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肝臓(I) (9:00-9:30)

座長 東北厚生年金病院 阿部眞秀 先生

  1. 腫瘍生検にて胸壁転移を来した肝細胞癌の1例
    東北労災病院腹部超音波室   山下安夫,管野悦子,桜庭 勝,志村千佳子
    東北労災病院消化器科     山本 毅,林 仁守,小笠原鉄郎

    肝細胞癌の生検に伴う播種は比較的稀であり,腫瘍の発育病態を考える上でも 興味深い.今回我々は,生検3年後に胸壁転移を来した肝細胞癌の1例を経験し たので報告する.症例は68歳,男性.58歳時から慢性C型肝炎で近医に通院中, 肝腫瘍を指摘され,H8年10月3日当院紹介受診.超音波検査で肝S4に約30mm大 の高エコー腫瘍を認めたため,精査加療目的にて入院.CT,MRI,血管造影検 査を行ない,肝細胞癌が疑われたものの,確定診断に至らず,10月24日エコー 下肝生検を実施.中分化型の肝細胞癌と診断し,同年12月11日手術.以後定期 的に経過観察していたが,H11年11月に実施した超音波検査で,前回の穿針ルー トに当たる胸筋内に14×9mmの低エコー腫瘍を認めた.カラードプラ,CTにて 生検ルート上の播種性転移が疑われたため,H11年12月10日手術.組織学的に 前回と同様の中分化型肝細胞癌であった.

  2. 血流の豊富な胆管細胞癌の1例
    宮城県立がんセンター内科   鵜飼克明,小野寺博義,鈴木雅貴

    症例は62才の男性.平成7年,脳出血にて某病院に入院した際の腹部CTにて径 3cmの肝腫瘍を指摘される.平成11年1月には腫瘍径は増大(7cm)し,同年2月, 精査・加療目的に当科紹介.当科初診時血液・血液生化学検査では異常を認め ず.AFP,PIVKA-,CEA,CA19-9いずれも正常範囲内.初診時USでは,境界が不 明瞭で,外に凸(八頭状)の形状を示す約8cmの腫瘤をS8に認めた.内部エコー は高エコーであるが不均一,辺縁低エコー帯は認めず.肝内胆管の拡張は認め ず.PDIでは腫瘤内に著明な血流シグナルを認め,波形分析では動脈波形を示 した.腹部CTでは,造影早期に強い濃染を示し,後期相においてはwash outす ることはなかった.MRIでは,T1WIでは低信号,T2WIでは高信号を示し,Gdに より濃染された.総肝動脈造影では,境界が不鮮明かつ不均一な腫瘍濃染像を 認めた.生検にて胆管細胞癌と診断し,肝右葉三区域切除を行った.

  3. 肝nodular regenerative hyperplasiaの一例
    宮城県立がんセンター内科   小野寺博義,鵜飼克明,鈴木雅貴

    症例は49歳,男性.慢性アルコール性肝炎,糖尿病,高血圧で近医通院中であっ た.1997年11月5日に食欲不振,腹水,歩行困難が出現し,精査と治療のため 当院紹介となった.超音波検査で肝臓S1に周囲肝との境界明瞭,肝臓とほぼ同 エコーレベルの7.8×4.0cmの腫瘍が発見された.CTでは単純でやや高吸収域で, エンハンスは弱い.MRIではT2WIで若干低信号,T1WIで高信号であった. Gd-T1WIでは造影前は肝実質より少し高信号であったが,造影後は肝実質より 弱い染まりを示した.血管造影では腫瘍血管は明瞭でなく,弱い腫瘍濃染がみ られた.肝シンチ(フチン酸)では欠損像なく,腫瘍は高い取り込みを示した. 肝アシアロシンチでも腫瘍部は高い取り込みを示した.超音波映像下肝生検で nodular regenerative hyperplasiaと診断された.二年後の現在,腫瘍の大き さや個数に変化はない.



TOHOKU_UNIV
Wed Feb 16 16:30:59 JST 2000