東北大学 社会にインパクトある研究 持続可能で心豊かな社会の創造

G0 大学の意義 100年将来を見据えた人類社会の枢要に資する大学の役割

産業革命以降、ひたすら成長を求めてきた現代文明は、人類に多くの利便性をもたらしたが、他方で、地球環境問題を引き起こし、加えて地球規模での社会および産業の構造変化によって深刻な混迷状態にある。もはや地球や社会の維持可能性さえ自明視できない大きな転換期を迎えており、多くの人々が将来に危機感を覚え、心の豊かさが問われるまでになっている。大学には、社会が抱えるこのような深刻な課題に対し、的確に対応する方途を見つけることが今まさに求められている

歴史的に見て大学には、社会の一員として、公正で夢のある平和な未来社会を創るため、学術を礎として長期的視点から課題を発見して本質的な解決を目指すという使命があり、それと同時に困難な課題に挑戦する気概と能力と倫理観を持つ人を育成するという責務を負っているが、これまで大学が人類の進歩に多大の貢献をなしてきたことは確かである。

ところで、日本の国立大学においては、1990 年以降、①教養部の廃止(1991 年大学設置基準の大綱化)、②大学院重点化(1990 年代)、③法人化(2004 年)、④教育基本法改正(2006 年)※1 など、社会の要請に応えるべく制度改革が行われてきたが、しかし、これらの制度改革に伴い、①専門教育の過度な重視、②若手ポストの削減、③運営費交付金の減少、④教員選考における人物評価よりも論文を重視した評価など、新たな問題が累積してきているが、それに対しても未だに明確な対応策は講じられない状態にある。他方、グローバル化、社会制度や科学技術の在り方の変質などの、急激な社会情勢の諸変化により顕在化した社会課題にも対応するべき十分な態勢も採られてはいない。その一因は、こうした社会課題に真摯に向き合うべき、将来に向けた大学の本来あるべき教育研究体制への問い掛けが疎かにされてきたところにあるだろう。

本プロジェクトは、このような反省の上に立って、日本の大学におけるこれまでの教育研究体制の不備を見直しつつ、これからの大学の百年を見据えて、

(1)人類社会の枢要に資する大学とは何か

(2)夢を抱きながら世界規模の課題に果敢に挑戦する人を育成するために「いかなる教育を行うべきか」

(3)社会を先導しうる新しい価値観を創出するには何をなすべきか、さらには、

(4)そもそも「何のために大学で研究を行うか」

といった諸問題を改めて問い直し、その成果を社会に提言する。

※1:改正教育基本法第83 条2 項に、大学の目的として、従来の教育・研究に加え、社会貢献が追加された。