① 1970年代から「格差」が拡大してきたことを,一般の方々が実感できるような情報を使って提示してください。
格差を測定する代表的な指数にジニ係数があります。社会の全員の所得が等しいという完全平等社会ではジニ係数は0になり,たった1人にすべての所得が集中し他の人の所得が0という完全不平等社会ではジニ係数は1になります。下図にあるように,日本は国際的にみて必ずしも不平等度が高い国ではありませんが,可処分所得から見た格差は拡大しています。
図 主要国の所得格差の推移 出所(2020年11月23日取得)
社会的公正,経済格差の分野に非専門であっても読める基礎的文献として
[1] 橋本健二 『中流崩壊』(朝日新聞出版)2020年
質問:金井 浩(東北大学大学院工学研究科教授)
回答:佐藤嘉倫(東北大学大学院文学研究科 教授)
監修:細谷雄三(東北大学名誉教授)
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② 「格差拡大によって地球の環境破壊が益々進んだ」と言われていますが,それらの間に因果関係があれば,社会一般の人々に分り易く説明できないでしょうか。
格差拡大そのものが地球の環境破壊につながるわけではありません。しかし豊かな国(地域)の企業がその活動により貧しい国(地域)の環境を破壊することはあります。J. K. ボイスは2016年にアメリカのノースダコタ州で起こった事件を紹介しています。先住民であるスー族の保留地であるスタンディングロックでは,ノースダコタ州のバッケン・シェール油田からイリノイ州に原油を輸送するためのパイプラインが建設されていました。環境破壊を恐れたスー族と環境問題活動家が抗議デモを行いました。それに対して,建設企業の警備員がデモ隊に犬をけしかけ,警察はデモ隊に向けて放水しました。この事件は格差拡大が環境破壊につながる典型例です。
参考文献
[1] J. K. ボイス, 「格差が加速する環境破壊」日経サイエンス 2019年5月号, pp. 66-71.
質問:金井 浩(東北大学大学院工学研究科教授)
回答:佐藤嘉倫(東北大学大学院文学研究科 教授)
監修:細谷雄三(東北大学名誉教授)
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③ 世界に目を向けると,富の過度な偏在によって,格差と分断が広がっています。「グレートリセット」という言葉に代表されるように,「持続可能な」新しい資本主義を模索する幾つかの動きも出ています。この動きの代表的なものについての解説をしていただけないでしょうか。
フェアトレードに代表される認証制度に基づいた企業活動があります。たとえば貧しい国のコーヒー農家からコーヒー豆を適切な価格(コーヒー栽培を持続でき,農家が豊かになれる価格)で購入する企業が存在します。企業は購入したコーヒー豆を「フェアトレードによって購入した豆」とブランディングして通常の豆よりも高い価格で消費者に販売しています。それでも消費者がその豆を購入するのは,その企業の活動を評価しているからです。
ここで重要なことは,企業は適正な利潤をあげていて,ビジネスを継続していることです。このようなことを可能にする「認証制度」は持続可能な新しい資本主義の可能性を示しています。
参考文献
[1] 畑山要介『倫理的市場の経済社会学: 自生的秩序とフェアトレード』学文社 2016年
質問:金井 浩(東北大学大学院工学研究科教授)
回答:佐藤嘉倫(東北大学大学院文学研究科 教授)
監修:細谷雄三(東北大学名誉教授)
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④ 日本には,長い歴史の中で培ってきた自然共生の価値観があり,持続可能性の面で貢献できる可能性があります。企業の価値を,金銭的な利益だけでなく,「環境や社会全体の利益への貢献なども加えた評価軸でみる」ということについて,可能であれば解説して頂けないでしょうか。
「グリーンキャピタリズム」が1つの可能性としてあります。太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを用いたビジネスがその典型例です。しかしそれだけではなく,通常の企業活動でも環境を意識した活動が可能です。ただしそのためには企業も行政も変わる必要があります。細田衛士氏によると,企業トップが「環境哲学」を持ち,中間管理職と現場はその理念を理解する必要がります。また行政も環境と経済を両立させるような制度的インフラを整える必要があります。日本の自然共生の価値観はこのグリーンキャピタリズムと親和的です。
参考文献
[1] 細田衛士「環境と経済に関する課題と現状―グリーンキャピタリズム構築に向けて」日本貿易会 月報 No. 694, pp. 56-57, 2011年
質問:金井 浩(東北大学大学院工学研究科教授)
回答:佐藤嘉倫(東北大学大学院文学研究科 教授)
監修:細谷雄三(東北大学名誉教授)
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