高校生・受験生のための研究紹介

応用物理学コース

身近な熱を
新たなエネルギー源に
「熱電材料」で
人と地球に優しい社会を

これからの時代にふさわしい発電システムに
つながる材料開発に挑む

身近な熱を新たなエネルギー源に「熱電材料」で人と地球に優しい社会を

クリーンエネルギーというと、皆さんはどんなものを思い浮かべますか。太陽光、地熱、風力等さまざまなものがありますが、その一つにぜひ「熱電材料」を加えてほしいと思います。熱電材料は、熱を電気に変換する機能を持つ材料で、温度差があればいつでも発電できますし、逆に電気を流せば温度差を生み出すことができます。まだあまり認知は広がっていませんが、市販の小型冷温庫やワインセラー等にも利用され、環境意識の高まりとともに近年注目を集めています。

日本は資源に乏しく、必要なエネルギーのほとんどを輸入に頼らざるをえません。しかし、その6割以上が有効に使われず、工場や自動車等の廃熱として捨てられているのが実状です。私たちは、今まで見過ごされてきた大量の熱に着目し、これらを電気に変えてリサイクル(サーマルリサイクル)する熱電材料の開発に取り組んでいます。社会全体に普及が広がれば、テレビやパソコン、人の体まで、熱を発するものなら何でも発電できるようになり、自分の体温でスマホを充電することも夢ではありません。自動車エンジンに組み込めば燃費効率が上がり、CO2排出も大幅に抑えられますし、究極的には発電所の数を減らすこともできるのです。

身近な熱を新たなエネルギー源に「熱電材料」で人と地球に優しい社会を 身近な熱を新たなエネルギー源に「熱電材料」で人と地球に優しい社会を

そんなクリーンな未来のため、熱電材料に求められる課題があります。まず、従来の発電材料よりも発電能力が高く、安価であること。さらに、希少な元素、有毒な元素は使わず、自然にも人体にも無害であること。私たちは、課題解決のポイントが物質中の元素の並び方“結晶構造”にあると考え、結晶構造を従来の視点とは異なる切り口から高精度で解析するとともに、得られた知見を新たな材料開発につなげる方法で日々研究を進めています。このような解析技術を持つのは、世界で唯一私たちだけ。理論も大事にする応用物理学を基盤としているからこそ、このような解析技術を持つことが可能となっています。この強みを最大限に生かし、国の研究機関や企業と連携を深め、数年後には性能・コスト両面で太陽電池に並ぶレベルになるよう、頑張っているところです。

欧米やアジアでは、すでに国を挙げた熱電材料開発が始まっています。日本も基礎研究で世界トップを走っており、今後ますます若い力の活躍が期待される分野です。物理だけでなく、材料やエネルギーなど幅広く興味があり、今までにないものを作りたいという野心あふれる皆さん、私たちと一緒に新時代の扉を開きましょう。

Profile

宮﨑 讓 教授

宮﨑 讓 教授
Yuzuru Miyazaki

物理学と出身である材料工学それぞれの視点を生かし、ものづくりを見据えた物質開発を行う。世界に先駆けて発見した新物質は30種以上にのぼる。

専門は無機固体化学、物質探索。埼玉県立川越高等学校卒業。
1989年3月 東北大学大学院工学研究科博士課程前期2年の課程 修了。1989年4月-1991年2月株式会社本田技術研究所和光研究所所員。1994年3月 東北大学大学院工学研究科博士課程後期3年の課程修了。1994年4月東北大学工学部応用物理学科助手。日本学術振興会海外特別研究員 (英国バーミンガム大学化学教室)などを経て、2004年10月東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻助教授。2012年4月東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻教授。
第16回本多記念研究奨励賞(1995年)、第5回日本金属学会奨励賞(1995年)、第42回原田研究奨励賞(2002年)などを受賞。