HTS(高温超電導体)とは,金属系の超電導体に比べて比較的高い温度で起こる超電導体である。 ベドノルツとミューラーが1986年に発見し,その後続々と発見された。 現在,高圧下で-110℃を超える臨界温度(超電導と常電導の境界を示す温度)を持つ水銀系の高温超電導体がある。
高温超電導体の一種で,構成元素であるBi(ビスマス)Sr(ストロンチウム)Ca(カルシウム)Cu(銅)O(酸素)の 頭文字を取りこう呼ばれている。その構成比からBi-2212(臨界温度85K)やBi-2223(臨界温度110K)などがあり, 現在最も広く利用されている高温超電導体である。同じ太さの銅と比較して 300倍もの電流を無損失で流すことができるため,電力分野への応用が期待されている。
YBCOはYBa2Cu3O7-xという組成の,世界で初めて発見された酸化物超電導体である。 臨界温度は約90K(-176℃)である。同じ酸化物超電導体であるBSCCOと比較して,臨界電流密度が高く, 磁場中での臨界電流密度の低下が小さいといった優れた性質を持つ。主にバルク体や薄膜として加工され, 研究開発が行なわれている。応用においては線材化が難しく,長尺線材はBSCCOに遅れをとっているが, 高磁界での応用を見据え,次世代超電導体として注目されている。 また,薄膜を用いた限流器やスイッチング素子として用いる研究も進んでいる。
MgB2は2001年1月に超電導特性を発見された新しい金属系超電導体である。 臨界温度(Tc)は,金属系超電導体の限界とされている20〜30Kを越えた39Kであり, 液体水素・液体ヘリウム・冷凍機などを用いることで比較的簡単に到達できる。 したがって,製造コストがかなり低くなること,強度の高い線材が製造できることが予想される。 このような特性を持つことから,大きな応力がかかるSMESや加速器,核融合用マグネットへの応用も期待されている。
CIC(Cable in Conduit)型導体とは,直径1mm程度の超電導素線(Strand)を数百本から千本束ねて
ケーブル状にしたものを,円形または矩形の強固な金属製保護管(コンジット)で覆った導体である。
このコンジットが,導体に加わる電磁力に耐える役割を果たすとともに,
液体ヘリウムなどの冷媒の通路としての働きもする。
CIC型導体は,主に核融合実験炉やSMESなどにおいて,
大電流・強磁場を発生するための超電導コイルとして用いられている。
交流超電導ケーブル構造の一つ。三心一括型(下右図)は,各相をそれぞれ独立に構成した単純なもので,
三相同一軸型(下左図)は各相を同軸上に配置したものである。
三心一括型はすでに実用化されているが,近年ではさらに低コストでコンパクトな三相同一軸型が注目され,
広く研究されている。
超電導材料が超電導状態となるのはある一定条件下であり、図で示される部分となる。
その条件は,温度T,電流密度J,磁場Hがそれぞれ,臨界温度Tc,臨界電流密度Jc,臨界磁場Hc以下のときである。
また、Tc,Jc,Bcは,それぞれその他二つの状態に依存しており,例えばT,Bが大きくなるとJcは小さくなる。
SMES(超電導磁気エネルギー貯蔵装置 Superconducting Magnetic EnergyStorage)とは, 超電導コイルを用いた電力貯蔵装置のことである。 SMESは超電導線の電気抵抗ゼロという特性を利用し,強磁界コイルに電流を流し続けることで 電気を磁気エネルギーとして貯蔵している。 従来のエネルギー貯蔵装置と比べて,貯蔵効率が高い,エネルギーの出し入れ速度が速いなどの特徴がある。 これらの利点を活かして,単に電力を貯蔵するだけでなく,雷などによる瞬時電圧低下(瞬低)の影響を解消し 電力の品質を向上させる装置として用いられる。
強い磁界にさらされた原子核が,特定の周波数の電波に共鳴して自ら電波を発生する「核磁気共鳴」 という現象を利用した,体内などの画像を撮影する装置のこと。 被曝の心配がなく,また,脳の中や脊椎などCTが苦手とする部分の断面画像を撮影することができる。
超電導リニアは,車上の超電導磁石と地上側に敷設されたコイルとの電磁気的な相互作用によって, 非接触で走行することができる輸送システム。走行路に取り付けられた浮上用コイルの側面を 超電導磁石が高速で通過すると,コイルに電流が誘起されて電磁石となり,超電導磁石を押し上げる力と, 引き上げる力が発生し,車両が浮上する。そして,磁石どうしの反発力と吸引力を利用して 車両(超電導磁石)が推進する。桃太郎電鉄において,リニアカードはサイコロが8個もふれるということから, 今後も活躍が期待されている。
分散型電源は,需要地あるいはその近辺に電源を設置して発電するものであり, 現在は太陽光,風力,小規模水力などの再生可能エネルギーが主流となっている。 このような再生可能である新エネルギーを利用した分散型電源は, 地球温暖化の原因となるCO2を発生しないという利点が挙げられるが,環境に影響されやすく, 出力変動が大きいという欠点も存在する。また分散型電源は一般的にまだコストが高く, 技術的に未熟な部分も存在することから,普及促進へはまだ多くの課題があるというのが現状である。
複数の分散型電源(風力・太陽光・燃料電池など)と電力貯蔵装置
(SMES・キャパシタ・バッテリ・フライホイール・水素貯蔵など),
負荷(最終需要)等から構成される比較的小規模のオンサイト(需要家密着型)の電力供給システムのこと。
システムの全体または一部を制御する制御機構を持ち,外部電力系統から独立して運転することが可能である。
ただし多くの場合は系統連系を前提とし,連系運転も独立運転(系統の異常時や料金高騰時)も可能である。
系統連系システムの場合,系統に対して「良き市民」として振舞い,系統に悪影響を及ぼさないことを前提とする。
(※出展 NEDO 愛・地球博会場における「新エネルギー等地域集中実証研究」)
超電導体に特有の電磁現象の一つ。交流磁界または交流電流の印加によって, 超電導体中で消費されるエネルギーを表す。交流損失には,ヒステリシス損失 (磁束ピンニング現象に起因する損失),結合損失(超電導フィラメント間に発生する損失), 渦電流損失(常電導領域で発生する渦電流による損失)がある。 これらの交流損失は微量ながらも,超電導体を交流機器に応用する際の冷却の妨げとなるため, 冷却コストの増大やクエンチを引き起こす要因となる。したがって,その低減が重要な課題となっている。
交流損失のうち,ヒステリシス損失の評価精度は,超電導体内の磁場・電流分布の近似方法に依存する。 種々の近似モデルの中で,一般的(定性的)評価に用いられるのがBeanにより提案された臨界状態モデル (通称:Beanモデル)である。狭い磁界範囲に限れば成立する簡便なモデルであり, 超電導体内にどのように磁場が入り込むかを調べることができる。
磁束が内部に侵入している超電導体に電流を流すと,磁束は電流に対して垂直方向にローレンツ力を受ける。 この力を受けて磁束が超電導体内部を移動すると起電力が誘起され, 超電導状態であるにも関わらず電気抵抗が発生してしまう。 これを防ぐ方法として,内部に格子欠陥を意図的に作る方法がある。 このような構造を持つ超電導体を磁場中で冷却すると,超電導体部分では磁場は排除される(マイスナー効果)が, 欠陥部分には磁束が侵入したままである。これがピン止め効果で, "超電導転移を起こす直前の磁場配置を記憶する"効果であると言える。 超電導体が磁石の上で安定して浮くことができるのは,マイスナー効果による両者間の反発力を, ピン止め効果によって支持しているからである。磁気浮上システムにおいて, 無制御での安定浮上が可能であるのは超電導体を用いたシステムのみであるため, 磁気軸受,搬送機器などへの応用が期待されている。
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