日本超音波医学会 東北地方会
第32回学術集会 プログラム・抄録集

日 時: 平成18年9月24日(日)9時00分〜17時00分
場 所: 秋田県総合保健センター
  秋田市千秋久保田町6-6 (tel: 018-831-2011)
大会長: 秋田赤十字病院  小松田智也
参加費: 1,000円
地方会URL: http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連絡先: 〒010-1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222-1
  秋田赤十字病院 消化器科  小松田智也
  TEL: 018-829-5000,FAX: 018-829-5255
  E-mail: koma@archosp-1998.com
 
なお,会場までのアクセス方法につきましては地方会URLで御紹介しております.

講演者へのお願い

・1題につき発表時間7分,討論時間5分の合計12分間です.
・発表方法は原則としてすべて会場PC使用で,Power Pointのみとなります.
・会場には,PowerPoint2003が使用できる画面サイズ1024×768のWindowsコンピュータそのprojectorを用意します.
・当日は受付にて記録メディアを再確認して下さい.
・演者は,発表予定時刻の1時間前までに受付を済ませて下さい.
・Power Pointのスライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守して下さい.
 
発行日:平成18年9月24日






日本超音波医学会 第10回東北地方会講習会
(第32回学術集会併設)のお知らせ

第9回東北地方会講習会を下記の要項で開催いたします.御出席いただいた超音波専門医,超音波工学フェロー,超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.

開催日時: 平成18年3月19日(日) 13:20〜16:10
会  場: 秋田県総合保健センター  秋田市千秋久保田町6-6  TEL: 018-831-2011
講演題目:  
13:20〜14:20      座長 岡田 恭司(秋田大学整形外科)
          花岡 明彦(日立medico)
「超音波治療の現状」
講師 立花 克朗先生(福岡大学解剖学教室)
14:30〜15:30      座長 棚橋 善克(棚橋よしかつ+泌尿器科)
          久保田政昭(明和会中道病院生理検査)
「乳腺超音波診断」
講師 辻本 文雄先生(聖マリアンナ医科大学)
15:40〜16:10      座長 石川 洋子(松園第二病院消化器科)
          沼田 功 (古川市立病院泌尿器科)
「もれの無い「肝胆膵脾」観察のための走査のポイント」
講師 講師 榎 真美子先生(秋田赤十字病院)
参 加 費: 1,000円 (学術集会参加費とは別途徴収いたします.)
定  員: 制限はありません
弁当販売: 本地方会におきましてランチョンセミナーも予定しております.是非そちらを
  ご聴講頂けますようよろしくお願いいたします.
 
講習会 問い合わせ先
〒010-1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222-1
  秋田赤十字病院消化器科 小松田智也
  TEL: 018-829-5000  FAX: 018-829-5255,
  E-mail: koma@archosp-1998.com
  地方会ホームページ:http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/

      
開会の挨拶 大会長 秋田赤十字病院消化器科 小松田智也
 
循環器-1 (9:00-9:36) 座長   伏見 悦子(平鹿病院第二内科)
渡辺 智美(市立秋田病院超音波センター)
 
32- 1
 短期間で僧帽弁閉鎖不全の増悪をきたし,救命し得なかった感染性心内膜炎の一例
   市立秋田総合病院 超音波センター 小林希予志,阿部 仁,渡辺 智美,
  佐藤 栄里,松田 尚,佐々木奈津子,
  倉光 智之
   同 循環器科 中川 正康
   秋田県立脳血管研究センター 循環器科 藤原理佐子
   きびら内科クリニッ 鬼平 聡
症例は70代男性.上大静脈症候群,副腎転移,気管支浸潤を伴う肺小細胞癌で加療中.急性左心不全を発症し当科入院.UCGで大動脈弁に疣贅が付着,僧帽弁に弁瘤形成と穿孔を,また大動脈弁閉鎖不全V度,僧帽弁閉鎖不全U度を認め,感染性心内膜炎と診断した.基礎疾患を考慮し,手術適応はなしと判断した.抗生剤,利尿薬,カテコラミン等の投与により,心不全は一時改善傾向を示したが,その後急激な増悪を呈した.入院1週間後のUCGでは疣贅はさらに増大し,僧帽弁前尖に弁瘤形成と穿孔の増悪を認め,僧帽弁閉鎖不全も増悪した.心不全のコントロールはさらに困難となり救命し得なかった.血液培養は陰性で,起因菌は同定できなかった.
 
32- 2
 右室流出路に巨大な感染性疣贅を形成したVSDの一例
   平鹿総合病院 第二内科 鳴海 創大,伏見 悦子,高橋 佳之,
  佐藤 貴子,遠藤 秀晃,深堀 耕平,
  武田  智,高橋 俊明,関口 展代,
  林 雅人
   同 臨床検査科 高橋久美子,丹波寛子
症例は21歳男性.新生児期よりVSDと診断され近医小児科でfollowされていた.平成18年1月7日から高熱が続き,1月12日からは深呼吸時の胸痛,食欲低下あり入院となった.TTEでは2×3cm大の大きなpouchを伴ったKerklin II型のVSDがあったが,疣贅ははっきりせず.TEEではpouchから右室壁にむかうVSD jetの吹き付ける右室流出路の壁に1cm×2cmの血流にのってひらひらと動く淡いエコーの疣贅が観察された.静脈培養ではペニシリン非感受性の黄色ブドウ球菌が検出され,強力な抗生剤で炎症は徐々に鎮静化した.その後多発性の肺塞栓も合併したが,抗生剤で軽快した.約3週間後にはエコー上疣贅は消失した.本例の診断においてTEEが非常に有用性であった.
 
32- 3
 心房中隔欠損症術後のresidual shun検出に静脈コントラストエコーが有用であった一例
   秋田大学医学部内科学講座循環器内科学分野呼吸器内科学分野  
  宗久 佳子,渡邊 博之,土佐 慎也,
  伊藤  宏
症例は,38歳男性.3歳時に心房中隔欠損症に対し,心房中隔欠損閉鎖術を施行.平成17年8月頃より心不全症状が出現し平成17年11月当科紹介入院となった.血液ガス検査にて低酸素血症を示し,胸部X線で心拡大を認めた.心エコーでは,V度僧帽弁閉鎖不全症とそれに伴う左室拡大,V度三尖弁閉鎖不全症,肺動脈弁上狭窄,右室と冠静脈洞の著明な拡大を認めた.その後の血管造影で左上大静脈遺残が確認された.三尖弁閉鎖不全症以外の右室拡大の原因検索のため,経食道エコー施行するも有意な所見は得られなかった.しかし,静脈コントラストエコーを施行したところ,右左シャントの存在が証明され,MRIにて心房中隔に欠損孔を確認した.その後,residual shunt閉鎖を含めた根治術に成功した.【総括】心房中隔欠損症術後のresidual shunt検出に,静脈コントラストエコーは非常に有用であった.
 
基礎-1 (9:36-10:12) 座長 金井 浩 (東北大学大学院工学研究科)
丹波 寛子(平鹿病院生理検査)
 
32- 4
 陳旧性心筋梗塞部位における大動脈弁閉鎖に伴う振動の伝搬速度の計測
   東北大学大学院工学研究科電子工学専攻 金井  浩
   東北大学病院 診療技術部検査部門 渡辺さち子
   東北大学 加齢医学研究所 西條 芳文
   東北厚生年金病院 田中 元直
【緒言】我々は,大動脈弁閉鎖時に急峻な振動が心筋上を伝搬することを確認し,その位相速度の分散性から心筋粘弾性率を推定した(IEEE Trans. UFFC2005;51:1931-1942).本報告では,その振動伝搬速度に関して,陳旧性心筋梗塞の病変部位と健常部位で比較する.【方法】位相差トラッキング法においてビーム送信を十数方向に限定し,各ビームに沿って設定された約2,000点での運動速度を同時に計測.大動脈弁閉鎖に伴う振動が心臓壁を心基部から心尖方向へ伝搬.その振動の周波数解析を行って,位相に関する断層像を生成.この像を約2ms間隔で並べ,心筋上をパルス状振動が伝搬する様子を確認.この処理を,陳旧性心筋梗塞患者(LAD#6)の心尖部四腔断面に適用.【結果】陳旧性心筋梗塞患者の健常部位での振動伝搬速度は,2.5-3.5m/sに対して,梗塞部位では,1-1.5m/sと遅くなっている.これは,病変部における線維化などに伴う組織性状の変化を反映するものと考えられる.【結言】心筋中でパルス状波形が伝搬する波面の可視化は初めての試みであり,今後,様々な病変での心筋の機械的特性の変化の描出に役立つものと期待できる.【謝辞】実験にご協力頂いた東北大学 長谷川英之氏,宮城社会保険病院 鈴木奈美子氏,アロカ郡山営業所 若松立也氏に感謝する.
 
32- 5
 動脈壁弾性率計測における相関関数のコンパウンドによる組織弁別能の向上
   東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻 長谷川英之,金井 浩
   JR仙台病院 市来 正隆
   仙台医療センター 手塚 文明
【目的】著者らは,心拍による動脈壁の微小厚み変化(ひずみ)を計測し,弾性率分布を描出する手法を提案した[Kanai, et al., Circulation, 2003].本手法におけるひずみ計測は,受信信号の複素相関を算出し,位相偏移を求めることにより行われるため,受信信号のS/Nの影響を受ける.本報告では,S/Nの高い受信信号の寄与が大きくなるようにひずみ推定法を改良した.【方法】我々の従来法では,動脈壁内に設定した375μmの層を75μmごとに深さ方向にシフトしながら各位置において設定した各層の厚み変化を複素相互相関に基づき算出する.したがって,設定した層はお互いに重なる領域がある.そこで,ある深さdのひずみを算出する際に,dにおいて重なっている層の相関関数を加算する.相関関数を加算することにより,振幅の大きい受信信号の寄与が大きくなる.【結果】塞栓症患者の手術の際に摘出された腸骨および大腿動脈18例の弾性率分布をin vitro計測した.我々の従来法では,67±37(脂質),105±76(血栓),989±1359(線維),1292±839(石灰化) kPaであるのに対し,改良法ではそれぞれ,89±47,131±56,1022±1040,2267±1228 kPaとなり,組織間弾性率の差が拡大し,弾性率計測による組織弁別能が向上した.
 
32- 6
 心臓壁内歪み分布の高時間分解能計測による収縮成分の伝搬の描出
   東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻 吉新 寛樹,長谷川英之,金井 浩
   東北厚生年金病院 田中 元直
【目的】近年,心筋ストレインの計測装置などが開発されてきたが,心筋内の局所機能を非侵襲的に計測できる貫壁性診断の確立が望まれている.本報告では,心筋ストレインレートの空間分布を高い時間分解能で計測し,特に心電図R波前後の収縮が始まる様子を解析してその機序の解明を目指した.【方法】23歳と24歳男性健常者2名の心室中隔壁に心尖アプローチにより超音波ビームをスパースに走査しデータを取得した.心電図R波前後のタイミングにおいて,走査したビーム上に設定した心臓壁内の多点に位相差トラッキング法[H. Kanai, et al, IEEE Trans. UFFC, 43, 791(1996)]を適用し,心筋ストレインレートの空間分布を高時間分解能で計測した.【結果】R波直前において心室中隔壁の心尖部付近で収縮が起こり始め,この収縮が心尖部から心基部側に遷移していく様子が観察された.収縮の伝搬速度は約0.6〜1 m/sで心室筋の興奮伝導速度に近い値を示した.
 
産婦人科領域 (10:12-10:36) 座長 室月 淳(岩手医科大学産婦人科)
渡部多佳子(秋田赤十字病院)
 
32- 7
 先天性サイトメガロウイルス感染症に対する超音波ガイド下胎児腹腔内免疫グロブリン投与による胎児治療の試み
   岩手医科大学 産婦人科 室月 淳,賀来 宏維,福島 明宗,杉山 徹
【はじめに】サイトメガロウイルス(CMV)による先天性CMV感染症は,胎児に発育遅延,肝脾腫,脳内石灰化,側脳室拡大などを引き起こし,出生後に発達遅滞や聴力障害などの神経学的後障害を来すことがある.われわれは胎児服腔内への抗CMV抗体高力価免疫グロブリン投与による胎児治療の1例(国内4例目)を経験したので報告する.【症例】27歳,0妊0産.妊娠15週ですでにBPDの軽度減少を認めていたが,妊娠22週でsymmetrical IUGR,羊水過少のため,精査目的で当院に紹介された.初診時にBPDの減少,両側側脳室の軽度拡大,少量の腹水を認めたが,それ以外の奇形などの異常を認めなかった.妊娠27週で脳室周囲の石灰化と肝腫を認め,CMV IgG抗体,IgM抗体とも陽性であったため,先天性CMV感染を疑い,妊娠28週で羊水検査を行った.リアルタイムPCRで羊水中にCMV DNAを1.17×108 copies/ml認めた.妊娠29週と30週の2回,超音波ガイド下に免疫グロブリン投与を行い,現在経過をフォロー中である.【考察】わが国における妊婦のCMV抗体保有率が70%程度まで下がってきており,今後,先天性CMV感染症の増加が懸念されている.CMVワクチンが実用化されていない現状では,免疫グロブリン投与による治療が有望視される.
 
32- 8
 無心体双胎(TRAP sequence)に対し超音波ガイド下ラジオ波焼灼術の胎児治療をおこなった一例
   岩手医科大学附属病院 産婦人科 賀来 宏維,高  嵩 ,小山 理恵,
  室月  淳,福島 明宗,杉山 徹,
   太田西ノ内病院 産婦人科 妹尾 匡人
無心体双胎 TRAP (Twin Reversed Arterial Perfusion) sequenceは一絨毛膜性双胎にみられる異常のひとつで,羊水過多,胎児心不全を合併した場合,ポンプ児は50-75%が胎児死亡に至る.われわれはTRAP sequenceに対し超音波ガイド下ラジオ波焼灼術(RFA)の胎児治療を施行したのでこれを報告する.症例は21歳女性.経腹超音波にて羊水過多あり,ポンプ児の異常は認めなかったが,無心体はstuck twinで下半身は通常形態だが心臓や頭部が欠損していた.22週6日に全身麻酔下にて超音波ガイド下にRFAを施行した.羊水吸引除去後,RFAニードル電極を超音波ガイド下に穿刺し無心体の肝内臍帯血管にまで進め,ラジオ波焼灼を行った.120Wのパワーで無心体の血流遮断に成功,手術を終了した.術後経過は良好で無心体の血流は認められず,健児の心後負荷所見も認めなかった.胎児治療としてRFAは簡便で安全度が高い治療法と考えられる.
 
腹部-1 (10:36-11:00) 座長 長沼 裕子(市立横手病院
大山 葉子(秋田組合病院)
 
32- 9
 造影USが出血の診断に有用であった転移性肝腫瘍破裂の一例
   市立横手病院検査 大嶋 聡子,小丹まゆみ
   同 内科 長沼 裕子,木村  浩,佐藤美知子,
  武内 郷子
   同 外科 丹羽 誠
   同 放射線科 平野 弘子,法花堂 学,川越 修
症例】78歳女性.6年前子宮平滑筋肉腫切除.3年前転移性肝腫瘍のため肝外側区域切除.2日前から38℃の発熱,全身倦怠感あり受診.血圧100/80と低めで,Hb.5.3g/dlと貧血を認めた.緊急腹部CTで肝S8の転移性腫瘍,右下腹部と左腹部に腹膜播種,腹水を認めたが,どの部位からの出血か,明らかには同定できず.USで肝S8の腫瘍が肝表面にでており,その部位にフィブリン様の淡い柔らかな線状エコーを認め,肝腫瘍の破裂を疑った.造影USを施行したところ,肝腫瘍から線状エコーのとおりにレボビストのもれが確認できた.肝動脈塞栓術による止血を施行.7日後経過観察のUSでは,腹水は著明に減少しており,造影でも前回のようなレボビストのもれは認められなかった.貧血の進行は見られず,自覚症状も改善し,退院した.【使用装置】日立社製EUB8500.【まとめ】造影USが肝腫瘍破裂の診断,経過観察に有用であった.
 
32-10
 小腸GISTの一例
   市立横手病院 検査科 小丹まゆみ,大嶋 聡子
   同 内科 長沼 裕子,船岡 正人,木村 浩
   同 放射線科 平野 弘子
   同 外科 丹羽  誠,粕谷 孝光,加藤 健
   秋田大学 医学部病理病態医学講座 西川 祐司
【症例】61歳女性.腹痛のため救急受診.血液検査でAMY596IU/Lと高値で膵炎を疑い入院.緊急の腹部CTで異常所見を認めず.翌日のUSで左上腹部に内部エコー比較的均一な,境界明瞭の3.5cm大の腫瘍を認めた.膵体尾部の腫瘍を疑い,後日造影USを施行しようとしたところ同部に腫瘍を認めず.経過観察目的のUSで,再び左上腹部に小腸に接して腫瘍を認めた.カラードプラでは腸間膜の血管が栄養血管として考えられた.造影USでは,内部の辺縁中心に染影が認められた.腹部CTでも,同様の所見が得られた.小腸壁の粘膜下腫瘍を疑い,手術施行.病理所見は良性の空腸のGISTであった.【使用装置】日立社製EUB8500.【まとめ】US,造影USが小腸の粘膜下腫瘍の存在診断に有用であった.小腸の粘膜下腫瘍は観察時に同じ位置に認められないことがあり,腹腔内を大きく移動するという認識が必要である.
 
腹部-2 (11:00-11:36) 座長 倉光 智之(市立秋田病院消化器内科)
能登 宏光(秋田泌尿器クリニック)
 
32-11
 肝細胞癌に対する経皮的ラジオ波焼灼治療成績
   市立秋田総合病院 消化器内科 倉光 智之
   同 超音波センター 阿部  仁,渡辺 智美,小林希予志,
  佐藤 栄里,松田  尚,佐々木奈津子,
  中川 正康
   きびら内科クリニック 鬼平  聡
【目的】2000年7月より2005年末までの肝細胞癌に対する経皮的超音波下ラジオ波焼灼療法(RFA)の成績を報告する.【対象・方法】安全性に関してはRFA161セッション(65例)を対象とした.初回治療時腫瘍径5cm以下,単発,脈管侵襲のなかったRFA 31例において局所再発,異所再発率をPEIT 29例と比較した.【結果】1) RFAの合併症: 161セッションで,出血1,胆管障害1,播種1,肝梗塞1,肉腫様急速増大2,肝膿瘍0,消化管穿孔0,胆嚢穿孔0.2) PEIT,RFAの局所再発率(近傍再発も含む)は,2年=51.7:24.6,3年=59.1:34.1,5年=64.3:34.1.異所再発率は,2年=49.3:42.4,3年=49.3:46.3,5年=69.9:59.7.【結論】現在,内科治療の中心であるRFAは比較的安全で,局所の治療効果は高かった.
 
32-12
 虫垂粘液嚢腫の検討
   秋田組合総合病院 臨床検査科 大山 葉子,紺野 純子,吉田千穂子
  佐々木俊樹
   同 消化器科 星野 孝男
   同 外科 遠藤 和彦,下山 雅朗
   秋田赤十字病院 消化器科 石田 秀明,小松田智也,榎 真美子,
  八木澤仁
【はじめに】虫垂粘液嚢腫(appendiceal mucocele: 以下AM)は比較的稀な腫瘍であるが,近年の超音波検査(以下US)の普及に伴い報告例も増加している.【対象と方法】過去4年間に腫瘍摘出術でAMと最終診断された7例(男4例,女3例,年令45〜78歳,平均67.6歳)を対象にそのUS所見を検討した.【診断装置】日立社製EUB-6500【結果】1) 7例全例で,病変部が中心に無〜低エコー部を含む10.5〜35×25〜60mm大の円形~楕円形の腫瘤として表現された.2) 病変部は全例右下腹部に位置した.3) 中心部には点〜線状エコーが多数みられ,プローブの圧迫や体位変換で移動した.これらの所見からAMの診断はUSで可能だった.4) 壁構造は6例で保たれ,1例で壁の第4層(筋層)が断裂していた.この症例は約一ヶ月後の手術の際,穿孔し腹腔内に粘液が見られ偽粘液腫の状態を呈した.【まとめ】AMの診断自体はUSで比較的容易であるが,壁に断裂を認めた場合は早急の処置が必要と思われた.
 
32-13
 骨盤腎の2例
   秋田赤十字病院 消化器科 能登  彩,石田 秀明,小松田智也,
  古川佳代子,八木澤 仁,榎 真美子,
  石井  透,大野 秀雄,勝浦 由美
骨盤腎は比較的稀な腎の先天的位置異常であり,その超音波像の報告は散見される程度である.今回その2例を経験したので超音波所見を中心に報告する.【使用機種】東芝社製Aplio80.【症例1】40F. 一過性の腹部不快感で来院.超音波上肝右葉に4cm大の血管腫あり.左腎は正常であったが,右腎は通常の位置に認められなかったが,骨盤内に10cm大の卵円形の腫瘤あり.腫瘤は腹側の高エコー領域と背側の実質部から構成されていた.腹部大動脈から直接動脈が分岐しそれが腹側の高エコー領域を介して背側に向かい多数の分枝を出していた.この特徴的な像から骨盤腎と診断した.CTなど他の画像診断でも同様の所見であった.【症例2】87M. 胃癌の術前検査目的に当科入院.自覚症状無し.患者は以前の他院のドックの超音波検査で先天性左腎無形成と言われたことがあった.当科の超音波検査でも,左腎は通常の位置に存在せず,骨盤内に症例1同様の所見を認め骨盤腎と診断した.【まとめ】1) 超音波で,腎を通常の位置に認めない場合骨盤腎を考慮して,骨盤を検索する必要がある.2) 骨盤腎では腎門部が背側を向くため,侵襲的検査の際は注意が必要である.これらの例の静止画に加え,症例2で行なった造影超音波像を動画で提示する.
 
循環器-2 (11:36-12:00) 座長 渡邊 博之(秋田大学第二内科)
西条 芳文(東北大学加齢医学研究所)
 
32-14
 動脈硬化性疾患スクリーニングのための頸動脈エコ
   市立秋田総合病院 超音波センター 渡辺 智美,阿部  仁,小林希予志,
  佐藤 栄里,松田  尚,佐々木奈津子,
  倉光 智之
   市立秋田総合病院 循環器科 中川 正康
   秋田県立脳血管研究センター 循環器科 藤原理佐子
   きびら内科クリニック 鬼平  聡
我々は本学会の第78回学術集会にて,動脈硬化性疾患スクリ−ニングにおける頸動脈エコ−指標ではtotal plaque score(TPS)≧10.0または最大IMT≧2.0mmを至適カットオフレベルと発表した.それに対し,この2つの基準では該当する症例数に大きな差があるのではないかという意見が寄せられた.そこで今回はさらに多数例を対象とし,両指標の分布と至適カットオフレベルについて検討した.動脈硬化性疾患有病者184例を含む890例において,TPSは0〜38.5,平均8.5で,最大IMTは0〜8.6,平均2.0mmであった.カットオフレベルは今回もTPS≧10.0または最大IMT≧2.0mmが妥当と考えられ,それぞれに該当する症例は310例(34.8%),345例(38.8%)であった.TPS≧10.0と最大IMT≧2.0mmはほぼ同程度の動脈硬化重症度を示すものと考えられた.
 
32-15
 肺塞栓症院内発症に関する下肢静脈超音波検査の役割
   国立病院機構仙台医療センター 臨床検査科 三上 秀光,伊藤真理子,長谷川真奈美,
  高橋 千里,葛西 智子,安藤 正子
   同 循環器科 渡辺  力,谷川 俊了,馬場 恵夫,
  田中 光昭,尾上 紀子,篠崎 毅
【目的】肺血栓塞栓症(PTE)院内発症例の最大リスクは深部静脈血栓症(DVT)の存在である.我々はPTE発症のリスク管理目的に下肢静脈超音波検査を積極的に実施してきたので,その成績とPTE院内発症に与えた影響を検証した.【方法と対象】2001年から2005年までの5年間にDVTスクリーニング目的に下肢静脈超音波検査を実施した757例(平均62.6歳,男女比=1:3.5)を対象とした.陽性所見を@血管内異常エコー像の存在,A探触子の圧迫による血管扁平化の欠如,Bドプラー血流信号の欠損,Cミルキング走査時の血流信号の欠損と定義した.この間の院内PTE発症者数を,退院患者データベースを用いて検索した.【成績】DVT陽性者数/下肢静脈超音波検査件数(検出率)は2001年2例/9例(22%),2002年13例/99例(13%),2003年22例/190例(12%),2004年31例/203例(12%),2005年60例/256例(23%),2006年(6月まで)19例/96例(20%)であり,DVT陽性者総数は経年的に増大した.これらのDVT陽性者全例に対して,積極的なヘパリン療法や下大静脈フィルター挿入術が実施された.DVT検出率の増大はスタッフの血栓予防意識を高め,積極的なPTE予防対策の実施を可能にした.一方,院内PTE発症数は,2001年12件,2002年16件,2003年10件,2004年12件,2005年5件,2006年0件(6月まで)と経年的に減少した.DVT陽性者数と院内PTE発症数の経年的変化は鏡像関係を示した.【結論】下肢静脈超音波検査数の増大が院内PTE発症数の減少に寄与したと考えられた.
 
講習会講演関連 ミニレクチャ (13:00-13:20) 座長 石田 秀明(秋田赤十字病院)
32-16
 実験用H.I.F.U.システムの一構成例
   元秋田大学 工学資源学部 吉田 泰夫
最近,非侵襲治療法としてH.I.F.U. (High Intensity Focused Ultrasound)が注目されている.この装置で使用される周波数は数百kHzとMHz帯があり,また焦点領域の音響パワーは数W〜数kWとかなり広範囲で実験されている.さらに,マイクロバブルの相乗効果を利用した実験など非常に興味深い研究報告がなされている.現在,これらの研究に用いることが出来る専用の装置は市販されているものが少なく,容易に準備することが出来ないと考えられる.筆者は秋田大学医学部の依頼により,実験用H.I.F.U.システムの構成を試みた.このシステムは安価な無線用装置を用い,MHz帯で周波数,出力パワー(最大駆動電力500W)が任意に可変でき,集束用トランスデューサを安定かつ正確に駆動出来るものであり,その概要を紹介する.
 
基礎-2 (16:15-16:39) 座長 千葉 裕(東北公済病院)
長谷川英之(東北大学大学院工学研究科)
 
32-17
 インパルス性超音波のレポビスト透過特性の測定
   秋田大学 工学資源学部 佐藤 武輝,井上  浩
インパルス的な超音波は,通常の超音波エコーに用いられる超音波パルスに比べて距離分解能の向上が期待できる.一方,近年の超音波エコーとして狭帯域の超音波パルスを用いた気泡の非線形振動によるイメージングが行われている.本研究では,インパルス的な超音波を利用したイメージングのための基礎的研究として,微小気泡中を通過するときの応答について調査した.具体的には,4mm厚さの薄い容器を作製し,その中に300mg/mlの濃度のレボビストを生理食塩水により希釈し注入して,試料とした.この容器を脱気水中に置き,15mmの間隔に送受波器を設置して,生理食塩水とレボビスト溶液を透過したインパルス性超音波波形を測定した.レボビスト造影剤の注入後,10分間の受波波形の時間変化を計測し,その波形の解析から,インパルス性超音波と微小気泡の間に特異的な応答があることが示唆された.
 
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 凹面PVDFトランスデューサを用いたインパルス超音波の画像化の基礎研究
   元秋田大学 工学資源学部 吉田 泰夫
   秋田大学 工学資源学部 赤坂 和紀,佐藤 武輝,井上 浩
本研究では,凹面PVDFトランスデューサによるインパルス超音波の送受波と,その画像化への適用の基礎研究を行った.インパルス超音波から得られる画像は高解像度のCモード像と焦点付近のBモード像の表示が期待される.本研究では,送受波器を自動二次元走査しながら,得られる反射波信号データをA/D変換してパソコンに取り込んだ後,画像化した.使用したPVDF振動子の厚みは約32μm,曲率半径は15mm,方位方向の-6dB分解能は焦点近傍で約150μmである.細密な軟部組織の画像化例として構造が明確に描出できると考えられる,体長約60mmの金魚の尾の部分の骨に焦点を合わせてCモード画像を試みた.反射率が大きいうろこは剥がして試料とした.このシステムにより,尾の骨の形状や間隔が推定出来るCモード像が得られ,インパルス超音波による画像化の有用性が明らかになった.
 
閉会のあいさつ (16:40-16:50) 東北地方会運営委員長 棚橋善克
 
次回大会長の挨拶 (16:50-17:00) 東北公斉病院泌尿器科  千葉 裕