座長 国立仙台病院 千田信之 先生
症例: 68歳,男性.既往歴:高血圧.主訴:右下腹部痛.現病歴: 平成8年2 月23日頃より腹痛,発熱あり近医受診し抗生剤の投与を受けた.その後大腸透 視にて虫垂炎が疑われ3月8日当院紹介入院となった.右下腹部に軽度の圧痛を 認めた.超音波では虫垂部は低エコーを示し,Gaシンチでホットを呈した.虫 垂入口部にびらんを認め生検にて悪性リンパ腫を認めたため切除となった.以 後血液専門家のもとで化学療法となった.
症例: 76歳男性,主訴は胃のつかえ,黄疸,体重減少.現病歴: 平成6年8月
黄疸あり近医より膵癌による閉塞性黄疸として紹介さる.上腹部に手拳大の腫
瘤を触知し,CTにて両側腎の間に腹部大動脈を巻き込んだ巨大腫瘍を認めた.
PTCDは拒否され,化学療法,放射線療法を行った.腹部の腫瘍は一端縮小した
が,後日頸部のリンパ節腫脹をみとめ耳鼻科でリンパ腫とされた.
症例: 51
歳男性,主訴は腹痛,吐気.既往歴,昭和52年急性肝炎.現病歴,平成11年9
月頃より上腹部痛.次第に疼痛が増しCTにて膵癌が疑われ,11月8日当科紹介
となった.Gaシンチではuptakeはなく,ERCPで膵管の途絶がみられ膵臓癌と鑑
別を要した.開腹リンパ節生検により悪性リンパ腫と診断された.
【はじめに】当協会の人間ドック腹部超音波検査では膵・胆・肝・腎・脾・膀 胱をターゲットにスクリーニングをおこなっている.今回はその中で発見する ことが出来た腹腔内の腫瘍について報告する.【対象】 94年4月〜98年12月ま での当協会人間ドック受診者,実人数14,563名(男9,184名,女5,379名)の内, 腹腔内腫瘍を疑った2例.【結果】(1例目)[65才,女性] 腹部USにて,左腎上 方内側に腎とは無関係に存在する周囲平滑内部やや不均一なほぼ類円形の充実 性腫瘤を認めた.後腹膜腫瘍を強く疑い,精査加療目的にて紹介入院となる. CT,US,GTFすべてsarcoma を疑い,手術施行.十二指腸3rd portion発生の平 滑筋肉腫と確定診断がついた.(2例目)[61才,女性] 左腎下方内側に pseudo-kidney signを呈する大腸の著明な肥厚を認めた.腸閉塞,腹水等は認 めなかった.2ヶ月前からの微熱,下腹部圧痛,吐き気などの自覚症状があっ た.精査加療目的にて入院となり手術施行.横行結腸の中分化腺癌,進行癌で あった.
症例は81才,男性,平成11年8月30日右季肋部痛出現し,外来受診.腹部超音 波検査(以下US)にて胆嚢(以下GB)の腫大と壁肥厚,胆石,及び胆泥を認め,急 性胆嚢炎と診断し,加療目的で入院となった.経皮経肝胆嚢ドレナージ を考 慮したが,痴呆があり,自己抜去等の危険性を考え,ドレナージは施行せず, 絶食,抗生剤投与で保存的に治療,経過観察した.その後,待機的に腹腔鏡下 胆嚢摘出術を施行する予定とした.経過中,症状に変化はなかったが,USにて 急激なGBの著明な縮小を認め,GBと腸管の連続性が疑われたため,腹部CT, PTC 施行し,術前に胆嚢結腸瘻を確認し得た.胆嚢結腸瘻は比較的稀な疾患で, 術前診断にUSが有用であった一例を経験したので報告する.