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基礎 (9:30-10:30)

座長 東北大学加齢医学研究所 西條芳文 先生

  1. 動脈壁運動波形の解析による動脈脈波伝搬速度の非侵襲的計測
    東北大学大学院工学研究科   梅沢淳子,金井 浩

    動脈硬化症の非侵襲的・早期診断法の1つとして脈波伝搬速度法が従来から数 多く報告されている.本報告では,超音波を用いて in vivo計測された, 数十mm程度の範囲内の複数点における頸動脈壁上微小振動速度を自己回帰モデ ル推定法を用いて2つの複素指数減衰正弦波に分離し,その極の位相から数十 mm程度の範囲内の局所における脈波伝搬速度を算出する方法を提案する.この 方法により,従来法では脈波波形の立ち上がりの時点でしか求められていなかっ た心臓から末梢側に伝搬する前進波の伝搬速度を,心周期の収縮初期と収縮末 期〜拡張初期において算出することができた.心周期の時点の違いによる脈波 伝搬速度の値の違いは, 動脈壁のひずみ-応力の非線形性を反映した結果であ ると考えられる.

  2. 血管内超音波検査術(IVUS)を用いた管壁のひずみ計測による 弾性率断層像の算出
    東北大学大学院工学研究科   三田仁士,金井 浩

    血管内超音波検査術(Intravascular Ultrasonography; IVUS)は,超音波プロー ブを血管内に挿入し,超音波を送受しながらプローブを回転させることにより 血管の断層像を得る手法である.この手法を用いることにより,血管壁の形状 や動脈硬化性プラークの形状をリアルタイムに観察することができる.しかし, その断層像からのみでは,動脈硬化性プラークの組織性状を定量的に評価し, 動脈硬化性プラークの易破裂性を診断することは難しい.そこで,血管壁の弾 性特性を評価し動脈硬化性プラークの易破裂性を診断するために,拍動により 生じる血管壁の厚み変化を算出する手法を提案する.さらに基礎実験において, 模擬血管として用いたシリコーンチューブ内に,人工心臓により拍動流を発生 させ,模擬血管壁に拍動により生じる厚み変化を算出した.また,同時にチュー ブ内圧を計測を計測することによりチューブの弾性率を算出し,弾性率に関す る断層像を得た.

  3. 動脈壁厚変化高精度計測に関する超音波照射条件の検討
    東北大学大学院工学研究科   渡辺 優,金井 浩

    著者らは,動脈壁に対して送受信され直交検波された超音波パルスの振幅と位 相の両者を用いて対象の瞬時的な位置を高精度にトラッキングし,拍動による 動脈壁の微小振動速度を高精度に計測する位相差トラッキング法を提案してい る.さらに,得られた壁の振動速度から拍動にともなう数十μmという微小な 壁の厚み変化を算出し,上腕部最高血圧と最低血圧を用いて頸動脈壁の心一拍 中の平均的な弾性率を算出する方法を提案している.しかし,厚み変化を計測 する際の超音波照射条件に関して従来検討されていなかった.そこで本報告で は,ゴム板を引っ張ることにより生じる微小な厚み変化を超音波照射条件を変 化させながら計測した.計測された厚み変化を理論値と比較することにより各 条件において精度を評価し,望ましい照射条件について検討した.

  4. 拍動流に伴う動脈壁振動と内圧変化に関する実験的検討
    東北大学大学院工学研究科,(株)松下通信仙台研究所 砂川和宏
    東北大学大学院工学研究科   金井 浩
    東北厚生年金病院       仁田桂子,田中元直

    本報告では,動脈硬化症患者頸動脈の狭窄部,健常者の頸動脈の壁振動を計測 し,振動に含まれる周波数成分に関して解析を行った結果と,シリコーン管を 用いて管壁振動と内圧変化を同時計測し,振動と内圧変化に含まれる周波数成 分に関して解析を行った結果を示す.
     動脈硬化症患者の動脈狭窄部位の下 流において,他の計測部位にはない高周波の振動成分が確認され,また,計測 した壁振動波形を周波数解析した結果,その高周波振動成分は,拍間での再現 性が非常に低いという結果が得られた.
     また,小型圧力センサを内蔵した シリコーン管に人工心臓を用いて拍動流を流し,壁振動と内圧を同時計測し, 評価を行った結果,狭窄を設定した場合,狭窄部の下流では,管壁の振動波形, 内圧変化波形ともに高周波の振動成分が確認され,また,これらの波形同士の 周波数ごとの相関性(コヒーレンス)が高い結果が得られた.これらのことから, 内圧の変化が壁振動に寄与していると考えられ,動脈壁に加わる応力を推定す る上で壁振動の計測は非常に有用であると期待できる.

  5. 心筋伸縮時に生じる微小振動の計測と解析
    東北大学大学院工学研究科   勝又慎一,金井 浩,
    東北文化学園大学医療福祉学部 本田英行

    我々は,超音波を用いた位相差トラッキング法を提案し,これにより心臓壁の 微小な高周波振動の経皮的な計測が可能となった.しかし,それらの高周波成 分の発生する原因は不明な点が多い.また,健常者と心疾患者との間には振動 の周波数スペクトルに差異が確認されていることからも,臨床的・生理的意義 を考慮した原因の解明が必要と考えられる.そこで,心臓壁微小振動の一因と して心筋伸縮時に発生する振動に着目し,ラットの摘出心筋を生理的溶液潅流 下において電気刺激により伸縮させ,その際に生じる心筋の振動をレーザドプ ラ速度計を用いて計測するシステムを構築した.このシステムを用いてラット 心筋の振動を計測し,周波数解析した結果を示す.

  6. 超音波画像の圧縮に伴う劣化評価の一検討(その2)
    秋田大学工学資源学部     井上 浩,藤原慶一,対馬尚之,
    秋田大学医学部第一内科    石田秀明

    遠隔医療・集団検診を目的に超音波画像の伝送を行う際には,データ圧縮が必 要となる.しかし,非可逆圧縮を用いた場合,画像の品質が劣化し,これによ り医師による診断が妨げられることが予想されるため,超音波画像の非可逆圧 縮が診断に及ぼす影響を調査する必要がある.本研究では,非可逆圧縮の品質 の評価として,劣化度D(SNR)による定量評価と医師による主観評価実験を行っ た.主観評価実験は,「品質の劣化が認識できるか」「圧縮画像が診断品質で あるか」という2つの評価語を用いて行ったものである.定量評価及び主観評 価実験により,劣化の認識及び診断の限界に相当する圧縮率を求めることが可 能となる.本報では,これらの実験結果に関して述べる.



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Wed Feb 16 16:30:59 JST 2000