AIで医療の意思決定を支援する
現代医療では、電子カルテ、検査データ、医用画像、生体計測データなど、大量の医療データが日々蓄積されています。一方で、医療データには症例数が限られる、欠損値が多い、患者ごとの個人差が大きい、結果の説明責任が求められる、という特徴があります。
張山研究室では、「高精度」と「説明可能性」を両立するAI技術を用いて、医師の診断や治療方針決定を支援する研究を進めています。
電子カルテ、検査データ、医用画像、生体計測データを解析可能な形に整理します。
ベイジアンネットワーク、SHAP、決定木系機械学習、確率モデルを活用します。
医師が理解・納得して活用できる形で、リスクや重要因子を可視化します。
説明可能なAI
医療分野では、「なぜその予測結果になったのか」を説明できることが重要です。私たちは、ベイジアンネットワーク、SHAP、決定木系機械学習、確率モデルなどを活用し、医師が理解できるAIの実現を目指しています。
研究事例1:胆嚢摘出術における手術リスク予測
高度な炎症や線維化を伴う胆嚢疾患では、腹腔鏡手術を継続するべきか、開腹手術へ移行するべきか、胆嚢を部分切除するべきか、といった重要な判断が求められます。
708名の患者データ、37種類の臨床特徴量、血液検査値、画像診断情報を用いてベイジアンネットワークを構築し、アルブミン値の低下、炎症状態、ドレナージ実施状況などが術中出血や手術方針に影響することを可視化します。
- 術前リスク評価
- 合併症の予防
- 患者ケアの改善
- 医師への新たな知見提供
研究事例2:糖尿病と生活習慣の関係性解析
糖尿病は、食習慣、運動習慣、睡眠、ストレス、飲酒、喫煙など多数の要因が複雑に関係する疾患です。約5,900名の健康診断データと生活習慣アンケートを統合し、BMI、HbA1c、コレステロール値、尿酸値などとの関係を解析します。
ベイジアンネットワーク解析により、生活習慣がどのような経路で糖尿病リスクへ影響するかを可視化し、健康指導や予防医療への応用を目指しています。
研究事例3:がん患者の入院長期化リスク予測
近年の医療制度では、入院期間の長期化が病院経営へ大きな影響を与えています。本研究では、東京医科大学との共同研究として、消化器癌患者314名、415項目の医療データを解析しました。
体組成分析装置から得られる筋肉量、体水分量、むくみ指標、位相角などの非侵襲データを利用し、術前の段階で入院長期化リスクを予測するAIを開発しています。
- 非侵襲計測のみで一定の予測性能を達成
- むくみ指標(ECW/TBW)を重要因子として抽出
- SHAPによる説明可能な予測を実現
基盤技術:ベイジアンネットワークと数理最適化
張山研究室では、単にAIを利用するだけでなく、AIそのものを高度化する研究も進めています。ベイジアンネットワークでは、連続値データを適切に離散化することが重要です。
SHAPによる変数関係抽出、ガウス混合モデル(GMM)、Optunaによる最適化を組み合わせ、より信頼性の高いベイジアンネットワークを構築する新手法を研究しています。
将来展望
医療現場では、診断支援、治療方針決定、術後管理、予防医療、個別化医療へのAI活用が急速に進んでいます。張山研究室では、「医師とAIが協調する説明可能な医療AI」をキーワードに、医療ビッグデータから新たな知見を発見し、患者のQOL向上と医療現場の負担軽減に貢献する研究を推進しています。
- 診断支援
- 治療方針決定
- 術後管理
- 予防医療
- 個別化医療