AIとセンシングによる子どもの発達理解
子どもたちは一人ひとり異なる個性や興味, 発達特性を持っています. しかし, 多数の子どもが同時に活動する保育・教育現場では, すべての行動を継続的かつ客観的に観察することは容易ではありません.
本研究では, 小型無線タグを用いた多人数同時計測システムを開発し, 子どもたちの「いつ・だれが・どこにいたか」を自動的に記録しています. さらに, AIやデータサイエンス技術を活用することで, 遊びの好みや子ども同士の関係性を定量的に分析し, 一人ひとりの個性や社会性の理解を支援しています.
将来的には, 位置情報に加えて映像, 音声, 身体活動情報などを統合し, 子どもの発達過程をデジタル空間上に再現する「発達デジタルツイン」の実現を目指しています.
多人数同時計測システム
本研究では, 子どもが装着した小型無線タグと, 遊び場に設置した複数の基地局を用いて位置情報を計測します.
無線タグから送信される電波を基地局が受信し, 受信強度に基づいて子どもの位置を推定します. 基地局のプログラムを最適化することで, 最大50名規模の子どもを同時にリアルタイム計測できるシステムを実現しています.
これにより, 「いつ」, 「だれが」, 「どこにいたか」を継続的かつ客観的に記録することが可能となります.
遊び嗜好の分析
取得した位置データから, 各遊び場への滞在割合を算出し, クラスタ解析によって類似した遊び方をする子どもたちを自動的にグループ化します.
解析の結果, ブランコ・工作遊び, 虫カード遊び, お菓子の家遊び, アイドル遊び, 段ボール迷路遊びなど, 子どもごとの興味や行動特性を客観的に把握できます.
この技術は, 子どもの個性理解や遊び環境の改善, 個別最適な保育支援への応用が期待されています.
子ども同士の関係性解析
位置情報から「どの子ども同士が, どの程度一緒に過ごしていたか」を計算し, コミュニティネットワーク解析を行います.
ネットワーク上では, 子どもをノード, 一緒にいた時間を関係の強さとして表現します. 解析により, 仲良しグループの発見, 遊び集団の可視化, 関わりの少ない子どもの発見, 保育者との関係性分析などが可能になります.
これにより, 保育者の経験や観察だけでは把握が難しい集団構造や社会的関係を客観的に可視化し, 子どもの社会性理解や支援に役立てることができます.
発達デジタルツインへ
私たちは, 子どもの発達を理解するための次世代基盤として「発達デジタルツイン」の研究を進めています.
今後は, 位置情報, 身体活動情報, 映像情報, 音声情報, AIによる行動理解を統合し, 子どもの興味, 社会性, 発達の変化をデジタル空間上で再現することを目指しています.
子ども一人ひとりの「今」を理解し, 「未来」の育ちを支えるための新しい発達支援技術の創出に取り組んでいます.