① コロナ禍におけるオンライン授業に見るデジタルトランスフォーメーションについて現状の説明をお願いします。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行によって,私たちは未曾有の体験をすることとなりました。2020年3月2日から,全国の小学校・中学校・高等学校等がすべて休業となりました。学校が再開するまで,年度の変わり目をまたいで3ヶ月ほどかかりました。
学校の休業が長引くに連れて,保護者の間では,児童生徒の学力保障を懸念する声が次第に大きくなりました。コロナ禍における学校の休業は3ヶ月が経過しても,オンライン授業を始められない学校は少なくありませんでした。文部科学省による2020年7月18日付公表の調査結果によれば,Zoom等の同時双方向型オンライン指導ができたのは,小学校の8%,中学校の10%に留まりました。
学校現場でオンライン授業が実施されなかった理由の多くは,「通信環境がない家庭があるから不公平になる」「特定の学校だけで実施することは教育の不平等になる」などの過剰な横並び意識による人的な判断でした。また,学校の機材を家庭に貸与することが想定されてない,学校から複数の教員が同時に配信しようとした場合のネットワークの帯域が保障されていない,あるいはYouTubeすら視聴できないなど過剰なフィルタリングが設定されていたケースもありました。
スマートフォンで家族とテレビ電話ができるこの時代に,しかもコロナ禍の危機的な状況の中にあって,小学校・中学校・高等学校等でほとんどオンライン授業が実施されなかったということは,公教育に対する壮絶な絶望感を生じさせてしまいました。災害等の緊急時には学校は避難所にもなります。地域の拠点となる公的施設である学校に,十分なネットワークインフラすら用意できていなかったという衝撃の事実が可視化されたのです。
電気・ガス・水道と同じように,ネットワークは基盤的なインフラです。デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)が進み,社会ではこれまでの前提がどんどん変わっています。我が国の将来を支えることになる子供たちが通う学校現場にこそ,ICT環境の整備やネットワークインフラを積極的に整備していくべきでしょう。
東北大学「社会にインパクトある研究」D-4「心豊かにする未来の情報科学」のプロジェクトでは,私たちがこれから生きていくニューノーマルと呼ばれる時代での情報科学の在り方を検討しています。
質問:金井 浩(東北大学大学院工学研究科教授)
回答:堀田龍也(東北大学大学院情報科学研究科 教授)
監修:細谷雄三(東北大学名誉教授)
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