近年、パワーエレクトロクスの分野において、電力半導体素子の発達により,半導体電力変換装置の利用は増加の一途を辿っています。特にインバータは電車のモータ制御、工場の製造ライン、エアコンや冷蔵庫、照明器具など家庭用電気製品にも使用され、今後ますますこのような機器の導入が進むと考えられます。 私達は、高性能化、多機能化を実現するために、インバータの制御方式が重要であることに注目し、演算が簡単で、スイッチング周波数が一定で且つ負荷変動に強い制御方式の開発を行っています。
一例として、黄金分割法を利用した演算制御法を提案しました。
図1はシステムの構成図であります。図2に制御方法の原理を示しています。
図1
図2
図2において、目標値の面積は指令値が決まれば事前に計算できます。出力電流の面積は実際の電流値を用いて、直線近似と予測手法を導入して得られます。上記の面積誤差がサンプリング周期ごとに計算され、黄金分割法を用いて面積誤差を最小にするようなスイッチングタイミングを決めることができます。
黄金分割法を利用するメリットとして計算が四則演算なので簡単であること、(計算精度に応じて)計算回数が事前に決めることができ、計算時間がわかるので、一定のサンプリング周期内で必ずスイッチングタイミングを算出できることなどが挙げられます。 このようなインバータの制御方法は負荷などのパラメータを必要としない、制御量(電流)の実測値のみを用いるので、負荷などに依存しないことがわかります。
図3には実験による結果であります。異なる周波数の指令値に追従できることがわかります。
(a)負荷電流波形(f=10Hz、fs=2.5kHz) (b)負荷電流波形(f=50Hz、fs=2.5kHz)
図3
1) Hai-Jiao Guo, Akihiro Shimizu, Osamu Ichinokura and Hiroshi Takeda: A New Instantaneous Current Control method of Inverters Using Golden Section, Proceedings of 3rd Asian Control Conference, July 4-7, 2000,Shanghai
2) 清水、城石、郭、一ノ倉:黄金分割法を用いた瞬時電流制御型インバータに関する研究,電気関係学会東北支部連合講演会予稿集、pp224、(2000)