日本超音波医学会 東北地方会
第34回学術集会 プログラム・抄録集

日 時: 平成19年9月30日(日)8時55分〜17時49分
場 所: 艮陵会館 記念ホール
  仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
大会長: 宮城県立がんセンター  小笠原鉄郎
参加費: 1,000円
地方会URL: http://www.ecei.tohoku.ac.jp/~jsum/
連絡先: 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
  東北大学大学院工学研究科電子工学専攻内
  日本超音波医学会東北地方会第34回学術集会事務局
  TEL: 022-795-7081,FAX: 022-263-9444
  E-mail: jsum@ecei.tohoku.ac.jp
 
なお,会場までのアクセス方法につきましては地方会URLで御紹介しております.

講演者へのお願い

・一般演題は,1題につき発表時間8分,討論時間5分の合計13分間です.
 症例報告は,1題につき発表時間6分,討論時間4分の合計10分間です.
・発表方法は原則としてすべて会場PC使用で,Power Pointのみとなります.
・会場には,PowerPoint2007が使用できる画面サイズ1024×768のWindowsコンピュータとそのprojectorを用意します.
・演者は,発表予定時刻の1時間前までに受付を済ませて下さい.
・Power Pointのスライド枚数は制限しませんが発表時間を厳守して下さい.
 
発行日:平成19年9月21日






日本超音波医学会東北地方会
第12回東北地方会講習会

第12回東北地方会講習会(第34回学術集会併設)を下記の要項で開催いたします.御出席いただいた超音波専門医,超音波工学フェロー,超音波検査士の方には5単位の研修・業績単位が与えられます.

開催日時: 平成19年9月30日(日) 13:10〜14:40
会  場: 艮陵会館   仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
講演題目: 13:10〜13:55    座長 宮城県立がんセンター 小笠原鉄郎
「肝門部胆管癌の術前超音波精査:外科医は何を知りたいの?」
講師 久米明倫(名古屋大学第一外科)
  13:55〜14:40    座長仙台医療センター 篠崎 毅
「緊急を要する病態における心エコーの役割
講師 菅原重生(東北厚生年金病院循環器科)
参 加 費: 1,000円 (学術集会参加費とは別途徴収いたします.)

ランチョンセミナー

開催日時: 平成19年9月30日(日) 12:10〜13:00
会  場: 艮陵会館   仙台市青葉区広瀬町3-3-4  TEL:022-227-2721
講  演: 「新しい超音波造影剤による肝腫瘍性病変の検出と鑑別診断」
        講師  森安史典(東京医科大学 消化器内科)
        座長  千田信之(仙台医療センター)
共  催: 第一三共株式会社
なお,日本超音波医学会第35回東北地方会学術集会・第13回講習会は,平成20年3月23日(日)仙台市情報・産業プラザ(アエル)にて開催予定です.


      
開会の挨拶 (8:55-9:00) 大会長 宮城県立がんセンター  小笠原鉄郎
 
1 循環器T (9:00-9:50) 座長 東北中央病院  金谷 透
 
34-1 (9:00-9:10) 【症例報告】
  孤立性心筋緻密化障害の一例
  宮道 沙織, 矢作 浩一, 岩渕  薫, 竹内 雅治, 武田 守彦, 平本 哲也
  大崎市民病院 循環器科
症例は57歳,女性.主訴は労作時呼吸困難,動悸.10年前から高血圧,心電図異常を指摘されていたが精査加療せず.数年前より労作時呼吸困難,動悸(NYHAU°)出現し,平成19年5月から症状増悪(NYHAV°)したため当科受診となった.心エコー上LVDd=61 mm,EF=30%台と左室拡大, 低心機能で,また,左室後壁より心尖部にかけて著明な肉柱形成とカラードップラーにてその肉柱間への乱流が認められ,左室緻密化障害による心不全を疑い精査加療目的にて入院となった.診断確定するために心内膜心筋生検を含めた心臓カテーテル検査,MRI,CT,種々の心筋シンチグラフィーを施行した.今回,左室緻密化障害に関する心エコー以外のModalityとの比較検討を行ったので報告する.
 
34-2 (9:10-9:20) 【症例報告】
  孤立性僧帽弁前尖裂隙の一症例
  中島 博行1, 吉田 梨絵1, 黒川 貴史1, 熊谷 明広1, 四ノ宮裕記1, 菅原 重生2, 山中 多聞2, 山口  済2, 菊田  寿2, 片平 美明2
  1 東北厚生年金病院 中央検査部, 2 東北厚生年金病院 循環器センター
症例は25才女性.3才より僧帽弁閉鎖不全症で他院にてフォロー中.発熱と僧帽弁逆流(MR)を認めたため感染性心内膜炎(I.E.)疑いで当院循環器センター紹介となる.心エコー所見は,左室末期径55 mm,左室駆出率66%,左房径43 mm,大動脈弁駆出速度1.2 m/s,右心径拡大(-),短絡血流(-).僧帽弁レベルの短軸断層像では,僧帽弁前尖のほぼ中央に離開が認められ前尖が2枚のようにみられた.カラードプラ法では,左室長軸断面で僧帽弁前尖先端〜中央部の範囲より左房への逆流ジェットが認められ,僧帽弁レベルの短軸断層断面では,離開部位より逆流ジェットが認められた.I.E.を示唆する所見(-).血液培養は(-).これらの所見より,心内膜床欠損を伴わない孤立性の僧帽弁裂隙によるMRと診断された.MR精査をきっかけに孤立性僧帽弁裂隙を心エコー検査で診断できた症例を経験した.
 
34-3 (9:20-9:30) 【症例報告】
  仮性動脈瘤の一例
  金谷  透1, 櫻井 清陽1, 富田 和俊2, 高橋 経寛2, 村山千賀子2
  1 公立学校共済組合東北中央病院 循環器科, 2 公立学校共済組合東北中央病院 臨床検査科
症例は83才男性.主訴は間欠性跛行.CTにて右総腸骨動脈の90%狭窄が認められ,膝窩動脈以下は,両側とも全体的に75%から90%狭窄を認めた.右総腸骨動脈に対してインターベンション手術をおこなった.対側大腿動脈アプローチにて右腸骨動脈にステント留置を行った.術後3日目,穿刺部の疼痛が出現した.CTにて穿刺部の仮性動脈瘤が認められた.エコー( カラードプラ) にて,大腿動脈より瘤への血流が認められた.用手圧迫止血をエコーガイドにて行なった.圧迫により瘤内への血流は消失し,時間と共に瘤内の血栓形成が認められた.約20分の圧迫で止血を完了した.仮性動脈瘤の圧迫止血法として,超音波プローベでの圧迫法の報告があるが,本症例では瘤への血流が多く,プローベでの圧迫では圧力が不十分と考えられたため今回の方法をとった.エコーガイドでの用手圧迫法は,圧迫中に止血の度合いを知ることができるため有用と考えられた.
 
34-4 (9:30-9:40) 【症例報告】
  心室中隔欠損症術後に肺高血圧を呈した一例
  寺田  舞1, 石田  大1, 臼井美貴子2, 宗久 佳子1, 渡邊 博之1, 伊藤 宏1
  1 秋田大学医学部内科学講座 循環器内科学分野, 2 市立秋田総合病院
1歳3ヶ月VSDに対し心室中隔上部パッチ閉鎖術施行.術前から肺高血圧を認めていた(推定肺動脈収縮期圧(PASP)91mmHg).術後1年後のfollowでPASP 46 mmHgと肺高血圧は改善していた.その後,定期的にfollowを受けていた.8歳時には TR T〜U度,PASP 24 mmHg.これ以降,検査は受けず,運動制限なく,日常生活を送っていた.平成18年7月頃より,歩行時の息切れを自覚するようになった.平成19年2月呼吸苦増悪あり,3月中旬駅の階段を小走りで上がったところ,急にしゃがみ込み顔面蒼白で以後の記憶が定かではないというエピソードあった.翌日近医を受診し,当科紹介受診.同日当科入院となった.入院時はNYHAW度で,心エコー上massive TR,左室圧排著明,右室肥大あり,入院時のBNPは125であった.肺高血圧症に伴う右心不全の診断で酸素投与,ベラプロスト,ワーファリン,ジギタリス内服開始,その後,ボセンタン,ニフェジピン内服開始し,心エコー上は明確な改善指標はみられなかったが,自覚症状は次第に改善.NYHAU度となり,BNPも19.0と改善がみられた.心室中隔欠損症術後17年で再度肺高血圧症を呈した症例を経験した.このような事例はまれであると考えられるためここに報告する.
 
34-5 (9:40-9:50) 【症例報告】
  うっ血性心不全における3 次元心エコー法を用いた左房容積変化
  清水  亨1, 尾上 紀子1, 田中 光昭1, 馬場 恵夫1, 谷川 俊了1, 篠崎  毅1, 三上 秀光2, 伊藤真理子2, 大平 里佳2, 手塚 文明2
  1 仙台医療センター 循環器科, 2 仙台医療センター 臨床検査科
【はじめに】左房容積は左室の拡張能を反映し,心不全の重症度や予後と関連している.今回,3Dエコー法を用いて左房容積の変化を観察した,うっ血性心不全患者2例を経験したので報告する.【症例1】44歳,男性.急性心不全にて入院.BNP446,EF32%,TRPG37 mmHg.入院時,最大左房容積(LAmax)59 mlから最少左房容積(LAmin)33 mlへ単相性に変化した.治療開始7日後,BNP102にまで改善した時はLAmax57 ml/min35 mlと変化はなかった.しかし,左室流入波形のE波とA波に一致して2相性の左房容積変化を認めた.左房の能動的収縮直前相における一過性の左房容積増加によると考えられた.【症例2】85歳,男性.急性心不全にて入院.BNP2874,EF35%,TRPG67 mmHg.入院時はLAmax88 ml/min46 mlであったが,治療開始7日後には37 ml/22 mlへと低下を認めた.【まとめ】3Dエコー法による左房容積変化は,治療効果ならびに左室のfillingに関する病態評価に有用であると考えられた.
図.治療開始7日後のLA volume波形(症例1)
 
2 消化器T (9:50-10:40) 座長 公立横手病院  長沼裕子
 
34-6 (9:50-10:00) 【症例報告】
  著明な回転運動を示した胃GISTの一例
  伊藤 恵子1, 高橋  豊1, 須田亜衣子1, 上坂 佳敬2, 五十嵐 潔3, 工藤 克昌4, 石田 秀明5, 渡部多佳子5
  1 仙北組合総合病院 臨床検査科, 2 仙北組合総合病院 病理診断科, 3 仙北組合総合病院消化器科, 4 仙北組合総合病院 外科, 5 秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】超音波診断が他の画像診断に勝る点として動画による評価があげられる.今回我々は超音波上,著明な回転運動を示した胃粘膜下腫瘍(GIST)の一例を経験したのでその動画を中心に報告する.【使用機種】東芝社製Xario.【症例】76才女性.嘔吐と貧血を主訴に当院消化器科受診.腹部US検査で胃前底部に7.0×6.5 cmの円形腫瘤を認めた.腫瘤は時計軸方向に回転運動を示し,カラードプラ上,腫瘤内に同心円状走行を示す豊富な血管を認めた.Sonazoidを用いた造影超音波検査では腫瘤は多血性であり検査中に同様の回転運動も認められた.胃内視鏡検査からもGISTを最も疑い胃摘出術施行,GISTの最終診断を得た.【まとめ】胃GISTは胃内腔に突出することが知られており,これが胃の呼吸性変化に伴い,超音波画像上,回転運動として表現されたものと思われる.今後,病変部の動きを動画で評価することも重要と思われる.
 
34-7 (10:00-10:10) 【症例報告】
   無症候性門脈ガスの一例
  渡部多佳子, 石田 秀明, 小松田智也, 八木澤 仁, 古川佳代子, 榎 真美子, 石井  透, 大野 秀雄
  秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】近年の画像診断の普及に伴い門脈ガスの報告も増加している.それに伴い,以前は重篤な疾患の所見と考えられていた門脈ガスに対する見解も変貌しつつある.今回我々は無症候性門脈ガスの一例を経験したので報告する.【診断装置】東芝社製; Aplio【症例】70歳男性: アルコール多飲例.肝機能異常の精査目的に当院受診.生化学検査上肝炎ウイルス(-)で超音波上,肝表面の軽度凹凸と実質エコーの乱れ,尾状葉の腫大からアルコール性肝硬変と診断した.肝に腫瘤(-),門脈血栓(-),腹水(-).しかし,門脈本幹を中心に,上腸間膜静脈から肝内門脈枝にかけて,血流方向に移動する,多数の点状エコーを認め,そのFFT解析から門脈ガスと診断した.その後1〜2月毎の超音波検査で門脈ガスの消失が確認された.【まとめ】臨床的には多様な原因で門脈ガスが出現し,そのかなりのものが無症候性と思われ,検査手順の確立の上からも今後このような例の蓄積が重要と思われる.
 
34-8 (10:10-10:20) 【症例報告】
  Osteoclast-like giant cell tumor of the pancreasの一例
  土肥 泰明1, 長沼 裕子1, 佐藤美知子1, 船岡 正人1, 吉岡  浩2, 平野 弘子3, 石田 秀明4, 西川 祐司5
  1 市立横手病院 内科, 2 市立横手病院 外科, 3 市立横手病院 放射線科, 4 秋田赤十字病院超音波センター, 5 秋田大学医学部 病理病態医学講座
【はじめに】Osteoclast-like giant cell tumor of the pancreas(膵破骨細胞型巨細胞癌; OGCT)の一例を経験したのでUS 画像を中心に,若干の文献的考察を加え報告する.【症例】66歳女性.47歳時急性膵炎の既往あり.5年前,腹痛,嘔吐を訴え当科受診.US,CTで膵体尾部に10 cm 大の嚢胞性病変を認めた.膵仮性嚢胞と考え入院加療.4ヶ月後病変は5 cmに縮小していた.その後,外来で経過観察中,US,CT 検査で病変部の壁が一部肥厚し腫瘤性となり精査施行.レボビストを用いた造影USでは,早期相でわずかな染影を認めた粘液性嚢胞腺癌を疑い,膵体尾部切除術施行.病理組織検査では,浸潤性粘液性嚢胞腺癌と,腫瘤性病変部には紡錘形細胞と巨細胞がみられOGCTの合併と診断された.【まとめ】OGCTは比較的稀な膵腫瘍であり,巨細胞と多形性を示す腫瘍細胞がみられる.粘液性嚢胞腫瘍や浸潤性膵管癌との合併も約40%に報告されている.嚢胞性部分が見られる場合が多く,膵嚢胞性腫瘍をみたときには,OGCTも念頭に入れる必要がある.
 
34-9 (10:20-10:30) 【症例報告】
  造影超音波検査を施行した胆管嚢胞腺癌の一例
  工藤由美子1, 菊地 孝哉1, 佐藤 義昭1, 平宇 健治2, 菅原  浩2, 佐藤 敏博3, 山田 暢夫3, 斎藤  裕4, 杉田 暁大5, 石田 秀明6
  1 由利組合総合病院 臨床検査科, 2 同 外科, 3 同 消化器科, 4 同 放射線科, 5 同病理, 6 秋田赤十字病院 超音波センター
肝嚢胞として経過観察中に腫瘤径と内部エコーの急激な変化が認められた胆管嚢胞腺癌の一例を造影超音波所見中心に報告する.【使用機種】ALOKA社製prosound α10,SSD5500.【症例】75歳男性. 病変部は2007年1月までは壁がわずかに不整肥厚した嚢胞性病変(S3 最大径5 cm)であった.同年5月下血などを主訴に外来受診.その際施行された腹部超音波検査で辺縁低エコー帯を伴う最大径7 cm,内部エコー不均一な充実性腫瘤となっていた.血液検査で腫瘍マーカーは正常範囲.造影超音波上腫瘤はhypervascularとavascularな領域が混在していた.CT,MRIで腫瘤は辺縁のみ造影され内部に出血,壊死を伴っていた.肝左葉切除術施行され,病理組織学的検査で胆管嚢胞腺癌と診断された.【まとめ】壁肥厚を認めた嚢胞性病変では胆管嚢胞腺癌の可能性を念頭に入れるべきである.急激な増大は腫瘤内の出血と広範な壊死によると思われ,これらの診断には造影超音波検査が有用と思われた.
 
34-10 (10:30-10:40) 【症例報告】
  仮性脾動脈瘤の一例
  工藤奈緒子1, 大山 葉子1, 紺野 純子1, 吉田千穂子1, 星野 孝男2, 渡部 博之2, 森 朱音2, 石田 秀明3, 古川佳代子3, 渡部多佳子3
  1 秋田組合総合病院 生理検査, 2 秋田組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】慢性膵炎に伴う仮性動脈瘤(pseudoaneurysm 以下PA)は, 比較的稀である.今回我々は,仮性脾動脈瘤の一例に対し,塞栓術前後に造影超音波検査を施行,若干の知見を得たので動画を中心に報告する.使用機器: 日立EUB6500 【症例】33男性 【現病歴】2001年6月よりアルコール性膵炎にて入退院を繰り返していた.2007年3月20日よりタール便,めまいが出現,改善せず当院救急外来を受診,高度貧血を認め消化管出血の疑いで入院となった.US上膵尾部に83×60 mm大の充実部とのう胞部が混在する腫瘤あり,カラードプラにてのう胞部に動脈血流を認めPAと診断された.sonazoid造影超音波検査を脾動脈塞栓術前後に施行し,PAのみが選択的に塞栓されている事を確認した.【まとめ】PAの診断はカラードプラのみで十分可能であるが,脾などの周囲臓器を温存しPAのみが塞栓されたかを確認するには,造影超音波検査が有用と思われた.
 
3 基礎 (10:50-12:08) 座長 東北大学  梅村 晋一郎
 
34-11 (10:50-11:03) 【一般演題】
  計算力学解析による内圧負荷時における血管壁の局所ひずみ分布に関する基礎研究
  福井 智宏, 長谷川英之, 金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
圧力波の伝搬に伴う血管壁の半径方向の微小ひずみ変化は,血管壁の局所的な力学特性と密接な関係にある.そのため,超音波を用いた血管壁微小ひずみ変化の計測は,非侵襲的に血管壁の質的評価を行うための有効な手段となる.当研究室ではこれまでに,超音波診断技術にディジタル信号処理を組み合わせることにより,心周期における血管壁のミクロンオーダのひずみを精度よく計測し,血管壁の局所的な質的評価を行ってきた.ところが,幾何学的に複雑な血管断面における応力状態を,単純な解析解から推測することは難しく,今後,より詳細な血管壁の局所力学特性分布を評価していくためには,圧力負荷時における血管壁の応力・ひずみ分布を明らかにしておく必要がある.そこで本研究では,計算力学解析により,血管壁の壁内応力・ひずみ分布に関する基礎的検討を行い,局所弾性率推測法の考察を行った.
 
34-12 (11:03-11:16) 【一般演題】
  超音波RF信号の高フレームレート計測と動脈壁の高精度トラッキング
  長谷川英之, 金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科 電子工学専攻
著者らは,受信超音波の位相偏移および中心周波数に基づき動脈壁の変位分布を推定し,ひずみ分布を描出する手法を開発した.しかし,変位推定に用いた周波数が受信波の中心周波数と異なると推定誤差が生じる.この誤差の低減には,ひずみに寄与しない,位置変化を除去することが効果的である.本報告では,超音波RF信号を高フレームレート(3500 Hz)で計測し,位相を用いずRF信号の相関に基づき動脈壁を高精度にトラッキングする手法を開発した.図(a)と(b)は,33歳健常男性の頸動脈においてin vivo計測された約1.4秒間のRF信号(後壁付近)である.なお,図(a)と(b)では従来法および提案法により動脈壁の移動に伴うRF信号の深さ方向のシフト量を相殺してある.図(a)に比べ図(b)では全てのRF信号が良く重なっており,提案法の方が位置変化を正確に推定できていることが分かる.図(c)では,壁のひずみ分布とともに,パワードプラ法に基づき内腔からの信号の強度も描出されている.
図.(a) 従来法および (b) 提案法により動脈壁の移動に伴う深さ方向へのシフトを相殺したRF信号.(c) 頸動脈壁のひずみおよびパワードプラ法により算出した内腔領域からの信号のパワーを描出した結果.
 
34-13 (11:16-11:29) 【一般演題】
  心臓壁領域の自動同定を目指した超音波エコーの振幅二乗コヒーレンス関数への最適閾値設定
  衣川 尚臣, 長谷川英之, 金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
【目的】主観によらず心臓壁領域と心内腔領域を弁別することを目的とし,両領域からの超音波RF信号を周波数領域で解析する.【方法】複数フレームにおいて,両領域からのRF信号の周波数スペクトルの時間変化を,振幅二乗コヒーレンス関数を用いて評価する.【結果】心臓壁領域では同一対象物を追跡できるのでコヒーレンスが高くなる.一方,心内腔領域における超音波の散乱体である血球は超音波ビームの焦域内にとどまらないためコヒーレンスは低くなる(図(b)).本報告では,振幅二乗コヒーレンス関数に閾値を設定することにより両領域の弁別を行った.最適な閾値は手動で設定した壁および内腔の領域におけるコヒーレンスの分布において,両領域の分布が重複する部位の重心により決定し,その最適閾値により分類した結果が図(c)である.また,右心室の前壁に近い領域は,心外組織の多重反射の影響により心臓壁領域同様コヒーレンスが高くなった.
図.(a) 従来のBモード像.(b) 振幅二乗コヒーレンス関数.(c) 振幅二乗コヒーレンス関数への閾値設定による領域同定.
 
34-14 (11:29-11:42) 【一般演題】
  心音の横波振動伝搬と電気的興奮伝導に伴う心振動のイメージング
  金井  浩1, 西條 芳文2
  1 東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻, 2 東北大学 加齢医学研究所
本発表では,心音(I・II音)振動が横波として心臓壁に沿って伝搬する様子が超音波装置で可視化できること(IEEE 2005; UFFC-51: 1931-1942)を示す. さらに心電図R波の数十 ms前より,心筋を伝導する電気的興奮によって心筋に生じる振動も可視化できる( 電子情報通信学会超音波研究会(2006-100)29-34).この位相差トラッキング法で計測できる振動速度の下限は,約0.1 mm/sであり(IEEE 1997; UFFC-44: 752-768),この値は,2 ms 間隔で計測する場合,0.2 μm の変位に相当するが,超音波の波長程度の領域が同相で振動すると仮定しその速度・変位計測の精度を示している.
図.陳旧性心筋梗塞の患者の心室中隔壁上の振動の位相分布を表示(心電図Q波からR波にかけて6 ms間隔で.48 Hzの成分に関して).赤い波面は,病変部(赤○印)の部分を避けるように,心尖部から心基部へ伝搬している.
 
34-15 (11:42-11:55) 【一般演題】
  超音波RF信号の周波数スペクトルを用いた赤血球凝集の計測法に関する検討
  齋藤 靖好, 長谷川英之, 金井  浩
  東北大学 大学院工学研究科電子工学専攻
【目的】超音波による非侵襲かつ定量的な赤血球凝集度の評価を目的とし,超音波RF信号を周波数領域で解析することにより,静脈内腔における赤血球凝集の計測を試みた.【方法】散乱体が波長より十分小さい時,超音波RF信号のパワーはレイリー散乱に従い,周波数の4乗に比例する.しかし,赤血球が凝集し,散乱体としての半径ρが大きくなるとレイリー散乱成分が減少する.受信RF信号中のレイリー散乱成分を取り出すために,静脈内腔からのRF信号のパワースペクトルを,散乱成分が無いガラス板からの反射波のパワースペクトルで正規化した.【結果】正規化パワースペクトルの傾きが散乱体の有効半径ρに対応しているため,最小二乗法を用いて図のように傾きを推定した.静脈内腔における散乱体の有効半径ρは23 μm と推定された.これは赤血球5個分の大きさに対応しており,本手法による赤血球凝集度評価の可能性を示している.
図.ガラス板からの反射RF信号によって正規化されたパワースペクトル
 
34-16 (11:55-12:08) 【一般演題】
  Periodontal Gene Transfer Using Ultrasound and Nano/Microbubbles
  陳 鋭1, 千葉 美麗1, 堀江佐知子2, 五十嵐 薫1, 小玉 哲也2
  1 東北大学大学院 歯学研究科・口腔保健発育学講座, 2 東北大学 先進医工学研究機構・ナノメディシン分野
This study was performed to investigate the efficiency of ultrasound gene transfer into periodontal ligament (PDL) cells. PDL cells were cultured, and then transfected by using ultrasound with or without nano/microbubbles. EGFP-plasmid or luciferase-plasmid was used as the reporter genes. EGFP expression was observed by fluorescent microscopy, and luciferase expression was assayed with a luminometer at 2-day-after-transfection. Two types of nano/microbubbles albumin and lipid bubbles-were used. Cell viability was examined by MTT assay. The order of expression efficiency was control; ultrasound only; ultrasound with nano/microbubbles (P<0.01). The gene expression activity induced by lipid bubbles was larger than albumin bubbles. We concluded that ultrasound gene transfer targeting to PDL cells was effective and the combined use with nano/microbubble was strongly enhanced ultrasound-induced gene transfection.
 
4 腎・泌尿器・産婦人科・乳腺・甲状腺 (14:50-15:33) 座長 仙台赤十字病院  谷川原真吾
 
34-17 (14:50-15:00) 【症例報告】
  甲状腺原発腺脂肪腫の一例
  大河内千代, 鈴木 眞一, 吉田 清香, 中野 恵一, 福島 俊彦, 竹之下誠一,
  福島県立医科大学 外科学第2講座・内分泌外科
甲状腺原発と思われるlipoadenoma症例を経験したので報告する.症例は68歳女性.甲状腺左葉に径50 mmの軟な腫瘤を触知した.甲状腺機能は正常で,サイログロブリンが547 ng/mlと上昇を認めた.超音波検査では甲状腺左葉に径50 mm大の内部均一な充実性腫瘍を認め,尾側は縦隔内に嵌入していた.細胞診では良性(濾胞性腫瘍疑い,脂肪細胞は認めず).CTでは縦隔内に嵌入し,気管を右方へ圧排する長径60 mmの内部不均一な腫瘤であった.Tlシンチにて,遅延相でwashout不良あり.以上より,縦隔内甲状腺腫,濾胞癌疑いにて手術となった.甲状腺左葉切除術を施行した.縦隔内への嵌入はあったが,頸部操作のみで摘出可能であった.75×70 mm,70 gの充実性の腫瘍で,割面は黄褐色調であった.病理所見は,小葉胞状・索状に配列する濾胞上皮成分と脂肪組織とが混在しており,lipoadenoma(腺脂肪腫)との診断となった.lipoadenomaは濾胞腺腫の特殊型であり,腫瘍全体に成熟脂肪細胞を含む濾胞腺腫と定義されている.報告例は20例弱であり,非常にまれな良性腫瘍といえる.lipoadenomaの成因としては,1) 上皮成分と間葉成分の混合性の腫瘍である,2) 濾胞腺腫の間葉性化生によるという二つの仮説がある.細胞診,CT,MRIから術前診断が可能との報告もあるが,今回の症例では,術前診断は困難と思われる.
 
34-18 (15:00-15:10) 【症例報告】
  甲状腺片葉欠損に発症した甲状腺機能亢進症の一例
  鈴木 眞一1, 武藤  淳2, 猪狩 咲子3
  1 福島県立医科大学 外科学第2講座・内分泌外科, 2 福島労災病院 外科, 3 いがり内科クリニック
甲状腺片葉欠損は,先天性の甲状腺形成異常であり,頻度は0.05%と極めて稀である.またその多くは機能が正常もしくはTSH高値が多いとされている.今回我々は,甲状腺片葉欠損に甲状腺機能亢進症を発症した症例を経験したので,その超音波所見とともに報告する.症例は,60歳代女性.主訴は甲状腺腫瘍.既往歴; RA,急性肝炎,虫垂炎,胆石症.現病歴,約1年前から下腿のむくみ,全身倦怠感,動悸出現し,近医よりいがり内科クリニックを紹介された.検査の結果甲状腺機能亢進症があり,メルカゾール15 mg/日より投与を開始した.下腿浮腫および動悸は軽快したが,甲状腺左葉の腫大が著明であり,濾胞性腫瘍の合併も危惧され,福島労災病院甲状腺専門外来に紹介された.紹介時は,甲状腺機能正常,頸部超音波では左葉から峡部にかけ,びまん性に腫大し,カラードプラで血流の増大を認める.被膜を伴うような腫瘤性病変は認めず,また右葉には甲状腺組織を認めなかった.またTcシンチでは,甲状腺機能が正常にもかかわらず,左葉全体に強い集積があるものの,右葉には全く取り込みを認めていない.CTでも左葉から峡部の腫大を認めるのみであり,右葉には腫大および正常甲状腺を全く認めなかった.以上から,AFTNというより片葉欠損例に発症した甲状腺機能亢進症と判断し,メルカゾールによるコントロールで経過を観察している.甲状腺片葉欠損例は稀であり,通常,超音波検診で偶然に発見されたり,甲状腺機能低下症や機能低下による代償性腫大で発見されることも多い.本症例のように甲状腺機能亢進症を認めることは極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.
 
34-19 (15:10-15:20) 【症例報告】
  双胎間輸血症候群に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術による胎児治療を行った二例
  室月  淳, 齋藤 昌利, 千坂  泰, 岡村 州博
  東北大学 産婦人科
【症例1】29歳,1妊1産.妊娠21週4日で紹介され,第1児が羊水過多(MVP12.4 cm),心拡大,心嚢液・腹水貯留を認めた.第2児は羊水過少(MVP1.8 cm)であった.22週1日,全身麻酔下に胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)を施行した.胎盤上にAV吻合7ヶ所のほか,太いAA吻合,VV吻合が存在したためレーザー凝固に難渋し,手術に3時間22分を要した.術後recipientのNIHFが一時的に悪化したものの,その後は羊水過多過少やNIHFは改善した.妊娠24週後半よりdonorの膀胱が認められなくなり,recipientの心も再拡大の傾向となったため,TTTSの再発を疑い,妊娠26週1日に紹介元病院で帝王切開を行った.666 g,460 gのいずれも女児で,現在NICU 管理中である.【症例2】35歳,0妊0産.最初は妊娠11週の一児nuchal translucencyで紹介され,外来でフォローしていたところ,妊娠17週で羊水過多(MVP8.8 cm)と羊水過少(MVP1.9 cm)を示しTTTSと診断された.18週2日でFLP施行し,胎盤上のAV吻合9ヶ所を焼灼して終了した.Donorの臍帯は胎盤辺縁付着であり胎盤灌流領域がかなり狭いと推定された.妊娠28週で一児が胎児死亡となったが,他児は妊娠32週まで順調に経過している.【考察】妊娠26週未満に発症したTTTSに対して従来は連続的羊水除去術が行われてきたが,児の予後は満足するものではなかった.近年,欧米で多数例に行われてきたFLPが日本でも導入され,良好な成績が報告されている.今後さらに症例の蓄積による検討を加える予定である.
 
34-20 (15:20-15:33) 【一般演題】
  精巣腫瘍エコー像の検討
  岡嶋みどり1, 冨吉 聡子1, 氏家 恭子1, 細川 洋子1, 小室 邦子1, 青木 大志2, 川村 貞文2, 栃木 達夫2
   1 宮城県立がんセンター 検査部, 2 同 泌尿器科
【目的】多彩といわれる精巣腫瘍のエコーパターンと病理組織型との関連を検討する.【対象】過去5年間に当院で精巣腫瘍として摘出手術をした13例,〔年齢〕21〜67歳,平均37歳 〔病理組織型〕悪性リンパ腫1例,セミノーマ3例,非セミノーマ9例(胎児性癌2例 混合型7例)【使用機器】アロカSSD-2000,東芝SSA-340,SSA-380,Aplio,プローブはコンベックスを使用した.【結果】不均一エコー像を示す例の多くが混合型であったが,セミノーマでも不均一エコーを示す例があった.均一エコー像を示す例は単一組織型であった.悪性リンパ腫例はBモード画像のみではセミノーマとの鑑別が困難であったが,ドプラ血流シグナルが豊富に検出された.血流シグナルの検出が悪性リンパ腫の鑑別に有用である可能性が示唆された.
 
5 循環器U (15:33-16:26) 座長 東北大学加齢医学研究所  西條芳文
 
34-21 (15:33-15:43) 【症例報告】
  ペースメーカー心室電極右房内部分に一過性に腫瘤状構造物の附着を認めた一例
  小林希予志1, 中川 正康2, 藤原 敏弥2, 阿部  仁1, 渡辺 智美1, 倉光 智之3, 藤原理佐子4, 鬼平  聡5, 伊藤  宏6
   1 市立秋田総合病院 超音波センター, 2 市立秋田総合病院 循環器科, 3 くらみつ内科クリニック, 4 秋田県立脳血管研究センター 内科・循環器科, 5 きびら内科クリニック, 6 秋田大学 医学部内科学講座循環器内科学分野
症例は80歳代男性.2年前に失神発作にて受診,洞不全症候群と診断されペースメーカー植込み術を施行した.冠動脈造影では左前下行枝に高度狭窄を認め,冠動脈形成術を施行した.ペースメーカー植込み術後も発作性心房細動が頻回だったためワーファリンを導入したが,貧血が徐々に進行したため半年後に中止した.その4ヶ月後全身の浮腫および胸水貯留を認めたため入院となった.その際のUCGにてペースメーカーの心室電極の右房内部分に可動性のある腫瘤状構造物(9.8×4.4 mm)認めた.経食道心臓超音波でもほぼ同様の所見であった.発熱や血液検査上の炎症反応を認めず,また低酸素血症や右心負荷など肺塞栓を疑う所見も認めなかったため,ワーファリンを再開して経過観察とした.その後のUCGでは電極に附着する腫瘤状構造物は縮小し,半年後には消失した.
 
34-22 (15:43-15:53) 【症例報告】
  気道感染を契機に急性増悪を繰り返した閉塞性肥大型心筋症の一例
  中川 正康1, 藤原 敏弥1, 柴原  徹1, 小林希予志2, 阿部  仁2, 渡辺 智美2, 藤原理佐子3, 鬼平  聡4, 伊藤  宏5
   1 市立秋田総合病院 循環器科, 2 市立秋田総合病院 超音波センター, 3 秋田県立脳血管研究センター 循環器科, 4 きびら内科クリニック 循環器科, 5 秋田大学医学部内科学講座循環器内科学分野
症例は70歳代女性.3年前に洞不全症候群のためペースメーカー植え込み術施行.某年4月肺炎のため入院時著明な心雑音を聴取,心エコーではSAM を伴う圧較差140 mmHg の流出路狭窄を認めた.心室ペ−シングとなるようにペースメーカーを設定し,シベンゾリンとベラパミルを追加した.喘鳴が遷延したためβ遮断薬投与は見送った.肺炎は軽快,左室内圧較差もほぼ消失した.同年8月上気道炎症状を契機に心不全を呈した.心エコ−では左室中間部から心尖部にかけて心室瘤様で,左室流出路に110 mmHgの圧較差,V度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.冠動脈造影は正常であった.ニコランジルとカルペリチドの持続静注を行い心不全は改善傾向を示したが,左室内圧較差は残存し僧帽弁閉鎖不全も同様であった.左室中隔焼灼術や僧帽弁置換術も考慮されたが,メトプロロ−ル併用にて喘鳴等の出現なく左室内圧較差は消失,僧帽弁閉鎖不全もT〜U度へ改善した.
 
34-23 (15:53-16:03) 【症例報告】
   バルサルバ洞動脈瘤及び右室穿通を来した感染性心内膜炎の一例
  佐藤ゆかり1, 高野 真澄1,2, 佐久間信子1, 二瓶 陽子1, 堀越 裕子1, 金城 貴士2, 及川 雅啓2, 小林  淳2, 大杉  拓2, 中里 和彦2
   1 福島県立医科大学附属病院 検査部, 2 福島県立医科大学 第一内科
46歳女性.主訴は発熱,呼吸困難.2006年1月左上肢蜂窩織炎にて近医入院.同年2月起坐呼吸・下肢浮腫,38度台の発熱.心エコーにて重症大動脈弁逆流と疣贅を認め,IE疑いにて抗生剤投与開始され,精査加療目的に3月1日当院紹介となる.心エコーにて右冠尖の破裂,疣贅の付着と重度大動脈弁逆流を認めた.右バルサルバ洞壁から連続する多房性の腔と,右冠尖付近から右室への流入血流を認めた.IE及びバルサルバ洞仮性動脈瘤と診断した.胸部造影3D-CTにて右バルサルバ洞は多房性の瘤を形成し,右冠動脈と仮性瘤は近接していたが交通を認めなかった.3月9 大動脈弁置換術,右冠動脈バイパス術を行った.術中所見にて,右冠尖は破壊され,外側前方に仮性瘤を形成し,瘤下方から右室への穿通を認めた.【考案】本例は心エコーにてバルサルバ洞仮性動脈瘤を診断し,3D-CTにて冠動脈の走行との関係を判断し,術式の決定に有用であった.
 
34-24 (16:03-16:13) 【症例報告】
  心エコーにて4つの弁に感染が疑われた感染性心内膜炎の一例
  熊谷 明広1, 吉田 梨絵1, 黒川 貴史1, 四ノ宮祐記1, 中島 博行1, 菅原 重生2, 山中 多聞2, 山口  済2, 片平 美明2, 三浦  誠3
   1 東北厚生年金病院 中央検査部, 2 東北厚生年金病院 循環器科, 3 東北厚生年金病院心臓血管外科
症例は30歳代女性.平成17年12月頃より嘔吐,下痢,発熱出現.平成18年1月下旬近医受診するも症状持続する為,4月上旬前医である消化器内科受診し入院となる.入院後も発熱が続くため心エコーを施行し,4つの弁に感染する感染性心内膜炎と診断,抗生剤投与開始となる.一週間後の心エコーにて,疣贅の増大と心不全症状の増悪を認めたため,外科的治療の適応にて当院循環器センターへ転院となった.同日当院での心エコーにおいても,4つの弁に感染を疑う所見(M弁とA弁とT弁に疣贅,P弁に感染を疑う弁尖の肥厚像) およびMRV°,ARU〜V°を認めたが,弁輪部に膿瘍を疑う所見は認めなかった.転院5日目,活動性心内膜炎の状態ではあったが,心不全症状もさらに増悪したため準緊急的に手術となり,AVR,MVR,およびPVRが施行された.T弁については弁に付着していたと思われた疣贅が,弁輪に近接した右房壁に付着していたのを切除したに留めた.
 
34-25 (16:13-16:26) 【一般演題】
  拡張期左室内渦流の発生とその持続時間  − Echo-dynamography による解析
  亀山 剛義1, 西條 芳文1, 菅原 重生2, 片平 美明2, 田中 元直2, 中島 博行3, 大槻 茂雄4
   1 東北大学加齢医学研究所 病態計測制御分野, 2 東北厚生年金病院 循環器センター, 3 東北厚生年金病院 中央検査部, 4 医用超音波技術研究所
【目的】左室内には周期的に渦流が発生しているが,その発生場所,持続時間については明らかになっていない.拡張期左室内の渦流の発生部位,および持続時間を計測,検討した.【対象および方法】17才〜43才のEF正常・健常者10例を対象とし,Echodynamographyにて心尖部長軸断面で渦流を評価した.渦流の持続時間評価のため,10 Hzのフレームレートにて観測し,並べ替えを行い擬似的に50 Hzとした.【結果・考察】左室内の渦流は急速流入期(E波)心房収縮期(A波)の流入血の周囲に観測された.E波開始後に発生した渦は,断面上(走査面上)でみると前尖側と後尖側に渦流が見られた.前尖側の渦流の方が長く持続した.A波開始とほぼ同時に後尖側,前尖側に渦流を形成した.前尖側の渦流がやはり長く持続した.E波の後の渦流の方がA波の後の渦流より持続時間が長かった.A波の後の渦流が等容収縮期まで持続する症例もみられた.
 
6 消化器U (16:26-17:44) 座長 東北厚生年金病院  阿部眞秀
 
34-26 (16:26-16:39) 【一般演題】
  腹部大動脈−腹腔動脈角,腹部大動脈−上腸間膜動脈角の呼吸性変化
  大嶋 聡子1, 小丹まゆみ1, 長沼 裕子2, 藤盛 修成2, 船岡 正人2, 武内 郷子2, 石田 秀明3
   1 市立横手病院 検査科, 2 市立横手病院 内科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】腹腔動脈(Ce)と上腸間膜動脈(SMA)が呼吸性に移動することは経験的に知られているが,その定量的検討は極めて少ない.今回,全呼吸相で両者を明瞭に観察できた例を対象に下記の検討をし若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】正常例29例,慢性肝炎4 例の計33 例(男11例女22例,平均年齢47.14 歳).1) 腹部大動脈(Ao)の長軸と,Ce,SMAとのなす角度(Ao∠Ce,Ao∠SMA), さらに,CA とSMAがなす角(Ce∠SMAの変化,2)Ce,SMAの最高流速(Vmax),resistive index(RI)の変化.検定はT検定とウィルコクソン検定を用いた.使用装置日立EUB8500.【結果】Ao∠Ce,Ao∠SMA,Ce∠SMA は呼気時より吸気時に小さく有意差を認めた.Vmax,RIは有意差を認めなかった.【考察】Ce∠SMAは呼気時には大きく,花束状で,吸気時には小さく,ススキの穂状となる.後腹膜に位置する血管であっても,呼気と吸気で大きく動き,形を変えることが理解できた.
 
34-27 (16:39-16:52) 【一般演題】
  造影RVSは誰にでもわかりやすいエビデンスにもとづいた肝画像診断である
  岩崎 隆雄1, 小暮 高之1, 下瀬川 徹1, 荒井  修2, 三竹  毅2
   1 東北大学病院 消化器内科, 2 日立メディコ US システム本部
Realtime Virtual Sonography(RVS)は,超音波画像と同一断面のCT画像を,同一画面上に隣り合わせに常にリアルタイム表示することを世界で初めて可能にした画像診断装置であり,肝癌に対する経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)の優れたナビゲーターとして汎用されている.新たに開発したMultiwindow Realtime Virtual Sonography(MRVS)は,RFA後微妙に変形した局所を,可能な限り精確に治療前の画像と対比可能とした.RVSは,良質のレファランスを常に提供しており,誰にでもわかりやすいエビデンス画像を常に隣り合わせに呈示している.ソナゾイドは持続する造影効果が得られ,リアルタイム画像が取得可能である.今回,MRVSにソナゾイドを併用した.RFA後の治療効果判定において,治療部位は明瞭な血流欠損領域として持続的に描出可能であり,Easy-to-Understand Evidence-Based Imaging for Everybodyといえる画像を取得可能であった.
 
34-28 (16:52-17:05) 【一般演題】
   トラぺゾイドスキャンの使用経験
  石田 秀明1, 渡部多佳子1, 古川佳代子1, 小松田智也1, 八木澤 仁1, 石井  透1, 大野 秀雄1, 大山 葉子2, 長沼 裕子3, 伊藤 恵子4
   1秋田赤十字病院 超音波センター, 2秋田組合総合病院 生理検査, 3横手市立病院 内科, 4 仙北組合総合病院 生理検査
腹部超音波で通常用いられるプローブは3-4 MHz,lens focus 8 cm程度のもので,これで,B-mode,ドプラ,造影検査を行なっている.近距離の観察に若干難があった.一方,体表の観察用のリニアプローブは,それより高周波でlens focus 2-3 cmのものが多く近距離の観察には適しているが,一般に視野幅が狭く(4-5 cm)観察範囲がかなり制限された.今回我々は,東芝社製Aplio装置に,トラぺゾイド(台形の意味)スキャン可能なPLT-704ATプローブを用い,通常のコンベックスプローブPVT-375BTと比較し,浅部(4 cmまで)の,診断能力がどの程度向上したかを,動画を中心に報告する.(なお,このトラぺゾイドスキャンという考えはかなり以前からあったが,以前はプローブの端のわずかな素子のみを振って”横伸び”部の画像を作成しており,画質に難があった.今回のものは大半の素子を駆動するもので画像の作成法が異なっている)
 
34-29 (17:05-17:18) 【一般演題】
   膵描出に対する環境音速の影響: preliminary report
  長沼 裕子1, 佐藤美知子1, 船岡 正人1, 藤盛 修成1, 武内 郷子1, 小丹まゆみ2, 大嶋 聡子2, 法花堂 学3, 石田 秀明4, 花岡 明彦5
   1 市立横手病院 内科, 2 市立横手病院 検査科, 3 市立横手病院 放射線科, 4 秋田赤十字病院超音波センター, 5 日立メディコ 
【はじめに】通常のline-by-line超音波装置においても,画像作成のための基本的な設定音速(以下環境音速)を変化させることが可能となりつつある.今回,膵描出に対する環境音速の影響について,使用経験を報告する.【対象と方法】外来で施行したUS検査100例(平均年齢60.4歳)を対象に,膵に関して設定音速1540 m/sec(従来設定)と1460 m/sec(脂肪設定)の2種の画像を作成し臓器輪郭の明瞭性の優劣について判定した.使用装置: 日立EUB8500.【結果】膵の描出に関し,脾静脈と膵管の輪郭の明瞭さ: 74例(74%)で脂肪設定のほうが,2例(2%)で従来設定のほうが勝った.24例(24%)で同等であった.従来設定のほうが勝った例は,肝左葉が大きく膵前面に接している例であった.【まとめ】膵の観察において,従来法でも,環境音速を脂肪設定にしたほうが,良好な結果が得られた.
 
34-30 (17:18-17:31) 【一般演題】
  門脈塞栓を伴わない胃大網静脈拡張例の検討
  大山 葉子1, 紺野 純子1, 吉田千穂子1, 工藤奈緒子1, 星野 孝男2, 渡部 博之2, 和田  勲2, 石田 秀明3, 古川佳代子3, 渡部多佳子3
   1 秋田組合総合病院 生理検査, 2 秋田組合総合病院 消化器科, 3 秋田赤十字病院 超音波センター
【はじめに】我々は拡張した胃大網静脈(GastroepiproicVein 以下GEV)が門脈閉塞時に側副血行路として描出される事を提示してきた.しかしその後,門脈閉塞を伴わないGEV拡張例にも遭遇するようになった.そこで今回,門脈閉塞を伴わないGEV拡張例について検討し,若干の知見を得たので報告する.【 使用機器】日立EUB6500,GE 横河LOGIQ500pro【対象】カラードプラにて,脾門部から腹側に立ち上がり(左GEV),門脈本幹へ連続する(右GEV) 定常流が確認できたもの8例(男5例女3例,平均59.8±10.4歳)をGEVと定義し,門脈圧亢進の有無を検討した.【結果】肝硬変などで門脈圧亢進の見られたものは,8例中5例(62.5%)だった.内訳は,悪性腫瘍4例,他LC1 例,慢性膵炎等だった.【まとめ】GEVは左GEVが逆流し右GEVに連続することで発生すると考えられる.門脈閉塞以外では,門脈圧亢進時にみられることが分かった.しかし,まだ発生機序が不明な例もあり.今後更に検討が必要とわれた.
 
34-31 (17:31-17:44) 【一般演題】
  超音波検診発見がん症例の相対生存率 - 病院発見例との比較 -
  小野寺博義1, 渋谷 大助3, 岩崎 隆雄4, 西野 善一2, 松井 昭義3, 小野 博美3, 手嶋 紀子3, 阿部 寿恵3, 鈴木 雅貴1, 鈴木 眞一1
   1 宮城県立がんセンター 消化器科, 2 宮城県立がんセンター研究所 疫学部, 3 宮城県対がん協会 がん検診センター, 4 東北大学医学部 消化器内科
今回,われわれは超音波検査で発見されたがん症例の相対生存率を検討したので報告する.宮城県対がん協会で2001年度までに超音波検診で発見された肝胆膵腎がん症例である.対照として宮城県立がんセンターで発見された肝胆膵腎がん症例を用いた.検診発見がんの5年相対生存率は肝がん40.5%,胆嚢がん55.0%,胆管がん52.1%,膵がん13.5%,腎がん95.2%であった.病院発見がんの5 年相対生存率は肝がん(一般外来発見例)17.3%,肝がん(ハイリスク群からの発見例)40.4%,胆嚢がん42.3%,胆管がん10.5%,膵がん1.2%,腎がん52.5%であった.超音波検診で検診の目的である死亡率の低下,あるいは個人の死亡リスクの低下を達成するのは難しい.しかし, 胆嚢がん,胆管がんでは早期発見により当該がんによる死亡を免れる症例が存在する可能性がある.症例を増やして検討を続ける必要がある.
 
閉会のあいさつ (17:44-17:49) 次回大会長 東北厚生年金病院  阿部眞秀