座長 松園第一病院 石川洋子 先生
36歳,男性.主訴:発熱,背部痛,呼吸苦.既往歴,平成5年十二指腸潰瘍穿 孔(BII再建),平成9年,10年慢性膵炎急性増悪.現病歴:平成11年1月20日当 科初診.膵尾部に仮性嚢胞を認めるも禁酒指導のもと外来で経過観察中であっ た.12月6日新たに大きな仮性嚢胞の出現を認めた.12月24日のCTにて膵尾部 の膿瘍が疑われ,発熱,呼吸苦もあり入院と直ちになった.pH 7.428, pCO2 35.4mmHg, pO2 56.6mmHg, HCO 3-23.0と低酸素血症を示した.抗トリプシン剤, 抗生物質にて加療したが,1月7日のCTで嚢胞内に動脈瘤を認めた.血管造影, カラードプラ等施行後,手術となった.
症例は74歳女性.1999年11月17日より右側腹部痛出現,近医にて黄疸を指摘さ れ11月24日当院に紹介入院.USではCBDの著明な拡張(+),CBD下方乳頭部開口 付近に経18mmの ややhigh echoic tumorを認めた.tumor周囲のCBD壁に一部不 整像も認められ総胆管癌が疑われた.その他GB腫大著明,debris(+).CT, MRCPでは,CBDの拡張と膵内胆管部での閉塞を認めたが,それが腫瘍によるも のか結石によるものかはっきりしなかった.しかしPTCD後施行したERCPでは, 膵内胆管に円形のfilling defectが認められ,総胆管結石が最も疑われた.外 科転科し12月15日OPE施行,乳頭部直前の総胆管内に18×13mmの充実性腫瘍が 認められた.病理組織学的には乳頭浸潤型のad enocarcinomaであった.術後 経過は良好.今回の症例では,術前に施行した画像診断のうちUSが最も診断に 有用であった.
症例: 72才女,血尿・排尿痛があり膀胱炎疑で泌尿器科からUS検査を依頼され た.US検査で総胆管が1.2cmと拡張し,下部総胆管・十二指腸近傍に腫瘍が描 出さ れ十二指腸乳頭部癌と診断し,手術で確認した.前回(第18回東北地方会) でも十二指腸乳頭部癌の1例について報告したが,当院における手術例8人のう ち,本症例を含め無症状が6人であり,腹痛・黄疸のない十二指腸乳頭部癌の 腫瘍の検出がUSで不可能でないことが示唆された.