座長 弘前大学医学部 須藤俊之 先生
32歳女性.保母.昨年の夏,腹痛あり近医を受診し,腹部CTにて卵巣腫瘍およ び肝腫瘍ありとして紹介された.超音波CTにては膵頭体部に巨大な腫瘍を認め, 嚢胞部分と充実の部分を有していた.ERCPでは膵管の断列はなく圧配蛇行屈曲 を認めるのみであった.cystadenomaまたはcystadenocarcioma等が疑われ手術 したが,悪性細胞はなく,solid and cystic tumorと診断された.
症例は14歳女子.下腹部痛を主訴として平成11年9月2日松園第一病院小児科受 診,腹部超音波検査(US)で腹部腫瘤を指摘され9月9日同消化器科へ紹介された. USで脾門部に長径5cm大の内部エコー不均一の球状腫瘤像を認めた.岩手県立 中央病院放射線科での腹部CTではこの腫瘤は造影効果を認めた.またMRIでは 膵尾部と脾臓の間に内部に出血が疑われるcysticな球状の腫瘤を認め,後腹膜 腫瘍(膵尾部腫瘍の疑い)と診断され精査加療のため10月1日県立中央病院消化 器科へ紹介入院.内視鏡超音波(EUS)では膵尾部に内部エコー不均一の球状腫 瘤像を認めた.以上の諸検査より膵尾部のSCTの術前診断にて10月19日手術 (distal pancreatosplenectomy)を施行した.腫瘍は膵尾部に認められ,5.0× 4.5cmでcystic,一部充実性で内部に出血を伴い,組織学的にsolid cystic tumorと診断された.明らかな悪性像は認められなかったが厳重に経過観察中 である.
今回我々は,長期間にわたり経過観察した膵管内乳頭腫瘍疑いの2例を経験し
たので報告する.【症例1】64歳,男性.糖尿病の診断で近医にて治療をうけ
ていたが,1984年春のUS集検で膵管拡張を指摘され9月当科受診した.検査成
績は,軽度の糖尿病を認めたが,膵酵素,腫瘍マーカーを含めその他正常であっ
た.USで膵管の拡張,口径不同を認めたが,腫瘍像はみられなかった.ERCPで
は膵管内に長径8mmの透亮像を認めた.約10年の経過観察中に粘液産生が明ら
かとなったが,US所見には変化が見られなかった.
【症例2】55歳男性.
1985年10月より食事とは無関係の鈍い心窩部痛が持続するため当科受診した.
検査成績は,糖尿病を認めた他には,膵酵素,腫瘍マーカーを含めて正常であっ
た.USで軽度膵管拡張,ERCPでは膵管内に結節状透亮像を認めた.約15年の経
過観察でEUS像,ERCPに変化なく,腫瘍マーカーも正常を持続している.