東北大学 社会にインパクトある研究 持続可能で心豊かな社会の創造

令和CAST「社会にインパクトある研究」討論会

第9回討論会「隣国理解と戦争ーフィンランドにおける北極研究をめぐって」
【日  時】2023年1月25日(水)13:00-14:30
【開催方法】コロナ禍のためWEB形式のみ
【場  所】
【主  催】工学研究科 先端学術融合工学研究機構(令和CAST)社会インパクト推進ユニット
【座 長 団】
  経済学研究科 秋田次郎教授
  工学研究科 フィールドデザインセンター長 本江正茂准教授
  工学研究科 久田 真教授
  農学研究科 小倉振一郎教授
  東北アジア研究センター 高倉浩樹教授
  医工学研究科 永富良一教授
  高度教養教育学生支援機構 山内保典准教授
  工学研究科 社会インパクト推進ユニット長 金井 浩教授
【ね ら い】 フィンランドは,人口(550万)とGDPの規模が北海道とほぼ同じ小国である。フィンランドは,12世紀から数百年間にわたってスウェーデン統治下に置かれ,1809年にはロシア皇帝を君主とする自治公国となりロシアに併合された。1917年のロシア革命を機に独立を宣言,内戦を経て1919年に王制から共和制を選択。第二次世界大戦が始まると,ソ連のスターリンは,フィンランドに領土割譲を強く迫り,フィンランドに50万人の大軍で軍事侵攻した(1939-40冬戦争)。スターリンは,フィンランドがすぐに降伏すると楽観していたが,フィンランドは冬の寒さも味方に付け,ソ連軍は12万人の死者を出したが,最終的にフィンランドは領土の一割を割譲する講和条約に同意した。
 一方,ソ連軍が小国フィンランドを相手に苦しむ様子を見て,ヒトラーは1941年不可侵条約を破りソ連領内に進攻。フィンランドは,先の失地を取り戻すためそのドイツ軍に協力した(1941-44継続戦争)が,ドイツの敗色が濃くなった1944年,フィンランドはソ連と休戦協定を締結。それによって冬戦争で割譲した土地に加え,北部もソ連に割譲,さらに国民所得の1割に及ぶ巨額の賠償金を課せられた。それでも大国に挟まれたフィンランドは,バルト三国と異なって独立を守り抜くことに成功し,現在に至る。
 ロシアと欧州間にある地政学的な特異性から独立を維持するため,フィンランドは,外交,安全保障のみならず,資源エネルギー,経済を自立させる必要があった。1980年代以降,農業と林業中心からハイテク産業を基幹とする工業先進国へと著しい変化を遂げる。現在のフィンランドの1人当たりGDPは約4.9万ドルで日本よりやや高い。2020年に世界初の使用済み核燃料の最終処分場(オンカロ処分場)を開設。フィンランドの教育水準は世界的に高いことも有名。さらに政治家による汚職が最も少ない国の一つと評価されている。他の北欧諸国同様,社会民主主義を選択し高負担高福祉国であり,2014年OECDから「世界で最も競争力が高く,かつ市民が生活に満足している国の一つである」と評価されている。国会総議席数は200。国民の文化的,経済的水準は高く,国民性は勤勉。フィン人が91.7%,スウェーデン人が約5.5%に対し,外国人は2.7%と少ない。1995年にEU加盟。
 有史以来,政情を脅かされ続けてきた小国フィンランドが,自己のアイデンティティを守るためにどう努力してきたか,人間性の教育をいかに行ってきたかの視点を,現代日本が抱える構造的問題や将来の「賢明な市民」育成のための教育など,本討論会で取り上げてきた課題の解決の手掛かりとしたい。
【申込方法】以下でご登録下さい(東北大アカウントから)。(締切:1月23日(月)19:00)
     Google Form
     問合せ先:工学研究科 研究推進課研究推進係 担当:千葉
          E-mail:eng-ken@grp.tohoku.ac.jp
【次  第】
全体説明………社会インパクト推進ユニット ユニット長 金井 浩
討論提供………討論者は20分間程度発表,残り1時間程度は自由討論
「隣国理解と戦争ーフィンランドにおける北極研究をめぐって」…東北アジア研究センター 高倉浩樹教授
討論 ………