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循環器(II) (15:20-16:10)

座長 東北大学医学部 小岩喜郎 先生

  1. 頚部内頚動脈高度硬化症例の経過検討
    平鹿総合病院第ニ内科     伏見悦子

    【目的】頚部内頚動脈に高度動脈硬化病変を診断された症例の経過を検討する. 【対象】1997年1月から1999年6月までに頚動脈エコーを施行された1479例のう ち,高度動脈硬化病変と診断された50例(男性43女性7例,70.8±7.3歳)【診断 基準】高度狭窄病変: 狭窄部血流速度2.0m/s以上かつ総頚動脈との血流比3.0 以上.慢性完全閉塞: 内頚動脈内に血流がないか,to-and-froの0.2m/s以下の 遅い血流.【結果】38例は高度狭窄,22例は慢性完全閉塞であった.狭窄例の うち70歳以下で病側の脳血流量の低下が確認された14例は内膜剥離術を依頼し たが,2例で対側の内頚動脈の狭窄が進行したのみで,strokeの発生はなかっ た.一方,当院で内科的に経過観察された16例のうち5例20.8%はその後脳梗 塞を発症した.【総括】頚部内頚動脈の高度動脈硬化例の脳梗塞発症率は高い が,内膜剥離術はその予後を改善した.

  2. 頚動脈エコ-による脳梗塞患者群と健常者群の比較検討
    東北大学医学部附属病院検査部 千葉賢治,鈴木 宏,
    東北大学医学部第一内科    遠藤正人,二宮本報,小岩喜郎,
    東北大学医学部分子診断学分野 宗像靖彦,賀来満雄

    我々は頚動脈エコ-を用いて左脳梗塞患者群21例,健常者群30例について以下 (1)〜(4)の計測を左右それぞれ行い比較検討を加えた.(1)内頚及び外頚動脈 の血管内径.(2)内頚及び外頚動脈の収縮期最大血流速度(SPV).(3)内頚及び 外頚動脈の拡張終期血流速度(EDV).(4)内頚及び外頚動脈のresistance index(RI).結果:血管内径は各群間に有意差を認めなかった.脳梗塞患者群 で有意に左(患側)内頚動脈血流速度のSPV及びEDVは低下,RIは増加した.その 他,右(健側)内頚動脈,両側の外頚動脈には有意差を認めなかった.考察:頚 動脈エコ-法では狭窄,閉塞血管そのものの情報は直接得られないが,脳梗塞, 患側の内頚動脈起始部の血流パタ−ンに特徴があることが示されたため, screeningの指標として用いることができると思われる.

  3. 超音波を用いて計測された動脈硬化性プラークの弾性特性分布の経年変化
    東北大学大学院工学研究科   長谷川英之,金井 浩,星宮 望
    東北大学大学院医学系研究科  小岩喜郎
    平鹿総合病院         伏見悦子

    心筋梗塞や脳硬塞などの循環器系疾患の発症の原因として動脈硬化性プラーク の破綻が問題となっている.筆者らは, 動脈硬化性プラークの弾性特性の空間 分布を計測し,弾性的な特性をプラークの安定性を判断するための一つの情報 として用いることを目標とし,その計測法を提案してきた.本報告では,頚動 脈にプラークを有する5名の被験者について1998年ならびに1999年の2度にわた りプラークの弾性特性の分布を計測し,その経年変化について検討した.得ら れた計測データを用いて,プラークを内腔面から3層(内腔面から内層, 中層, 外層とする)に分割し,各層の弾性率の平均値を算出したところ,中層と外層 については目立った傾向はなかったものの,内層については5名中4名について 弾性率の上昇,つまり硬度の上昇が見られた.さらに, このような弾性率の変 化と治療内容との関係について検討し,動脈硬化症に対する治療の効果を本手 法を用いて評価する可能性について検討した.

  4. 胸膜下肺腫瘍性病変の超音波検査
    平鹿総合病院検査科      佐藤栄子,武石茂美,丹波寛子,瀬川ゆか,
                   高橋久美子,瀧澤健吉
    平鹿総合病院第二内科     伏見悦子,木村啓二

    【背景および目的】当院では,肺の腫瘍性病変に対し気管支鏡下および透視下 穿刺吸引細胞診等を積極的に施行しているが,胸壁に接するような末梢の病変 では,気管支鏡でのアプローチの困難な例がある.そのような症例に対し,胸 壁からの超音波検査を行い性状を観察するとともに,超音波下穿刺吸引細胞診 を行っている.過去2年間に超音波下穿刺細胞診を施行した6例につき,その有 用性を検討した.【結果と考察】今回の6例の腫瘍性病変は胸壁に接する低エ コーの充実性の腫瘍像として描出された.そのうちの2例は胸膜への浸潤が疑 われた.穿刺吸引細胞診では6例中5例がclassV(4例肺癌,1例転移性肺癌)で, 残りの1例は細胞成分がなく最終的に肺化膿症の臨床診断であった.全例正診 が得られ,確定診断には有用であった.また本検査において合併症はなかった. 【まとめ】気管支鏡等で確定診断の得られない胸膜下の肺腫瘍性病変に対し, 超音波下穿刺吸引細胞診は非常に有用であった.

  5. 経気管超音波内視鏡(TUS)が縦隔リンパ節との鑑別に有用であった縦隔嚢胞性 疾患の1例
    東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野 高橋博人,
    自衛隊仙台病院外科            宇都宮勝之,内藤義久,斎藤 渉
    東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野 佐川元保,藤村重文

    今回我々は検診を契機に発見され,縦隔リンパ節腫脹が疑いでCT経過観察して いた症例に対しTUSを施行し,嚢胞性疾患と確診し得た症例を経験したので報 告する.症例は52才男性.肺癌検診で右第2弓の突出を指摘され外来受診.CT で右LN#2から#3の部位に連続する孤立性リンパ節腫脹が認められた.サルコ イドーシス,悪性リンパ腫も疑われたがACEも正常で,CTによる経過観察とし た.1年後のCTでもほぼ不変であり,心膜嚢腫,気管支原性嚢胞を疑いTUSを施 行した.使用機種はオリンパス社製超音波診断装置EU-M30及び気管支鏡用細径 プローブXUM-B20-26R(20MHz)で,バルーン付シースを装着したプローブを気道 内で蒸留水で拡張させ,気管支壁に接触させラジアル像として観察した.TUS で気管下部右前方に境界明瞭で内部hypoechoicなcystic lesionが観察され, 嚢胞性疾患と確定診断された.現在外来経過観察中である.



TOHOKU_UNIV
Wed Feb 16 16:30:59 JST 2000