日本超音波医学会 東北地方会
第37回学術集会 プログラム・抄録集

日 時: 平成21月3月15日(日) 9時15分〜17時49分
場 所: 仙台市情報・産業プラザ(アエル5階)
  仙台市青葉区中央1-3-1  TEL: 022-724-1200
大会長: 仙台赤十字病院  谷川原真吾
参加費: 1,000円
地方会URL: http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連絡先: 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第37回学術集会事務局
  TEL: 022-795-7081,FAX: 022-263-9444
  E-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp
 

講演者へのお願い:

・一般演題は,1題につき発表時間7分,討論時間5分の合計12分間です.
 症例報告は,1題につき発表時間5分,討論時間3分の合計 8分間です.
・発表は,原則としてすべて会場に設置してあるPC上で,Power Pointを利用して頂きます.
 (PowerPoint: 2007 (Power Point 2003のファイルも利用できます),コンピュータ: Windows XP,
  画面サイズ: 1024×768)
・演者は,発表されるセッションの前のセッション終了前までに受付を済ませて下さい.
・Power Pointのスライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守して下さい.


単位について:

・筆頭者で発表された超音波専門医,工学フェローの方には15単位(共著者での発表には7.5単
 位),筆頭者で発表された超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.
・学術集会に出席された超音波専門医,工学フェローの方には15単位,超音波検査士の方には
 5単位の研修・業績単位が与えられます.
 
発行日:平成21年3月6日






日本超音波医学会東北地方会
第15回東北地方会講習会

第15回東北地方会講習会(第37回学術集会併設)を下記の要項で開催いたします.講習会に出席された超音波専門医,超音波工学フェロー,超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.

開催日時: 平成21年3月15日(日) 13:00〜14:20
会  場: 仙台市情報・産業プラザ(アエル5階)  仙台市青葉区中央1-3-1 TEL: 022-724-1200
講演題目: 13:00〜13:40    座長  結核予防会宮城県支部  田中 元直
「弁膜症の見方」
講師  別府慎太郎 (大阪大学大学院医工学研究科保健学専攻)
  13:40〜14:20    座長  仙台赤十字病院  谷川原真吾
「経腹法でみる産婦人科超音波診断」
講師  室月 淳 (東北大学医学部産婦人科)
参 加 費: 1,000円 (学術集会参加費とは別途徴収いたします.)


なお,日本超音波医学会第38回東北地方会学術集会・第16回講習会は,平成21年9月6日(日)コラッセふくしま(福島市)にて開催予定です.大会長は,大平弘正(福島県立医科大学)です.


 
開会の挨拶 ( 9:15- 9:20) 大会長 仙台赤十字病院  谷川原真吾
 
1 基礎 (9:20-10:32) 座長 秋田大学  井上 浩
 
37- 1 ( 9:20- 9:32) 【一般演題】
  リンパ節転移早期診断に関する三次元高周波超音波イメージング
  李 麗1, 堀江佐知子2, 陳 鋭2, 渡辺夕紀子2, 阪本 真弥3, 高橋 昭喜1, 森  士朗3, 小玉 哲也2
  1東北大学 医学系研究科, 2 東北大学 医工学研究科, 3 東北大学病院
リンパ節転移の早期診断は,がんの治療成績の向上に不可欠である.現在使用されているCT,MRI,PETでは短径1 cm以下のリンパ節を転移であると判断することは極めて困難である.本研究では,ナノバブルと高周波超音波イメージングシステムを用いて,腫瘍性リンパ節の血管密度を定量することで,リンパ節転移の早期診断法の開発を目的とする.臨床試験導入用マウス系リンパ節転移モデルを確立した後,ナノバブルをマウス尾静脈に注射し,転移性リンパ節を高周波超音波で観察した.転移性リンパ節血管内を流れるバブルの超音波輝度情報を大型計算機で処理することでリンパ節内血管の三次元画像を構築し,血管密度を求めた.正常リンパ節内と比して,転移性リンパ節内では血管密度の上昇が認められ,有意差が見られた(P<0.05).本研究から,血管密度を評価することでリンパ節転移の有無が判断可能であり,転移早期診断法の開発の可能性が示唆された.
 
37- 2 ( 9:32- 9:44) 【一般演題】
  Flow-Mediated Dilationによる橈骨動脈壁粘弾性特性変化の非侵襲的計測
  池下 和樹1, 長谷川英之2,1, 金井  浩1,2
  1 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻, 2 東北大学 大学院医工学研究科
循環器疾患等の主な原因とされている動脈硬化症は,血管の内側(内皮)から進行するとされている.さらに,動脈硬化症の初期段階では,血管中膜を構成している平滑筋のタイプが変化することも報告されている.ゆえに,動脈硬化症の早期診断のためには,血管最内層を覆う内皮細胞の機能や,血管壁に粘弾性効果を与えている平滑筋の力学的特性の計測・評価が重要となる.本報告では橈骨動脈において,位相差トラッキング法を用いて計測された内中膜領域厚み変化と,トノメトリ血圧計によって連続計測された血圧波形から,一心拍中の応力−ひずみ特性を取得した.また,壁の粘弾性モデルとしてVoigt模型を仮定し,得られた応力−ひずみ特性から最小二乗法を用いて粘弾性値を非侵襲に推定した.図は同一被験者における内皮反応による粘弾性値の時間推移である.駆血解除後の一時的な壁の弛緩(弾性の低下)や,全体的な粘性の増加が計測されている.
図.同一被験者における内皮反応前後の粘弾性係数の時間推移.
 
37- 3 ( 9:44- 9:56)【一般演題】
  超高速超音波イメージングによる血流の描出
  長谷川英之1,2, 金井  浩2,1
  1 東北大学 大学院医工学研究科, 2 東北大学 大学院工学研究科
【目的】本報告では,角度依存性のない血流計測法を目指した高フレームレート超音波イメージング法について検討を行った.【原理】本報告では,送信には平面波を使用し,広い送信ビーム内に複数の受信ビームを形成することにより送信回数3回に減少させた.1回の送信において24本の受信ビームを形成することによりFR約3500 Hzで72本の走査線を形成した.【結果】33才男性の右総頸動脈の心電図R波後0.15秒の断層像を図に示す.図(b)では,血流計測には±5度偏向した受信ビームを用いた.受信ビーム偏向により動きの遅い組織からのエコーと血球からのエコーのドプラシフトの差が大きくなり(血流方向とビーム方向がなす角が小さくなるため),偏向しない図(a) の場合に比べ図(b)では血球からのエコーが良く強調されている.【結論】本報告では,フレームレート約3500 Hzを達成し,得られたデータから血流の描出を行った.
図. 33才健常男性の頸動脈の断層像.血流イメージング用ビームの偏向角度 (a) 0度,(b) 5度,の場合.
 
37- 4 ( 9:56-10:08)【一般演題】
  心臓壁2 次元変位推定のための2D speckle tracking における相関窓と探索領域の大きさの最適化
  本庄 泰徳1, 長谷川英之2,1, 金井  浩1,2
  1 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻, 2 東北大学 大学院医工学研究科
心筋ストレインレートは,局所心筋機能の定量的評価に有用な方法であるが,高空間分解能で解析可能なのはビーム方向のみである.本報告では,2次元ストレインレート推定を目指し,反射超音波RF信号間の2次元相関関数を用いて心臓壁の2次元の挙動の推定を行った.相関係数を算出する際の重要なパラメータである関心領域の大きさを,シリコーン板を用いた基礎実験によって検討した.関心領域の大きさ(Θ×D)を(Θ=1.5〜7.5度,D=0.089〜2.68 mm)で変化させ,大きさごとの2次元変位推定結果{xi; Θ, D(t)}(i=1, 2, …, M) と真値との差の二乗平均値を最小とする関心領域の大きさを最適値として決定した.相関係数を算出する探索範囲は,対象物のフレーム間変位相当に設定した.最適値(6.0 deg×2.3 mm)を用いてin vivo計測を行った結果,図のように一拍の変位を追従することができた.
図.in vivo計測における2次元変位計測結
 
37- 5 (10:08-10:20) 【一般演題】
  ヒト心臓壁での電気的興奮伝搬の超音波による可視化
  金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
【目的】本報告では,心筋細胞の電気的ポテンシャルの伝導傷害の非侵襲検出を目指し,ヒト心臓において電気的興奮の伝搬によって生じる振動を超音波で体表から計測する.【原理】心臓壁の振動速度の超音波計測(IEEE 1996; UFFC-43:791)を適用し, さらに超音波ビームを粗く走査し,壁内の超音波ビーム上に設定した約10,000個の点に関し約500 Hzのフレームレートで振動速度を波形として同時計測する.これらの波形の瞬時位相を内挿した平面分布の時系列から,電気的興奮/心臓弁閉鎖による振動の伝搬を可視化する.【in vivo実験結果】健常者に適用し,長軸像・心尖像において,心電Q波時に,プルキンエ線維が心筋と接する心室中隔から始まり,心尖・基部両方向に約1 m/sで伝搬する成分が確認された(電気的興奮の伝搬と対応).心電R 波時からは別の波形が心基部から心尖部へ伝搬している(僧帽弁閉鎖に伴う横波伝搬と対応).
 
37- 6 (10:20-10:32) 【一般演題】
  表在性膀胱がんに対する新しい遺伝子治療法の開発
  堀江佐知子1, 渡邊夕紀子1, 陳 鋭1, 李 麗2, 森  士朗3, 小玉 哲也1
  1 東北大学 大学院医工学研究科, 2 東北大学 大学院医学系研究科, 3 東北大学病院
膀胱は閉鎖系であり,膀胱がんは局所投与治療の対象になる.表在性膀胱がんは膀胱がんの8割を占め,その発生部位の解剖学的特徴から遺伝子治療の有望な対象として考えられる.超音波(US)とナノバブル(NB)を使った遺伝子導入法は,非侵襲的に標的組織に治療性遺伝子を導入することができる.NBの移動や破壊はUSの照射条件で制御可能であることから,膀胱内でのNBの挙動をUSで制御することで,表在性膀胱がんへの新しい分子導入が確立できるものと考えられる.本研究では,USとNBを使用した新しい表在性膀胱がんの治療法の開発を目指す.本手法の有効性を検証するため,マウス正常膀胱壁に外来分子(蛍光分子,ルシフェラーゼプラスミドDNA)を導入し,その導入効率の定量化をおこなった.導入効率は超音波の照射時間に比例して増加することが示された.本US-NB分子導入法は今後の膀胱がん治療に有効であることが示唆される.
 
2 循環器T (10:32-11:12) 座長 東北厚生年金病院  仁田 桂子
 
37- 7 (10:32-10:40) 【症例報告】
  Bland-White-Garland 症候群の一例
  岡田 恵利1, 高橋久美子1, 丹波 寛子1, 武石 茂美1, 武田  智2, 伏見 悦子2, 関口 展代2, 加賀谷 聡3, 相田 弘秋3
  1 平鹿総合病院 臨床検査科, 2 平鹿総合病院 循環器科, 3 平鹿総合病院 心臓血管外科
症例は50歳女性.16歳時他院でBland-White-Garland症候群と診断された. 人間ドックで心拡大を指摘され当科初診.息切れ等の自覚症状あり.心カテ目的で入院となった.心エコー図ではEF54%,内腔拡大,後壁と心尖部の収縮低下およびMRV度と肺高血圧を認めた.左冠動脈主幹部は拡張期優位の血流を示し,中隔枝は逆行性の血流を示した.冠動脈造影では左右冠動脈ともに拡張著明で,右冠動脈から側副血行路を介し左冠動脈が逆行性に造影され,左冠動脈は肺動脈本幹に開口していた.以上より僧帽弁輪形成および左冠動脈再移植を施行.術後の心エコー図でEF64%と全体的に収縮は改善し,MRは消失し,PHも改善していた.左冠動脈主幹部および中隔枝は順行性の血流を示した.本症例は成人まで心不全等の既往もなく経過をたどった貴重な症例であり,今回の症例の病態把握において心エコー検査が非常に有用であった.
 
37- 8 (10:40-10:48) 【症例報告】
  心エコーでの診断に難渋した高齢者修正大血管転位症の一例
  矢作 浩一, 平本 哲也
  大崎市民病院 循環器科
症例は88歳女性.70歳頃から心不全として近医通院中であったが,急性増悪のため平成20年5月に当院へ紹介入院となった.入院時心エコーにて長軸像,四腔像が得られないことから修正大血管転位症を疑い心主要区分分析法を行った.下大静脈の走行から右心房を,房室弁付着部位から三尖弁と右心室を,血管の走行と分岐から肺動脈を各々同定するとこれらは全て左側に存在しanatomically corrected malpositionという結果となった.しかしCTを施行した結果,肉柱の発達した右心室が右にあり,大動脈は肺動脈の右前方にあることが判明し,{I,D,D}タイプの修正大血管転位症と診断された.心臓の位置異常を呈する本疾患は,特に高齢者では良好なエコーが得られず心主要区分分析法の適用が困難であり,心エコーでの診断に難渋した症例であった.
 
37- 9 (10:48-10:56) 【症例報告】
  脳梗塞を契機に発見された左室緻密化障害の一例
  深澤 紗紀1, 尾上 紀子1, 清水  亨1, 田中 光昭1, 石塚  豪1, 馬場 恵夫1, 伊藤真理子2, 三上 秀光2, 篠崎  毅1
  1 国立病院機構 仙台医療センター 循環器科, 2 国立病院機構 仙台医療センター 臨床検査部
【症例】67歳男性.嗄声,めまいを主訴に当院に救急搬送された.幼少期より不整脈,50歳代に心不全,61歳に脳梗塞の既往があった.来院時に心房細動と脳幹梗塞を認め,塞栓性脳梗塞と診断された.経胸壁エコーでは左室心尖部から後壁を中心とした著明な肉柱形成,左室拡大(LVDd 67 mm)及び, 左室収縮能低下(駆出率18%)を認め, 左室緻密化障害を疑った.Live-3Dエコーにより肉柱はより明瞭に描出された.経食道エコーでは,著明な肉柱形成と左房内モヤモヤエコーを認めた.左心耳血栓や肉柱間の血栓は明らかではなかった.造影MRIでは緻密化障害部位に一致して,層状高信号領域を認め,緻密化層と2層構造を呈していた.この病変の広がりは経胸壁エコー所見より広範囲であった.患者は抗凝固療法を継続していたにもかかわらず,入院中に脳梗塞を再発症した.【結語】左室緻密化障害の心エコー所見と造影MRI所見は,必ずしも一致しない.
 
37-10 (10:56-11:04) 【症例報告】
  感染性心内膜炎における僧帽弁膜瘤の形成を経食道心エコーにより観察した一例
  清水  亨1, 尾上 紀子1, 田中 光昭1, 石塚  豪1, 馬場 恵夫1, 篠崎  毅1, 大平 里佳2, 伊藤真理子2, 三上 秀光2, 手塚 文明2
  1 仙台医療センター 循環器科, 2 仙台医療センター 臨床検査科
症例は36歳男性.無治療の齲歯あり.平成20年8月頃より全身倦怠感,息切れを認め改善しないため11月10日当院受診した.経胸壁心エコーにて大動脈2尖弁の破壊をともなう疣贅,severe ARを認め,感染性心内膜炎に伴う心不全の診断にて入院となった. 血液培養にてα‐hemolytic streptococciが検出され,PCG+GM投与にて治療開始した.第10病日の経食道心エコーにて疣贅,ARを依然認め僧帽弁前尖の弁付着部に,左房側に突出し可動性を有する6 mmのひも上構造物を認めた.再度施行した第31病日の経食道心エコーでは,ひも上構造は消失し,同部位に5×6 mmの僧帽弁膜瘤が形成されていた.第45病日に両弁置換術を施行した.当初大動脈弁のみの疣贅であったが,ひも状構造物から僧帽弁膜瘤が形成される過程を,経食道エコーによって見逃さずに観察することができた症例を経験したので報告する.
図. 経食道心エコー図.大動脈弁の破壊,付着する疣贅.第10病日に認めたひも状構造物が,第31病日には弁膜瘤に変化している.
 
37-11 (11:04-11:12) 【症例報告】
  PCPS にて治療した急性心筋炎の三例
  河部 周子, 田淵 晴名, 山口  済, 山中 多聞, 山家  実, 中野 陽夫, 菅原 重生, 片平 美明
  東北厚生年金病院 循環器センター
PCPS にて治療,心エコーで経過を観察しえた急性心筋炎の3例を経験したので報告する.【症例1】35歳男性,主訴は心窩部痛.心電図異常,CK高値,TnT陽性,心エコーにて左室の全周性壁肥厚,壁運動低下を認めた.第3病日に循環動態悪化しPCPS開始.第11病日PCPS離脱,第43病日退院.【症例2】60歳男性,主訴は上腹部痛.心電図異常,CK高値,TnT陽性,全周性の左室壁運動低下を認め,PCPS開始.第3病日にはLVEFが0%と低下したが,徐々に心機能改善し第7病日PCPS離脱,第34病日退院.【症例3】63歳男性,主訴は動悸.心室頻拍,全周性の左室壁運動低下を認めPCPS開始.第2病日心静止となり,心エコーにて左房内血栓が疑われた.第3病日TEEにて左房内血栓を確認.その後心機能改善を認めず第7病日に死亡.急性心筋炎及び合併症の診断,PCPS導入・離脱時期の決定に心エコーは有用であった.
 
3 消化器T (11:12-11:56) 座長 石巻市立病院  赤羽 武弘
 
37-12 (11:12-11:20) 【症例報告】
  体外式USが診断契機となった胃GISTの一例
  石川 洋子1, 渡邊  誠2, 千葉 春枝3, 太田  恵3, 高橋 正統4, 肥田 圭介4, 赤坂理三郎5, 上杉 憲幸5, 菅井  有5
  1 松園第二病院 消化器科, 2 松園第二病院 放射線科, 3 松園第二病院 臨床検査室, 4 岩手医科大学 外科学講座, 5 岩手医科大学 病理学講座分子診断病理学分野
症例は71歳男性. 平成20年10月18日,食欲不振,強い脱力感を主訴に当科受診,Hb 6.7 g/dlと貧血を認め入院.腹部超音波検査(US)で胃前庭部に5 cm大の内部均一な球状腫瘤像を認め,第4層より発生した粘膜下腫瘍(SMT)が疑われた.胃内視鏡検査(GIF)で前庭部後壁に大きなSMTを認め頂部に出血がみられ,ヒータープローブにて止血.CT・MRIで胃前庭部のSMT,平滑筋腫が疑われた.手術目的で10月30日,岩手医大外科へ紹介.10月31日,朝タール便あり,Hb6.1 g/dl,GIF施行.腫瘍から拍動性出血がみられ,止血操作後救急搬送され,緊急手術(幽門側胃切除・Billroth I法吻合)を受けた.肉眼的には前庭部後壁に生じた,割面で固有筋層に主座を置く壁内発育型の粘膜下腫瘍で大きさ60×70 mm,腫瘍の頂部に潰瘍形成あり.組織学的に紡錘形腫瘍細胞が束状に増殖,核分裂像1〜2個/50 HPFs,一部に出血を認め,c-kit,(+)で,胃GIST,中リスク群と診断された.
 
37-13 (11:20-11:28) 【症例報告】
  原発性虫垂粘液癌による腹膜偽粘液腫の一例
  草野 昌男, 前嶋 隆平, 島田 憲宏, 山極 哲也, 小島 敏明, 池谷 伸一, 中山 晴夫, 須貝 吉樹, 樋渡 信夫
  いわき市立総合磐城共立病院 消化器科
【症例】60歳代,女性【主訴】右下腹部痛【現病歴】平成20年9月8日就寝中に突然の右腰痛で覚醒.右下腹部にも違和感があるため近医を受診した.軽度の炎症反応が認められたため,抗生剤,消炎鎮痛剤を処方されたが,右下腹部痛の改善がみられず,11日当科を紹介された.【検査所見】白血球 11400,CRP 11.39,CEA,CA19-9は基準値内であった.【US】肝左葉の裏面に高エコーと低エコーの混在する部分,右下腹部に腹水,肥厚した腸間膜を認めた.【CT】骨盤腔に腹水貯留,腹腔内には広範に低吸収域が分布.【MRI】回盲部周囲で腹膜の肥厚,上腹部の脂肪織の不整,腫大した虫垂を認めた.【TCS】虫垂入口部は異常なかったが,内部に粘液の貯留を認めた.以上より,腹膜偽粘液腫の術前診断で,回盲部切除,大網切除,温熱療法,腹腔内化学療法を行った.組織学的には,虫垂粘液癌であった.腹膜偽粘液腫は比較的稀な疾患であり,貴重な症例と考え報告する.
 
37-14 (11:28-11:36) 【症例報告】
  ソナゾイド造影超音波検査が診断に有用であったAPシャントを伴った門脈瘤の一例
  物江 恭子, 阿部 和道, 勝嶋 史子, 坂本 夏美, 菅野有紀子, 斉藤 広信, 高橋 敦史, 横川 順子, 大平 弘正
  福島県立医科大学 医学部内科学第二講座
【はじめに】門脈瘤は比較的まれな病態で門脈圧亢進症との関連が強調されている.今回我々は,静脈瘤破裂を契機に発見された肝内門脈瘤の一例を経験したので報告する.【症例】74歳男性,吐血にて当院救急外来受診.上部消化管内視鏡検査にて食道静脈瘤からの出血を認め止血術を施行され当科入院となった.入院時検査で肝炎ウイルスマーカーは陰性であり,入院時の腹部超音波検査にて肝内門脈の拡張を認め,肝内外の門脈に血栓は認められなかった.カラードプラ法で拡張した門脈内に乱流を認めた.慢性腎不全を認め,造影CTや血管造影による精査は施行できなかった.そこで,ソナゾイドを用いた造影超音波検査を施行したところ,動脈相で動脈が描出された数秒後に拡張した門脈が造影された.APシャントによる門脈瘤と診断された.【まとめ】腎不全で造影検査が施行できない症例でもソナゾイド造影腹部超音波検査がAPシャントの診断に有用であった.
 
37-15 (11:36-11:44) 【症例報告】
  USが診断の契機となった日本住血吸虫症の一例
  赤坂威一郎1, 後藤 ゆり1, 鈴木 年竜1, 佐藤 邦彦1, 斉藤  裕2
  1 岩手県立久慈病院 内科 消化器科, 2 斉藤内科 内科
【症例】34才女性【現病歴】平成18年8月から間欠的な右下腹部痛,慢性的な下痢を認めていた.平成20年9月より腹痛が持続し,微熱,下痢も続くため近医受診した.USにて肝左葉に不整な線状エコー像を認め当科紹介となった.【画像検査】US: 肝左葉に亀甲状の線状エコーを認めた.ソナゾイドUS: 亀甲状の線状エコー像はvascular imaging においてやや強調された.Kupffer imaging では不明瞭となった.Dynamic CT: USと同様に肝左葉に亀甲状の線状所見を認めた.CF: 上行結腸と直腸の生検で粘膜固有層および粘膜筋板内に虫卵と思われる構造物を認めた.腹腔鏡下肝生検: 肝表面の線維化,毛細血管の拡張を認めた.生検では,複数の門脈域に石灰化を伴う虫卵が多数認められた.以上より日本住血吸虫症と診断し治療を行った.【考察】日本住血吸虫症は日本では撲滅された疾患であるが,輸入感染症として重要な疾患である.
 
37-16 (11:44-11:56) 【一般演題】
  マイクロコンベックスプローブを用いたS4の観察
  工藤由美子1, 藤谷富美子1, 浅野 善文1, 菊地 孝哉1, 佐藤 重雄1, 杉田 暁大1, 山田 暢夫2, 石田 秀明3, 伊藤 安啓4
  1 由利組合総合病院 臨床検査科, 2 由利組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター, 4 アロカ株式会社 メディカル技術部
前回の本地方会で,マイクロコンベックス(MC)プローブによる脾と肝ドーム部観察の有用性を報告した.今回はMCプローブによる肝左葉内側区(S4)観察の有用性について報告する.S4は肝区域の中で最も大きく,また肋弓に重なるなど超音波での観察に苦慮する区域で,最近は肋間横走査が観察に有用とされている.そこで,この走査でMCと通常のコンベックス(通常C)プローブの両者による,1)Bモードの比較,2)造影超音波の比較,を各10名に対し行い若干の知見を得たので報告する.使用機種: ALOKA社製prosound α10. 結果: 1)B-モード: 共に観察は可能であったが,通常Cでは視野の両端が浮き,プローブの移動や回転に若干苦慮した.2) 造影: MCでは視野全体が均一に観察可能であった.通常Cでは所見の安定性に問題があった.代表例を供覧してS4観察に対するMCの有用性を述べる.
 
4 産婦人科 (14:20-14:52) 座長 仙台医療センター 明城 光三
 
37-17 (14:20-14:28) 【症例報告】
  妊娠初期に発見された胎児脳腫瘍の一例
  明城 光三1, 太田  聡1, 石垣 展子1, 和田 裕一1, 鈴木 博義2, 手塚 文明2, 夫  律子3
  1 国立病院機構仙台医療センター 産婦人科, 2 国立病院機構仙台医療センター 臨床検査科, 3 クリフム夫律子マタニティクリニック
妊娠初期の経腟超音波断層法で胎児頭部の異常を認め,胎児脳腫瘍であった稀な一例を経験した. 症例は32歳1回経産婦で,妊娠12週に定期健診のため当院を受診した際に経腟超音波断層法で胎児頭蓋内の異常を疑われ,妊娠14週にクリフムマタニティクリニックでの精査により胎児脳腫瘍が強く疑われた.その後経過観察を行ったが,腫瘍は急速に増大し妊娠19週3日に帝王切開術により分娩(死産)となった.出生児の体重は990 gで頭囲は34 cmあった.剖検により児の脳重量は330 gであり,正常脳組織はほとんど見られずimmature teratomaと診断された.
 
37-18 (14:28-14:36) 【症例報告】
  妊娠中期に短肋骨多指症候群V型と診断された一例
  西本 光男1, 斎藤さやか1, 小泉 俊光1, 室月  淳2
  1 岩手県立北上病院 産婦人科, 2 東北大学 産婦人科
【緒言】今回我々は出生前に短肋骨多指症候群V型(Short rib polydactyly syndrome type V)と診断された症例を経験したので報告する.【症例】30歳2妊2産(いずれも健児)家族歴に特記事項なし. 【現病歴】初診より当科で妊娠管理.妊娠21週時に胎児大腿骨長の短縮を指摘,その後胸郭低形成,羊水過多,心奇形,多指を認めたため妊娠25週で精査目的に紹介.超音波検査,胎児3DCTにて短肋骨異形成症候群と診断.妊娠39週1日,骨盤位で自然分娩出産となるも啼泣なく死亡確認.出産後のX線写真で出生前診断通りの所見を確認.今後は遺伝子検査,遺伝カウンセリング等を検討中である.【考察】出生前診断,胎児3DCTについては誤診,胎児被暴等の問題点があり,その必要性については議論を要する.本症例では,より正確な情報提供が行えた事で本人及び家族へのより良い環境整備が可能であったという点において非常に有益であったと考える.
 
37-19 (14:36-14:44) 【症例報告】
  胎内診断し得た先天性幽門閉鎖症の一例
  岩間 憲之, 北村 真理, 片桐未希子, 斎藤 昌利, 佐藤 多代, 室月  淳
  東北大学病院 産婦人科
【はじめに】胎児診断し得た先天性幽門閉鎖症の1例を経験したので報告する.【患者】23歳女性,0妊0産.【既往歴】先天性幽門閉鎖症.【家族歴】実兄が先天性幽門狭窄症.【現病歴】近医で妊婦健診.妊娠20週〜胎児胃泡が拡張傾向.妊娠24週〜羊水過多出現.75 gOGTTでGDM否定できず.家族歴も考慮し,妊娠29週5日に精査加療目的で当科入院.【経過】胎児の著明な胃泡の拡張と羊水過多を認めた.羊水過多症に対し羊水除去施行.GDMに対してはインスリン療法を行いコントロール良好.胃泡は妊娠期間を通じて,著明に拡張.妊娠37週4日,CPDおよび胎児機能不全にて帝王切開分娩.男児,3104 g,Apgar score(1分/5分): 7/8.生後1日目に先天性幽門閉鎖にて膜様部切除.【結語】先天性幽門閉鎖症は胎児期に超音波診断し得る疾患と考えられた.
 
37-20 (14:44-14:52) 【症例報告】
  胎児超音波により肺葉外肺分画症と診断できた一例
  北村 真理, 岩間 憲之, 片桐未希子, 松田 雪香, 齋藤 昌利, 今井 紀昭, 佐藤 多代, 高野 忠夫, 室月  淳, 岡村 州博
  東北大学 産婦人科
肺分画症は,胎児超音波で充実性の高エコー濃度を示す腫瘤として認められる.先天性嚢胞性腺腫様奇形などが鑑別にあがるが,超音波やMRIを用いて体循環からの血液供給の存在を証明することにより診断できる.今回胎児超音波により肺分画症と診断しえた一例を経験したので報告する.【症例】33歳女性【妊娠歴】0妊0産【現病歴】妊娠22週時,前医にて胎児腹腔内に腫瘤を認めたため当科紹介.胎児超音波上,縦隔背側に3.5 cm大の高輝度領域を認め,カラードプラ法にて腹部大動脈よりfeedingを確認,肺葉外肺分画症と診断した.胎児発育は良好で,腫瘤による縦隔の圧排所見等も認められなかった.妊娠41週,児頭骨盤不均衡の診断で帝王切開術にて分娩(女児,3468 g).出生児の呼吸循環動態は安定しており,出生後の造影CTにても胎内診断と同様の診断であった.児は現在も経過良好であり小児科フォロー中である.
 
5 腎・泌尿器 (14:52-15:40) 座長 東北大学 齋藤 英郎
 
37-21 (14:52-15:04) 【一般演題】
  Parametric Image を用いた腎疾患の超音波診断
  大山 葉子1, 石田 秀明3, 吉田千穂子1, 紺野 純子1, 工藤奈緒子1, 星野 孝男2, 小松田智也3, 渡部多佳子3, 濱滝 嘉伸4, 神山 直久4
  1 秋田組合総合病院 臨床検査科, 2 秋田組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター, 4 東芝メディカルシステムズ株式会社 超音波担当
得られた造影超音波データの多彩な活用が報告されるようになってきている.Parametric Image(以下,PI)もその一つである.PIは,従来あった造影超音波Time Intensity Curve (TIC)の発展形のひとつとも考えられる手法である.大まかには,TICが局所の造影濃度の経時的変化を示すものであり,視野全体でのそれを簡便に一枚のイメージで表現したのがPIといえる.PIを用いた報告はび慢性肝疾患のそれがわずかに見られる程度で,腎疾患のPIの報告は未だなされていない.今回我々は正常腎のPIと,腎血管性病変のPIを対比し報告する.正常腎においては腎動脈−葉状動脈−弓状動脈−腎実質−腎静脈の順で造影されるが,腎梗塞では梗塞部がどの時相でも無染域として表現される.また腎動静脈瘻では,腎動脈−瘻−腎静脈−腎実質の順で濃染されるなど,染まりのタイミングが明瞭に表現され今後の活用が期待される.
 
37-22 
  演題取り下げ
 
 
 
37-23 (15:16-15:28) 【一般演題】
  両腎摘出例の検討
  寺沢 良夫1, 広田むつ子2, 須藤 誠二2, 野村 禎子2, 野村 幸宏2, 鈴木とよみ2
  1 仙台社会保険病院 内科, 2 仙台社会保険病院 超音波検査室
【目的】当院で経験した両腎摘症例の疾患名,癌転移の可能性について検討した. 【対象】平成20年12月までの当院腎腫瘍手術例は1033人,このうち腎癌(RCC)は989人(96%).両腎摘出例は60人で,このうち血液透析(HD)例43人を除く17人を対象とした. 【結果】1,2腎共当院手術例: 11人,1 腎他院Op.,1 腎当院Op.: 6人,31RCC,2Multiple myeloma,1 腎結石 2,部分切除: 9人(10RCC) 3,2腎目多発: 3人 4,2腎摘後HD: 8人 5,2腎摘までの期間: 1M〜44Y 6,当院両腎摘例の1腎目摘出腫瘍径(11人): 3 cm〜10 cm 7,予後 生存: 8人(1人: 肺転移),死亡: 7人(6人: RCCの転移死,1人: 死因不明),不明: 2人 8,1腎目の手術から死亡までの期間(7人): 8M〜17Y6M 【まとめ】両腎摘出例17人のうち,2腎目への転移の可能性は,組織所見からの判定は難しく,他臓器への転移を有した7人(3人: 2腎目多発) が,2腎目への転移と推定された.
 
37-24 (15:28-15:40) 【一般演題】
  腎癌の膵転移症例
  寺沢 良夫1, 広田むつ子2, 須藤 誠二2, 野村 禎子2, 野村 幸宏2, 鈴木とよみ2
  1 仙台社会保険病院 内科, 2 仙台社会保険病院 超音波検査室
【はじめに】当院で手術により確定診断がついたRCCの膵転移例について検討した.【対象】平成20 年12 月までの当院腎腫瘍手術例は1033人,このうちRCCは989人(96%)で,膵転移手術例の5人を対象とした. 【結果】1,RCCの摘出腫瘍径・膵転移までの期間 摘出腫瘍径: 不明1人(他院手術例),膵転移までの期間: 7Y10M,7 cm(5Y7M),4.5 cm(14Y3M),4.5 cm(9Y5M),8.5 cm(1Y) 2,転移膵癌の症状・診断・諸検査 全員無症状で,US検査で転移膵癌を検出した.生化学検査,腫瘍マーカーに異常はみられなかった. 3,予後 死亡: 1人(RCCの転移死,膵・肝・肺),RCC術後7Y3M後, 膵癌術後1Y8M後 生存: 3人,RCC術後17Y9M(膵癌術後3Y6M),11Y11M(2Y6M),4Y1M(3Y1M) 不明: 1人,12Y11M(5Y1M)までは生存 【まとめ】4 cm以上のRCCは,術後15Y間は,USでのfollowにより早期膵癌を検出することで,手術で予後の改善が期待できる.
 
6 消化器U (15:40-16:36) 座長 宮城県立がんセンター  鈴木 雅貴
 
37-25 (15:40-15:48) 【症例報告】
  胆嚢捻転症の一例
  本郷麻衣子1, 長沼 裕子1, 船岡 正人1, 吉岡  浩2, 泉  純一3, 法花堂 学3, 小丹まゆみ4, 大嶋 聡子4, 石田 秀明5, 渡部多佳子6
  1 市立横手病院 内科, 2 市立横手病院 外科, 3 市立横手病院 放射線科, 4 市立横手病院検査科, 5 秋田赤十字病院 消化器科, 6 秋田赤十字病院 検査科
【はじめに】胆嚢捻転症は胆嚢が頸部や胆嚢管で捻転することで血行が悪くなり,胆嚢にうっ血性変化や壊疽性変化を生ずる.造影USで血行動態を詳細に観察し術前診断した1例を報告する.【症例】84歳女性.3日前より右側腹部痛あり.USで胆嚢腫大し,骨盤部まで下垂し,壁の著明な肥厚を認めた.胆嚢管部がひっぱられ総胆管が屈曲していた.造影USでも壁に染影は認めなかった.胆嚢捻転と診断し腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.胆嚢は胆嚢管部で360度反時計回転していた.術後良好で退院.【装置】日立EUB8500.【造影剤】ソナゾイド.【まとめ】本症例では胆嚢腫大,著明な壁肥厚のほか,胆嚢の下方への偏位,胆嚢管部でひっぱられて総胆管が屈曲してみえるなど,捻転を示唆する所見があり,さらに造影エコーで著明な壁肥厚部に染影は認めず,胆嚢捻転の診断がより確かなものになった.造影USは速やかな治療方針の決定に寄与した.
 
37-26 (15:48-15:56) 【症例報告】
  分化度を変えながら肝浸潤・増殖をきたした胆嚢癌の一例
  遠藤由美子1, 横川 順子2, 星  暢夫3, 菅野有紀子2, 見城  明4, 佐藤 佳宏4, 斉藤 拓朗4, 金沢 幸夫5, 後藤 満一4,5, 大平 弘正2
  1 福島県立医科大学附属病院 検査部, 2 福島県立医科大学 内科学第二講座, 3 福島県立医科大学 病理学第二講座, 4 福島県立医科大学 外科学第一講座, 5 南相馬市立総合病院 外科
【症例】57歳, 女性【主訴】右上腹部の腫瘤【既往歴】27歳, 胃癌で手術【現病歴】平成20年2月に右上腹部腫瘤を自覚し4月に受診した.腹部造影CTで,肝右葉に肝外へ突出する径110 mmの腫瘤を指摘され,低吸収域で辺縁のみ淡く造影された.腹部USでは,腫瘤はhaloをもち,内部エコーはlow-high混在していた. 胆嚢は描出されなかった.MRIでは,T1強調画像でやや高信号,T2強調画像で低〜高信号の混在を認めた.胆嚢管は中途で不明瞭化し胆嚢は同定されなかった.EUSでは,胆嚢と肝腫瘤との関係は不明瞭であった.胆嚢癌の術前診断のもと,肝部分切除術+胆摘術+膵頭十二指腸切除術が施行された.【病理診断】胆嚢頚部から底部にかけて高分化型管状腺癌を認めた.さらに,胆嚢壁外から肝内に進展するように低分化型腺癌から未分化癌への移行像が認められた.【結語】胆嚢癌を原発とし,悪性度を高めながら肝へ浸潤・増殖したと考えられた.
 
37-27 (15:56-16:04) 【症例報告】
  保存的経過にて閉鎖した胆嚢穿孔の一例
  杉山 宗弘, 水沼 仁孝, 飯島由紀子, 加藤 弘毅, 鈴木 智大, 苫米地牧子
  大田原赤十字病院 放射線科
50歳代男性.突然の心窩部痛出現.近医受診するも症状改善せず.救急車にて当院救急外来へ.来院時現症: 右季肋部圧痛,筋性防御(+).既往歴: 右上顎癌術後.胆嚢結石症.検査結果: 炎症反応(+).CT: 胆嚢壁軽度肥厚,胆嚢腫大なし.胆嚢頚部に石灰化結石.右横隔膜下からモリソン窩にかけ液体浸潤あり,胆嚢穿孔による胆汁性腹膜炎が疑われた.症状は改善傾向にあり保存的に経過観察となった.2日後のMRCP: 液体浸潤の増減なし.3日目の腹部超音波検査: 胆嚢体部腹側に約6 mmの壁欠損,同部を介して胆汁が胆嚢外へ漏出.症状及び炎症反応とも改善傾向であった為,保存的治療が続けられ,6日目に軽快退院.50日後のCT: 胆嚢周囲液体浸潤消失,しかし胆嚢頚部にあった石灰化結石は総胆管内に落下.旁乳頭憩室のため内視鏡的切石術は施行できず,開腹下に総胆管結石砕石・胆嚢摘出術を施行.摘出標本は胆嚢の形そのものが崩れており穿孔部は同定し得なかった.
図. 腹部超音波画像:胆嚢壁欠損部( 穿孔部)を矢印で示している.
 
37-28 (16:04-16:16) 【一般演題】
  胆嚢疾患の3D,cavity mode 像の検討
  渡部多佳子1, 石田 秀明1, 小松田智也1, 奈良美保子1, 鶴田  聡1, 畠山千枝子1, 舘岡  均1, 横山一二美1, 志村 伸子1, 濱滝 壽伸2
  1 秋田赤十字病院 超音波センター, 2 東芝メディカルシステムズ株式会社 超音波担当
最近のコンピュータ技術の進歩により,raw dataの収得とその多彩な活用が比較的容易になってきた.今回はその活用の一つである3Dおよびcavity modeに関し, 胆嚢疾患を中心に報告する.使用機種: 東芝社製Aplio XG(中心周波数3-4 MHz).3D: プローブ( 内部に組み込んだ,中心周波数3.5 MHz,帯域1.8-5.5 MHZ,のマイクロコンベックスプローブを機械的に振るもの)を用い得られた全raw dataをもとに多種の表示が可能である.cavity modeもそのひとつである.これはvolume rendering法で得られた3Dデータのうち,無エコー部を選択的に表示するもので,これにより,脈管や拡張胆管などが連続性を持って表示され,このような特性から各種胆嚢疾患の診断には有用と考えられる.ここでは実際の症例を中心に我々の経験を述べたい.
 
37-29 (16:16-16:24) 【症例報告】
  糞石によるイレウスの一例: 超音波像を中心に
  石田 秀明1, 小松田智也1, 渡部多佳子1, 石井  透1, 小棚木 均2, 澤田 俊哉2, 宮内 孝治3, 斉藤  謙4
  1 秋田赤十字病院 超音波センター, 2 秋田赤十字病院 外科, 3 秋田赤十字病院 放射線科, 4 秋田赤十字病院 病理部
比較的まれで,しかも超音波像の報告も少ない,糞石によるイレウスの1例について,超音波像を中心に報告する.使用装置: 東芝社製: AplioXG.【症例】56歳女性.肝硬変と腎不全例で15年前から透析を受けている.最近急激に便秘と腹痛出現.生化学的には問題なし.超音波では,肝硬変は不変.腸管の軽度拡張とS状結腸部に,動きを欠く3 cm大の音響陰影を伴う高エコー像あり.糞石によるイレウスと診断した.保存的に様子を見るも軽減せず,外科的に除去.術後経過良好.まとめと考察: 糞石は,文献的には,長期間,腸管運動をきたす疾患例にみられるとされている.また長期間の透析患者に多いという報告も多い.文献的にはCTで診断された例が多いが,腹部症状例に対して最初になされる検査法は超音波であることを考えると,その超音波所見を把握しておくことは臨床的意味が大きい.
 
37-30 (16:24-16:36) 【一般演題】
  東北地方の超音波教育(腹部)について
  石田 秀明1, 小松田智也1, 渡部多佳子1, 古川佳代子3, 大山 葉子2
  1 秋田赤十字病院 超音波センター, 2 秋田組合総合病院 臨床検査科, 3 横手市立病院 内科
最近は若手医師の超音波離れも顕著となり,超音波診断の将来が危ぶまれている.この原因(下記)を述べ,学会としてどう取り扱うか,考えたい.原因: 1) 大学の(教育に対する)無気力さ.指導すること,の意味,や,指導者養成の難しさ,を正面視することを(歴史的に)避けてきたため,まともに超音波教育が出来る大学がほとんどない状態にまでなってしまった.2) 合理的な,技術教示と技術習得に否定的な伝統.欧米に比してわが国は,合理的に," 技術" を分かり易く解説することを軽視してきた.3) 最近の日本人特有の感覚(事なかれ主義,悪平等,年功序列,飽きっぽさ).これらの感覚が,超音波教育の徹底と持続を妨げています.また,最小限,技術を短時間で習得できると思う愚,思わせる愚が横行している.結論は,本学会が超音波教育に対してリーダーシップをとるべきである.
 
7 循環器U・その他 (16:36-17:44) 座長 東北大学  西條 芳文
 
37-31 (16:36-16:48) 【一般演題】
  当院におけるエコ−ガイド下の内頸静脈・腋窩静脈穿刺
  小林希予志1, 中川 正康2, 松田  尚1, 渡辺 智美1, 渡辺 栄里1, 藤原理佐子3, 倉光 智之4, 鬼平  聡5, 伊藤  宏6
  1 市立秋田総合病院 超音波センター, 2 市立秋田総合病院 循環器科, 3 秋田県立脳血管研究センター 循環器科, 4 くらみつ内科, 5 きびら内科クリニック, 6 秋田大学 医学部内科学講座循環器内科学分野
当院循環器内科では,体外ペーシング時やスワンガンツカテ−テル,下大静脈フィルタ−の挿入などには内頸静脈を主に用いてきた.熟練した術者であればブラインドでもさほど難しい手技ではないが,まれには動脈を誤穿刺することもあった.そこで安全かつ迅速な手技施行のため,リニアプロ−ブを用いたエコ−ガイド下で行ったところ,経験の浅い術者でも短時間で合併症なく穿刺可能となった.一方中心静脈カテ−テルの挿入時には,これまでカテ−テル固定の面から鎖骨下静脈を穿刺する事が多かったが,従来の穿刺法ではエコ−ガイドは不可能であった.そこでエコ−ガイド下で穿刺可能な胸郭外鎖骨下静脈(腋窩静脈)からのアプロ−チを試みた.腋窩静脈の描出はほぼ全例で良好であり,脱水のため静脈が虚脱気味であった例を除き,合併症なくカテ−テル挿入が可能であった.現在は体表用の穿刺用カプラ−を転用しているが,今後血管用カプラ−の開発が望まれる.
 
37-32 (16:48-17:00) 【一般演題】
  くも膜下出血発症時の心機能障害について
  藤原理佐子1, 泉 学1, 小野 幸彦1, 鬼平  聡2, 伊藤  宏3
  1 秋田県立脳血管研究センター 内科・循環器科, 2 きびら内科クリニック 循環器科 内科, 3 秋田大学 医学部内科学講座 循環器内科学分野、呼吸器内科学分野
【目的】くも膜下出血(SAH)の壁運動低下と心電図,カテコールアミン等との関連を検討.【方法】平成18年6月からSAHを発症された91例に,入院時から術後に採血(心筋逸脱酵素,カテコールアミン,脳性心房利尿ペプチド(BNP)等),心電図,経胸壁心エコーを行い,壁運動低下が無い群(N群)とある群(D群)に分け検討.【結果】91例中8例に壁運動低下があり,D群で有意に平均年齢が高く,D群において有意に心駆出率は低く,左室収縮末期径は大きく,左室流入血流速度E波が低く,左室流入血流速度比E/Aは低値だった(p<0.01〜0.05).全体のBNP,CK-MB,troponinTが有意にD群で高値(p<0.05),またSAHの重症度においてN群の心駆出率とアドレナリン,ノルアドレナリンが並行に増減したが,他の採血値やD群とは無関係だった.【結論】SAH発症時の壁運動低下は,血清中のカテコールアミンとの関連性は低い可能性が示唆された.
 
37-33 (17:00-17:08) 【症例報告】
  腹部超音波検査中に認められた右心房内血栓症の一例
  菅原 修一1, 高橋 律子1, 佐々木由美子2
  1 医療法人正和会 南秋田整形外科 臨床検査科, 2 小玉医院 臨床検査科
【症例】70歳代男性【主訴】発熱,手指振戦【使用機種】フクダ社UF−8800【現病歴】平成18年3月朝食後手指の振戦を認めると伴に顔面蒼白にて受診,血圧低下と頻脈を認め出血性ショックを疑い検査により多発性胃潰瘍と診断【経過】輸血等の治療により良好に経過していたが入院5日目free airを認め消化管穿孔と診断される.以後経過観察の腹部エコーを数回施行する.穿孔後13日目のエコーで右房内に直径約17 mmのモバイル血栓様エコーを初めて認め,11日後同部の血栓様エコー消失を認めた.【まとめ】腹部超音波検査経過観察中に認められた右房内血栓様エコーは約2週間以内に出現,消失していること.球形でフィブリンネット様所見が見られる事などから,右心房内で形成された血栓と考えられた.【結語】今回我々は,右心房内で血栓が形成されたと思われる比較的まれな症例を,腹部超音波検査中に経験したので報告する.
 
37-34 (17:08-17:16) 【症例報告】
  左房内巨大浮遊血栓の一例
  佐藤 貴子, 渡邊 博之, 伊藤  宏
  秋田大学医学部 内科学講座 循環器内科学分野
症例は75歳女性.心房細動のため抗凝固薬内服中であった.吐血症状があったため抗凝固薬の内服を中止したところ,1週間後に下壁の急性心筋梗塞を発症,当院に救急搬送されPCIを施行された.心エコーでは,左室心基部から心尖部にわたる下部中隔,下壁の壁運動異常に加えて,左房拡大と,左房内を浮遊する直径36×35 mmの球状の巨大腫瘤を認めた.この腫瘤は拡張期に僧帽弁に嵌屯し,収縮期には僧帽弁の閉鎖に伴いふたたび左房内に押し返されるpinball motionを呈していた. そのため緊急で摘出術を施行された.病理学的検討の結果,腫瘤は巨大血栓であり,割面はonionskin appearanceを呈し,組織学的にも同心円層状にフィブリンが堆積した血栓であった.このような非弁膜症症例においてonionskin appearanceを有する巨大左房内血栓が形成された報告は稀であり,病理組織学的考察を加えて報告する.
 
37-35 (17:16-17:24) 【症例報告】
  心エコーにて観察した転移性心臓腫瘍の三例
  佐久間信子1, 高野 真澄2, 堀越 裕子1, 二瓶 陽子1, 佐藤ゆかり1, 小林  淳3, 待井 宏文3, 竹石 恭知3
  1 福島県立医科大学附属病院 検査部, 2 福島県立医科大学 臨床検査医学講座/ 第一内科, 3 福島県立医科大学 第一内科
【症例1】54歳女性.平成19年5月胃部不快感が出現し,腹部CTにて左腎から右房に連続する腫瘍を認めた.心エコーにて下大静脈から連続し右房へ連続する腫瘍を認め,右房腫瘍は可動性大で,心房壁及び下大静脈との癒着像は認めず.左腎細胞癌および下大静脈- 右房内浸潤の診断にて緊急腫瘍摘出術を施行した.【症例2】55歳女性.平成20年4月左背部痛が出現し,胸部CTにて左上肺野に巨大腫瘍と肺静脈- 左房内への浸潤を認めた.心エコーにて肺静脈から左房内に連続する可動性大の腫瘍を認めた.肺腺癌の診断にて化学療法を開始し腫瘍の縮小傾向を認めた.【症例3】68歳女性.平成20年6月労作時息切れが出現し,造影CTにて肝腫瘍および右房内腫瘍を認めた.心エコーにて可動性小の右房内腫瘍を認めた.腫瘍は下大静脈- 肝に連続し,下大静脈壁への浸潤が示唆された.肝細胞癌にて手術適応となったが,下大静脈壁への浸潤のため右房腫瘍摘出術のみ施行された.
 
37-36 (17:24-17:32) 【症例報告】
  左心耳を充満する血栓に対して抗凝固療法を施行したところ,可動性が増加し,外科的血栓除去術を行った一例の経時的心エコー所見
  柴田 宗一, 菊田  寿, 住吉 剛忠, 渡邉  誠, 三引 義明, 大沢  上
  宮城県立循環器・呼吸器病センター 循環器科
【症例】70歳代男性既往歴 高血圧,糖尿病, 平成15年心筋梗塞(PCI), 平成20年脳梗塞現病歴 平成20年秋突然胸部絞扼感,背部痛を自覚し救急車で来院.心電図は心房細動で以前と比してST変化なし.CTで冠動脈有意狭窄,肺血栓塞栓症や大動脈解離は認めず.しかし左心耳内を充満する構造物を認めた.背部痛は翌日には軽快した.経食道エコー(TEE)で左心耳内に1.8 cm× 3.2 cmの構造物を認め,一部にわずかな可動性を認めた.経胸壁エコーでも左心耳内構造物を指摘可能.血栓と診断し,心臓血管外科と相談し,ヘパリン,ワーファリンにて抗凝固療法を施行.入院後約3週間後のTEEで血栓は2.3 cm×1.2 cmと縮小していたが,可動性が増し,心耳内で浮動していた.塞栓症のリスクが高いと判断し,左心耳内血栓除去術,左心耳縫縮術を行った.抗凝固療法による左心耳内血栓の興味深いエコー変化について報告する.
 
37-37 (17:32-17:44) 【一般演題】
  CRT V-V optimizationにおける3D心エコーの有用性
  田渕 晴名1, 菅原 重生1, 中野 陽夫1, 山中 多聞1, 山家  実1, 山口  済1, 中島 博行1, 片平 美明1, 西條 芳文2, 田中 元直1
  1 東北厚生年金病院 循環器センター, 2 東北大学大学院 医工学研究科
CRT(両心室ペースメーカー)植込み後心エコー検査を用いたV-V delay設定には,aortic VTI の測定,MRdp/dt,エコー上での見た目(eyeball),Tissue Doppler法等一般に知られているが,いずれの指標も検査が煩雑,再現性が乏しい,エコー技術に熟練を要し施設間,また術者間により結果が異なる場合がある等の問題があると考えられる.今回我々は完全房室ブロック,非虚血性心筋症ペースメーカー植込み術後薬剤抵抗性慢性心不全患者に対しCRT upgrade手術を行った.至適VV delayの設定に3D心エコーによるstroke volume,EF値を用いたところ,従来の指標に比較し簡便で,かつ客観性,再現性に優れると考えられた.CRTのエコー評価の指標の一つとなる可能性があり報告する.
 
閉会のあいさつ (17:44-17:49) 東北地方会運営委員長  棚橋善克