っている.
 
31-23 (16:39-16:52)
  時間分解能を向上させた心筋ストレインレート空間分布計測
   東北大学 大学院工学研究科 吉新 寛樹,長谷川英之,金井  浩
   東北厚生年金病院 田中 元直
【目的】近年,心筋ストレインの計測装置などが開発されてきたが,心筋内の局所機能を非侵襲的に計測できる貫壁性診断の確立が望まれている.本報告では,心筋ストレインレートの空間分布の時間変化を高い時間分解能で計測し,心周期における収縮・弛緩の遷移過程を解析することで心機能推定を目指す.【方法】22歳と23歳男性健常者2名の左室長軸像において,心臓壁に超音波ビームをスパースに走査し,それらビーム上に設定した多点に位相差トラッキング法[H. Kanai, et al, IEEE Trans. UFFC, 43, 791 (1996)]を適用することで,心筋ストレインレートの空間分布を高時間分解能で計測した.【結果】収縮初期において心室中隔壁と左室自由壁の心尖部側が強く収縮し,この収縮が収縮期の間に心基部側に遷移していく様子が観察され,これは血液を効率的に拍出するための動作と考えられる.また,収縮後期には,左室自由壁の心外膜側が心尖部側で弛緩し始める様子が観察された.
 
31-24 (16:52-17:02)
  コントラストエコー及びストレインにて診断を確定した無症候性左室瘤の一例
   医療生協わたり病院 内科循環器科 渡部 朋幸
   福島県立医科大学 第一内科 高野 真澄
患者は73歳男性.不安定狭心症を疑われ入院した.心電図では明らかな虚血性変化を認めず,安定化後経静脈性心筋コントラストエコー(MCE)を施行した.前壁領域に虚血性の染影低下を認め,前下行枝領域(LAD)の虚血と診断した.左室壁は前壁の一部が欠損し,超音波造影剤が心筋内に流入する様子が観察された.冠動脈造影ではLAD?6の99?および対角枝?9分岐部にかけて99?狭窄を認めた.同部位に対しPCIを行った.左室造影では前壁やや心尖部よりに収縮期に外方に造影剤が漏れ出す様子が観察された.病歴や心電図上からは明らかな心筋梗塞の既往は考えにくかったが,ストレインにて病変部位のストレインの低下を認め,MCEにて周辺領域の灌流低下を認めたことより,過去に対角枝が無症候性に閉塞したことによる限局性の左室瘤形成が最も疑われた.病態の考察にMCE及びが有用であった無症候性の左室瘤の一例を経験したので報告する.
 
 
閉会のあいさつ (17:02-17:07) 東北地方会運営委員長 棚橋善克