超音波信号処理

パラメトリックイメージング:形態観察から組織性状診断へ

通常、超音波画像は超音波の反射の強さをグレースケールで表し、組織の形や大きさに関する情報を表示します。パラメトリックイメージングとは超音波の反射の強さだけではなく、周波数情報や血圧の負荷による血管の微小な動きなどのパラメーターを画像化することで、組織性状診断を行う方法です。 血管内超音波法にこの手法を応用し、Integrated backscatter(IB)、組織ストレイン、Virtual Histology、2次元組織速度、Attenuation imagingなどのパラメーターにより、動脈硬化組織の自動診断が可能になりました。

血管内超音波法(IVUS)信号の解析

心エコーなどに用いられている超音波診断装置内部では様々な信号・画像プロセッシングが行われています。これらの元データにはなかなか触れることができませんが、血管内超音波(IVUS)装置では、以前は比較的容易に元信号にアクセスすることができました。右図は元信号から128ポイント分を切り出してきたものです。実際には、この信号の絶対値を取り、そのエンベロープを描かせることでエコー画像を作成します。 このように元信号に容易にアクセスできるということで、一連のパラメトリックイメージングの手法を開発したため、私たちはパラメトリックIVUSと名付けました。

時間領域信号と周波数領域信号

右図は、上の時間領域信号をAuto Regression方と言う方式を用いて周波数領域の表示に変換したものです。この例では14次式に近似することで比較的なめらかな周波数スペクトルを導出しています。 このスペクトルをコンピュータによって自動分類するのですが、コンピュータは数字を高速に扱うことは得意であっても画像そのものの認識は不得意です。したがって、本研究ではスペクトルを右図に代表されるような、Midband fit、Minimum power、Frequency at max power、Slopeなどの18のパラメータによって数値的に表現し、分類に用いました。

パラメトリックIVUSの応用例

左図は左上から通常のIVUS、Integrated backscatter(IB)、二次元組織ベクトル、二次元組織ストレイン、組織ストレイン、Virtual Histology(Volcano社装置に搭載)、Attenuation imagingです。 通常のIVUSやIB画像では12時方向の組織は均一に見えますが、組織ストレイン画像では内側に比較して外側が柔らかうことがわかります。この部位はVHでは脂肪を多く含む組織に分類されました。また、この部位はAttenuationが低いことも示されています。 この例からわかるように、パラメトリックIVUSによって動脈硬化組織を多角的・定量的に解析することで組織診断が可能になります。 このような正確な診断を臨床現場にも持ち込み、冠動脈インターベンション時のデバイス選択などで有効性を証明しました。