イオンエンジンについて          A6TB1194 西村康孝

 

1.原理

イオン化した推進剤を電界の中に放出すると、イオンの電荷によって加速運動を始める。機体は、このとき各イオンが得た運動量の総和と同じ大きさで逆向きの運動量を得る。つまり、イオンの加速の反作用により機体が加速するのである。イオン源の反対側にある電極はグリッド状(グリッド電極)になっている。ここを通過したイオン流は中和器により電気的に中性となって放出される。中和器はイオンと等量の電子を放出しており、中性にすることによって、ビームが電気的な斥力により広がってしまうことを防止すると同時に、機体の電位が低下することを防いでいる。 なお、推進剤としてはキセノンを用いる場合が多い。(1)

イオン推進の概念図(図1)

2.利点と欠点

イオンロケットは化学ロケットの10倍以上の比推力を誇る。(比推力とは推進剤流量に対する推力の大きさでロケットエンジンの最も重要な性能。定義は「推力/(推進剤流量・重力加速度)」で、単位は(秒)。ノズルの適正膨張を仮定すれば、「排気速度を重力加速度で割った物」という物理的な意味を持つ。化学ロケットは固体燃料で200~300秒、液体燃料は400~460秒に対してイオンエンジンは数千秒~10000秒)また、単位重量の推進剤で単位推力を発生させ続けられる秒数ともまた非常に高い速度差が実現可能である反面、その加速に要する時間は非常に長い。これイオン軽量であり、推力密度が低いためである。また、イオンが高速でグリッド電極に衝突するため、長期間に亘る運用ではグリッド電極の侵食が問題になる。

3.応用例

イオンエンジンは推力密度の低さや真空中でしか作動できないため、地球からの打ち上げに使うことはできない。その反面、少ない推進剤で長時間作動させる事により大きな速度変化を与えることが可能であるため、静止衛星の、軌道上の位置ずれ制御や、惑星間飛行、小惑星・彗星探査などの用途には最も適している。例としてきく4 (ETS-III) (NASDA) 、きく6(ETS-VI) (NASDA) 、かけはし (COMETS) (NASDA)  Deep Space 1 (NASA) 、はやぶさ (MUSES-C) (JAXA) などがある。(下図は、はやぶさ)

 

はやぶさの着陸想像図(一部の仕様が実機とは異なる) (はやぶさ)

参考  http://ja.wikipedia.org/wiki/