日本超音波医学会 東北地方会
第35回学術集会 プログラム・抄録集

日 時: 平成20月3月23日(日) 9時15分〜17時30分
場 所: 仙台市情報・産業プラザ(アエル5階)
  仙台市青葉区中央1-3-1  TEL: 022-724-1200
大会長: 東北厚生年金病院  阿部眞秀
参加費: 1,000円
地方会URL: http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連絡先: 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第35回学術集会事務局
  TEL: 022-795-7081,FAX: 022-263-9444
  E-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp
 

講演者へのお願い:

・一般演題は,1題につき発表時間7分,討論時間5分の合計12分間です.
 症例報告は,1題につき発表時間5分,討論時間3分の合計 8分間です.
・発表は,原則としてすべて会場に設置してあるPC上で,Power Pointを利用して頂きます.
 (PowerPoint: 2007 (Power Point 2003のファイルも利用できます),コンピュータ: Windows XP,
  画面サイズ: 1024×768)
・演者は,発表されるセクションの前のセクション終了前までに受付を済ませて下さい.
・Power Pointのスライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守して下さい.


単位について:

・筆頭者で発表された超音波専門医,工学フェローの方には15単位(共著者での発表には7.5単
 位),筆頭者で発表された超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.
・学術集会に出席された超音波専門医,工学フェローの方には15単位,超音波検査士の方には
 5単位の研修・業績単位が与えられます.
 
発行日:平成20年3月14日






日本超音波医学会東北地方会
第13回東北地方会講習会

第13回東北地方会講習会(第35回学術集会併設)を下記の要項で開催いたします.講習会に出席された超音波専門医,超音波工学フェロー,超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.

開催日時: 平成20年3月23日(日) 12:40〜14:00
会  場: 仙台市情報・産業プラザ(アエル5階)  仙台市青葉区中央1-3-1 TEL: 022-724-1200
講演題目: 12:40〜13:20    座長  仙台医療センター  千田 信之
 
「乳房超音波診断とガイドラインの使い方」
講師  渡辺 隆紀 (仙台医療センター外科)
  13:20〜14:00    座長  東北厚生年金病院  阿部 眞秀
「肝癌に対するInterventional Ultrasound
講師  岩崎 隆雄 (東北大学病院消化器内科)
参 加 費: 1,000円 (学術集会参加費とは別途徴収いたします.)


なお,日本超音波医学会第36回東北地方会学術集会・第14回講習会は,平成20年9月21日(日)山形テルサ(山形市)にて開催予定です.大会長は,鵜飼克明(公立置賜総合病院 内科)です.


開会の挨拶 ( 9:15- 9:20) 大会長 東北厚生年金病院  阿部 眞秀
 
1 基礎T (9:20-10:20) 座長 東北大学加齢医学研究所  西條芳文
 
35- 1 ( 9:20-9:32) 【一般演題】
  周波数コンパウンドと相関窓実効位置推定によるひずみ推定精度向上
  長谷川英之,金井 浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
著者らは,直交検波信号の相互相関関数を用いて受信波の位相変化を検出し,心拍による動脈壁の変位・ひずみ分布を推定できる位相差トラッキング法を開発した.本報告では以下の2点につき改良を試みた.(1) 散乱波が多数存在し,それらが干渉した場合,検波周波数成分が極端に小さくなる場合がある.(2) 相関窓の位置xは幾何学的な中心としているが,窓内の信号は非定常であり,窓内のサンプル点ごとに位相推定への寄与が異なる(窓位置xは,変位分布{Δx(x)}の傾き(=ひずみ)を推定する際に必要).上記の問題に対し下記のような対策を施した.(1) 複数の周波数(1 MHz間隔)で検波を行った.(2) 検波信号による重み付け重心位置を窓の位置とした.図は,内径8 mm,外径10 mmの均一な円筒管ファントムのひずみを本研究グループの従来法(a)および本提案法(b)により計測した結果であり,ひずみの推定精度が改善されたことが確認できる.また,病変が無く軸方向には均一と思われる健常者の頸動脈で計測を行ったところ,計測されたひずみの分散が29%(従来法)から15.7%(提案法)に減少した.
(a) 本研究グループの従来法および(b) 本提案法により推定された円筒管ファントムの径方向ひずみ分布.
 
35- 2 ( 9:32- 9:44)【一般演題】
  粘弾性値推定による橈骨動脈内皮依存性弛緩反応の評価
  池下 和樹,長谷川英之,金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
循環器疾患等の主な原因とされている動脈硬化症は,血管の内側(内皮)から進行するとされている.さらに,動脈硬化症の初期段階では,血管中膜を構成している平滑筋のタイプが変化することも報告されている.ゆえに,動脈硬化症の早期診断のためには,血管最内層を覆う内皮細胞の機能や,血管壁に粘弾性効果を与えている平滑筋の力学的特性の計測・評価が重要となる.本報告では橈骨動脈において,血管壁応力−ひずみ特性の一心拍中での変化を計測し,内皮反応時における粘弾性特性変化の非侵襲的な計測法について述べる.位相差トラッキング法を用いて計測された内中膜領域厚み変化と,トノメトリ血圧計によって連続計測された血圧波形から,一心拍中の応力−ひずみ特性を取得した.また,壁の粘弾性モデルとしてVoigt模型を仮定し,応力(血圧)の実測値とモデル化された応力との二乗誤差の時間平均値が最小となるように静的弾性率,粘性率,最低血圧に対応する応力を推定した.下図は内皮反応時における応力−ひずみ特性と粘弾性値の時間推移である.駆血解除後の一時的な壁の弛緩(弾性の低下)や,全体的な粘性の増加が計測されている.
図.内皮反応時における応力−ひずみ特性(左)と粘弾性パラメータの時間推移(右)
 
35- 3 ( 9:44- 9:56)【一般演題】
  局所的な心筋ストレインレート推定のための心臓壁変位の二次元推定に関する検討
  本庄 泰徳,長谷川英之,金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
ストレインレートのイメージングは,局所心筋機能の定量的評価に有用な方法であるが,高分解能で解析可能なのはビーム方向のみである.しかし,心臓壁の動きは1次元的ではないため,超音波ビームと直交する方向(ラテラル方向)のトラッキングやストレインレートのイメージングも必要である.本報告では,反射超音波RF 信号間の2次元相互相関関数を用いて心臓壁の2次元的な挙動の推定を行った.この2次元相互相関係数を算出する際の重要なパラメータである関心領域と関心領域の探索範囲の大きさについて検討した.そのために,左長軸断面と心尖長軸断面において位相差トラッキング法を用いてそれぞれの断面におけるビーム方向の変位を算出した.それらを左室長軸断面における2-Dトラッキングのビーム方向とラテラル方向の変位の真値として最適化を行った.Fig.1に示すように,両者の変位の相関係数は0.93となった.
図.心臓壁の2次元変位の推定結果
 
35- 4 ( 9:56-10:08)【一般演題】
  超音波RF信号のコヒーレンスに基づく心臓壁領域の自動同定
  衣川 尚臣,長谷川英之,金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
超音波Bモード断層像内の心臓壁領域と心内腔領域を自動同定することを目的とし,両領域からの超音波RF 信号を周波数領域で解析を行う.超音波断層像(図(a))の輝度では,心臓壁領域と心内腔領域における重複が大きいため,輝度を用いた両領域の自動同定は難しい.そこで,両領域からのRF信号の複素周波数スペクトルの時間変化を振幅二乗コヒーレンス関数を用いて評価する.心臓壁では,その変形の影響はあるものの同一対象物からの反射波が得られるためコヒーレンスが高くなる.一方,心内腔領域では超音波の散乱体である血球は超音波ビームの焦域内にとどまらないため反射波形が変化しコヒーレンスは低くなる(図(b)).したがって,振幅二乗コヒーレンス関数の値に最適な閾値を設定することにより両領域の弁別が可能となった(図(c)).なお,閾値は,手動で識別した壁および内腔の領域におけるコヒーレンスの分布に基づき,ベイズ決定則によって最適値を決定した.
図. (a)Original B-mode images. (b)Images of the magnitude-squared coherence function. (c)Region identification based on magnitudesquared coherence function. (1)Longitudinalaxis view. (2)Apical 4-chamber view.
 
35- 5 (10:08-10:20)【一般演題】
  超音波メス使用時の発熱量推定を目指した軟組織の粘弾性特性計測
  鈴木 直貴,長谷川英之,金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
本研究では,プロトタイプ型超音波メスを用いて,超音波メスが軟組織に与える影響について検討を行う.軟組織の粘弾性特性をVoigtモデルと仮定し,プロトタイプ超音波メスを単振動で駆動すると,応力−ひずみ特性はヒステリシス曲線を描く.このヒステリシス曲線で囲まれる面積は,超音波メスによって軟組織を加振した際に発生する熱に対応し,軟組織の弾性率Eと粘性率ηに依存する.これらのことから軟組織の弾性率E および粘性率ηを知ることができれば,超音波メスを軟組織に接触した際の発熱量の計算が可能となる.軟組織のアドミタンスY(ω)を超音波メスの電気端から測定し,応力と電圧,ひずみ速度と電流を各々対応させ,粘性率ηと弾性率Eに対応する抵抗rおよびキャパシタンスCの値の推定を行った.試料は軟組織としてトリ肉,弾性率が既知(48.8 kPa)であるシリコーンゴムを基準として測定を行ったところ,軟組織とシリコーンゴムのキャパシタンスの値は約2倍異なった.この比の値から軟組織の弾性率は98 kPaと推定され,文献値(100 kPa)と良く対応した.
.図 (a)Amplitude |Y(ω)| and phase ∠ Y(ω) of admittanceY(ω). (b)Admittance circle.
 
2 循環器T (10:20-11:00) 座長 東北厚生年金病院  菅原 重生
 
35- 6 (10:20-10:32)【一般演題】
  当院における下肢静脈超音波検査の現状
  山崎  愛1,黒川 貴史1,吉田 梨絵1,四ノ宮祐記1,熊谷 明広1,中島 博行1,菅原 重生2,片平 美明2
  1東北厚生年金病院 中央検査部,2同 循環器科
近年,深部静脈血栓症(DVT)診断の検査法の一つとして,下肢静脈超音波検査が重要視されている.当院では2002年から始まり件数は年々増加している.2007年の当院における下肢静脈超音波検査件数は140件で,初回検査は98件(男性33名,女性65名),follow up検査は42件であった.初回検査例において,依頼科は整形外科と循環器科が多く,外科,リウマチ科がこれについでいた.検査依頼目的は,深部静脈血栓の有無の評価であり,内訳は手術前後のスクリーニング,下肢浮腫や肺血栓塞栓症の原因検索,下肢静脈瘤精査等である.検査の結果,深部静脈に血栓様エコー像が認められたのは39件(39.8%),認められなかったのは59件(60.2%)であった.下肢静脈超音波検査は,低侵襲かつ簡便であり,スクリーニングや原因検索のために有用であると思われる.より効率的な検査・手順を確立していくことが今後の課題である.
 
35- 7 (10:32-10:40)【症例報告】
  心嚢内気管支嚢胞の一例
  川口真喜子1,菅原 重生1,山家  実1,菊田  寿1,片平 美明1,渡辺  卓2,佐藤  充2,三浦  誠2,村上 一宏3
  1東北厚生年金病院 循環器科,2同 心臓血管外科,3同 病理部
症例は50歳台女性.15年前に心膜炎の既往あり.2007年11月初旬より前胸部重苦感,呼吸苦が出現し近医を受診,胸部写真にて心陰影の異常が認められ,当科紹介となる.心エコー検査では,心嚢内に左房,左室に接する長径約10 cmの嚢胞性腫瘤を認め,内部はやや高エコーの液体成分で満たされていた.11月下旬手術を施行,術中所見では,心エコー検査所見と同様に心嚢内に巨大な嚢胞を認め,心膜の著明な肥厚と高度の癒着がみられた.嚢胞と心膜,心臓,肺動脈との癒着が認められたが,嚢胞壁は周囲組織から容易に剥離され摘出された.嚢胞の内溶液は白濁色であった.病理所見では,嚢胞壁の内腔面に線毛円柱上皮が認められた.気管支腺構造や軟骨成分も認められ,気管支嚢胞と診断された.心嚢内気管支嚢胞は稀な疾患であり,報告する.
 
35- 8 (10:40-10:52)【一般演題】
  ドック健診における頸動脈超音波検査の実施状況
  三国谷慶子,長谷香保子,平田 留美,桜庭 貴子,須藤 俊之,櫛引 大輔
  青森県総合健診センター
【はじめに】当センターのドック健診で頸動脈超音波検査を実施した受診者につき1) max-IMTの平均値の検討,2) 若年者における動脈硬化の危険因子,3) 血圧脈波検査(baPWV)との比較の3項目について検討した.【対象】2006年4月から2007年12月までに,頸動脈超音波検査を受けた2391人(男性1560人,女性831人)を対象とした.年代別にみると,40代約40%,50代約30%,39才以下約20%,60才以上約10%の順であった.【結果】1) max-IMTの平均値は加齢による増加を認め,性別では50代までは有意に男性が高値であった.2) 39才以下の若年者466人中,異常所見ありは66人14.2%であった.危険因子は脂質異常が明らかに高率で,次いで肥満,喫煙,高血圧,糖尿病の順であった.3) 頸動脈超音波検査からみた血圧脈波検査との一致率は,正常61.2%,軽度動脈硬化30.7%,中等度動脈硬化28.1%,重度動脈硬化40.7%であった.
 
35- 9 (10:52-11:00)【症例報告】
  上大静脈,下大静脈,右心房内に血栓を認め,保存的治療にて軽快した肺血栓塞栓症の一例
  金子 一善1,藤森  清2,橋爪 英二3
  1酒田市立酒田病院 内科,2同 脳神経外科,3同 外科
症例は76歳女性.関節リウマチ,脳梗塞後遺症,認知症にて通院中.心房細動既往無し. 平成19年9月8日, 脳梗塞再発にて入院しエダラボンにて保存的治療開始.9月16日に胸痛, 呼吸苦, 両下浮腫, 血液酸素飽和度低下,頻脈性心房細動を認め緊急CTを施行した所,肺動脈血栓および両深部静脈から下大静脈に静脈閉塞を伴うび慢性の血栓閉塞所見を認めた.上大静脈および右心房内にも陰影を認めたため心エコー検査を施行.右心房内に可動性の数珠状の構造物を認め,CT上悪性腫瘍所見を認めなかった事より血栓と推察した.手術や侵襲的処置も検討したが,血栓の状況および認知症と急性期脳梗塞の状態より保存的治療を選択した.ヘパリン持続点滴およびワルファリン導入で心内の構造物は消失し上下大静脈血栓も軽快.その後ワルファリンコントロールとリハビリを行い全身状態悪化無く独歩退院した.保存的のみで軽快した症例を経験したので報告した.
3 消化器T (11:00-11:40) 座長 公立置賜総合病院  鵜飼 克明
 
35-10 (11:00-11:12)【一般演題】
  腹部3D表示を用いたsurface renderingの有用性について
  伊藤 恵子1,高橋  豊1,須田亜衣子1,五十嵐 潔2,石田 秀明3,小松田智也3,八木澤 仁3,渡部多佳子3,濱滝 寿伸4
  1仙北組合総合病院 臨床検査科,2同 消化器科,3秋田赤十字病院 超音波センター,4東芝メディカル
【はじめに】コンピュータ技術の発展に伴い腹部超音波診断の場においても3D表示が用いられはじめた.応用として造影法,水平断面(c-plane)の再構築などがあげられるがsurface rendering(SR)法もその一つである.今回,我々はSR法が有用であった2例に関しその超音波像を中心に報告する.【使用機種】東芝社製AplioXG(中心周波数4 MHz)【症例1】67歳・女性, 胆嚢癌.胆嚢内腔内に進展する腫瘍の表面の状態が全体に渡り理解しやすくなった.【症例2】45歳・男性,肝硬変.肝表面から盛り上がる大小の結節の分布が理解しやすくなった.【まとめ】SR法を用いた立体表示に関しては羊水内の胎児の観察が広く知られているが基本的には液体―固体間の境界面に関しては高い有用性が期待される.今回提示したような胆汁―胆嚢壁,腹水―肝臓に関してはSR法が有効な環境と思われ,本法はおおいに利用されるべきだと思われた.
 
35-11 (11:12-11:24)【一般演題】
  Zone sonographyによる横隔膜エコーの検討
  石田 秀明1,小松田智也1,渡部多佳子1,八木澤 仁1,石井  透1,高橋久美子1,友松 尚子1,近藤 祐司2,大山 葉子3,長沼 裕子4
  1秋田赤十字病院 超音波センター,2富士フィルム株式会社 R&D統括本部 機器システム開発センター FD4,3秋田組合総合病院 臨床検査部,4市立横手病院 内科
【はじめに】Zone sonography(以下ZS)は画像全体の設定音速(以下環境音速)を多段階に変更可能である.今回我々は,ZSを用い肝背側の横隔膜エコーの状態を検討し若干の知見を得たので報告する.【使用機器】富士フィルム社製Fazone.【対象と方法】過去4ヶ月間に経験した,超音波所見[肝腎コントラスト陽性など]と生化学データ[肝炎ウイルス[-]] 等から脂肪肝と診断された64例中横隔膜エコーが描出された45例〔M:F=31:14,年齢12-80歳,平均42歳〕に対し,a) 通常設定(1540 m/sec),b) 脂肪設定(1460 m/sec),c) 水設定(1500 m/sec) の3種類の画像を作成,横隔膜エコーが最も鮮明に描出されている設定を検討した.【結果】脂肪設定(28/45,62.2%),c) 水設定(7/45,15.6%),通常設定(6/45,13.3%) で,どれともいえないもの(4/45,8,9%)であった.[有意差あり]環境音速を脂肪設定にすれ横隔膜エコーは鮮明になる.
 
35-12 (11:24-11:32)【症例報告】
  乳がん術後膵尾部転移の一例: 造影超音波所見を中心に
  小丹まゆみ1,大嶋 聡子1,長沼 裕子2,小田嶋 傑2,丹羽  誠3,若林 俊樹3,平野 弘子4,法花堂 学4,石田 秀明5
  1市立横手病院 臨床検査科,2同 内科,3同 外科,4同 放射線科,5秋田赤十字病院 消化器科
【はじめに】乳癌の膵転移は比較的まれとされている.乳癌術後の経過観察中に膵尾部転移を認めた一例を経験したので造影超音波所見を中心に報告する.使用装置: 日立EUB8500.【症例】66歳女性.4年前に左乳癌で左乳房摘出(invasive lobular carcinoma). 補助療法を行い経過観察中,術後4年目の腹部超音波検査で脾門部から脾内に続く低エコー腫瘍を認めた.造影超音波検査では早期に樹枝状の細い腫瘍血管が描出され,腫瘍実質も染影された.CTでも同様の所見であった.脾門部の転移性腫瘍として手術施行.手術所見は膵尾部を中心に腫瘍が存在し脾臓と左腎へ浸潤性の病変を認め,膵体尾部脾左腎切除施行.病理はで乳癌転移の所見であった.【考察】膵尾部転移は切除可能なことも多く,超音波検査で脾を音響窓として脾門部を注意深く観察することは重要である.
 
35-13 (11:32-11:40)【症例報告】
  Multiseptate Gallbladderの一例
  草野 昌男,横山 顕礼,越田 真介,島田 憲宏,山極 哲也,小島 敏明,池谷 伸一,中山 晴夫,須貝 吉樹,樋渡 信夫
  いわき市立総合磐城共立病院 消化器科
Multiseptate Gallbladderは胆嚢内腔が隔壁により大小不同の多数の部分に分けられる稀な先天奇形である.今回われわれは,Multiseptate Gallbladderの1例を経験したので報告する.【症例】16歳,男性.【現病歴】検診で尿蛋白陽性を指摘され当院を受診.腹部超音波検査で胆嚢内腔に隔壁が多数認められた.【既往歴】特記すべきことなし.【身体所見】身長173.5 cm,体重63.5 kg,胸腹部に異常所見なし.【検査所見】血算,生化学に異常はなく,尿蛋白は±であった.【腹部超音波検査】胆嚢内腔に隔壁様構造を認めたが,位置の異常,結石,ポリープ,壁肥厚は認めなかった.【腹部CT検査】単純で隔壁は不明瞭だが,造影では複数の嚢胞状の内部構造が明瞭となった.【腹部MRI検査】胆嚢は複数の内腔からなる多嚢胞様の形態を示した.結石,腺筋症の所見はみられなかった.以上の検査結果よりMultiseptate Gallbladderと診断し経過観察中である.【考察】Multiseptate Gallbladderは1963 年にSimon らが初めて報告,また本邦では20例程度であり,貴重な症例と考え報告する.
 
4 乳腺・甲状腺・産婦人科 (14:05-14:49) 座長 長町女性クリニックセキネ  関根 雪美
 
35-14 (14:05-14:17)【一般演題】
  ドック健診における乳腺超音波検査の実施状況
  水野 博子,今  敦子,三上 洋子,坪田裕美子,須藤 俊之
  青森県総合健診センター 検査課
【目的】当センターのドック健診で実施している乳腺超音波検査の受診者について分析し,その検討結果を報告する.【対象】2006年4月から2007年12月までの受診者1023名を対象とした.【結果】各年度の受診者数は2006年度416名,2007年607名であった.受診者を年代別にみると40代が36.7%と最も多く,次いで50代29.1%,30代19.8%の順であった. カテゴリー別分類では「カテゴリー1」68.9%,「カテゴリー2」22.2%,「カテゴリー3」7.7%,「カテゴリー4」1.2% であった.カテゴリー3以上を要精検としているので,要精検者は2006年度44名(10.6%),2007年45名(7.4%)であった.要精検者の病変部位は左乳房のみが33%,右乳房のみが27%, 両側性が40%であった.病変の好発領域は左右ともC域が最も多く,次いでD域,A域の順であった.所見は腫瘤像形成性病変が69%,腫瘤像非形成性病変が31%であった.その精検結果内容についても報告する.
 
35-15 (14:17-14:29)【一般演題】
  乳がん検診における超音波スクリーニング
  関根 雪美
  長町女性クリニックセキネ 産婦人科
超音波検査は非侵襲的,かつ検診者に苦痛を与えないことから広く医療の各分野に使われてきた.当院も平成18年5月開院してから乳がん検診者全例に超音波検査を行った.平成18年一年間772例中,マンモグラフィのカデコリーV以上要精検症例は35例(4.5%)であった.乳がん3例(0.38%),FAD9例,石灰化10例,超音波でのう胞と診断した症例10例,腫瘤の疑1例,乳汁分泌2例であった.のう胞と診断された症例の精査結果は良性のう胞で,がんの症例はなかった.戻されて要精査症例は14例(1.8%)であった.内訳はFAD9例,石灰化5例であった.FADと診断された9例の精検結果は異常なしが6例,乳腺症1例,線維腺腫1例,腫瘤の疑1例であった.この14例の超音波所見においてはまったく異常が認められなかった.以上超音波検査は乳がん検診のスクリーニングに有用であると考えられた.
 
35-16 (14:29-14:41)【一般演題】
  甲状腺髄様癌の超音波所見について
  中野 恵一,鈴木 眞一,立花和之進,小池 哲史,大河内千代,福島 俊彦,竹之下誠一
  福島県立医科大学 医学部第2外科
甲状腺髄様癌は,甲状腺癌の1.5%を占めるまれな悪性腫瘍である.遠隔転移をきたすことも多い.1/3程度をしめる,MEN2型に伴う遺伝性腫瘍であれば,家族歴からその存在を疑うことも可能ではあるが,散発性髄様癌では,その診断に難渋することも少なくない.髄様癌の特徴的な超音波所見としては,低エコー,境界明瞭な充実性腫瘤であり,周辺低エコー帯を有しない,アミロイド部への腫瘤内への粗大な石灰化などがあげられる.しかし,腫瘍径が小さな髄様癌においては,濾胞性腫瘍との超音波所見が類似しており,髄様癌を疑わなければ診断に導くのは困難な症例にも遭遇する.鑑別診断の一助とすべき方法として,血清カルシトニン,CEA値を測定することがあげられる.当科で経験した複数例の超音波像を供覧し,髄様癌の超音波所見について考察したい.
 
35-17 (14:41-14:49)【症例報告】
  健常児を得た妊娠初期胎児頚部Cystic Hygromaの一例
  明城 光三
  国立病院機構仙台医療センター 産婦人科
産婦人科症例は30歳初妊婦で家族歴既往歴に特記すべきことなし.妊娠12週6日当科初診時,胎児頚部に嚢胞性のエコーを認めた.妊娠13週5日には胎児頚部背側左右にそれぞれ長径12 mmの嚢胞性のエコーを認めCystic Hygromaと思われた.それぞれの嚢胞は単房性であった.その後嚢胞性のエコーは縮小したが一過性に胎児胸水が見られ,後頚部に浮腫と思われる所見が妊娠20週まで認められた.妊娠17週3日に羊水染色体検査を行い正常であった.切迫早産で入退院を繰り返したが,胎児発育は順調で,妊娠37週6日に3175 gの男児を自然分娩で出生した.アプガースコアは1分後,5分後共9点で,新生児に異常は見られなかった.妊娠初期に診断されるCystic Hygromaは予後不良の場合が多いとされているが,本例のように染色体異常や合併奇形なく健常児を得る場合もあり,慎重な説明が必要と思われた.
 
5 腎・泌尿器 (14:49-15:29) 座長 仙台社会保険病院  庵谷 尚正
 
35-18 (14:49-15:01)【一般演題】
  嚢胞腎と腎癌
  寺沢 良夫1,広田むつ子2,須藤 誠二2,野村 禎子2,野村 幸宏2,鈴木 とよみ2
  1仙台社会保険病院 内科,2同 超音波検査室
【はじめに】嚢胞腎(PCK)と腎癌(RCC)の因果関係についての明瞭な報告は少ない.そこで当院において手術で確定診断がついたPCKのUS診断・頻度・血液透析(HD)の関連について検討した.【結果】1,組織学的に証明されたPCKのRCC: 10人(このうちHD症例: 9人) 2,HD 症例のPCKからのRCC の発生率: 6.2%(9/145,PCKのHD例16人にRCC1人) 3,HD,PCK 発生のRCCは健常人の62 倍 ( 当院検診センターRCCの発生率: 0.1%,60/57,411),HD 発生RCCの2.2倍(HD,RCC2.8%,165/5,876) 4,PCKのRCC10人のうち,5人: 極小腎癌で,光顕上でのみRCCが検出され,残りの5人は肉眼上でもRCCが認められた.dysplasiaとRCCの明瞭化が望まれる.(病理医によっても診断名が異なることもあり) 5,PCKのRCC(10人)のUS,CT診断US 9人 : RCC,1人: 血腫 CT 7人: RCC(-),1人 : RCC(+),2 人: AML 【考察】PCKのRCCは発生頻度が高く,その検出にはUSが最もよいと考えられた.
 
35-19 (15:01-15:13)【一般演題】
  腎癌の検出率
  寺沢 良夫1,広田むつ子2,須藤 誠二2,野村 禎子2,野村 幸宏2,鈴木 とよみ2
  1仙台社会保険病院 内科,2同 超音波検査室
【はじめに】母集団が把握できた診療科(検診・泌尿器科・循環器科の入院例,血液透析症例)において,US スクリーニングで検出した無症状腎癌の検出率について検討した.【結果】腎癌(RCC)の検出率(実人数) (1) 検診センター: 0.1%(60/57,411),957人に1人 (2) 泌尿器科入院患者(RCC以外の疾患での入院例): 0.42%(26/6,149),236人に1人,検診の4.2倍 (3) 循環器科入院例: 0.27%(8/2,922),365 人に1 人,検診の2.7 倍 (4) 血液透析例: 2.8%(165/5,876,両腎癌34人を1人として),28 人に1 人,検診の28倍 5,嚢胞腎 ( 血液透析例 ): 6.2%(9/145),PCK16人にRCC1人 【考察】RCCの予後向上のためには,無症状の小腎癌で検出することが最も大切である.そのためには,検診におけるUS検査のみならず,各診療科においてUSスクリーニング」で小腎癌を検出することが大切と考えられた.
 
35-20 (15:13-15:21)【症例報告】
  USにて発見された乳頭状腎細胞癌の一例
  石川 洋子1,加賀 誠司1,渡邊  誠2,千葉 春枝3,太田  恵3,佐久間芳文4,石川 一郎5,熊坂由紀子5,小野 貞英6
  1松園第二病院 消化器科,2同 放射線科,3同 臨牀検査室,4岩手県立中央病院 泌尿器科,5同 放射線科,6同 病理
症例は47才,男性.自覚症状(-),既往歴・家族歴: 特記事項なし.現病歴: 平成19年3月より逆流性食道炎,高脂血症で通院加療中平成19年6月11日腹部超音波検査で左腎上極にhump signを示す3 cm大の等エコー腫瘤像を認めた.CTで同部に境界鮮明な腫瘤像,MRI: T1,T2強調像で等・低信号.精査のため岩手県立中央病院泌尿器科へ紹介.単純CTで等〜やや低濃度,造影効果を軽度認めた.血管造影(DSA): 腫瘍の大部分はavascularで乏血性腫瘍が疑われた.一般検査: γ-GTP 90 IU/l, UA 7.5 mg/dl, TG 338 mg/dl,HDL-C 39 mg/dlの他異常みられず.腎癌が疑われ平成19年8月9日手術(根治的腎摘術)施行.病理組織学的に境界明瞭な被膜を有する2.7 cm大の割面均一な充実性腫瘍で壊死変性はみられず,腫瘍細胞は立方状ないし円柱状の細胞がほとんど乳頭状〜一部管状の増殖を示し,P504S陽性,間質には泡沫細胞の集簇も一部みられ,乳頭状腎細胞癌,G2,INFα,v(-),pT1aと診断された.
 
35-21 (15:21-15:29)【症例報告】
  腹部超音波健診で発見され3年間経過観察した副腎褐色細胞腫の一例
  滝田  知1,平田 留美1,桜庭  厚1,一戸志津子1,桜庭 貴子1,湯口 玉子1,須藤 俊之1,川口 俊明2,照井  健3
  1青森県総合健診センター,2青森県立中央病院 泌尿器科,3同 内分泌内科
【患者】47歳,男性.【既往歴】36歳,痛風.【現病歴】平成16年6月,当センターで施行した腹部超音波健診で左副腎腫瘤を疑われ,市内内科クリニック受診.CT検査目的で市民病院に紹介され,35 mm大の左副腎腫瘍が認められたため,9月に県立中央病院内分泌内科に紹介された.内分泌検査成績は尿中メタネフリン2分画検査にてノルメタネフリンが1.44 mg/dayと高値を示し,131I-MIBGシンチグラフィでは,左副腎に著明な集積亢進が認められたため,左副腎褐色細胞腫と診断された.7ヶ月後のCT検査でも腫瘍の増大,内部の性状に変化はみられなかった.平成17年11月の内分泌検査では血中のアドレナリン450 pg/ml,ノルアドレナリン2,520 pg/mlとノルアドレナリンが異常高値を示した.血圧は,時に140 mmHg台に上昇することがあるが,軽症であることから外来にて経過観察されていたが,発汗過多,軽度の発作性高血圧症状があらわれてきたため,平成19年11月,左副腎摘出術が施行された.組織学的にも褐色細胞腫の診断が確認された.同症例の1年毎のUS像を中心に供覧したい.
 
6 基礎U (15:29-16:17) 座長 東北大学  長谷川英之
35-22 (15:29-15:41)【一般演題】
  高周波超音波RF信号の正規化パワースペクトルによる赤血球凝集度評価法
  齋藤 靖好,長谷川英之,金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
【目的】赤血球凝集は血液の粘度を決める要因の一つであり,血液レオロジーにおいて重要な役割を持っている.本研究では超音波による非侵襲かつ定量的な赤血球凝集度評価法の実現を目的とする.【原理】血球からの散乱波のパワースペクトルをガラス板からの反射波のパワースペクトルで正規化することで送受信系の特性を除き,赤血球の散乱特性とガラス板の反射特性の比を得る.微小球の散乱特性およびガラス板の反射特性について波動方程式より理論式を導き出したところ,正規化パワースペクトルの傾きは対数周波数log10fとなり,切片は散乱体の有効半径ρに依存することが示された.計測された正規化パワースペクトルに理論式をフィッテングさせることで散乱体の有効半径ρの推定を行う.【結果】健常者の手甲静脈内腔からの超音波RF信号に対して本手法を適したところ,散乱体の有効半径ρは6.3 μmと推定された.この値は赤血球と同程度の大きさである.このことから,正規化パワースペクトルによる赤血球凝集度の定量的評価の可能性が示された.
図.(a) 正規化パワースペクトル,(b) 最小二乗近似直線.
 
35-23 (15:41-15:53)【一般演題】
  ナノバブルと超音波を利用した炎症疾患モデルマウスでのNa/I sympoter(NIS)遺伝子発現の可視化
  渡邊夕紀子1,堀江佐知子1,冨田 典子1,大澤 ふき1,船木 善仁2,菊池 洋平3,山崎 浩道2,石井 慶造2,3,森  士朗4,小玉 哲也1
  1東北大学 先進医工学研究機構,2同 サイクロトロンラジオアイソトープセンター,3同 工学研究科,4東北大学病院 顎顔面外科
遺伝子治療では,遺伝子発現にともなう治療効果をモニタリングし,予後の治療計画を立案することが必要である.動物実験では蛍光や発光を利用した分子イメージング法の開発研究が展開されているが,臨床応用が難しいという問題点がある.ナトリウム・ヨードシンポーター(NIS)遺伝子はヨウ素の取込機能を有することから,この遺伝子と治療用遺伝子を組合せたレポーター遺伝子を開発し陽電子放射断層撮影法(PET)と組み合わせることで臨床応用の実現性が高い遺伝子診断法が可能である.一方,遺伝子治療では免疫原性を誘導することなく,非侵襲的に標的部位に外来分子を導入するための手法開発が望まれる.本研究では血管炎症遺伝子治療を目的に,ナノバブル(NB)と超音波(US)を利用した分子導入法で,血管炎症モデルマウスの前脛骨筋にNIS遺伝子を導入し,その発現にともなう124Iの集積を実用型動物用半導体PET で画像として捕え,定量化することを目的としている.
 
35-24 (15:53-16:05)【一般演題】/td>
  高解像度超音波イメージングシステムを用いたシスプラチンによる抗腫瘍効果の定量化
  冨田 典子1,堀江佐知子1,渡邊夕希子1,大澤 ふき1,佐久間基成1,大木 宏介2,森川 秀広2,森  士朗2,小野 栄夫3,小玉 哲也1
  1東北大学先進医工学研究機構 ナノメデイシン分野,2東北大学病院 顎顔面外科,3東北大学大学院 医学系研究科
本研究においては,小動物用超音波高解像度イメージングシステムとナノバブルを併用して,生体内腫瘍の三次元画像および腫瘍内微小血管像を取得し,シスプラチンによる抗腫瘍効果を正確かつ非侵襲的に評価することを目的とした.SCIDマウスの両側腹皮下に移植した大腸癌または乳癌細胞由来固形腫瘍中心部にCDDPを投与し,腫瘍体積の変化をノギスおよび超音波高解像度イメージングシステムを用いて測定した.マウス尾静脈からC3F8ガスを封入したリポソームバブルを投与し,腫瘍内血管を流れるリポソームバブルが与える輝度情報をもとに腫瘍内新生血管の構築を試みた.本研究結果から,腫瘍体積と腫瘍内血管の増殖抑制を超音波高解像度イメージングシステムにより定量化できることが明らかとなった.また一本鎖DNAに対する抗体を使用した免疫組織化学的解析から,CDDP処理によるアポトーシス誘導が細胞増殖を抑制していることが示唆された.
 
35-25 (16:05-16:17)【一般演題】
  皮膚組織の3次元超音波顕微鏡像
  西條 芳文1,岩本 貴宏2,小林 和人3,岡田 長也3,萩原 嘉廣4,田中  明5,穂積 直裕6
  1東北大学 加齢医学研究所病態計測制御研究分野,2同 大学院工学研究科,3本多電子株式会社,4船橋整形外科病院,5福島大学 共生システム理工学類,6愛知工業大学
3次元構造を有する皮膚組織の評価の目的で,3次元超音波顕微鏡を開発した.周波数100 MHzの超音波トランスデューサを,組織上で2次元高速スキャンし,連続Bモード画像を3次元再構築することが,3次元超音波顕微鏡の画像化の基本原理である.本研究により,従来の皮膚科領域の超音波診断装置の解像度が60ミクロン程度であったのに対し,解像度15ミクロンでの3次元画像化が可能となった.また,図は指紋の表面(左)と皮膚の裏側 (右)の3次元超音波顕微鏡像で,他のモダリティーでも観察可能な表面だけではなく,組織の裏面までも観察できる点がもっとも大きな特徴である.本研究成果は,皮膚科領域の非侵襲的病理検査や,化粧品などによる皮膚のスマートエイジングの評価に広く応用可能である.
図.指紋の3次元超音波顕微鏡像
 
7 循環器U (16:17-16:53) 座長 福島県立医科大学  高野 真澄
 
35-26 (16:17-16:29)【一般演題】
  3Dエコーによる左房容積とBNPとの相関関係
  三上 秀光1,伊藤真理子1,大平 里佳1,手塚 文明1,篠崎  毅2,清水  亨2,尾上 紀子2,田中 光昭2,馬場 恵夫2,谷川 俊了2,
  1独立行政法人 国立病院機構 仙台医療センター 臨床検査科,2同 循環器内科
【はじめに】新しいテクノロジーとして3Dエコーが普及しつつあるが,本方法が心不全の重症度を評価するためにどの様な役割をもっているのか未だ分かっていない.我々は既に,マルチスライスCTによる左房容積と3Dエコーによる左房容積が良好な相関を示すことを発表している.本研究の目的は,心不全の重症度を鋭敏に反映する脳性ナトリウム利尿ペプチド(以下BNP)と3Dエコーによる左房容積との間にはどのような関係があるかを検討することである.【対象と方法】心臓超音波検査と同日にBNPが採血され,且つ,クレアチニンクリアランス60 ml/min 以上,且つ,洞調律の12症例を対象とした.平均年齢72±15 歳.3Dエコーの計測には,Philips社製iE33を使用した.左房容積の解析には専用ソフトQ-LABを使用し,オフラインで行った.【結果】1心周期のうち,最大左房容積37.8±12.1 ml/m2,最小左房容積25.0±12.2 ml/m2であった.BNPは258.9±270.0 pg/mlであった.最大左房容積とBNPの間にはR2=0.565 (p<0.005), 最小左房容積とBNPの間にはR2=0.743 (p<0.001)の有意な相関関係があった.【結語】BNPと3Dエコーによる左房容積は相関する.3Dエコーによる左房容積は心不全の病態を把握するために有用な指標であるかもしれない.
 
35-27 (16:29-16:37)【症例報告】
  繰り返す虚血性脳卒中を呈しび慢性左房内血栓が疑われた慢性心房細動の一例
  金子 一善1,藤森  清2
  1酒田市立酒田病院 内科,2同 脳神経外科
症例は68歳女性.主訴は左片麻痺.平成11年より心房細動にて通院中.平成14年2月に虚血性脳卒中を発症し,以後4回度再発を繰り返した( 一過性脳虚血発作3回,脳梗塞2回).第3 回目の発症時に経食道心エコー検査を施行したところ,左心房と左心耳に連続する厚さ3 mm程度の広範なび慢性の左房壁肥厚像あり.左心耳内もやもやエコー著明で左心耳内血流速度著明低下,ボール状血栓はなく,他に有意な塞栓源を認めなかった為,び慢性の左房左心耳血栓による脳塞栓症と診断.それまでのワルファリンコントロールを厳格に行った.その後の経過中2回出血性合併症を併発したが減量中止をすると再発をしていた.第5 回目の再発時は,PT-INR=5.8であり,経食道心エコー再検でも左房壁肥厚は変化なく,び慢性左房左心耳の器質化血栓と推察した.心房壁のび慢性肥大の報告は無く,経食道心エコー所見上形態的に稀な所見であったため報告した.
 
35-28 (16:37-16:45)【症例報告】
  下壁心筋梗塞慢性期に顕在化した左室中部閉塞型肥大型心筋症(MVO)の一例
  松田  尚1,中川 正康2,阿部  仁1,渡辺 智美1,渡辺 栄里1,小林希予志1,佐々木奈津子1,藤原理佐子3,鬼平  聡4,伊藤  宏5
  1市立秋田総合病院 超音波センター,2同 循環器科,3秋田県立脳血管研究センター 循環器科,4きびら内科クリニック,5秋田大学 医学部 内科学講座 循環器内科学講座
症例は60歳代女性.肝障害にて当院消化器科受診,心電図異常を認めたため当科紹介.心エコーにて下壁にasynergy を認め,問診等から約3週間前に発症した心筋梗塞と考えられた.ASHも認めたがSAMは認めず,左室内圧較差も認めなかった.CAGでは右冠動脈Seg.3 の完全閉塞病変で,ステントを用いて血行再建を行った.半年後心エコーでは左室のasynergy はほぼ改善したが,約60 mmHgの圧較差を呈するMVOを呈した.心臓カテーテル検査時もほぼ同様の所見で,propranololおよびdysopiramideの静注にて圧較差は消失した. その後carvedilolをatenololに変更,dysopiramideの内服追加にてMVOのコントロールは良好に経過している.本症例は心筋梗塞による左室壁運動障害のため初診時にはMVOを呈さなかったが,壁運動の改善に伴いMVOが顕在化したものと考えられた.
 
35-29 (16:45-16:53)【症例報告】
  多発性血栓を形成した肝細胞癌患者における右心耳内血栓に対して血栓溶解療法を施行した一例
  堀越 裕子1,高野 真澄2,佐久間信子1,二瓶 陽子1,佐藤ゆかり1,水上 浩行3,及川 雅啓3,小林  淳3,大杉  拓3,斎藤 修一3
  1福島県立医科大学附属病院 検査部,2福島県立医科大学 臨床検査医学講座/第一内科,3同 第一内科
【症例】72歳男性 【既往歴】肝細胞癌(動注化学療法) 【現病歴】71歳より慢性心房細動を指摘され,抗凝固療法中であった.平成19年6月上旬,左下肢の冷感及び疼痛を自覚し,当院救急外来受診.左大腿動脈血栓塞栓症の診断にて当院心臓血管外科にて緊急血栓除去術を施行された.術後経過は良好であったが,D-ダイマーは持続高値を示し,心内血栓の精査目的に心エコー検査を施行した.経食道および体表面心エコーにて,左房・右房の拡大ともやもやエコーを認めたが,左心耳内血栓および卵円孔開存は認めなかった.しかし,右心耳から右房内へ突出する長径2 cmの可動性に富む腫瘤を認め,右心耳内血栓と診断,加療目的に入院となる.【入院後経過】肺血流シンチグラフィーにて明らかな欠損像は認めず.下肢血管エコーにて右膝下静脈に血栓の存在が疑われた.全身状態および右心耳内血栓の大きさから,開心術による血栓除去術は選択せず,血栓溶解療法の適応と考えた.血栓溶解療法にて肺血栓塞栓症などの合併症の出現無く,右心耳内血栓は消失した.【考察】多発性血栓を形成した肝細胞癌患者における右心耳内血栓に対して血栓溶解療法を施行した一例を経験した.悪性腫瘍を基礎疾患に有する患者は,血栓塞栓症の高リスク群であるとされる.本例は心房細動・心房拡大による血流うっ滞に加え,基礎疾患による凝固能亢進が多発性血栓形成を来したと考えられた.厳密な抗凝固療法に加え,左心系のみならず,右心系を含めた全身の血栓塞栓源の検索が必要と考えられた.
 
8 消化器U (16:53-17:25) 座長 松園第二病院  石川 洋子
 
35-30 (16:53-17:01)【症例報告】
  肝内胆管拡張をきたした肝嚢胞の一例
  工藤由美子1,藤谷富美子1,田村 尚子1,浅野 善文1,川辺 正之2,山田 暢夫2,中川  有3,斎藤  裕4,山内 美佐5,石田 秀明6
  1由利組合総合病院 臨床検査科,2同 消化器科,3同 外科,4同 放射線科,5同 病理,6秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】肝嚢胞は日常的に見られる疾患であるが,肝内胆管の拡張を伴う事はまれである.今回我々は,そのような一例を経験したので報告する.使用機種: ALOKA社製prosound α10中心周波数3.5 MHz コンベックスプローブ 【症例】75歳男性.以前より9×9 cm 大の嚢胞を指摘されているが胆管拡張は指摘されていない.黄疸を主訴に消化器科受診.腹部USでS4を主座とする11×11 cm 肝嚢胞と,両葉に及ぶ末梢肝内胆管の拡張を認めた.嚢胞内部には多数の点状エコーを認めた.MRIではT1高信号で嚢胞内出血が疑われ,MRCPで嚢胞の末梢胆管の拡張が両葉に認められた.以上より肝嚢胞内の出血に伴う嚢胞径の急激な増大により二次的に末梢胆管の拡張をきたしたと判断し,減黄目的に肝開窓術施行された.術後速やかに黄疸は軽減した.【まとめ】稀ではあるが,嚢胞内出血により末梢肝内胆管拡張をきたす事があり,肝嚢胞例診療の際留意すべき点と思われた.
 
35-31 (17:01-17:09)【症例報告】
  Sonazoid@造影超音波により腫瘍を同定し,経皮的ラジオ波焼灼術を施行できた肝細胞癌の一例
  鈴木 克典,深瀬 和利,松田  徹
  山形県立中央病院 内科
Bモードでは腫瘍病変を同定し得なかったが,Sonazoid@造影超音波にて同定し, 経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)が可能となった肝細胞癌の1例を経験したので報告する.使用機種は東芝メディカルシステムズ製,Aplio XG,プローブPVT-350BT,MI値0.2〜0.4,Sonazoid@ 0.5 ml をボーラス投与した.症例は77歳,女性,C型慢性肝炎の経過中,CTにてS3に10 mmの肝細胞癌を指摘されたが,Bモードでは腫瘍を指摘し得なかった.造影超音波検査にて,10分以降のKupffer phaseで腫瘍を同定し,再造影にて腫瘍への血流を確認,肝細胞癌と診断し,経皮的RFAを行った.2週間後の効果判定CTでは,病変は焼灼できており,3ヵ月後のCTでも局所再発を認めていない.治療支援として非常に有用であった.今後,Sonazoid@による造影超音波は,肝細胞癌の治療において,有用な手段になり得ると思われた.
 
35-32 (17:09-17:17)【症例報告】
  門脈ガスを伴った腸管気腫症の一例
  大山 葉子1,吉田千穂子1,紺野 純子1,工藤奈緒子1,星野 孝男2,渡部 博之2,和田  勲2,工藤 由美2,石田 秀明3,長沼 裕子4
  1秋田組合総合病院 臨床検査部,2同 消化器科,3秋田赤十字病院 超音波センター,4市立横手病院 内科
【はじめに】腸管気腫症は比較的稀な疾患である.腸管壊死に伴う場合が多く,他の病態が原因のものは稀である.今回イレウスに続発した腸管気腫症の一例を経験したので報告する.【使用機器】東芝AplioXV.【症例】68歳女性.【主訴】腹部膨満感,便秘.【現病歴】平成20年1月腸閉塞の診断にて当院消化器科に入院.原因検索のためUSを施行.腹水及び大腸に位置の変動しないガス像を認めた.詳細に観察(高周波プローブ使用)すると,これらは,大腸壁内からのRing-down artifact及び第三層に線状ガス像に相当した.腸管気腫症と診断.FFTから微量の門脈ガスの存在も確認された.イレウスチューブ挿入後,大腸内視鏡にてS状結腸癌と診断された.CTで門脈ガス,腸管壁内のガスは描出できなかった.2日後のUSにて腸管壁内のガス像は消失し,S状結腸にPseudokidney signを認めた.【まとめ】イレウスに伴う腸管気腫症の報告は比較まれであるが,超音波による詳細な観察で今後は合併例が増加する事が期待される.
図. 大腸壁内のRing-down artifactと第三層内の線状ガス像
 
35-33 (17:17-17:25)【症例報告】
  門脈瘤の一例
  渡部多佳子,石田 秀明,小松田智也,八木澤 仁,古川佳代子,大野 秀雄,石井  透,奈良美保子,鶴田  聡,畠山千枝子
  秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】門脈瘤は比較的まれな病態で門脈圧亢進症との関連が強調されてきた.今回我々は,無症候性門脈瘤の1例を経験したのでその超音波所見を中心に報告する.【診断装置】東芝社製Aplio(中心周波数4 MHz)【症例】69歳女性.当院ドックの腹部超音波検査で肝門部に約3 cm大の嚢胞性腫瘤を認め精査目的に当院消化器科外来を受診した.自覚症状は無く生化学検査も正常であた.肝門部の腫瘤は,カラードプラ上内部に約20 cm/secの定常流が壁に沿って流れていた.肝内外の門脈に血栓などの異常は認められなかった.以上の所見から肝門部の門脈瘤と診断した.なお,ソナゾイドを用いた造影超音波検査では早期血管相で動脈が描出された数秒後に壁に沿う部分が濃染されかなり遅れて中心部が染まってきた.【まとめ】近年の腹部カラードプラ法の普及に伴いいわゆる無症候性門脈瘤の報告が増加している.本例もその1例と思われる.
 
閉会のあいさつ (17:25-17:30) 東北地方会運営委員長  棚橋善克