高校生・受験生のための研究紹介

電子工学コース

情報バリアフリー社会を
実現する
フレキシブルな
次世代ディスプレイ

薄くて、軽くて、曲がるディスプレイが
電子機器の姿・形を根底から変える

情報バリアフリー社会を実現するフレキシブルな次世代ディスプレイ

大きなテレビやパソコンをくるりと丸めて持ち歩けたら、どんなに便利でしょう。家の中の壁や家具が、必要な時だけ情報を表示するディスプレイに変化したら、どんなに快適でしょう。そんなSFアニメのような世界を現実にするのが、薄くて軽くて自由に曲げられる「フレキシブルディスプレイ」。フレキシブルディスプレイは、あらゆる生活環境での情報提供を可能にします。いつでも、どこでも、誰でも欲しい情報に手が届く“アンビエント情報社会”の実現に向けて、私たちは液晶技術に着目した研究に取り組んでいます。

皆さんにとってお馴染みの液晶ディスプレイは、2枚のガラスの間に液晶を流し込んだもので、画面が大きいほど重くなり、落として割れれば危険を伴います。私たちは、このガラスを柔らかく軽量なプラスチックに変えるとともに、湾曲による表示の乱れを抑えるデバイス構造やコントラスト・視野角を補正する光学設計等の新技術を開発。曲げても美しい表示を維持できる、夢のようなディスプレイの実現に近づきつつあります。

情報バリアフリー社会を実現するフレキシブルな次世代ディスプレイ 情報バリアフリー社会を実現するフレキシブルな次世代ディスプレイ

この液晶方式は、フレキシブルディスプレイ分野で主流の有機EL方式に比べ、安定性・信頼性が高く、従来の生産設備を活用すれば生産コストも抑えられる点が最大のメリット。さらに、今後普及が見込まれるスーパーハイビジョン対応テレビ(80~100インチ)の開発においても、大画面化の技術をすでに確立している液晶方式のほうがはるかに優位であると言えます。こうした未来のニーズをふまえ、私たちは国内で唯一、基礎的な材料探索から大画面化・高画質化を重視した応用開発まで総合的に研究を行っており、産業界からも注目を集めています。

現在の高度情報化社会は、ディスプレイの進化とともに発展してきました。これからは、安価で、大きくて、使いやすいフレキシブルディスプレイがその中核を担うことになるでしょう。近い将来には車のインテリアに埋め込まれたり、電車の中吊りポスターにとって代わったり、日常生活の中に自然な形で溶け込んでいくに違いありません。もちろん災害時も、情報共有のインフラツールとして欠かせないものになるはずです。

私たちは、曲がるだけでなく伸縮自在なディスプレイの基礎研究なども手掛け、技術の可能性に挑戦しています。時代を先導する取り組みは、東北大学の伝統そのもの。皆さんも、この恵まれた環境で視野を広げ、新たな時代の扉を開いてほしいと思います。

Profile

藤掛 英夫 教授

藤掛 英夫 教授
Hideo Fujikake

NHK放送技術研究所時代よりフレキシブルディスプレイ開発に取り組む。液晶方式の将来的な優位性に導かれ、高画質化に向けた基盤研究を進めるため2012年より母校である東北大学へ。

専門は有機材料、フレキシブルディスプレイ、情報メディア。
栃木県立栃木高等学校卒業。1983年3月東北大学工学部卒業。1985年3月 東北大学大学院工学研究科電気及通信工学専攻博士前期課程修了。1985年4月にNHK入局。2002年6月にNHK放送技術研究所主任研究員。2003年3月に博士(工学)学位取得。2006年4月に東京理科大学大学院理学研究科客員教授。2012年8月より東北大学大学院工学研究科電子工学専攻教授。
日本液晶学会副会長、映像情報メディア学会情報ディスプレイ研究会委員長、IDW国際会議Flexible Electronics Workshop Chair。電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞、同学会論文賞、日本液晶学会論文賞、映像情報メディア学会丹羽高柳論文賞、照明学会論文賞、映画テレビ技術協会賞など受賞多数。